転生主人公、ガンプラバトルネクサスオンラインを遊び倒す 作:くずもちXXX
さて。この世界にやって来て驚いたことは沢山ある。
たまにイケてるショップ店員をやっていると、……本当にたまにだが、ガンダム味のあるお客を見かけることがあった。
ある日、カランカランと店のベルがなる。
そして聞きなれないけど、どこか懐かしい女の子の声が聞こえて来た。
「ここです、ここです! 噂のプラモデル屋さんですよ!」
「ここが? ……町のおもちゃ屋さんって感じね。素人でも大丈夫なの? ガンダムベースの方がよかったんじゃない?」
「え? 大丈夫だと思いますけど……なんとなく人が多い場所で色々聞くのハードル高くって、付き合ってくれてありがとうございますミオさん」
「……別にいいけど。あんたはいっつも唐突なのよスレッタ」
「えへへへ……でも面白そうだったんですよ、ガンプラバトル」
いまなんと?
そしてやはり名前も見た目も、ちょっと見たことがある感じだった。
一人は赤いくせ毛に、褐色の肌の穏やかな印象の女の子。もう一人は銀色の髪の、勝ちきそうな印象の女の子だ。
そんな女の子達は近くの有名な中学の制服を着ていて、ガンプラバトルがしたくてこの店を訪ねてきたようである。
さっそく宣伝の効果が出たのかもしれないが……今はとりあえずそれどころではなかった。
心の準備をする暇もなく、女の子達はこちらにまっすぐ歩いてきて、俺に話しかけて来た。
「あ、あの! 私GBN? っていうゲームを始めたいと思っているんですけど。どうやればいいんでしょうか?」
「ああはい。それはですね……」
とりあえず最寄りの筐体のある店舗からログインできること。本格的に始めるなら、ダイバーギアに自分のガンプラを登録することなどを説明すると、赤い子はムムムと太めの眉をよせていた。
「……ガンプラ作りたいです。ええっとどんなものを作ればいいんですかね?」
「難しく考えなくてもいいですよ。好きなものとか知っているものを作るのが一番ですね。やはり愛着が湧きますから……でも、そうだな……せっかくだからこれ、作ってみます?」
「え?」
そう言って俺が取り出したのは、ちょうど試しで出来上がったばかりの試作品だった。
キャリバーンのデータを修正して製作したものだが、中々うまくいったと思っている。
この世界の射出成型機は、データさえ作ればプラモ化することも出来るのだからかなり神懸かっていた。
「エアリアルって言うんです。正規品じゃないですけどゲームでも使えますよ」
「エアリアル……」
差し出した白い箱に入ったそれをじっと見つめた、スレッタさん。
そこにはデータを作る時に印刷した完成図のイラストが一枚入っていた。
そんな様子を見ていたミオさんと呼ばれた女の子は胡散臭そうに顔をしかめた。
「ちょっと……これ製品ですらないんじゃないの?」
「ええ、そうなんですよ。私の自作したキットなんです。出来る限り不具合がないつもりで作ったんですけど、初心者の方にも作りやすいかまではわからないので。サンプルを作っていただけないかなと。もちろん作った物は差し上げますし、特に作りたいものがないならという話なんですが」
「はぁ? スレッタで実験しようって言うの? それは非常識ってもんじゃ……」
「……ミオさん」
「スレッタも何か言って……」
「ミオさん!」
「はぃ!?」
「私! これにします! これがいいです!」
これまでにないほど断言したスレッタさんは、エアリアルを大層気に入ってくれたみたいだった。
そうだろうとも。こんなこともあろうかと個人的に趣味を突き詰めていて本当によかった。
きっと君なら、このキットを魂が求めるだろうと俺は確信していたとも。
そして力強いスレッタさんに、ミオさんも毒気を抜かれたようだった。
「えぇ? ……ああ、うん。あんたがいいならいいんだけど……」
「はい! あのこれ! 本当にいただいてもいいんですか? お金払いますけど……」
だが、いざ貰うとなると少しだけ正気に戻ったスレッタさんは、おずおずと申し出てくれたが、そんなことはいらぬ心配だった。
「ああいえいえ。本当に自作の試作品なので。きちんとしたプラモデルも棚に並んでいますので改めて選んでもらってもいいですし、工具を買っていただければ綺麗に作れます。工具はレンタルもできますよ」
「あ、それならレンタルでお願いします。あの、出来れば作り方を教えてもらえると助かるんですが、……そう言うことってできますか?」
「ええ。工作スペースもありますから教えますよ」
「ありがとうございます!」
ぱっと人懐っこい笑顔を浮かべたスレッタさんは、エアリアルのキットを抱きかかえてスキップしながら工作スペースに向かった。
ならば俺も全力を尽くさねばなるまい。
いそいそとプラモ作りの準備を整えていると、俺は視線を感じて振り返る。
するとそこには、ジットリとした目で俺を睨むミオさんがいた。
「あの、なにか?」
「……私も、ガンプラ作るわ」
「え?」
「だから! 私もガンプラ作るって言ってるの! 店員さん、何か……ないかしら?」
「……そうですね」
何かと言われても、ちょっとスレッタさんと違って、この娘が何かの機体に乗っていたイメージが湧かない。
ああでも、おもしろい機体があったことを思い出して、俺はもう一つ箱を引っ張り出してきた。
「これなんてどうです? 祝式」
「しゅくしき……」
百式をイメージした名前だが、女性的なフォルムはキュベレイを彷彿とさせる、とある企画のネタ機体である。
キットは存在しないが一目見ればハマーン様を感じられるナイス機体だった。
チョイとネタ度が高いが、これならやはり自作の試作品なので無料で譲れる。
お友達と一緒に来て、片方プレゼントというのもまずかろう。
「こ、これは……お、お嫁さん? 綺麗な機体ね」
「これならお譲りできますけど……やっぱり他のがいいですかね?」
「待って! ……気に入ったわ。これをいただきましょう」
「そうですか? なら、どうぞ。ええっと……スレッタさんと一緒に作っていくんですよね?」
「え、ええ。お願いするわ。さっきはごめんなさい店員さん。初めてのお店で警戒していたの。でもタダで物を譲るのはあまりいいことではないわ」
「……そうですね。気を付けます」
いやぁ確かにその通りだ。反省もしている。
しかし……俺に後悔はなかった。
というかヤバいな。とんでもない組み合わせが出来上がってしまった。
彼女達がこの機体に乗って、ガンプラバトルをやってくれると言うのならそれくらいの損は惜しくはない、というかなにかの需要は満たせたはずである。
これはイケてる店員ではなく、一ガンプラファンの暴走だった。
「……後はボブでも来てくれれば」
「ボブ?」
おおっと失言だ、何でもない。
でもいつか来るかもしれない、非常時のためにダリルバルデは用意しておこうと心に決め、彼女達の制作指導に気合を入れた。