転生したらスライムだった件 ■■の魔王   作:灰ノ愚者

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今回は十月に入ってからなんとかすぐに『最新話』
を無事に更新をすることができました‼︎


今回は『17230文字』まで頑張って書きましたが
豆腐のようなクソナメクジメンタルの自分はきちんと
面白く書けているのかとても心配になります……(汗)


【お気に入り】や【しおり】、【投票】そして
【感想】などいただければ豆腐のようなメンタルで
脆い自分も更に『創作意欲』が増していきます‼︎


面白く出来ているかどうか心配でいっぱいですが
一生懸命にたくさん書きました。


最後まで読んでいただければありがたいです‼︎


暴食者(グラトニー)

 

天翔騎士団(ペガサスナイツ)が来るまでの時間稼ぎと、邪魔なお供

であるメガロドンの撃滅を優先させるのだ。

 

 

俺の命令を受け、皆が持ち場に散っていく。

 

 

俺も人型に『変化』しておいた。

 

 

何かあった時、直ぐに対応できるようにだ。

 

 

残るメガロドンは十二匹。

 

 

コイツ等の数を減らすのも一苦労してそうである。

 

 

個々の力がAランクというのが、スピードはある

もののパワーはそこまで大きくはない。その技量に

至っては想像のお察し通りで、カリュブディスと

同じく知能が低い分、そこまで警戒する相手では

なさそうだ。

 

 

例えば、ゴブタ達が戦った槍脚鎧蜘蛛とメガロドン

が戦った場合、ナイトスパイダーが噛み砕かれて

勝負は一瞬で決着する。しかしこれがゴブタだった

ならば、逃げ回って中々決着は着かないだろう。

 

 

つまり、特筆すべきその攻撃力と防御力の二つの

高さであり、戦闘速度はそれ程の脅威などではない、

という事である。戦闘におけるもっとも重要な要素

である速度を基準として考えれば、メガロドンは

そこまで驚異的な魔物ではない、という事なのだ。

 

 

言うまでもないが、一撃くらったら致命傷となる相手

ではないのは当然である。舐めてかかっていいそんな

相手ではないのは当然であり、俺の部下達はその事を

良く理解していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ベニマルに続いて戦闘を始めたのはゲルド達だった。

 

 

指揮所は小高い丘の上に設けているので、眼下の戦い

を見通せる。

 

 

ゲルド率いるは、猪人族(ハイオーク)の中でもBランク以上の

猛者ばかり。それ以下の者達は今回の戦いでは

足手まといになる恐れがあったので、町の住民や

ロムルスやウツロなどの避難を任せていた。

 

 

百名に満たない精鋭が、今回の作戦の主役である。

 

 

ゲルド達は木々を盾代わりに、大量のメガロドンを

引き付けて叩くその作戦を開始したのだ。しかし、

残念な事にこの作戦は失敗だった。

 

 

樹林の中に誘い込めば、木々が邪魔をして動けなく

なるだろう、そう考えての作戦だったのだが……

メガロドンはその強靭な肉体で、木々を枯れ枝の如く

容易にへし折ってしまったのである。

 

 

そしてそして発動する高速突撃。それは、刃のように

尖った鱗により衝突した相手を切り刻む。”刃突撃進”

とでも名付けられそうな攻撃だった。

 

 

ゲルドに従う精鋭達は、とっさに回避に移っていた。

しかし、メガロドンは巨大過ぎたのだ。普通ならば

回避不可能な速度であっても、縦横無尽にその空間を

泳ぐ巨大鮫の身体を避けるのは困難だった。今度は

逆に、自分達が樹木の牢獄に囚われていたようなもの

だった。

 

 

ゲルドのように皆が防御力特化だったからこそ、

死者は出なかったようだ。だが継続戦闘は不可能な

程に、数十人が重症を負ってしまったのである。

 

 

森に伏せるなり、残りの戦士達も、これは顔色を

変えている。メガロドンの凄まじい攻撃力を前に

しては、無理のない話だった。

 

 

そんな中、猛るように咆哮を上げる者がいた。

 

 

「許さんぞ、オレの仲間達を!」

 

 

ゲルドだ。

 

 

叫ぶなり、ゲルドはメガロドンを正面から睨み、

その突進を受け止めたのである。

 

 

ゲルドの身体は全身を頑丈な鎧に守られている。

そのお陰で、尖った刃のような楯鱗に傷付けられる

事はなかった。そしてそのまま、ゲルドは怪力にて

メガロドンを抑え込む。

 

 

「今だ、掛かれい!」

 

 

命令が発せられるとそれと同時に、一斉に動き出す

ハイオークの戦士達。その歩みは鈍重だが、戦斧(バトルアックス)

よる一撃が重い。少しずつ、メガロドンの体表に傷が

出来ていく。

 

 

だが残念な事に、その傷は目の前のメガロドンに

とっては致命傷ではない。その巨大を前にしたら、

ハイオーク達の攻撃は焼け石に水でしかなかった

のである。

 

 

メガロドンが身震いしただけで、数十名の戦士達が

吹き飛ばされてしまう。

 

 

ゲルドの表情は険しくなり、憎々しげにメガロドンの

頭へと圧力を加える。それを嫌って、更に大暴れする

メガロドン。

 

 

ゲルドの怪力と、メガロドンの暴威が、正面から

ぶつかりあった。

 

 

力は拮抗している。しかし、幸運はゲルドに微笑んだ。

 

 

「助太刀致しますぞ!」

 

 

そんな叫び声が聞こえた。

 

 

その直後、天空から直下のメガロドンに向けて閃光が

貫く。その一撃により、何が起きたのかまったく理解

出来ぬままメガロドンは絶命したのだ。

 

 

現れたのはガビルだった。

 

 

遊撃部隊としてゲルドの危機を察知し、速やかに

救援に駆けつけたのである。

 

 

そこでゲルドがメガロドンを抑え込んでいるのを

目撃し、威力にのみ全力を注いだ一撃を放ったの

だった。

 

 

仮にもAランクとなったガビルの、全力の一撃。

二十メートル級の巨大を誇るメガロドンですら、

その攻撃力には耐えられなかったのだ。

 

 

ゲルドの幸運はそれだけではない。

 

 

ガビルの配下の龍人族(ドラゴニュート)達が、速やかに自分達で生産

した”完全回復薬(フルポーション)”を用いて怪我人の治療を行なって

いる。惜しげもなく振る舞われる薬により、重症者も

復活したのだ。

 

 

誰一人欠ける事なく、この危機を乗り切った

のである。

 

 

「グワハハハ! ゲルド殿がこの化物の動きを止めて

下さったそのお陰で、楽々と簡単に仕留める事が

出来ましたわい!」

 

 

「助かったぞガビル殿。提案だが、このまま共闘する

というのはどうだ?」

 

 

「おお! 面白そうですな。吾輩がお役に立てるの

でしたら、是非ともお願い致しますぞ!」

 

 

こうして、ゲルドとガビルはタッグを組んだ。

ゲルドとガビルの部下達も協力をし合い、多少の

怪我など気にする事なく勇猛果敢にメガロドンを

攻め立てる。そして、今回の戦いでお互いに絆を

深めたのだ。

 

 

そしてその後、更に二匹のメガロドンを討伐する

事に成功するのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲルド達戦い始めた後、別の場所でも激しい死闘が

始まっていた。

 

 

ハクロウに命じられるまま、ゴブタが”鞘型電磁砲(ケースキャノン)

でメガロドンを撃ったのだ。

 

 

絶大な威力を誇るものの、直径二センチの弾丸では

致命傷を与える事を出来る訳がない。腹の辺りに直径

五十センチもの大穴が開いたものの、それは目の前の

メガロドンの怒りに火をつけただけである。

 

 

「やっぱり無理じゃないすっか⁉︎」

 

 

「ホッホッホッ。当然じゃろうが。貴様等にアレを

倒させようと思い、こちらに誘い寄せたまで」

 

 

「げえ! この爺さん、無茶を言うっすよ!」

 

 

ゴブタの悲鳴が響き渡る。しかし、誰も止めようと

する者はいない。

 

 

そして始まったのは、森の中の鬼ごっこである。

 

 

 

ハクロウは宣言通り、狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)達にメガロドン

を倒させるつもりのようだ。命がけの鬼ごっこで、

ゴブタ率いる狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)はメガロドンに群がって

いる。

 

 

槍で突き、離れる。ターゲットがその者に移ると

同時、別の者が攻撃するというサイクルだ。

 

 

 

皆必死である。

 

 

 

自慢の速さでも負けているが、相手は巨体。小回りが

利く分、若干だがゴブタ達が有利。

 

 

そういう条件の下で戦っているので、少しだけ、

少しだけ少しだけミスが命取りになる。それなのに、

多少の怪我は上位回復薬で治療しつつ、無茶な特攻を

続けていた。

 

 

「最悪の場合でも完全回復薬(フルポーション)があるから、即死などを

しなければ大丈夫じゃぞ」

 

 

好々爺然とした語り口で、鬼教官振りを見せ付ける

ハクロウ。

 

 

「ちょ! この爺さん本気っすか?」

 

 

文句を言う余裕があったのはゴブタのみ。他の者は、

攻撃と回避で精一杯なのだ。

 

 

 

「ほらほら、囮役はきちんと注意を惹きつけよ!

攻める役は他に何も考えずとも良い。ただし全力を

込めて、敵を殴るのじゃ! ただし殴ると同時に離脱

するのを忘れるなよ。まあ、うっかり忘れたとしても

苦痛なく死ねるじゃろうて。ホッホッホッ」

 

 

本物の鬼だ。ハクロウは一片の容姿もなく、ゴブタ達

を鍛え上げるつもりである。

 

 

二十騎ばかりの一団が、交互に囮役と攻役の役割を

演じている。五チームに別れるのだが、順番に役を

演じていくのだ。攻撃・回避・移動・回復・準備

という風に、次々に交代しつつメガロドンを翻弄

する。ただし、ターゲットが変更されない場合も

あるので注意が必要だった。

 

 

防御力がない以上、囮役はメガロドンを惹きつけて

回避に専念するしかない。一番危険な役所だった。

 

 

ターゲットが変わらなねばそのままずっと囮役を

継続する必要があり、攻撃直後からメガロドンの

ターゲットが切り替わるまでの間が、もっとも

危険な時間帯であると言えるのだ。

 

 

だが、ゴブタ達狼鬼兵部隊(ゴブリンライダー)は、一糸乱れぬ整然とした

動作で危なげなく役目を全うしていた。

 

 

「見事なもんだな」

 

 

「ええ、流石はハクロウ様ですね」

 

 

「ああ。どうやら若返って、更に鬼教官振りに磨き

かかったからな」

 

 

俺が褒めると、シュナとベニマルと同意してきた。

 

 

「凄いな! ワタシも一緒に遊びたい!」

 

 

ミリムは何か勘違いしているようだったけど……

気にしたら負けだろう。

 

 

「なあなあ、やはりワタシが──」

 

 

「駄目」

 

 

俺の服の裾を引っ張りながら訴えてくるが、心を鬼に

して却下する。

 

 

俺の方が泣きたいんだから、そんな目で見るのは

本当に止めて欲しいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

空中では、ド派手な事が起きていた。

 

 

ソウエイである。

 

 

ソウエイもベニマルと同じく”飛空法”しか使えない。

それもどちらかと言うと、苦手としていたのだ。

それなのに、どういう手段を用いたのか、メガロドン

の背中に取り付いているのだ。

 

 

種明かしは簡単だった。

 

 

ソーカ達五人がメガロドンよりも上空に位置し、

その背に影を落としたのだ。その影に目掛けて、

ソウエイは『影移動』したのである。

 

 

空中の魔素へ干渉するのが、固有能力『魔力妨害』

の効果だ。なので、『影移動』には影響しなかった

のだろう。

 

 

それを見抜くなり、即座に利用するとは流石は

ソウエイ。だが、彼の本領発揮はここからだった。

 

 

ソーカ達は五名。そして、各々が別のメガロドンの

上に張り付いていた。それが指し示すのは、ソウエイ

の本体と『分身体』にて、同時に五匹の背にしっかり

張り付いているという事実である。

 

 

 

操妖傀儡糸(そうようかいらいし)‼︎」

 

 

 

四体のソウエイの『分身体』が、同時にその技を

発動した。それは、知恵なき魔物を操る秘術である。

 

 

脳からの指令を伝える神経網に、妖糸で接触を図る。

そして、偽りの命令を流すのだ。

 

 

これにより、四匹のメガロドンがソウエイの支配下に

入った。死体を利用した単純な構造が仇となったとも

言えるだろう。

 

 

ソウエイは各分身を操り、メガロドンを同士討ちを

させていく。これにより、四匹のメガロドンが二組

に別れて、相争い始めたのだった。

 

 

 

そして──

 

 

 

「頃合いを見て始末しろ」

 

 

ソウエイはソーカ達にそう言い捨てて、本体が乗る

五匹目のメガロドンを操りカリュブディスへと向かう

のだった。

 

 

その姿は余りにも鮮やかで、メガロドンがAランク

だという事を忘れさせる。

 

 

というか、ソウエイもベニマル同様、別格の強さに

なっているようだ。ソウエイは本気で戦っているの

だろうが、苦戦知らずで手を抜いているように

見えた程である。

 

 

ゲルドとそんなに強さは変わらないはずなのに、

この差は一体どこからやって来たのだろう……。

 

 

俺はこんな場面だというのに、そんな事を考えて

しまったのだった。

 

 

 

 

残されたソーカ達五名はというと。

 

 

「心得ましたソウエイ様。後はお任せ下さいませ」

 

 

ソウエイの言葉に、恭しく一礼するソーカ。

 

 

そして表情を冷徹なものへと変えて、メガロドンを

一瞥した。

 

 

「抜かるなよ。決してソウエイ様を失望させるような

真似は、断じて許さん!」

 

 

部下を集め、冷ややかに告げるソーカ。トーカに

サイカ、ナンソウやホクソウも、ソーカ同様の冷たい

表情であった。

 

 

正直、ハクロウは鬼教官だと思う。

 

 

だけど、ソウエイはなんなんだろう? この僅かである

短期間で、直属の五名はびっくりするくらい冷酷な感じ

になってしまっている。どういう教育すればこうなるの

だろうか……。

 

 

少ししてメガロドンの同仕打ちが激しくなった時、

ソーカを除く四名が一斉に攻撃を開始した。ソーカが

上空にて指示を出し、四人がそれに従うというそんな

スタイルである。そして見事に、格上であるはずの

メガロドンを仕留めて見せたのだ。

 

 

ソウエイだけではなく、その部下五名も見事な働き

だったと言えるだろう。

 

 

こうしてソーカ達は、遊撃数四匹を計上したので

あった。

 

 

 

 

 

 

 

 

凄いと言えば、シオンとランガである。

 

 

いつの間にか、この二人はコンビを組んだようだ。

 

 

「今回はなんとしても、目立たなければなりません!」

 

 

「うむ。我もその意見に賛成だ」

 

 

という事で、二人の意見が一致したらしい。

 

 

本来の巨躯となったランガの背にシオンが飛び乗る。

それを待ち、軽やかに駆け出すランガ。

 

 

そしてそのまま、指揮所がある丘から飛び出し大空

へと走り出す。

 

 

ん? 上空へ、へ?

 

 

良く見ると、ランガは何もない空間に足場があるか

の如く、力強い跳躍を織り交ぜつつ空を駆け抜けて

いた。エクストラスキルの『風操作』にて、空中に

足場を作ったのだ。

 

 

器用な真似をするものだ。名付けるなら”空駆法(そらかけ)

だろうか。ともかく、ランガは地上を走るよりも

速く空を走れるようになっていたのである。

 

 

ただし、この技術(アーツ)も魔素を利用をしている点では

『魔力妨害』の影響を受ける。メガロドン程度の

干渉力ならば、或いはランガの足場を崩せないかも

知れないけれど………。

 

 

 

どうするつもりなのかと見ていると、ランガは驚愕の

行動に出た。メガロドンの上空まで移動し、そこから

加速するように直下に位置する獲物目掛けて勢いよく

飛び掛かったのである。

 

 

ランガの巨躯体長五メートルにも及ぶ。メガロドン

から比べれば小さいが、それでもかなりの質量を

備えているのだ。

 

 

自身の跳躍力に重力加度を加え、ただ走るだけでは

作り出せない速度をもってメガロドンへと迫っていく

ランガ。だがどうやらそれは、体当たりするのが目的

ではない。ランガの背に立ち、大太刀を構えるシオン

がいるのだ。

 

 

地面に対して平行となるようにして立っているにも

かかわらず、シオンは堂々と平然としたままだった。

そして、ランガとメガロドンが交差する刹那、薄紫に

発光している大太刀をシオンが振り下ろした。

 

 

シオンの妖気が大太刀を強化拡張して、刃渡りは三倍

以上に伸びている。上空から急降下するギロチンの刃

のように、紫の妖刃がメガロドンの首を一刀両断して

斬り落とした。

 

 

 

「見よ! 断頭鬼刃(だんとうきじん)‼︎」

 

 

 

断頭鬼刃(だんとうきじん)” ──その名の通りの技である。

” 鬼刀砲” のように妖気(オーラ)を放出するのでなく、一定の

形に固定して使用しただけの技。

 

 

だがしかし。

 

 

ランガと協力して現在出せる最高速度で振り抜いた

結果、拡張された大太刀の先端部分は音速さすらも

置き去りにして、メガロドンの首を刎ねたのである。

 

 

シオンらしく単純で、豪快極まりない技だと思った。

 

 

その後、更に頭を落とされて『魔力妨害』が消えて

メガロドンを、ランガの激しい雷が焼き尽くす。

それで終了だった。

 

 

同じように二匹、続けて始末するシオンとランガ。

 

 

 

そして──

 

 

 

「このような図体だけで面白みのない敵ばかりでは

飽きますね。敵の首魁を狙おうと思うのですが、

どう思いますかランガ?」

 

 

「シオンよ、我もその意見には心を動かされるぞ。

どの程度の強さなのか、我らが見極めてやろうでは

ないか」

 

 

「それでこそランガ。では行きましょう!」

 

 

勝手な事を言いながら、二人してカリュブディスへと

向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初、メガロドンは十三匹いた。

 

 

 

個々がAランクに達する、脅威の魔物達──

そのはずだった。

 

 

それなのにたった今、生き残っていた二匹の内の

一匹が死んだ。ハクロウの剣閃の前に、微塵切りに

されたのだ。

 

 

こちらの戦力に死亡者や脱落者は皆無。

 

 

思った以上の好況に、俺も内心で安堵する。

 

 

「不甲斐ないのう。機動力と危機回避能力はそれなり

に成長しておるが、攻撃力全然駄目じゃ。たった一匹

も仕留められぬとは……。この戦が終わったら、修行

を厳しくせねばならんわい」

 

 

「ちょ、ジジイ! これ以上厳しくされると死ぬ。

死んじゃうすよ!」

 

 

 

「ジジイ、じゃと?」

 

 

「あっ⁉︎」

 

 

なんだか悲痛なゴブタの叫び声が聞こえ、

そして静かになった。

 

 

何があったのかは不明だったが、ひょっとすると

ゴブタ君は()()()()()にやられて重症になっている

かもしれないな。この戦場で最初の脱落者になって

しまったようだ。だが、きっと死んではいないので

大丈夫だと信じよう

 

 

──と、馬鹿な事を思っている間に、新たな展開

である。

 

 

ソウエイが最後の一匹をまるで騎獣のように操り、

カリュブディスに噛み付かせたのだ。歪なオブジェ

のようにカリュブディスから生えるメガロドン。

 

 

シュールな光景だった。まだ生きているようだが、

既に脅威ではない。

 

 

こうして、残す敵はカリュブディスだけになった

のである。

 

 

 

 

 

 

 

ソウエイはメガロドンになどには全く目もくれず、

カリュブディスへと飛び移った。

 

 

「おいおい、ソウエイのヤツは大丈夫か?」

 

 

「リムル様、ご安心ください。ソウエイは俺に次ぐ

実力者です。カリュブディスの実力を試すのには、

丁度良いと思いますよ」

 

 

俺が心配して呟いた言葉に、ベニマルが気軽そうに

答えた。その声には心配している風はなく、本気で

ソウエイを信じているのが窺える。

 

 

「それにほら、アイツ等も参戦するようですし」

 

 

指差す先には、シオンとランガ。

 

 

カリュブディスの『魔力妨害』の影響を受けない

ように、かなりの高度まで移動してから飛び降りて

きたのだろう。上手く背中に着地出来たようである。

 

 

 

全長五十メートルを超えるというのは、それだけで

脅威である。それだけの質量が上空から町に落下を

するだけで、どれだけの被害が出るやら全く想像も

出来ない。

 

 

 

《解。規模から推測して──》

 

 

 

いいから。具体的な数字を説明をしなくても

いいと、俺は『大賢者』を黙らせた。

 

 

そんな説明を受けても鬱憤になるだけである。

どうせなら、簡単に倒す方法を教えて欲しいのだ。

 

 

《──》

 

 

今度は沈黙。

 

 

肝心な所で無口になるのが『大賢者』の悪い癖だな。

いや、拗ねているだけかも知れないけどね。

 

 

それは置いておいて。

 

 

俺の視線の先で、ソウエイ、シオン、ランガによる

カリュブディスへの攻撃が開始された。

 

 

ここまで順調だったので、案外カリュブディスも──

と思ったのだが、それはどうやら甘かったようだ。

 

 

でかいとというのは、それだけで脅威。それを証明

するような事態となっていた。

 

 

ソウエイ、シオン、ランガが一通り攻撃したのだが、

それが一切通用しなかったのだ。

 

 

五十メートルの巨体の前には、彼等の攻撃は薄皮一枚

を切るようなものであり、重要な魔力神経網へは到達

しないようである。

 

 

そもそも、カリュブディスは生き物ではない。歪な

生態の魔物なので、内蔵器官などは存在しないのだ。

下位龍族(レッサードラゴン)の死骸の肉を用いて、肉の鎧を纏っている

ようなものである。

 

 

こうなるのは当然であり、これを突き破るには

中途半端な攻撃では不可能だろう。

 

 

「──やはりこうなりましたか。私の魔法も、

三百メートル圏外からではまるで効果はありません

でしたが……あのように近接距離からでも通用しない

となると、これでは手の打ちようがありませんね。

それも、魔法だけではなく物理攻撃までも意味を

為さないとは……」

 

 

トレイニーさんがそう悩ましげに呟いた。

 

 

そんな時なのにミリムだけは

 

 

「だからワタシに任せろと言ったのだ……」

 

 

と、子供のように拗ねたままであったのだが……。

 

 

今はミリムに構っている場合ではない。

 

 

なんでも、トレイニーさんの扱える中で最強クラスの

元素魔法:大気圧縮断裂(エアリアルブレード)でさえもその威力を十分の一

程度散らされて決定打とはならなかったのだそうだ。

 

 

多少のダメージを与えたものの、即座に傷が修復

されてしまったのだとか。

 

 

そして、痛みが脳に伝わるのが遅いのか、暫く攻撃を

続けていたら突然暴れ出したのだそうだ。

 

 

「急激に加速し、体当たりを仕掛けてくるのです。

全身を覆う楯鱗は、その一つ一つが独自の刃となって

斬り付けてきます。目から放たれるその破壊光線は、

魔素を散らす効果を持ち、我々のような魔素で肉体を

構築している魔物にとっては対処の難しい攻撃でした

──」

 

 

状況を振り返ってそう口にしていた。

 

 

会議室でロムルス(グレイ)に説明を受けていたのだが、現物を

見ているとその壮絶さが理解しやすい。確かにこんな

化物を倒すには、生半可な攻撃では意味がないだろう

から……。

 

 

「──いけない!」

 

 

突然トレイニーさんが叫んだ。

 

 

「今一瞬ですが、あの一つ目が赤く光ました。

あれは、カリュブディスが攻撃に移るサインかも

知れません」

 

 

トレイニーさんの代わりに、ベニマルが説明して

くれた。

 

 

俺も気付いていましたよ? 何かな〜とか暢気に

考えていただけで……。

 

 

それにその瞬間、シオンが妖気(オーラ)を最大限まで高めて

” 鬼刀砲”をぶっ放したから、それに気を取られていた

のだ。もしかすると、それが原因でカリュブディスが

怒ったのかも知れない。

 

 

理由はなんであれ、危険そうなので『思念伝達』で

伝えておく。

 

 

 

『聞いたか? 何か仕掛けてくるかも知れないから、

油断するなよ!』

 

 

『了解ですリムル様!』

 

 

『承知』

 

 

『心得ました、我が主よ!』

 

 

 

三者三様の返事に頷く俺。

 

 

一々言わなくても油断などしていないだろうが、

念の為だ。

 

 

だが、伝えたのは正解だった。

 

 

その直後、凄まじい攻撃がソウエイ達を襲った

のである。

 

 

ガラスが擦れるような耳障りな音が、周囲の空間を

埋め尽くした。

 

 

その音だけでも、精神が汚染されるような不快な

感じになる。

 

 

カリュブディスの全身を覆う鱗が軋む音だった。

 

 

そして──

 

 

 

「なんと! あのような攻撃手段まで持ち合わせて

いたとは──」

 

 

「不味いな、あれは──回避不能だ」

 

 

トレイニーさんとベニマルが切迫して叫ぶ。

 

 

カリュブディスの全身から、死と破壊を撒き散らす

災厄が解き放たれたのだ。

 

 

──そんな最中。

 

 

「ほう! あれがカリュブディスを暴君と言わしめた

── 暴風の乱鱗雨(テンペストスケイル) か。初めて見たのだ」

 

 

 

ミリムの言葉だ。

 

 

暇だからか、とうとう解説役を始めてしまっている。

 

 

今重要なのは技の名前ではないし、知っていたのなら

先に教えて欲しかった……。

 

 

俺も思わず、「知っているのかミリム?」と思わず

聞きそうになってしまったが、自重した。

 

 

今は詳しく説明を聞いている場合ではないし、見たら

攻撃だったからだ。

 

 

それよりも今は、シオン達が心配だった。

 

 

俺の忠告に従い警戒した直後だった事で、辛うじて

回避行動に移るソウエイ、シオン、ランガの三名。

しかしその身に迫るのは、圧倒的なそんな物量を誇る

カリュブディスの鱗なのだ。

 

 

それこそ何百何千何万もの楯鱗が、全てを引き裂く

砲弾となって全方位へと打ち出されたのだった。

大小様々ではあるが、小さなものでも数十センチ

である。直撃を喰らえば刀で斬られるよりも悲惨な

事になるのは間違いない。

 

 

 

それが数万以上。凄まじい速度でもって、雨あられ

の如く降り注ぐ。

 

 

逃げ場などない。

 

 

ミリムの言う所の” 暴風の乱鱗雨(テンペストスケイル) ”だが、” 黒炎獄(ヘルフレア) ”を

遥かに超える規模の広範囲殲滅攻撃なのだ。

 

 

「クッ、避け切れん。俺とランガには『影移動』が

あるが──」

 

 

「避ける? 何を甘えた事を。この程度で死ぬ私では

ありません!」

 

 

ソウエイの言葉に、シオンが嗤って応える。

 

 

目は血走り、完全に思考がぶっ飛んでしまっている

ようだ。迫り来る大量の鱗を避けようともせずに、

カリュブディスに向けて大太刀を振りかぶっていた。

 

 

どう考えても、このままではシオンは危険である。

 

 

「──ソウエイよ、ヌシは逃げるがいい。我がシオン

の盾となろう」

 

 

空中でシオンと合流するランガ。

 

 

そのまま跳躍しつつ、ランガは四肢に力を込めた。

そしてカリュブディスの『魔力妨害』の影響下から

脱するなり、エクストラスキル『風操作』を用して

カリュブディスへと向き直ったのである。

 

 

楯鱗の初弾は既にランガに届き、その身体を

傷つけていた。

 

 

ランガは自身の言葉通り、シオンの盾なるつもり

なのだ。

 

 

「馬鹿な、死ぬ気ですかランガ? お前はさっさと

逃げなさい!」

 

 

冷静さを取り戻したシオンが叫ぶが、ランガはそれを

一笑に付した。

 

 

「フフフ。リムル様ならば、生き残る確率が高い方

を選択をされるだろう。それに──我の巨体では、

『影移動』しようにも潜れるような影がないのだ。

ソウエイ、ヌシだけでも行くがいい」

 

 

万能に思える『影移動』にも、発動させる為の条件

があった。不安定な足場しかない空中では、元より

ランガには使用出来なかったのである。

 

 

ランガの言葉を受け、ソウエイが迷ったのは

一瞬だった。

 

 

「生き残る確率、か。ならば俺もここに残ろう。

ああ、勘違いするなよ。死ぬ前に” 本体 ”は撤退する

から気にするな」

 

 

「ふふ、ソウエイらしい。それでは、全員で生き残り

ましょう!」

 

 

晴れやかな表情でシオンが宣言する。

 

 

 

絶望なまでの” 暴風の乱鱗雨(テンペストスケイル) ”を前にして、誰一人

として諦めてはいないのだ。

 

 

それは無謀であると思えたが、俺からすれば好ましく

思える選択だった。

 

 

三人が覚悟を決めたその時。

 

 

「本当、お前等って馬鹿だよな。こういう時くらい、

俺を頼ってくれよ」

 

 

見計らったように声を掛ける事になった。

 

 

 

「「「──ッ⁉︎」」」

 

 

驚きに固まる三名。

 

 

その前に飛翔し、迫り来る鱗に左手を翳す俺。

 

 

「「「リムル様‼︎」」」

 

 

驚愕と喜びのないまざった叫びに、俺の名を呼ぶ声

が聞こえた。

 

 

俺はそれに答えるでもなく、ただ正面を見据えて

為すべき事を済ませる。

 

 

 

すなわち──

 

 

 

「喰らい尽くせ── 暴食者(グラトニー)』‼︎

 

 

 

俺の呼び声に応じるように、満たされぬ胃袋を

抱えた暴食の王が目覚めた。

 

 

それは一瞬。

 

 

何が起きたのか理解出来た者は少ないだろう。

目の前に壁のように迫り来ていた数々の楯鱗が、

綺麗サッパリ消え失せてしまったのだ。

 

 

「す、凄まじい……流石はリムル様── 」

 

 

そう声に出来たのは、ソウエイ一人だった。

 

 

実は、実行した俺も驚いていた。

 

 

遠距離攻撃ならば全部喰ってしまえばなんとかなる、

そう思って飛び出して来たのだ。

 

 

── いえ、嘘です。本当は『大賢者』が最適手段を

進言してくれました。

 

 

俺はそれを信じて、皆を守る為にやって来ただけ。

ソウエイ達三人の前に『影移動』で前に飛び出し、

ギリギリで間に合った。そして、『大賢者』に

言われるまま『暴食者(グラトニー)』を使用したのだ。

 

 

暴食者(グラトニー)』は凄まじく、俺達とカリュブディスを結ぶ

線上の全ての大量にあった鱗を喰い尽くしてしまった

らしい。予想以上に桁外れの能力(スキル)だったようである。

それを見通して進言してくれるとは、まったく流石は

『大賢者』と言えるだろう。

 

 

だが、それは言う必要のない事だ。

 

 

この状況を利用し、俺が格好良くきめる場面として

役立てるのだ。

 

 

「後は俺に任せろ。お前達は下がってゆっくりと

休んでいるといい」

 

 

さも当然だったという風を装い、俺は三名に告げた。

 

 

「し、しかし……。我々はまだお役に── 」

 

 

ソウエイが言いかけるが、俺はそれを制した。

 

 

「見ろ、既に楯鱗の再生が始まっている。あれは

一度だけ大技ではなく、何度でも使える攻撃手段の

一つなんだろう。次にアレを使われてしまった時、

また守ってやれるかどうかわからないしな。それに、

今のカリュブディスの鱗の攻撃を引き出せただけでも

十分だよ。天翔騎士団(ペガサスナイツ)に任せていたら、どれだけ

の被害になったかわからないからな。これは誇って

いいぞ!」

 

 

そう言って説得すると、説得したのか引き下がる

ソウエイ。

 

 

「ご武運を!」

 

 

「お気をつけて、リムル様」

 

 

「我が主よ、我ならば何時でも召喚に応じましょう」

 

 

それぞれの想いを言葉にするなり、皆を連れて

ランガが去って行った。

 

 

さて、と。

 

 

格好をつけてみたが、このデカイのを前にすると

不安になるな。だがまあ、泣き言を言っていても

始まらないし、やるだけやってみますか。

 

 

そして、俺はカリュブディスと対峙したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあしかし、本当に天翔騎士団(ペガサスナイツ)がこちらへと辿り着く

前にカリュブディスの” 暴風の乱鱗雨(テンペストスケイル) ”を見られたのは

幸いだった。

 

 

俺の喰った空間以外の鱗は、全方位へと甚大な被害を

撒き散らしたのだ。もしもあれをまともに受けたの

なら、防御云々以前に挽肉にされて終了だろう。

 

 

俺の部下達には直撃を受けた者はいないようだが、

周囲の森は地形が変わる程の被害を受けている。

本当に出鱈目なパワーを有しているようだ。

 

 

ともかく、俺は自分の仕事を全うするだけである。

 

 

 

まず重要なのは、” 暴風の乱鱗雨(テンペストスケイル) ”が何秒後にまた再び

再使用可能になるのか、だ。

 

 

遠方に援軍である天翔騎士団(ペガサスナイツ)の姿が見える。

 

 

今の大規模攻撃を目撃したようで、進軍は止まった

ようだが……。

 

 

俺がカリュブディスの相手をしている間に、誰かが

事情説明などはしっかりと行なってくれるだろう。

なので、カリュブディスの注意を俺へと向けると

同時に、ヤツの攻撃手段を根こそぎ暴き立てるのだ。

 

 

その後は安全マージンを守りながらチクチクと全員で

攻撃をする。気の遠くなるような作業だが、頑張って

やるしかない。

 

 

こうなると、ロムルスのあの提案とミリムの申し出を

断ったのが悔やまれる。いや、本音では今からでも

代わってもらいたいのだが、せめて少しでも頑張って

みて、それでも駄目なら考えるとしよう。

 

 

そんなこんなで、カリュブディス攻略戦が始まった。

 

 

先ずは先制攻撃として、新技である魔炎弾を複数

打ち込んでみた。

 

 

着弾と同時に、強烈な『黒炎』がカリュブディスの

周囲を焼く。思った通り、これは通用するようだ。

 

 

 

普通に炎を発したら、強力な魔法耐性を持っている

カリュブディスには通用しないだろう。そしてそれは

『黒炎』も同様で、接触する前に魔素(エネルギー)をちらされて

効果を失ってしまう。これを、防ぐには、接触をして

直接攻撃するか、俺が今やったよう何かで防護をして

直接本体にぶつけるかすればいい。

 

 

そう考えて、魔力弾に『黒炎』を包み込んで、そして

撃ち出してみたのだ。結果は成功で、高熱に焼かれて

カリュブディスは苦しんでいるようだ。

 

 

……いや、痛がっている程度、なのかな? 

何しろ大き過ぎて、実際には大したダメージではない

ように見える。だが、そこで諦めるなどはいけない。

大量に撃ち込めば、その内ダメージは蓄積をする

だろう。そう心を奮い立たせて、俺はひたすらに

攻撃を続ける。

 

 

幾つもの攻撃を試し、カリュブディスの反応を窺う。

 

 

どうやらカリュブディスは、『黒炎』や『黒雷』を

苦手とするようだ。炎はダメージ面積を広げるし、

雷は魔力精神経網へ若干影響を与えるようである。

 

 

だが、そうした有益な情報と一緒に、知りたくもない

情報を手に入れてしまった。

 

 

「──なあおい……。コイツ、『超速再生』を持って

いるんじゃないか?」

 

 

思わず口に出た。答える者などいないのに呟く俺。

 

 

 

《解。体組織の修復速度から判断して、個体名:

カリュブディスがエクストラスキル『超速再生』

を所持していると考えて間違いありません》

 

 

あ、返事があった。

 

 

というか、認めたくない事実が判明した瞬間で

あった。

 

 

要するに、楯鱗の再生の速さも、『超速再生』に

よるものだったのだ。

 

 

この鱗の再生が終わり次第、再び” 暴風の乱鱗雨(テンペストスケイル)

が放てるのは間違いない。全方位に拘らなければ、

その部位からの放出はないだろう。

 

 

そうした情報を確認し、『思念伝達』で皆に伝える。

そして、ある程度の情報が揃った所で、天翔騎士団(ペガサスナイツ)

参戦する算段を立てたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから──十時間を超える戦いが継続していた。

 

 

戦いに参加してないミリムは退屈が極まったのか

眠ってしまっていたが、俺達は必死だった。

 

 

カリュブディスの異常な治癒速度を上回るダメージ

を与えないと、全ては振り出しに戻ってしまうのだ。

皆が絶望的な戦いに身を投じ、惜しげもなく回復薬

を飲みまくって戦いを続けていたのである。

 

 

全体で三割削っただろうか?

 

 

飛行出来る者は当然、『影移動』など出来るランガ

やソウエイも、遠距離からの魔法攻撃にベニマルや

トレイニーさん姉妹達、援護に回復や保護といった

後方支援シュナ以下全員が従事している。

 

 

戦場には怪光線と楯鱗が飛び交い、それに応じる魔法

能力(スキル)が入り乱れて、凄まじい惨状となっていた。

 

 

皆が一丸となって頑張った結果が三割。

 

 

安全マージンを取っているから、誰一人として脱落者

はいない。一人いたような気がするが恐らく気のせい

である。だが、これ以上このペースを維持して戦闘を

続けるのは、鍛えている者達にとっても苦難だろう。

 

 

たった一つのミスも許さない。集中力を失ったら、

自分だけでなく攻略そのものが破綻するという状況。

 

 

それは、絶望的なものだった。

 

 

それでも、誰一人諦める人はいない。

 

 

だから俺も、この状況をなんとかしたいと思考を

巡らせていた時──

 

 

 

『グ。グギョ、グガ、が。お、おのれ、ミ──』

 

 

 

ん? 何か聞こえたような……。

 

 

 

『おの……れ、ミ、ミリ……ミリム……ロ、ロム……ロムルスめ‼︎』

 

 

んん? ミリム? ロムルス? ミリムとロムルス

って聞こえたぞ⁉︎

 

 

慌てて『大賢者』に『解析鑑定』を実行させた。

 

 

《解。カリュブディスの憑代となったその素体に、

若干ながら生命反応を確認しました。魔核との同化を

しきれていなかったのか、ダメージを受けた事で歪が

生じたのだと推測されます。それと──》

 

 

詳しい説明を聞く。

 

 

それによると、どうやらカリュブディスは自分が宿る

肉体を作る際、生きていたその魔人を利用した模様。

本来なら自我が消え去り同化するのだが、強烈な怒り

との事だった。

 

 

そしてその矛先はどうやら、俺ではなくミリムと

ロムルスに……。

 

 

ん、待てよ? じゃあ何か? その魔人がミリムと

ロムルスに恨みを持っていたから、俺達の町にへと

真っ直ぐに目指していた、と?

 

 

俺達、関係なかったんじゃん!

 

 

てっきり俺の中にヴェルドラがいるから、何らかの

波動的なものを察知したのかと深読みし過ぎていた

ようだ。

 

 

あれ? ロムルスはともかく、ミリムに任せても、

何も問題ないよね?

 

 

俺はその時、衝撃の事実に気付いたのだった。

 

 

 

とりあえず、ロムルスをカリュブディスがいる荒れた

この場所に呼ぶわけにはいかないので、とりあえず

急いでミリムに『思念伝達』する。

 

 

『なあミリム、どうやらコイツ、お前に用事みたい

なんだけど──』

 

 

『うむ。聞こえていたのだ。そいつはこの前に来た

黒豹牙(コクヒョウガ)”フォビオを素体にしているようだな』

 

 

ああ、この前の。なるほどと、思わず納得する。

 

 

ミリムは遠距離に離れた場所にいるにもかかわらず、

カリュブディスから漏れ出た思念を読み取っていた。

 

 

その上、『竜眼』で見通してその正体まで正確に

把握したようである。

 

 

俺の『大賢者』を上回る『解析鑑定』能力に驚きは

したが、ミリムならば不思議ではない。

 

 

『そうみたいだな。俺への客かと思っていたから

お前に遠慮してもらったんだが──』

 

 

『もしかして、ワタシが相手してもいいのか⁉︎』

 

 

俺の説明を待つまでもなく、ミリムが期待を込めて

俺に聞いてきた。

 

 

俺の意図した通り、ミリムが元気な表情に食いついて

くれてよかった。と言っても、最初からやる気満々

なのはわかっていたんだけど。

 

 

というよりも、良くぞ今まで我慢をしていたものと

言えたのである。

 

 

『ああ、交代しよう。お前のお客様だったのに、

俺達が邪魔してしてたみたいで悪いな』

 

 

 

と、ミリムへの客なのだと強調するのを忘れない。

これで、この果てしなく厄介なカリュブディスを、

ミリムに押し付ける事が出来そうだ。

 

 

あ、そうそう。

 

 

『──あ、それと。フォビオってあの魔人は確か

魔王カリオンの配下なんだろ? 素体部分のみを

残して他を吹き飛ばすなんて事って出来そうか?

出来れば生かして、助けてやりたいんだが──』

 

 

重要な事をミリムに頼む。

 

 

カリュブディスのような化物を相手に、かなりの

無茶を言っている自覚はあるのだが……。それでも、

ミリムならばなんとか出来るような気がした。

 

 

それに、魔王カリオンの配下を始末してしまったら、

新たな問題が発生しそうだし。

 

 

もう一つ目的もあるが、それは高望みし過ぎなので

ついででいいんだけど……。

 

 

ともかく、出来るならばフォビオを助けたいと

思ったのだ。

 

 

『わはははは、任せるのだ! その程度造作もない。

最近ワタシも手加減を覚えたし。丁度良いからここで

学んだ事を見せてやるのだ!』

 

 

ミリムは自慢出来るのが嬉しいのか、快く了承して

くれた。

 

 

しかし、手加減を覚えたって……一体、どの口が

言うんだ?

 

 

そこはかとなく不安になる言葉である。俺はそんな

不安を飲み込みつつも、ミリムに後の事を任せる事

にしたのだった。

 

 

そうと決まれば話は早い。

 

 

「よしみんな、この場から速やかに離れろ!」

 

 

 

「何を仰いますかリムル殿。我らはまだ諦めてなど

おりませんぞ?

 

 

「頼む、言う通りにして欲しい。ここは俺を信じて、

皆はこの場を離れてくれ」

 

 

叫ぶように俺が言うと、天翔騎士団(ペガサスナイツ)を率いる団長

ドルフが、不承不承という様子で皆に撤退指示を

出してくれた。

 

 

どちらにせよ、皆に疲労困憊だったのは事実なのだ。

このままではジリ貧であり、残りの騎士団が来るのを

待つのもひとつの戦術判断したのだろう。

 

 

「殿をお任せします! 御武運を」

 

 

そう言葉を残し、騎士団を率いて撤退する。

 

 

俺の仲間達は問題はない。ある程度のその情報は、

『思念伝達』を通じて皆が把握出来ているからだ。

 

 

そうして、俺を残して皆が離れたのを確認して。

 

 

『よしミリム、こっちの準備は終わったぞ!』

 

 

ミリムに合図を送った。

 

 

「うむ! 任せるのだ」

 

 

俺の合図を待たず、飛び出ていたらしい。

その背の竜翼をはためかせ、嬉しそうに口元に笑み

を浮かべるミリム。いつの間にか、ミリムが俺の隣に

浮いていた。

 

 

『グ。グギョギョーン! ミリ、ミリム──ッ‼︎』

 

 

ミリムに気付いたのか、カリュブディスが巨体を

捻って俺達を正面に睨む。

 

 

 

──しかし、遅い。

 

 

「では、見せてやる! これがワタシが覚えた

手加減というものだ!」

 

 

 

竜星拡散爆(ドラゴ・バスター)‼︎

 

 

 

青白く幻想的な光が拡散しつつ、ミリムの両手の

間から解き放たれる。

 

 

 

《──⁉︎ 解析不能。情報(データ)収集……失敗しました》

 

 

 

俺の中で『大賢者』が驚いているような気がしたが、

多分気のせいだろう。

 

 

ミリムの攻撃の正体を知る事は出来なかったが、

結果は一目瞭然である。俺の目の前には、手加減

という言葉の意味を考え直させられるような光景

が広がっていた。

 

 

青白い光が数条に収束し、カリュブディスの巨体を

貫いていく。その光は侵食を開始し、カリュブディス

に『超速再生』するそんな暇を与えない。そして、

五十メートルもの巨躯をものもせずに、瞬く間に

消し去ってしまった。

 

 

ここが空中で良かったと思う。地上だったならば、

それこそ地形が大きく変動してしまう事態になって

いただろう。それ程までの極大攻撃だったのだ。

 

 

俺達が時間をかけてコツコツと削っても三割しか

ダメージを与えられなかったあのカリュブディスを、

たった一撃で再起不能なまでに破壊し尽くして見せた

のである。

 

 

想像絶する強さとは、まさにミリムの為にある言葉で

あった。

 

 

カリュブディスの巨体が消え去り、小さな欠片が地上

へと落下していく。いや、あれは欠片ではなく憑代に

なっていた魔人──フォビオだ。ミリムはちゃんと

約束を守り、キッチリフォビオンを残したのだ。

手加減というより、最早神業である。

 

 

俺は慌ててフォビオへ向かって飛翔し、地上に激突を

する前に回収した。

 

 

フォビオは生きていた。

 

 

辛うじてではあるが、これならば俺の狙いも成功

しそうだ。

 

 

この作業は出来れば皆には見られたくないので、

早速だが処置を始める事にした。

 

 

フォビオの状態を『解析鑑定』すると、九割方融合

が完了してしまっている。このままだと、また再び

カリュブディスが復活してしまうだろう。

 

 

それを阻止する為にも、この作業は必須なのだ。

 

 

「何をするつもりなのだ?」

 

 

「まあ見てろって。このままだとフォビオを解放

出来ないだろ? だから、完全に処置をしようと

思ってな」

 

 

ミリムを軽くいなし、俺は作業を開始した。

 

 

その作業とは、フォビオとカリュブディスの完全分離

である。

 

 

俺のユニークスキルの『変質者』と『別離』だ。

今回はその『別離』を活用する。まずはフォビオから

カリュブディスを『別離』するのだが、そのまま行う

と精神生命体であるカリュブディスには逃げられて

しまう。

 

 

そこで、ユニークスキル『暴食者(グラトニー)』の出番だ。

 

 

幾ら『大賢者』と言えども、ユニークスキル同士の

統合は出来ないようである。だが、『大賢者』の

統制下において、並列起動させる事は可能なのだ。

 

 

それこそ手術のように精密な作業となるが、やって

やれない事はない。失敗するとフォビオごと始末を

しなければいけないので、魔王カリオンとの関係にも

問題が生じる恐れがあった。なので、俺が今している

この作業はなんとしても成功させる必要があったので

ある。

 

 

俺が集中しつつ、全力を傾けて作業を行う。

 

 

少しずつ『分離』し、剥がれた部分から『捕食』して

いくのだ。『大賢者』は能力の制御の方に回っている

ので、この作業は俺自身で行う必要である。

 

 

カリュブディスとの戦いは、どこか他人のような

気がしていた。理由に心当たりがある。ミリムが

いたからだ。

 

 

俺の十倍以上の魔素量を有し、強大な力持つ魔王。

そんなミリムがいたお陰で、カリュブディスを前に

しても緊張しなかった。

 

 

危機だと頭では思っても、ロムルスの言う通りに

ミリムに助けを求めればなんとかしてくれるのでは

というそんな甘えが、保険として頭の中の何処かに

あったのだ。その結果、俺に危機感がなかった

のだろう。

 

 

だが、今は違う。

 

 

この作業は人任せには出来ない。俺が失敗したら、

その結果新たな火種の元になるかも知れないのだ。

なので、全ての責任俺が背負う為にも、他の誰にも

見られる訳にはいかないのである。

 

 

と言っても、横でミリムが興味深そうに凝視して

いるんだけどね……。

 

 

 

そして──

 

 

 

《告。個体名:フォビオから個体名:カリュブディス

の真核を『分離』……成功しました。それに続けて、

小さなや個体名:カリュブディスの真核を『捕食』

……成功しました。真核の『解析鑑定』………

一部失敗……『隔離』して『解析鑑定』を続行

します。獲得能力(スキル)は以下の通り──》

 

 

成功した。

 

 

果てしなく長く感じたが、ミリムの攻撃から撤退を

していた者達が、今は皆やって来たので後回しにする

事にした。多分だが、『隔離』したようだし危険ない

だろうから。

 

 

後は忘れる前に、衰弱しているフォビオに回復薬を

飲ませるだけである。

 

 

俺が作製した特製の完全回復薬(フルポーション)を飲ませると、

フォビオの容体が安定した。

 

 

後は目が覚めるのを待つだけだ。

 

 

こうして、俺達に迫った脅威──カリュブディスは、

完全な形に討伐されたのであった。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます‼︎


これからも皆さんが『応援』をしていただければ
『更新』の頻度が更に上がるそんな可能性がある
かもしれません‼︎


『他の投稿作品』もあるので是非ともそちらも
楽しんで見ていただければ、ありがたいです‼︎



【報告】

今回は『デート・ア・ライブ ■■■の精霊』
『百戦錬磨のウマ娘』、そして『新しい作品』
などを近いうちに『投稿』と『更新』する予定
なので是非とも楽しみにしてもらえたら本当に
ありがたいです‼︎


『東方墨染ノ残花』も『書き直し(修正)』をしましたので
是非とも見ていただければ本当にありがたいです‼︎
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