転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
ヒロトは戸惑っていた。
てっきり前回のバトルの不完全燃焼を払しょくする流れになると思っていたら、タカマルはまだガンプラバトルを始めたばかりのイヴと、ヒナタを自分にぶつけて来た。
確かに自分と縁のあるダイバーではある。
しかし大会の決勝戦という舞台を考えると。正直少し面白くはなかった。
「……じゃあ、私から行かせてもらいます!」
「……ああ」
ズゴックの外装が弾けて、ゴールドフレームタイプのガンダムが飛び出して来る。
かなり手の込んだギミックを持つアマテラスは、剣も持たずに突っ込んで来た。
アマテラスの機体性能はすさまじい印象はある。
だが本来ならスペックに頼り切っても限界があることをヒロトは知っていた。
ヒロトはとりあえずアマテラスの関節を撃ち抜くことにした。
ユーラヴェンガンダムは狙撃に特化した機体である。
接近戦は得意ではないが、まだ始めたばかりのヒナタなら対応は難しい、そう思っていたのだが―――。
しかし放ったビームは体を捻って回転したアマテラスに簡単に弾かれた。
「!」
「はぁ!」
逆に距離を詰められて、鞭のような武装が襲い掛かって来る。
大慌てで回避したが、いくつかの装甲を傷つけられて機体のバランスが崩れた。
そこに、すかさず剣が飛行ユニットのように飛んできて、攻撃モーション中に大剣を掴み取ったアマテラスは、恐ろしく鋭い斬撃で首を狙って来た。
「!!!!」
あまりに驚くべき速度の攻撃に武装を使う余裕もなく、宙返りして剣を蹴り上げる。
「いって! アマノコウリン!」
さらに至近距離で頭の上から放たれた、光のリングが恐ろしい攻撃力を持っているのは知るところだった。
正直狙ったわけではなく、直感だけで避けた。
回避にこそ成功したが恐ろしく完成度の高い連撃は、とても素人と言える物ではなかった。
「今ので攻めきれないなんて……さすがヒロトー……さんですね」
ニッコリと笑顔が見えたような気がした声色だが、ゾクリと謎の寒気がヒロトの背筋を襲った。
「でもこんなものじゃないですよ。アマノイワトをパージしたら、砲撃は出来ないですけど、ソーラーシステムは本来、太陽光で発電だって出来るんです。つまり……私のコウリンは太陽がある限り無尽蔵だと思ってくださいね」
アマテラスの頭上の光が、見たこともない大きさの光の輪を生み出してゆく。
同時に背中に背負ったパネルが大きく広がっていた。
正直息を飲んだ。
天使が降臨したみたいなゴールドフレームアマテラスは膨大なエネルギーをヴォワチュール・リュミエールに注ぎ込み、破壊の光に変えた。
「……!」
彼女は武装を使いこなしている。
優秀な機体性能を持っている機体だとは知っていた、でも今目の前にいるダイバーの技量は機体のスペックに追いついているとしか思えなかった。
「……ヒナタさん、すごいですね。この間まで初心者だったのに」
「ヒナタさん……。ええ、頑張りましたので! それに私リアルで武道の心得もあるんですよ! このソーラーシステムは私も作ったんですからね!」
「! え! すごいな……こんなすごいの作ってたなんて気がつかなかった……全然興味がないのかと思ってたのに」
「…………え?」
「あ! ゴメン! つい……」
ヒロトは思わず自分の口を塞ぐ。
これはここ最近で一番やってしまった感じだった。
「…………ちょっと待って? ひょっとして、気づいてた?」
「え? そりゃあ、見た目も名前も……隠してるんだよな?」
「な、なななななんで?」
「いや、ネットなら、リアルの関係持ち込みたくないとか、普通じゃないか?」
「~~~!」
「?」
なんかヒナタがすごく狼狽えている。ヒロトはまずかったなと反省した。
やっぱりうっかりが過ぎたか? 大会中に申し訳ない。
後でリアルの方で謝っておこう。
機体から湯気が出て動かなくなってしまったヒナタは隙だらけだが、今攻める気にもなれずにどうしようかと思っていると無数のビットが飛んできた。
「私の事も忘れないでね!」
「イヴ!」
ビットの入り乱れる中、イヴの声がそこら中から聞こえた。
そしていきなり目の前に現れて、バイザー越しにニコリと笑うイヴのEXカリバーは、次の一瞬には手の届かない位置に現れた。
ヒロトはあまりにも非常識な動きに目を見張る。
「……これは! テレポート?」
「そうなの! すごいでしょう!」
「ああ……でたらめな性能だ」
ターンXを基本にしたアーマーだとは知っていたが、黒歴史の性能を再現しているとは規格外すぎる。
おそらく1機で再現できるスペックではないだろう。
一回戦ほどでたらめではないが、浮いている二つの黄金の衛星がサポートしているのは間違いない。
すかさずヒロトは黄金の衛星をライフルで乱れ撃つ。
ユーラヴェンガンダムの火力なら、大抵の防御手段は貫けると踏んでいたが、イヴのEXカリバーはテレポートを繰り返し、残像を無数に残しながら、バリアブルロッドライフルを撃って来た。
しかしむやみに撃ったわけではなく、イヴは飛んできたビームにビームをぶつけて相殺した。
光が残らず弾けて、粒子に変わるのを見たヒロトはさすがに驚愕していた。
「なぁ……!」
「私の兄弟たちはやらせない!」
なんて正確な射撃……というか、神技だった。
いや、ビームライフルをビームライフルで相殺するなんて滅多に見られるものじゃない。
更には黄金の衛星が光り出し、いきなりとんでもない量のビットがテレポートで現れて、EXカリバーンの前に整列した。
「……それはさすがに」
「頑張ってヒロト! あなたのためにたくさん作ったの! おかわりはまだまだあるからね!」
「!」
そんな料理を作ったみたいなノリでビットを量産しないでほしいのだが、事実たくさん作ってしまったようで―――次々転送されてくるビットの数は、ちょっと見たことがないくらいの壁になっていた。
ヒロトは、イヴと彼女の機体の仕組みにだいたい理解が及んでいた。
ああ、なるほど。あの金色の衛星は完全に武器庫なんだ。
あの中にギッチリ詰められるだけビットを詰め込んできて、ターンエックスのテレポートで必要な分転送していると。
「なんというか……実際反則じゃないか?」
「そんなことないよ? 運営さん笑顔付きのメールで喜んでくれたもの」
「……」
そうかさすがGBN運営、形にしてしまった努力の結晶を無駄にしたりはしないと言うことか、懐が深い。
そして、黒幕の友人の顔が浮かぶ。
実際再現しているあたり変態の技術力だと思うが、ガンプラ界隈ではこれは誉め言葉だった。
「……イヴ。私も援護するね」
「もちろん。ヒロトは強いから、一緒に頑張りましょう!」
そして最悪なことにアマテラスが復活した。
だが広域の射撃と至近距離の機体は相性が悪いだろうと思ったが、アマテラスの背後の鏡がいきなりばらけて、ユーラヴェンガンダムを取り囲むように広がって行く。
「……まさか」
鏡で連想する効果は反射である。
まさかその鏡、ビームまで反射したりしないか?
ああ……初心者だからと侮りすぎていたのは、自分だったようだ。
彼女達は真剣にGBNに向き合って、ガンプラバトルに挑んでいるのは完全に理解した。
そしてそれが自分と戦うための準備だったと言うのなら、確かに会いたくてうずうずしてしまうかもしれない。
「……応えなきゃだな。俺だって」
じっとりと汗が滲んだ手に力が入る。
その時、ヒロトの頭の中はタカマルとの決着や、チームの勝利の事なんて全部消し飛んでしまって、目の前の二人の事だけでいっぱいだった。