転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
「……!」
ビームが降って来る光景というのは、中々に絶望的だった。
ヒロトはしかし、荒ぶる天候に挑む様な気分でスロットルを全開にした。
幸いだった部分はやはり少しだけビットそれぞれの発射タイミングに差があったことだろう。
発射時間のわずかなずれは速いからこそ大きな隙間となってくれる。
動き回り、わずかにタイミングをずらす。
それでも防げないものはIフィールドで弾いたが、いつまで続くことか。
刻々と雨は速く、そして密度は濃くなってきていた。
(……徐々に包囲網が狭くなってきている)
すぐにでも脱出しなければならなかった。
しかし少しでも予想し易い動きを取れば、その瞬間蜂の巣にされることは疑いない。
「……」
頭が沸騰しそうだ。
それでも極限まで集中していないと、その瞬間やられる。
まったく大掛かりな仕掛けを考え付いたもんだとヒロトは笑い、そして今本当の意味で誰と戦っているのか理解した。
「じゃあ……負けられないな!」
しかし躱しているうちに気がついたこともある。
ヒロトはライフルを構えると一発、輝いている壁を狙い撃った。
すると狙い通り、ビームが穴を穿った瞬間ビームの勢いが一気に衰えた。
「! しまった! コアが!」
ヒナタの焦った声を聴いて、思惑がうまくいったことを確信した。
ヒロトが撃ったのはおそらく小さなソーラーパネルの本体だ。
ゲームとしてここまで大規模な疑似ソーラレイを使うには機体として登録するしかない。
ならほとんどが鏡だとしても、本体となる機体がいるはずだと踏んだ。
そのうちの一機をヒロトは狙い撃ったのだ。
巧妙に隠れていたが、偶然見つけた本体を狙い通りに仕留めた瞬間、イヴの歓声が耳に届いた。
「すごいよヒロト! あの中から本体を撃つなんて! でも……包囲網は完成したよ!」
「!」
言われて弾かれたように顔を上げる。
すると少しずつ増えていたらしいビットは、少々手に余る数、もう一重重ねる輪になってこちらに狙いを定めていた。
「……これは!」
「撃って!」
容赦のないイヴの声に、ヒロトは負けが頭をよぎる。
何か手はないのかと、思考をフル回転していると、その通信は鋭く自分を叱咤した。
「ヒロト! 君のアーマーが今から行くぞ!」
「!」
割り込んだ声が誰か理解して、ヒロトは咄嗟にコンソールに指を走らせた。
「コアチェンジ! ウラヌストゥジュピター!」
「はああああ!」
空を塞いでいた天井が、切り裂かれたのはそのすぐ後だ。
飛び込んできた機体は我らが隊長機、クジョウキョウヤのAGEⅡマグナムだった。
「隊長!」
「ヒロト! 受け取れ!」
そして後を追うように、ビットに阻まれて侵入できずにいたアーマーが穴から飛び込んで来る。
すかさず飛び出し、ジュピターアーマーを受け取ったヒロトは瞬時にジュピターヴガンダムに換装した。
「隊長! なんで!」
「仲間のピンチに駆けつけるのは、隊長の務めだろう? 着替えを持ってくるくらいの事は朝飯前だ」
「……でもこの包囲網厄介ですよ」
「わかっているさ。だが……君のジュピターヴと私が揃えば、決して脱出不可能などということはない!」
「……! 全く! エミリアさんから怒られますよ!」
「ハハハッ! ならば切り抜けてから怒られるとしよう!」
攻撃が始まる。
ヒロトはビームガトリングをガチャリと構えて、すべて撃ち尽くすつもりでぶっ放した。
さっきまで寂しかった背中は妙に頼もしい。
飛び回るFファンネルは、的確にこちらに撃ち込まれるビームを切り払って、何ならビットそのものも撃ち落としていった。
どうしたって被弾は避けられなかった。
だがそれでも止まらない攻撃の勢いをあっという間に削り、ついには雨が止んでいた。
気がつけば、山ほどのビットの残骸が宇宙空間に浮かんでいて、それらを指揮していた2機の姿がようやくあらわになった。
「……嘘。信じられない。アレを突破したの?」
「すごいすごい! タカマルがとっておきって言ってたのに! さすがはアヴァロンね!」
「うーん……喜んでいる場合かな?」
「もちろん! あのまま終わりなんてないって私は思ってたもの! ヒナタだってヒロト達と面と向かって遊びたいでしょう?」
「そ、それはまぁ……」
「それにね! 私、ここからが本番って感じ……すごくする!」
「……うん。そうだね。ビットはもうないし、ソーラーパネルもなくなっちゃった。でも使った分だけダメージはあるはず……なのに全然勝てる気がしないかも」
EXカリバーとアマテラスは巨大な箒のような銃と、二本の大剣を構えて並んでいた。
彼女達の呟きが聞こえてきたが、勝てる気がしないのはこちらのセリフだった。
ゲームメイクは確実にモルガーナに軍配が上がっている。
奇襲は成功され、ヒロトは罠にはめられて、戦力のほとんどを奪われた。
もしここから勝ち目があるとしたら、ただ一つ。
ヒロトは視線で隊長を見た。
フォース『アヴァロン』を率いる、彼の力が鍵になる。
「面白い……本当に飽きさせないフォースだなモルガーナ! ヒロト! 君の友人は本当に面白い!」
「……ええ。本当に。仕掛け人の顔が透けて見えますよ」
「ほぅ。彼女達以外に誰かいるのか……ああいや、彼かな?」
「想像している通りだと思います」
「なるほどな……ならば、これからGBNはますます盛り上がりそうだ!」
ああ確かに。きっとこれからも盛り上がるに違いない。
今現在でも、こんなに盛り上がっているのだからヒロトだってそこに疑いはなかった。
EXカリバーンはゆっくりと動き出し。
機体の周囲を黄金の衛星が回りだす。
ビットはなくなったようだが、まだまだ戦力が有り余っているのは間違いなさそうだ。
まったく、あのイヴがビックリするほどの変わりようだった。
だがきっと、悪い変化なんかじゃない。
ヒロトにわかることはただ一つ、彼女が純粋にこのバトルを心の底から楽しんでいると言うことだけだ。
そんな彼女は優しくヒロトに語り掛けた。
「ねぇヒロト? ……最高の舞台で最高のバトル。きっと一番楽しいよね?」
「イヴ……うん。きっとそうだ」
ヒロトは答える。
イヴは微笑んだまま頷いて、両手を広げると機体の全身が発光し始めた。
「私の機体、EXカリバーって言うの。……このモルガーナも、この子も貴方たちアヴァロンに挑むために生まれたんですって」
「……」
「エクスカリバーって王様のための剣よね? せっかくだから私はこの子を本物の王様に……本物の王様の剣にしてあげようと思っているの。だから、しっかりと受け止めて! 私達の本気!」
EXカリバーは、全身を輝かせて無数のターンXマークを宇宙に投射する。
黒歴史を彷彿とさせる不吉な輝きを前にして、ヒロトは驚いたけれど傍らのチャンプの声は、子供のように弾んでいた。
「フッ……王の剣、確かにその名にふさわしい機体だ。……だがモルガーナだけが聖剣を持っていると思わない方がいい」
「え?」
「アヴァロンにも聖剣はもう一本あると言うことだ! ヒロト……私を使え!」
「……えぇ!」
驚くヒロトの前で変形したAGEⅡマグナムは、機体そのものを剣の形に変えて、今まで以上の光を発した。
ヒロトは光の剣を掲げる。
必殺の光を宿した剣の名はEXカリバーと言った。
同じ物語の特徴的な剣である。モチーフが同じなら、名前がかぶることはままあるだろう。
しかし自分が剣になるなんて言うのは予想外。
いや、クジョウ隊長の必殺技は個人で使うものだったはずだが、いつの間にか仕込まれていたまだ見ぬギミックにヒロトは驚愕した。
「我が必殺の一撃……君らの本気で超えてみたまえ!」
「ええぇ!」
「勝負を征した者が、真の王者の剣を手に入れる……そう言うことだヒロト!」
「……ですか!」
問答無用の断言に、ヒロトは口をつぐんで腕に力を込めた。
メリークリスマス。