転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す   作:くずもちXXX

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そして日は昇る

『フルダイブ型のVRゲームというシステムは、新しい技術です。オンラインという環境と結びつくことで起こった、偶発的な現象だととらえています。システムを開発した者としては仕様外の挙動は、恥ずべきことではありますが、今後VRという技術が世間に浸透すれば同じことが起こる可能性があると言う事例の一つという意味で公表に踏み切りました。我々は発生した知性体をELダイバーと呼称していまして―――』

 

 今話題の動画を眺めながら、ヒロトは星空と湖が広がるエリアで寝転んでいた。

 

「ここにいた。こんばんはヒロト。お隣いい?」

 

 そして彼女はいつもの様子でヒロトの顔を覗き込んだ。

 

「イヴ……もちろん。なんかこうやって会うのも久しぶりな気がする」

 

「そうかな? そうかも。最初の頃は毎日会ってたのにね」

 

「うん。でも驚いたよ。まさか決勝でイヴと戦うことになるなんて」

 

「ふふん。驚いたでしょう? 私もちゃんとヒロトとガンプラバトルできるように頑張ったの」

 

「頑張るにしても決勝って、限度がない? この間までバトルもしたことない風だったのに……俺はてっきり、イヴはバトルがあまり好きじゃないとばかり思っていたんだけど」

 

 ヒロトがそう言うと、イヴは困り顔で言った。

 

「ガンプラバトルが嫌いなわけじゃないの。ただ……私はガンプラも持っていなかったし、バトルも出来なかっただけ」

 

「……なぜ? って聞いてもいい?」

 

「うん。私――――ELダイバーなの……ログインしてるわけじゃなくって。この世界で生まれた存在。それがどういうことなのか私自身もよくわからなかったの」

 

「……」

 

 うっすら情報が入って来るにつれて予感はあった。

 

 でも実際に、イヴの口からその話を聞くと遠くの話を聞いているような、おかしな気分になった。

 

 まだ理解が及んでいない。でも、イヴは確かにそこにいて、ヒロトを見ていた。

 

「ヒロトは……私がELダイバーでも、仲よくしてくれる?」

 

 そしてヒロトに問う。

 

 ただ、不安そうな彼女を見ていて、きっと理解しようがしまいが、変わらないと確信できる答えはふっと出て来た。

 

「もちろん。そりゃあ、驚いたけど……前に言ったことは嘘じゃないよ」

 

「……ありがとうヒロト」

 

 イヴ自身もどう言ったらいいのか自信がなさそうなありがとうは、しかしヒロトとしても素直に受け取れなかった。

 

「お礼を言われるようなことじゃないよ。むしろ、ずっと一緒にいたのに何も知らないことが申し訳ないくらいだ。それと……少し悔しいかな」

 

「悔しいの?」

 

「うん。イヴが困っている時に俺は全然力になれなかったみたいだ……タカマルはすぐにわかったんじゃないか?」

 

 何が出来たのかと言われると全然わからないけれど、そこは少しだけ悔しい。

 

 すると、イヴはそんなことないと言って、くすくす笑った。

 

「そうね。でも悔しがることなんてないと思う。タカマルさんは、私たちのことを知っていて、ずっと研究していたみたい」

 

「研究って……タカマルって俺と同じくらいの年齢なのにさすがに……いや、でもなんというか……タカマルだよなぁ」

 

「ね! とっても不思議な人だよね! 謎は深まるばかりだよ」

 

 ウームと眉間に皺を寄せて首をかしげるイヴだが、自分も同じような気持ちだった。

 

 タカマルのやったことが、普通でないことはヒロトにもわかる。

 

 よく考えてタカマルなら仕方がないと考えている自分がいるのにも驚きだった。

 

 イヴはおそらく複雑な表情をしている自分の顔を覗き込んで、にっこり笑う。

 

「私ね? 生まれた時から、私がこの世界にとってあまり……その、良くないものだって予感があったの」

 

 だが続く告白は悲しいもので、ヒロトはつい声のトーンを上げてしまった。

 

「なんだよそれ? そんなわけないと思うけど……」

 

「ううーん……説明は難しいんだけど。GBNにとって私がいることそのものがあんまりよくない事だったの。でも私はGBNが大好きで、そこにいる人たちも大好きだった。だからたぶんそのままだったら、いつか消えてしまおうって考えていたかも」

 

「それは……」

 

「でもそうしなかったのはきっと、ヒロトのおかげ。これから先もずっと一緒にいたいから、タカマルさんに頼ったの。普通の方法じゃどうにもならないと思ってたけど、リリネットがいたからお願いしてみようって」

 

「……リリネットさんもそうなの?」

 

「うん! 私の妹ってことになるのかな?」

 

 ヒロトはめちゃくちゃ驚いた。

 

 そしてタカマルは一体裏で何をしているのか、かなり気になって来た。

 

「今はヒロトの世界の事もわかるよ? リアルとGBN、やろうと思えばリアルの世界を歩き回ることだってできるって。私のガンプラもそうやって作ったの」

 

「そんなことまで? でもそれは……なんだかもう、簡単な事じゃないよな」

 

「……うん。GBNの運営さんにだって簡単にはできないんだって。でも、タカマルさんは、GBNで生まれたばかりのELダイバー達を集めて、襲われても大丈夫なようにガンプラをくれたの。うっかりやられちゃったら危ないから」

 

「……ん?」

 

 だが話を聞いているうちに、穏やかではないことを言われた気がして、ヒロトは恐る恐る尋ねていた。

 

「じゃあ……ひょっとして、イヴがガンプラに乗っていなかった時に、エネミーにでもやられてたら……」

 

「たぶん……消えちゃってたかも?」

 

「危ないじゃないか!?」

 

「そうね。今考えると危なかったわ」

 

 ヒヤッとする事実に、ヒロトは背筋が凍る気分だった。

 

 取り乱すヒロトにイヴも慌てて付け加えた。

 

「でも、もう大丈夫だから。だからバトルだってちゃんと出来てたでしょう?」

 

「ああ……うん。実際すごく強かった。あのアーマーも。タカマルがコアガンダムをベースに作ったのはイヴの機体だったんだな」

 

「そうなの! 私がお願いしたの! ヒロトみたいなガンダムにしてって!」

 

 声を弾ませて答えるイヴに、ヒロトは照れる。

 

 だからごまかすように会話を続けた。

 

「じゃああのアーマーも?」

 

「アーマーは私も手伝ってみんなで作ったの! 名前は私が付けました!」

 

「そうなんだ、たしか……EXアーマーだったよね?」

 

 胸を張って自慢するイヴにヒロトは意外だなという感想を持った。

 

 ターンXをモチーフにエクスカリバーをもじってタカマルが名付けと思っていたが、どうやら本当に違ったみたいだ。

 

 イヴは照れたように笑って、その意味を教えてくれた。

 

「色々後付けで意味を足しちゃったけど、本当の意味はね? 『X』は外の星の事で、そして『E』は地球の事だよ。それを合わせたの」

 

「……外の星と、地球?」

 

「そう。もしいつか星の海を越えて、誰かと出会うことが出来たら……みんなで仲良く出来たらいいなって」

 

 ヒロトはアーマーに名前を付けた時に事を思い出していた。

 

 星の名前に、星の向こう。

 

 なんとなくリアルと電子空間の隔たりを、ヒロトは思い浮かべた。

 

 あの時のヒロトはその意味を少しも汲み取ることが出来なかったのだと思うと、やっぱり少しだけ胸が痛む。

 

 たぶん今だって、自分にはイヴの言葉の本当の意味を全部理解なんてできていないのだろう。

 

 でも今なら少しだけ、ほんの少しだと思うけど、彼女の気持ちを理解できる気がした。

 

「……そうだね。きっと仲良く出来るよ」

 

「うん! そうだといいな……」

 

 ヒロトは徐々に明るくなってきた光に目を細める。

 

 どうやら思ったより自分達はゆっくりと話をしていたようで、エリアの夜が明けたようだ。

 

 湖の向こうから、太陽が昇る。

 

 徐々に藍色から、鮮やかに世界が染まっていく光景は、とても綺麗だとヒロトは感じていた。

 

「……今度、リアルで夜明けを見に行こう。イヴも一緒に」

 

「リアルで?」

 

「うん。ELダイバーはそう言うことが出来るんだろう? 俺はイヴからGBNのいいところを沢山教えてもらったから、今度は俺の番かなって」

 

 でもこれからもっと知る努力をしていこうとヒロトは思う。

 

 そして彼女にもGBNだけじゃなくて、リアルの方の世界も好きになってもらいたいと心から思った。

 

「うん!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 イヴは驚いて目を見開いていたが、すぐ太陽のような笑顔を見せてくれた。

 

 

 

「……よし」

 

 夜明けの湖で二人が語らう様子を見届け、俺は映像を閉じた。

 

 そして腕を組んだまま深く深く頷いた。

 

「……俺は、成し遂げたのだ」

 

「盗み見ですか? 趣味が悪いですよ?」

 

「音声までは聞いてないです。それに俺にはあの二人を見届ける義務がある」

 

「……本当に?」

 

 疑わしげなリリネットに俺は頷いた。

 

 まぁ胸の張れることではないけど。

 

「ああ、じゃないといつか神様に褒めてもらえないからね」

 

「……神様ですか?」

 

「そう、神様だ」

 

 実際見たことはないが、神様はいるに違いないと踏んでいる。

 

 じゃないとこんな粋な采配はすまい。

 

 次に顔を合わせることがあるのかどうかは知らないが、一番の礼があるとすれば、こんなところではないかと思う。

 

 だけど……。

 

「……なぁリリネット? 俺はちゃんと二人を助けられただろうか?」

 

 俺は傍らのリリネットを見た。

 

 こんなことを言われたって、リリネットだって困るだろうと思いながら、それでもつい零した質問に、リリネットはきっぱりと答えた。

 

「助けられていますよ。私は助けられたので。マスター」

 

「…………そうか。なら大丈夫かな」

 

 これから何が起こるかなんて、俺には全く分からない。

 

 自分で原作をめちゃくちゃにしてしまったのだから、自業自得なのだがそれでいいと俺は思っている。

 

 大切なのは、楽しくガンプラで遊べるかどうか。

 

 そのためには、彼らには気持ちよく日々を過ごしてもらわないと張り合いがない。

 

 さてサービス終了の危機はひとまず大丈夫だと思うのだけれど、どうだろう?

 

 変なことにならないといいけど、今後起こるかもしれないトラブルの原因にはちょっと手が届きそうにないのは、頭が痛い。

 

「……ま、なるようになるか」

 

 俺はとりあえず全部うまくいくようにまずは遠くエルドラの神様に祈っておいた。

 

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