転生したらスライムだった件 ■■の魔王   作:灰ノ愚者

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今回は十一月終盤なのでなんとかすぐに『最新話』を
無事に更新をすることができました‼︎




今回は『9783文字』まで頑張って書きましたが
豆腐のようなクソナメクジメンタルの自分はきちんと
面白く書けているのかとても心配になります……(汗)
少なくて本当にすみません……(笑)


小説『転生したらスライムだった件23巻』が無事に
書籍販売されました。担当作者である【伏瀬先生】と
【みっつばー先生】。お二人とも今まで長い長期間の
連載、本当にお疲れ様でした‼︎ 最高の作品でした‼︎


これからも転スラ『アニメ四期』『映画』などを
楽しみたいと思っています‼︎


【お気に入り】や【しおり】、【投票】、【感想】
などいただければ、豆腐のような脆いメンタルで
自分も更に『創作意欲』が増していきます。


面白く出来ているかどうか心配でいっぱいですが
一生懸命にたくさん書きました。


最後まで読んでいただければありがたいです‼︎



新たなる策謀

 

暴風大妖渦(カリュブディス)とロムルスの騒動が片付いてから数日後。

 

 

魔国連邦(テンペスト)は、ようやく落ち着きを取り戻した。

 

 

 

その後、ソウエイ達”隠密”にロムルス達に更なる

増員を増やして監視をするように命令した。

 

 

 

「頼むぞ、ソウエイ」

 

 

「承知しました。ですが、そうなると”隠密”がやって

いる別の任務などが中断してしまうのですがよろしい

のでしょうか?」

 

 

「今やっている任務などは後回しにしても構わない。

もしも些細な事でもいいから分かった事があったら、

すぐに俺に報告してくれ。もしかしたらだが、奴らは

フォビオを唆した”中庸道化連”の一味の可能性がある

かもしれないからな」

 

 

「リムル様の御心のままに」

 

 

 

ソウエイにそう指示を出すとソウエイは一瞬にして

俺の前から消えた。

 

 

そして今回の問題の発端となった問題児であるミリム

ともしっかりと話しておかなきゃいけないので本当に

大変である。

 

 

そんなやり取りがあったが、俺達の国が他の国に

認められそうで嬉しい限りである。

 

 

武装国家ドワルゴンに、ブルムンド王国。

 

 

この二国とは、友好関係を結べそうである。

 

 

武装国家ドワルゴンとは間もなく街道も通じるし、

正式な招待状も届いている。今回の事件とロムルス達

の報告を兼ねているのだが、俺としては今の状態で国

を空けるのは不安であり心配なところである。

 

 

ブルムンド王国ではフューズが頑張ってくれている。

今回の騒動の顛末を見届けた上で、

 

 

俺達とは敵対するよりも友誼を結ぶ方が得であると、

国王を始めとした各貴族を説得に回ってくれていた。

 

 

ブルムンド王国は大国ではないので、貴族達の数は

少ないらしい。なので、ややこしい人間もそんなに

いないらしいので、こちらも心配の必要はなさそう

である。

 

 

「なーに。貴族共に関しては弱みを握っているので、

飴と鞭でどうとでもしてみせますよ」

 

 

と、去り際のフューズの台詞だった。

 

 

悪い顔をしていたので、彼に全て任せておけば大丈夫

だと思った。

 

 

 

カバル達三人はここに残りたそうにしていた。

しかし、フューズを送り届けるという仕事がある。

 

 

 

「また来てもいいですか?」

 

 

「私もぉ、シュナさんの料理とロムルスさんの

エンデ産の菓子なしでは生きていられそうもない

んですけどぉ……」

 

 

「断られたって、また来るんでやんすがね!」

 

 

とかなんとか言いながら、名残惜しそうにフューズ

について行ったのだった。

 

 

ロムルスに餌付けされてるよ、と心の中でそう思い

ながらも俺としては別に断るつもりなどないので、

また来てくれるなら歓迎しようと思う。そんな訳で、

彼等がまた来てもいいように、彼等の寝床となる宿

なんかも用意する事になったのだ。

 

 

忘れてはならない国がもう一国ある。

 

 

 

獣王国ユーラザニアだ。

 

 

 

上手く話が纏まれば、彼の国とも国交を結ぶことが

出来るだろう。大変な目にも遭ったが、得た利益は

大きかった。

 

 

今後の話し合い次第ではあるが、魔王の一角と誼を

結ぶ意味は大きい。なんとしても、この交渉は成功

させたものである。

 

 

得た利益と言えば、俺個人としても……。

 

 

カリュブディスからは、固有能力『魔力妨害』と

『重力飛行』を得ていた。他にも、魔法に対する

切り札とも言える。『魔法耐性』と獲得している。

これらは『大賢者』が総力を挙げて『解析鑑定』

しているので、近い内に他の能力(スキル)との統合などが

出来そうであった。

 

 

ミリムにフォビオを残すよりにそう頼んだのは、

実はこれも狙いの一つだったのだ。いや、本当は

カリュブディスの隔離が狙いだったのだが、副次的

能力(スキル)を獲得出来るといいなとそう思っていたのは

事実である。

 

 

あれだけ苦労したのだから、この程度は自分への

ご褒美なのだ。

 

 

そして今、俺達が何をしているかというと……。

 

 

 

ドス、ズシャ、バコ、バコン!

 

 

 

そんな音とともに、ボコボコにされていた。

 

 

俺、ベニマル、ソウエイ、シオンの四名である。

 

 

「わはははは! 無駄なのだ‼︎」

 

 

高笑いを浮かべている相手は、言うまでもなく

魔王ミリムだ。

 

 

ロムルスやウツロさんもいるのだが、せっかく理不尽

な程に強い魔王の一角たるミリムがいるのだからと、

修行をつけてもらったのだが……。

 

 

四人掛かりで相手になってもらったが、まったく話に

ならなかった。ミリムの『竜眼』の前には、小細工を

含めた全ての攻撃が完全に看破されてしまうのだ。

 

 

流石はミリムだと、心の底から痛感させらてしまう

のだった。

 

 

ミリムは拳にドラゴンナックルをはめている。

 

 

ミリムとの約束を守り、俺が作ってプレゼントした

武器である。

 

 

素手で殴って怪我しないようにというのが本来の役割

であり、威力増大を目的としたそんな武器なのだが、

これは違う。

 

 

正に正反対の目的である。これを装備をすると、

殴る威力十分の一くらいに抑制するのだ。

 

 

中心部”魔鋼”に、”減速”と”脱力”効果を〈刻印魔法〉

で付与した一品だった。

 

 

俺がドラゴンナックルを渡すと、興味津々にそれを

眺めていたミリムが嬉しそうに受け取ってくれた。

 

 

それ以来、片時も離さずに着用しているのだ。

 

 

飯時にも着けたままだったので、流石に注意をして

外させた。そしたら拗ねてしまった程などである。

気に入ってくれたのは何よりだが、時と場合は考えて

欲しいものだ。

 

 

だがまあ、そのドラゴンナックルのお陰で俺達は

大いに救われた。

 

 

その日から毎日、午前中にミリムと模擬戦するのが、

俺達の日課となったのだ。

 

 

出鱈目なパワー。インチキのような身ごなし。

底なしのスタミナ。

 

 

敵じゃなくて良かった。

 

 

まともに試合になるのは、ハクロウとロムルスだけ

である。

 

 

単純な力や能力(スキル)に頼るのではなく、技量がとても

重要なのだと再確認した。もっとも、ミリムが本気を

出せば、ハクロウの技量を持っていたとしても相手に

なりそうもないのだろうけど、ロムルスが相手ならば

ミリム相手でも戦えるだろう。

 

 

技量は重要だが、それだけでも駄目なのだ。

 

 

だが、俺に足りないのは何より戦闘経験だった。

 

 

こうして毎日ミリムに相手して事で、その不足分を

補うつもりなのである。

 

 

何故こんな事をしているかというと、その理由は

簡単だ。

 

 

生前というか元の世界に比べると、こっちの世界では

戦いで物事が決まる要素は多すぎる。

 

 

豚頭帝(オークロード)しかり。

 

 

カリュブディスしかり。

 

 

魔王カリオンとは幸いにも友好関係を結べそうだが、

他の魔王はその限りではない。

 

 

それに何よりも、俺は最強の一角の一人である魔王

レオンとの因縁があるのだ。

 

 

実際にミリムやカリオンという本物の魔王を目にした

結果、今のままの俺では魔王を相手に出来そうもない

と悟ったのだ。

 

 

そんな訳で、こうして地道に努力を重ねているのだ。

 

 

ミリムと特訓した数週間の間にも──

 

 

午前中は特訓。

 

 

午後からは各部門の見回り。

 

 

規則正しい生活が続いていた。

 

 

適度の運動の後は、栄養豊富な美味しい食事。

 

 

 

カラアゲ、ハンバーグ、ステーキにコロッケ。

そして、エビフライ。

 

 

エビに似た生物なのだが、名前もたまたまエビーラ

だった。面白い偶然である。

 

 

調理の、微生物その他の心配はない。なぜならシュナ

の殺菌処理は完璧だし、『解析鑑定』があるので食の

安全はしっかり守られているのだ。

 

 

そもそもの話、魔物に食中毒の心配があるのかどうか

などは不明だけどね……。

 

 

「わはははは! なんで同じように肉を焼いただけ

なのに、こんなに美味さが違うのだ⁉︎」

 

 

というのがステーキを食べた感想だ。

 

 

毎回毎回、ご満悦である。

 

 

エビフライの時など、一言も発さずに一心不乱に

食べていた。子供が好きそうな料理から再現している

からな。ロムルスから沢山の砂糖や胡椒などの高価な

香辛料を手に入れたおかげであるのかシュナの料理の

レパートリーの抜かりなさにも更に磨きがかかって

いるようだ。

 

 

お気に召したようで良かった。

 

 

修行をつけてもらっているお礼も兼ねているので、

ミリムが喜んでくれたなら幸いだ。

 

 

 

 

そんな感じで毎日を過ごし、皆も格段に強くなった。

 

 

ハクロウは技術的には完成していたので伸びしろは

少ないが、他の者は昔とは見違えるようにかなり強く

なっている。今のベニマルやソウエイの二人ならば、

フラリと現れるトレイニーさんとも良い勝負が出来る

までになっていた。

 

 

そして俺も。

 

 

「なかなか良くなって来たぞ! 今ならリムルが魔王

になると言い出しても、ワタシは反対しないのだ!」

 

 

ミリムがご機嫌でそんな事を言ってくれる程に

成長した。

 

 

魔王になる気なんてないと、ミリムには毎回毎回

言っているんだが……。

 

 

そもそも、今日も四人掛かりで惨敗しているのだ。

こんな状態で魔王を名乗ったって、碌な事なりは

ならないだろう。

 

 

「ところでさ、ミリムって何で魔王になったの?」

 

 

話題を逸らす為に、そう質問した。

 

 

「うーーーん、そうだな……何でだろ? 何か嫌な事

があって、ムシャクシャしてなった?」

 

 

「いや、俺に聞かれても……」

 

 

「そうだな、良く思い出せん。随分と大昔の事だし、

忘れたのだ!」

 

 

ミリムは明るくそう言ったが、何か嫌な事があったの

かも知れない。これ以上の質問は野暮というものだ。

 

 

「そっか。まあ忘れたなら、わざわざ無理をして

思い出さなくてもいいよ」

 

 

その話題はそれで終了した。

 

 

ミリムは子供のような外見をしてるが、しかし中身は

れっきとした魔王なのだ。

 

 

 

それも、最古参の一柱(ひとり)だと言う。

 

 

 

という事は、俺の想像も及ばぬ程の長い年月を

生きてきたのだろう。

 

 

もしかしたら、友達もいなかったのかも知れない。

長すぎる寿命は、仲の良い者をも奪っていったの

だろうから……。

 

 

「お前ってさ、家族というか心配をしてる人とかは

いないのか? ずっとここにいるけど、誰かに連絡

しなくて大丈夫か?」

 

 

ずっと気になっていた事を聞いてみた。

 

 

「うむ。ワタシの世話をする者達はいるが、しかし

あの者共は心配などしておらぬのだ。それにワタシ

はサイキョーなので、心配をする事すら畏れ多いと

思われているのだぞ。だからワタシの友は、お前

一人なのだ」

 

 

突然そう言われて、俺も言葉に詰まる。

 

 

ミリムの言う親友(マブダチ)には、俺が思っていた以上の想いが

込められていたのかも知れない。そうだとすれば、

俺も誠実に応えねばならないだろう。

 

 

「そうだな。これからも宜しくな、ミリム」

 

 

俺はそう言って、ミリムの頭を優しく撫でてやる。

子供っぽい外見過ぎて、ついつい親戚の子供を相手に

している感じになってしまうのだ。

 

 

それでもミリムは嬉しそうに笑い、「勿論なのだ!」

と言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

それから数日後。

 

 

「ワタシは今から仕事に行ってくる!」

 

 

と、ミリムが言い出した。

 

 

「なんだと? 突然だなおい。今すぐか?」

 

 

「む? そうだな……。まあこれで会えなくなる訳

でもないのだし、このまま行くのだ!」

 

 

そう言って、一瞬で最初に出会った衣装にへと

着替える。

 

 

魔法換装(ドレスチェンジ)という便利魔法だ。俺も教えてもらったので

使用可能である。

 

 

装備が沢山ある人にオススメな魔法らしいのだが、

代えの装備を収納しておく〈空間魔法〉などを先に

覚える必要があり、難易度は案外高いんだ。

 

 

着替えが終わると、ミリムはこちらを向き微笑む。

 

 

「他の魔王達にも、この地に手出しをせぬように

キチンと言い聞かせておくから、リムルも安心を

するのだ!」

 

 

「お、おう。という事は、他の魔王に会いに

行くのか?」

 

 

「うむ。仕事だからな!」

 

 

そう言って、自慢気に胸を張るミリム。

 

 

なんでも、この前来たカリオンや他の魔王達との会談

があるのだとか。

 

 

魔王らしく、悪巧みするのが仕事と思っていそうで

本当に怖い。オークロードの一件も、元を辿れば

ミリム達の密談から始まっているので、俺としても

他人事ではないのだ。

 

 

まあ、他の魔王から手出しして来ないのなら、

俺としては大歓迎なんだけど。

 

 

ちなみに、ミリムが所属しているグループにレオンは

加わってないようだ。レオンは新参者の魔王なので、

ミリムもレオンについての事は詳しくは知らなかった

ようだったけど。

 

 

カリオンはそんなに悪い人物ではなさそうだったが、

他の魔王はどうなのだろうか? 少し心配なのだが、

ミリムなら大丈夫か。

 

 

これでも老獪な所もあるし、魔王の中でも別格の強さ

らしいしな。

 

 

「騙されないように注意しろよ」

 

 

でも、やっぱり心配だからミリムに忠告をしておく。

 

 

「心配性だな、リムルは。ワタシは賢いから、

騙されたりなんてしないのだ!」

 

 

笑顔でそう言い切るミリム。俺としてはその自信が

心配なんだが、ね。

 

 

「じゃあ、行ってくる!」

 

 

と、一言告げるなり飛び立った。

 

 

来た時同様、唐突に。

 

 

そのまま、音も衝撃も残さずに音速を超える速度で

去って行く。

 

 

結構場所が遠いらしいが、超高速飛行で行くミリム

からすれば屁でもないのだろう。

 

 

「あれ? ミリム様は、どこかへ行かれてしまった

のですか?」

 

 

シオンが聞いてきた。

 

 

なんだかんだで仲良くなっていたからな。

 

 

「うむ。仕事だってさ」

 

 

「仕事、ですか」

 

 

「他の魔王と会う約束があったらしい」

 

 

「他の魔王……騙されないといいのですけど……」

 

 

だよね、そう思うよね。

 

 

シオンも俺と同じ心配を抱いたようだ。

 

 

「まあ、仕事が終わったら帰ってくるって言って

いたし、心配しても仕方ないさ」

 

 

「俺達より遥かに強いあの方の心配をするなど、

不敬そのものですし」

 

 

「確かに……」

 

 

「もっと強くなって、ミリム様が帰って来た時に

驚かせて見せるのです!」

 

 

「それならば、もっと修行せねばなりますまい」

 

 

ミリム相手にしんみりとした感情は似合わないが、

いなくなると途端に寂しくなるものだ。

 

 

考えてみれば、随分とえらく馴染んだものだ。

本当に、他人を惹きつける不思議な魔王(ヤツ)である。

 

 

だが今は、ベニマル達の言う通り強くなる事を

考えよう。そして、帰って来たミリムを驚かせて

やるのだ。

 

 

俺達は気持ちを切り替えて、鬼のハクロウ指導の下、

修行を再開したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広く豪華な部屋。

 

 

 

優雅に寛ぎワインを飲むのは、魔王クレイマン

である。

 

 

その向かいに座り、憂鬱そうな眼差しで窓の外を

眺めやるのは、”天空女王(スカイクイーン)”と称されている魔王、

フレイだった。

 

 

「それで、首尾はどうだったのかしら?」

 

 

「上手く行ったようですよ、フレイ。カリオンの部下

のミリムへの怒りを餌に、カリュディスを嗾ける事に

成功しました。監視させてた者からの報告によると、

カリュブディスはミリムにより倒されたようですね。

これで、貴女の心配事は消えたでしょう?」

 

 

クレイマンは愉快そうに笑い声を上げ、フレイに

告げる。

 

 

そう、全てはクレイマンの計画通りだった。

 

 

戦いの結果も予想通り。

 

 

ミリムが勝つのは当然だと、二人の魔王は疑っても

いなかった。

 

 

「でも、カリオンの怒りを買ったのではなくて?」

 

 

「そもそも、私が関与してる証拠などありませんよ。

なのでカリオンの怒りは、ミリムか謎の魔物達へと

向かうでしょうね。あるいは、そのフォビオとやらを

誑かした”なんでも屋”にその怒りの矛先が向かうかも

知れませんが、私が依頼したした事さえ洩れなければ

問題はありません」

 

 

そう言って、これクレイマンは薄く嗤う。彼の本当の

仲間であるなんでも屋───中庸道化連は、その存在

そのものが謎の集団なのだ。クレイマンの関係などが

洩れるはずなく、彼等の所在地を探るのは、連絡手段

を持たないカリオンには不可能だろうから。

 

 

(しかし、それにしても───)

 

 

クレイマンはふと、ミュウランがよこした最後の映像

を思い浮かべる。

 

 

巨大なカリュブディスを、一撃の下に軽々と粉砕した

魔王ミリム。

 

 

その力は絶大過ぎて、クレイマンをもってしても、

まるで底に見えないものだった。

 

 

 

更にもう一人。

 

 

「それにしてもゲルミュッドを倒した魔人、単体で

カリュブディスを相手どっていましたよ。ミリムが

執着するのも頷ける程に、とても強力な魔人ですね。

下手をすれば、我々”魔王”に並ぶ存在にまで成長を

するかもしれません」

 

 

「フフフ、案外面白い事を言うのねクレイマン」

 

 

興味なさ気に相槌を打つフレイ。そのまま話題を

変えるように、本題に切り込む。

 

 

「それで、今回の件の報酬として、私は貴方に何を

支払えばいいのかしら?」

 

 

そう言って、フレイはクレイマンに視線を向けた。

 

 

その話題こそが、今日二人が会っている目的なのだ。

 

 

「そんなに警戒しないで欲しいものです。今度、何か

一つだけお願いを聞いてくれればそれで構いません。

私も貴女のお役に立ったのだから、等価交換ですよ」

 

 

「そうね……私に出来る範囲ならば、貴方の頼みを

引き受けるわ」

 

 

「有難う御座います。貴女ならば、そう言って

くださると思っていましたよ」

 

 

その約束を取り交わし、クレイマンは満足気に笑う。

 

 

その約束取り付ける事こそが、クレイマンの狙い

だったのだ。

 

 

(フフフフフ。これで、次の魔王会談では、私の有利に

話を持って行けそうです。そう、()()()より賜った

あの宝具を用いれば──)

 

 

クレイマンはその考えに思い至り戦慄にも似た感情に

包まれて身震いする。

 

 

フレイという手駒を得た今ならば、あるは不可能では

ないと思える策が閃いてしまったのだ。

 

 

用は済んだと帰ろうとするフレイに、クレイマンは

言葉をかけた。

 

 

「しかし、これで貴女にとって目の上のたんこぶは、

ミリム一人。大空での絶対優位、そんものは彼女の前

には意味を為さない。ねえ、フレイ。相談には必ず

乗りますので、私に協力出来る事ならば何でも相談を

して下さい。いつでも声をかけて下さっても結構

ですから」

 

 

親切そうな表情の裏には、張り巡らせた策謀がある。

 

 

フレイはそれに気付く事なく、気付いたとしても

気付かない振りをして「ええ、その時はまたお願い

するかもね。では、サヨウナラ」と別れを告げて、

クレイマンの居城を後にしたのだった。

 

 

 

 

一人で部屋に残り、クレイマンは思う。

 

 

(もしもミリムの力を手に入れられたなら、魔王達を

扇動する必要すらなくなる、と。これは慎重に検討を

してみる必要があります。ふふっ、楽しみに待って

いて下さいね、ミリム──)

 

 

懐から仮面を取り出し顔に当てた。

 

 

心が落ち着くのを感じる。

 

 

クレイマンにとっては、仮面を被った時こそが

本来の姿なのである。

 

 

(──しかし、それにしても……謎の魔人に

謎の商人達、無視は出来ません。監視に出した部下

とも連絡が一向に取れない辺り、ラプラスやティア

が言う通り、少しは警戒をした方が良さそうです。

名誉挽回の機会与えねばなりませんし、ここは

ミュウランにでも潜入してもらうとしますか──)

 

 

ミュウランと監視に出していた部下の魔人からの

情報は、思っていたよりも役に立った。一つ人形、

道具が消えてしまった。ならばこそクレイマンは、

ミュウランを利用して使い潰すつもりなのだ。

 

 

そしてこの潜入調査は、ミュウランにうってつけの

任務だった。

 

 

上手く取り入れる事が出来れば良し。仮に失敗をして

ミュウランが消されてしまったとしても、それを口実

としてクレイマンが介入する理由となる。

 

 

それこそ、ミュウランに代わる新たな手駒となって

くれるだろう。

 

 

謎の魔人と謎の商人達。彼等は警戒すべきなのだが、

それはあくまでも大事の前の小事としてであった。

 

 

万が一にも今から計画する策謀の障害など決して

ならぬように、情報を集めつつ利用出来る場面が

来るのを待つだけだ。

 

 

その程度の認識などではあったが、その時に魔王

クレイマンの興味がリムル達やロムルス(グレイ)とシズに

向いたのである。

 

 

仄暗い愉悦を胸に秘め、クレイマンは冷たい笑み

を浮かべながら策謀に興じていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず、暇だな……」

 

 

とある支配領域に出現していた地獄門から一人の女性

が顕現していた。彼女の表情はとても退屈そうな表情

をしていて近くにあった座るには丁度いい真っ平らな

高い岩の柱の上に座り込んで目の前にある大きくて

『黄金の建造物』に向けて、まるで暇つぶしするかの

様に軽いノリで毎回の日課である核撃魔法を息をする

かの様にぶっ放していた。

 

 

「君は相変わらず、派手な事ばかりをしているね」

 

 

「君か……何をしに来たのさ、グレイ」

 

 

そんな彼女の日課の核撃魔法を放っている最中に背後

から声がしたのでそう言いながら、すぐ立ち上がって

振り返るとグレイが立っていた。

 

 

「久しぶりに君の顔が見たくなった。それじゃあ、

ダメかな?」

 

 

「あはははは! そんな理由で私の日課である趣味の

邪魔をしたのかい? 随分と良い度胸じゃないか」

 

 

女性は大笑いをしながら、背後に大量の魔法陣を出現

させてグレイに向けていた。

 

 

「やれやれ、結局こうなるのか……君の日課の趣味の

邪魔をしてしまった事は謝罪するよ。だから、少しは

僕の話を聞いてはくれないかい?」

 

 

グレイは無駄だと分かってはいるのだが、とにかく

彼女に交渉を持ちかけ争う意志がない事を伝える。

 

 

だが、

 

 

 

「その随分と上から目線の言葉が気に入らないな。

お願い事をする側ならもっと下手に出るものだろ?

それに、君は私の日課の趣味の邪魔をしたんだ。

覚悟は出来ているはずだろう?」

 

 

だが、彼女は好戦的な表情でグレイを挑発する様に

そう言って大量の核撃魔法を放とうとしている。

 

 

「大量の核撃魔法を食らうのは勘弁願いたいね……」

 

 

グレイは苦笑いしながら右手を目の前に出して指を

パチン、と軽く鳴らす。

 

 

すると、彼女の背後にあった大量の魔法陣が粒子の

ようにゆっくりと消えていった。

 

 

「なに……⁉︎ 私の魔法が……ッ⁉︎」

 

 

そんな今起こっているそんな光景に彼女は驚きを

隠せずに視線を背後の魔法陣に向ける。

 

 

「出来れば、素直に話をこっちの聞いてくれたら、

助かるのだけど」

 

 

「なるほどね、魔法では君には敵わないらしい。

だったら……」

 

 

彼女はそう言ってもの凄い速さでグレイの近くまで

距離を詰めて接近してきた。

 

 

「へえ、魔法至上主義の君達、悪魔族(デーモン)が近接戦闘を

仕掛けて来るなんて驚いたよ。でも……」

 

 

グレイは関心するようにそう言いながらも、彼女の

右手首をしっかりと掴み力を込めて容赦なく軽々と

ぶん投げる。

 

 

「それでも僕には勝てないよ」

 

 

「ぐっ‼︎」

 

 

彼女の投げられた先には数本の石の柱が立っていて

彼女はその数本の石の柱にぶつかって、そして最後

には巨大な岩に強く叩き付けられてしまう。

 

 

「がはッ」

 

 

「手加減はしたつもりだけど、大丈夫かな?」

 

 

グレイは彼女の元に近付いてそう問いかけるのだが、

かなりのダメージだったのかすぐに立ち上がれそう

にはなかった。

 

 

「これで満足してくれたかな? じゃあ──」

 

 

グレイはそう言って彼女に近づこうと思った瞬間、

 

 

「我が主にこの様な事した貴様をこのワシが許すと

思っておるのか?」

 

 

「へえ……魔法じゃなくて剣を使う悪魔族(デーモン)か……

全くもって興味深いね」

 

 

グレイの背後から冷たい声が聞こえて振り返ると袴を

着て腰には刀が差している侍のような姿をしたそんな

男性の悪魔族(デーモン)が殺気を放ちながら刀をすぐ様に鞘から

抜いてグレイの首を切り飛ばそうとその鋭き最速の刃

をグレイの首筋に目掛けて振り翳していた。

 

 

 

「止めろ、剣魔(けんま)

 

 

 

しかし、主たる彼女の言葉で”剣魔”と呼ばれた悪魔族(デーモン)

の刀はギリギリの寸手で刃を止める。

 

 

「し、しかし、この者にそれ相応の報いを……」

 

 

 

「私の言う事が聞けないのかな?」

 

 

 

逆らったら殺すと言わんばかりの鬼気迫るそんな

問いかけだった。

 

 

「出過ぎた事をしました。お許し下され……」

 

 

 

”剣魔”は刀を鞘に収め、彼女に膝を地面に突いて

傅きながら謝罪の言葉を口した。

 

 

 

「わかってくれて嬉しいよ。まあ、いくら”剣魔”と

そう呼ばれている君でもそいつを殺す事は出来ない。

むしろ、私が止めていなければ君のその剣は確実に

叩き折られて魂もこの場で消滅させられてしまって

いただろうね」

 

 

「な……ッ⁉︎」

 

 

「イヤだなぁ、僕はそんな見境なしに壊したり

殺したりだなんてしないよ」

 

 

”剣魔”は彼女その言葉に驚いた表情を浮かべながら

視線をグレイに向けるがグレイは軽いノリの声で

彼女と”剣魔”に言うが、目は笑っていないそんな

グレイに”剣魔”は恐怖を覚えた。

 

 

「それで、私に話があるからここまで来たんだろう?

話を聞こうじゃないか」

 

 

「ふふっ、流石だね。君のそういう明朗快活なところ

僕は好きだよ」

 

 

グレイは彼女にそう言うと「さてと」と言って、

 

 

 

「提案なんだけど、原初の黄(ジョーヌ)受肉してみない?」

 

 

 

グレイは明朗快活で傲岸不遜なそんな七柱の一柱(ひとり)

眩しい金髪の彼女である『原初の悪魔』。”原初の黄(ジョーヌ)

に受肉という悪魔族(デーモン)にとって、とても魅力的なそんな

提案の言葉を口にした。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます‼︎


これからも皆さんが『応援』をしていただければ
『更新』の頻度が更に上がるそんな可能性がある
かもしれません‼︎


『他の投稿作品』もあるので、是非ともそちらも
楽しんで見ていただければありがたいです‼︎




【報告】

『東方墨染残花』をルビなどの編集と修正しました。
『デート・ア・ライブ ■■■の精霊』を近いうちに
『更新』する予定なので是非とも楽しみにもらえた
ならありがたいです‼︎
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