転生したらスライムだった件 ■■の魔王   作:灰ノ愚者

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今回は十二月の遅いですがクリスマスの記念として
なんとかすぐに『最新話』を無事に更新をすることが
できました‼︎


転生したらスライムだった件アニメ『第四期』が4月
に映画『蒼海の涙』はニ月に上映をすることが見事に
決定しました‼︎ 本当におめでとうございます‼︎


今回は『10831文字』まで頑張って書きましたが、
豆腐のようなクソナメクジメンタルの自分はきちんと
面白く書けているのか、心配になります……(汗)
少なくて本当にすみません……(笑)


【お気に入り】や【しおり】、【投票】そして
【感想】などいただければ豆腐のようなメンタルで
脆い自分も更に『創作意欲』が増していきます。


面白く出来ているかどうか心配でいっぱいですが
一生懸命にたくさん書きました。


新しく更新してる作品は『落第騎士と幻影の騎士』
『デート・ア・ライブ ■■■の精霊』さらには最近
投稿した『五等分の花嫁 繋がり合う絆』そして、
『殺戮者が斬る!』をしていますので、そちらの方も
良ければお願いします‼︎


最後まで読んでいただければありがたいです‼︎


次回の更新は『新年度』の予定となりますので
よろしくお願いします‼︎


イングラシア王国編
動き出す麗人


 

「受肉だって……?」

 

 

「そうだよ。君に受肉をするチャンスあげようって

言っているんだよ」

 

 

原初の黄(ジョーヌ)”が怪訝そうな表情でそう言うとグレイは

原初の黄(ジョーヌ)”にそう言う。

 

 

「確かに、君なら原初の一柱(ひとり)である私の肉体を簡単に

用意出来てしまうだろうね。けどね、私はもう飽きて

しまったんだよ。そんな事で成功をしても、面白味に

欠けるじゃないか」

 

 

「だろうね。魔導王朝サリオンに侵入して、人造人間(ホムンクルス)

の研究とその素材として混沌竜(カオスドラゴン)の遺骨に含まれている

”竜の因子”を人造人間(ホムンクルス)に適合させて受肉をする一歩、

ってところで魔王レオンの介入されてさらには天帝に

バレちゃって研究データすらも破壊されちゃたみたい

らしいね」

 

 

そう。”原初の黄(ジョーヌ)”は”魂”のない虚な器であるならば、

すぐに受肉をする事が出来るのではないかと考えた。

 

 

すると、彼女の配下達はとにかく手柄を上げようと

魔導王朝サリオンで人造人間(ホムンクルス)の研究に命を懸けている

そんな研究者を利用したのだが、しかし、”魂”のない

器の 人造人間(ホムンクルス)は人間と同程度にしか有していなかった

ので彼女どころか、指揮をしていた最側近のその力に

さえも耐えられそうにない代物だったのだ。

 

 

だから、魔素と相性がよくて、人造人間(ホムンクルス)などに馴染む

そんな良い素材はないかと素材探しを始めたらしく、

最初に目をつけたのが、イングラシア王国で秘密裏に

研究をされていた合成獣(キメラ)だったらしいが、その姿は

もう最悪で、醜態極まりない化け物がその場にて誕生

してしまった。

 

 

その試作素体(サンプル)を手下が持ち帰って指揮をしてた最側近

に報告をするとその試作素体(サンプル)を見た瞬間、その最側近

はブチ切れてしまって、持ち帰ったそのバカな手下達

全員を容赦なく半殺しにしたらしい。

 

 

その後、試行錯誤をした末にたどり着いて探し当てた

その素材が、混沌竜(カオスドラゴン)の遺骨だったのだ。

 

 

 

確かにミリムの魔素汚染で、これ以上ないほどの

魔素耐性などがあるだろうと思うし、良い着眼点

だと僕もそう思った。

 

 

その後の彼女の行動力が早かった。直ぐに素材確保に

向かったのだ。

 

 

その時に活躍したのが、彼女の目の前で傅いている

”剣魔” と呼ばれる最側近の悪魔族(デーモン)だった。

 

 

受肉をせずに物質世界でそのままでいると活動出来る

その時間などが少なくなってしまうのだが、しかし、

この”剣魔”は己の魔力を体内に留めたまま、剣一本で

戦うらしい。

 

 

つまり、他の悪魔族(デーモン)よりも活動限界が長かった。

 

 

しかも、実力は支配者階級の悪魔族(デーモン)すらも上回る

戦闘能力を持っている程の実力者だったみたいで、

受肉もせずに混沌竜(カオスドラゴン)の遺物を持ち帰ってきた功績

で彼を最側近にしたらしい。

 

 

その後は人造人間(ホムンクルス)にその遺物を適合させてその素体に

宿るだけだったのだが、魔王レオンに介入されて完成

した素体を塵にされて、さらにはサリオンの天帝にも

バレてデータは悉く壊されてしまったせいか、受肉を

したいというその熱意が失われていた。

 

 

 

「なるほど……それを知った原初の紫(ヴィオレ)が焦って

手を打ったのか」

 

 

「今、何て言ったんだい? ”原初の紫(ヴィオレ)”がどうとか、

私の耳にはそう聞こえたが? もしかして、レオンが

参戦したその理由を君は知っているのかい?」

 

 

 

「うん。だって、レオンを誘導したのは”原初の紫(ヴィオレ)”だったんだもん

 

 

 

「な、なんだと……」

 

 

 

グレイに告げられたその真実を聞いて、”原初の黄(ジョーヌ)”は

目を見開いていた。

 

 

「まあ、”原初の紫(ヴィオレ)”の事だから、悔しがって真実を

知らないまま、その怒り矛先をレオンへ向けて放って

いるそんな君の姿を見て、笑いを必死に堪えながらも

見ていたんじゃないかな?」

 

 

「アイツ……どこまでも陰湿なヤツだ……」

 

 

原初の黄(ジョーヌ)”は元凶である”原初の紫(ヴィオレ)”にかなり怒ってる

のか表情は笑顔だったが額には青筋を立てているよう

だった。彼女がかつてない程に怒ってるのが誰でも

分かる。

 

 

「それで、受肉の件だったかな? その口振りから

タダで受肉をさせるんじゃないのだろう? まさか、

君の部下になれって、言うんじゃないだろうね?」

 

 

「違うよ。君にはある人物に仕えてほしいんだ。

それだけで良い」

 

 

「へえ、あのグレイ・ジャバウォックがそれ程までに

言わせる人物とはね。それで、一体何者なのかな?」

 

 

グレイがそう言うと”原初の黄(ジョーヌ)”は気になったのか、

好奇心で質問をする。

 

 

「新興国でその人物の名はリムル=テンペスト。

スライムで盟主をしている」

 

 

「──スライムが盟主だって?」

 

 

グレイがそう言うと”原初の黄(ジョーヌ)”は信じられないと

いったそんな表情をしていた。

 

 

原初の黄(ジョーヌ)”が驚くのも無理はない。最弱の魔物である

そんなスライムが国の盟主だなんて、いくらなんでも

信じられるはずがない。

 

 

「残念だが、その提案は断らせてもらう事にするよ。

王であるこの私が最弱の魔物であるスライムを相手に

主として仕えるはずがないだろう?」

 

 

原初の黄(ジョーヌ)”は興味をなくしたのか、溜息を吐きながら

グレイにそう言ってすぐに背を向ける。

 

 

「君がそこまで言うから、期待していたのだが……

期待して損したよ」

 

 

原初の黄(ジョーヌ)”はそう言って立ち去ろうとしていると

 

 

 

「じゃあ、あの”原初の黒(ノワール)”がそのスライムに仕えるために必死になって動いているって、言っても同じ事を言えるかな?」

 

 

 

「………は?」

 

 

グレイのその言葉を聞いた瞬間、”原初の黄(ジョーヌ)”の思考

が停止してしまった。

 

 

「何かの冗談だろ……?」

 

 

「残念だけど、これは全部事実だよ」

 

 

「……………」

 

 

原初の黒(ノワール)”は自分と同じ原初の悪魔の中の一柱(ひとり)で眷属

を作らず、ましてや受肉もせずに独りで自由気ままに

放浪するそんな変わり者の悪魔だった。

 

 

実力はあの”原初の赤(ルージュ)”、魔王ギィ・クリムゾンと

引き分ける程の実力を持っている。

 

 

そんな”原初の黒(ノワール)”が興味を持ってグレイが言っている

リムル=テンペストというそのスライムの盟主に興味

を持った。

 

 

「そんな”原初の黒(ノワール)”よりも早くリムル=テンペストに

仕えて受肉をすれば、残りの原初達も出し抜く事も

出来るし、”原初の黒(ノワール)”の悔しがる表情などを想像を

するのも、面白そうと思うよ?」

 

 

「なるほど……」

 

 

確かに、グレイの内容が本当ならば、”原初の黒(ノワール)”や

原初の紫(ヴィオレ)”達を出し抜いて安全に受肉が出来るのなら

魅力的だ。それに……

 

 

「フフ……レオンと遊ぶより面白いかも」

 

 

正直、レオンの国に向けて核撃魔法を放つだけの

そんな毎日に飽きていたのも確かだった。

 

 

「もし失敗したとしても、最高の依代を用意する

って契約をしてもいいよ」

 

 

「随分と気前が良いんだな」

 

 

「そうだね、これからの投資も兼ねてかな」

 

 

「投資……?」

 

 

「こっちの話だから気にしなくて良いよ」

 

 

「ふむ、そうか……」

 

 

グレイのそんな言葉を聞いて”原初の黄(ジョーヌ)”は傾げるが、

グレイにそう言われて”原初の黄(ジョーヌ)”は納得した。

 

 

「ところで、そのリムル=テンペストがどんな

ヤツでどんな姿なのか私は知らないんだが?」

 

 

「そうだね。とりあえず、これを見てくれたら

分かるよ」

 

 

グレイは懐から水晶球を取り出して、” 原初の黄(ジョーヌ)”に

手渡すと”原初の黄(ジョーヌ)”はその水晶球を受け取ると映像が

映し出された。

 

 

「へえ、これがリムル=テンペストか……」

 

 

原初の黄(ジョーヌ)”はそう言いながら、感心するように水晶球

に映し出される 暴風大妖渦(カリュブディス)と戦っている人型になって

いるリムルの姿に見入っていた。

 

 

「”魔王種”を持っているみたいだから”真なる魔王”へ

確実に至るだろうね」

 

 

「なるほどね……”原初の黒(ノワール)”やグレイが興味を持つ

その理由が分かったよ」

 

 

原初の黄(ジョーヌ)”は気分良さそうにそう言いながら、納得を

した表情していた。

 

 

「そう言ってくれるって事は、先程の話を引き受けて

くれるって事で良いのかな?」

 

 

「良いだろう。その提案、受けようじゃないか!」

 

 

原初の黄(ジョーヌ)”は明朗快活な笑顔で尊大な態度と大きな声

で腕を組みながらそう言った。

 

 

「渡したその水晶球には僕の大量の魔力を注ぎ込んで

おいたから、君の力を使わずにいつでも現世の様子を

観察する事が出来るよ」

 

 

「おっ、色々と助かるよ!」

 

 

原初の黄(ジョーヌ)”は笑顔でそう言うと

 

 

「それじゃ……あ、そうだ」

 

 

グレイは何かを思い出したのか足を止めた。

 

 

混沌竜(カオスドラゴン)の遺骨って、まだ残っている?」

 

 

混沌竜(カオスドラゴン)の遺骨か? 残っているぞ」

 

 

「それ、僕にくれない?」

 

 

「別に構わないが……何に使うんだ?」

 

 

「ちょっと必要になってね」

 

 

「ふーん。まあ、別に良いけど……ほらッ」

 

 

原初の黄(ジョーヌ)”はグレイが何故、混沌竜(カオスドラゴン)の遺骨を欲しがるのか分からなかったが、彼女にとってもう必要のない

物なので混沌竜(カオスドラゴン)の遺骨をグレイに向けて放り投げる。

 

 

「おっと……確かに、混沌竜(カオスドラゴン)の遺骨は戴いたよ。

それじゃ、僕はこれで失礼するね」

 

 

グレイは”原初の黄(ジョーヌ)”にそう言って、彼女の支配領域を

後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「スライムの盟主……リムル=テンペスト、か」

 

 

原初の黄(ジョーヌ)”はグレイから渡された水晶球を眺めながら

リムルの名を口にしていた。

 

 

「それにしても、 ”原初の黄(ジョーヌ)”様を受肉させてくれる

って……本気ですかね?」

 

 

そんな”原初の黄(ジョーヌ)”に声を掛けたのは”剣魔”と呼ばれた

悪魔族(デーモン)ではなく、見た目は愛らしい顔立ちの少女で

あったが、頭には山羊のような漆黒の角が生えた

悪魔族(デーモン)が”原初の黄(ジョーヌ)”に話しかけていた。

 

 

「ヤツの能力(スキル)とエンデの技術を使えば簡単に受肉

なんて出来るだろうさ」

 

 

「ひぇ〜……やっぱり、規格外過ぎですね。

あの人は……」

 

 

「まあ、グレイのおかげで、色々と知りたい事を

知る事が出来たし、それにこれからは退屈などには

ならなそうだ」

 

 

原初の黄(ジョーヌ)”がそう言うと山羊のような角が生えている

少女の悪魔族(デーモン)は両肩を摩りながらもグレイが去って

行った方向へと視線を向けながら口にする。

 

 

「それにしても……アンタはあんまり考えなしに

グレイ様に向かってケンカを吹っかけないでよね。

こっちとしては本当に生きた心地がしなかったし、

原初の黄(ジョーヌ)”様の受肉の件がダメになっていた可能性

だって、あったんだからね?」

 

 

「う、うむ……気を付けよう」

 

 

山羊のような角が生えている少女の悪魔族(デーモン)は肘右で

”剣魔”お腹を突きながらそう言うと”剣魔”の額には

一筋の汗を伝わせながら、申し訳なさそうな表情を

していた。

 

 

「それにしても”原初の黄(ジョーヌ)”様……あのグレイと

呼ばれたあの御仁は一体、何者なのでしょうか?」

 

 

”剣魔”はグレイに疑問に思ったのか”原初の黄(ジョーヌ)”に

質問をする。

 

 

「ヤツはグレイ・ジャバウォック。この世界で最初に

魔王となって、そして……」

 

 

 

 

星王竜ヴェルダナーヴァのお気に入りだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒナタ・サカグチは退屈していた。

 

 

神聖法皇国ルベリオスの宮殿内部に割り当てられた、

自分用の個室にて。

 

 

この世界は、退屈だ。

 

 

 

 

この世界に落ちて来た時、ヒナタはまだ十五歳

であった。

 

 

高校一年の入学式の日、家にいたくないという

理由だけで登校した帰り道。

 

 

いつも通る神社の前を横切った時、突風が吹いた。

目が開けていられなくなり目を閉じる。再び目を

開けると、そこには見慣れぬ景色が広がっていた。

 

 

ヒナタは喜んだ。

 

 

宗教に嵌って以来、家に顧みる事のなかった母親から

解放されたのだと思ったから。

 

 

父親はとっくに蒸発していた。競馬で大穴を当てると

息巻き、結局残ったのは莫大な借金だけ。

 

 

そんな父親の振るう暴力に耐えられず、母親は宗教に

逃げた。

 

 

せっかくヒナタが父親を殺し、母親の為に生命保険を

受け取れるようにしたというのに……。

 

 

少し待てば、保険金が下りたのに。

 

 

バレるようなヘマはしない。

 

 

父親は蒸発した、それで十分だった。

 

 

しかし考えてみれば、このままでは、更なる殺人を

犯す必要があった。母親を嵌めた宗教関係者達などを

殺し、いずれはその母親さえも、自らの手にかける事

になっていただろう。

 

 

ヒナタは、冷静にそう分析をしている。だからこそ、

家にいたくなかったのだから。

 

 

ここならば、これ以上の殺人は必要ない。

そう思っていたのだが……。

 

 

「おい、ここもいたぜ!」

 

 

「お! 若い女じゃねーか。やったな!」

 

 

「売っ払う前に、味見してもバレないよなぁ?」

 

 

そんな事を喋りながら、ヒナタを取り囲む男達。

 

 

ああ……ここも、一緒か。

 

 

世界は絶望に満ちている。

 

 

そう思えた。

 

 

醜い者の多い世界。そんな世界など、滅べばいい。

 

 

 

──私ハ、奪ウ。私カラ何モ奪ワセナイ。

 

 

 

《確認しました。ユニークスキル『簒奪者(ウバウモノ)』を獲得

……成功しました》

 

 

 

──私ハ、正シイ。私ノ計算ニ間違イハ、ナイ。世界ハ常ニ、不変ナノダカラ。

 

 

 

《確認しました。ユニークスキル『数字者(ハカルモノ)』を獲得

……成功しました》

 

 

唐突に、視界がクリアになった。心の靄が晴れて、

思考が冴え渡る。

 

 

目の前の男達が奪おうとするのなら、先に私が

奪ってしまおう。

 

 

──その命を。

 

 

そして、殺戮は行われた。

 

 

ヒナタの手によって三人の男が殺されてしまうまで、

五分も要していない。能力に目覚めたばかりヒナタの

身体能力は、決して高くなかったにもかかわらずだ。

 

 

 

それが、この世界で犯した最初の殺人。

 

 

 

ヒナタに親切な者もいたが、ヒナタはその人を信じる

事が出来なかった。

 

 

何故ならば、弱かったから。

 

 

いつか自分の手で殺してしまいそうで、その人のもと

からも去った。

 

 

それからも何人も人を殺し、知識と技術を奪った。

 

 

ヒナタはその力を拠り所として、この世界に君臨する

強者となったのである。

 

 

 

そして月日は流れ──

 

 

ヒナタは出会った。

 

 

 

──彼女が仕えるに相応しい、神に。

 

 

 

この世界には、神は実在する。

 

 

もう、何人殺したのか覚えていない。

 

 

善人も悪人も、ヒナタにとって関係ない。

 

 

何故なら、神の前には等しく平等だから。

 

 

神の命ずるままに疑いもせず、ヒナタは戦い続けた。

 

 

そして、魔物も。

 

 

神の命令は絶対で、神は決して魔物という存在を

許さなかった。

 

 

ヒナタはその絶対的な力で、神の敵たる魔物を

始末する。

 

 

神の右手──

 

 

”法皇直属近衛師団筆頭騎士”であり、騎士団長の

肩書きを持つ麗しき麗人。

 

 

そんなヒナタに、凶報がもたらされた。

 

 

 

恩師であった、井沢静江(シズエ・イザワ)の死──

 

 

 

この世界でただ一人、ヒナタに親切にしてくれた

恩師と呼べる人。

 

 

感傷ではなく、憎悪でもなく。

 

 

胸に去来する感情の名もわからぬままに。

 

 

 

──許せないわね。魔物の分際で、あの人を──

 

 

 

退屈な時間は終わりを告げたのだ。

 

 

聖女のような麗しい顔に凍てつくような笑みを

浮かべて、彼女は行動を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しげに遊ぶ子供達が見える。

 

 

三人の男の子と、二人の女の子だ。

 

 

俺を見て嬉しそうに駆け寄ってくる子供達。

 

 

 

そして──

 

 

 

『先生! 今日は何をするの?』

 

 

瞳を輝かせてそう言った。

 

 

勝気そうな男の子。

 

 

弱気そうな男の子。

 

 

寡黙そうな男の子。

 

 

活発そうな女の子。

 

 

聡明そうな女の子。

 

 

 

みんな可愛い生徒達。

 

 

そして俺は、嬉しさと哀しさ切なさがない交ぜに

なった心情で──

 

 

 

『ええ、そうね。今日は何をしようかな?』

 

 

と、子供達の相手をする。

 

 

それは少し前までの日常であり、自ら捨て去った、

もう戻れない日々なのだ。

 

 

──ただし、これは俺ではなく……あの人(シズさん)の記憶

なのだろう。

 

 

指導官だったあの人が、残してきた未練。

 

 

巻き込みたくなかったのだ、と俺なら理解出来る。

 

 

だが、残された子供達は、見捨てられたと泣いている

かも知れない。

 

 

そうでなくとも、ただでさえ……。

 

 

ん?

 

 

ただでさえ、なんなのだ? 俺は今、何を……。

 

 

 

そこで、目を覚ました。

 

 

 

「シズさん……?」

 

 

俺は無意識にシズさんの名前を口にしていた。

 

 

「あれ……?」

 

 

そして、気付いた時には頬に一筋の涙を流していた。

 

 

そしてその夢の残滓は儚く消える。

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに夢を見た気がする。

 

 

眠れない身体(スライム)になってからというもの、夢を見るのは

魔力が切れしまった時のような非常時のみになって

しまっていた。

 

 

これは駄目だと奮起して、俺は惰眠貪れるように

日々頑張ったのだ。

 

 

サボる為に努力する。

 

 

一見矛盾しているようだが、そんな事はない。

 

 

 

心に余裕を持つのはいい事だし、目標に向かって

頑張るのは苦痛ではないからだ。そんな努力の成果が

実って、短時間ならば意識を手放して寛ぐ事が出来る

ようになったのである。

 

 

つまり、実験は成功したという事。

 

 

内容は忘れてしまう事が多いのだけど、それは重要

ではない。

 

 

夢なんてそんなものだしね。

 

 

 

「これで毎日怠惰な日々を──」

 

 

 

「何を馬鹿な事を言っているのですか、リムル様?」

 

 

 

怒られた。

 

 

シュナは笑顔のまま怒るから怖いのだ。

 

 

シュナに促されるベッドから這い出つつ、思う。

 

 

昼からハクロウの指導による戦闘訓練工事や進捗の

状況視察やロムルス達の対応などで忙しいのだから、

夜の間くらいはのんびりしても(バチ)などは当たらない

だろう、と。

 

 

暴風大妖渦(カリュブディス)から奪った能力『解析鑑定』も終了

したので、差し迫って気になる問題もないのだし。

 

 

ちなみに、カリュブディスから得たのは『魔力妨害』

と『重力操作』で、両方ともエクストラスキルなので

ある。

 

 

『魔力妨害』は、『分子操作』と統合などをして

エクストラスキル『魔力操作』へと進化した。

 

 

その上で『多重結界』にも関連付けをしたので、

俺の防御力も大幅に上昇している。

 

 

これで、魔法攻撃への対処もバッチリなのだ。

ガビル達から龍人族(ドラゴニュート)に進化した際に手に入れた

『魔法耐性』も併せると、魔法の直撃などを

受けても大抵は耐えられそうである。

 

 

もっとも、俺には『暴食者(グラトニー)』という能力(スキル)があるので、

認識可能な魔法攻撃は喰らって無効化とか出来るんだ

けどね。それでも、不意打ちなどに対抗が出来るよう

になった意味は大きいのだ。

 

 

 

もう一つの能力(スキル)『重力操作』──

 

 

これは研究し甲斐があった。

 

 

〈飛行系魔法〉を奪えなかったが残念だったが、

『重力操作』を得たので問題は解決したのだ。

呪文の詠唱も必要なく、意のままに高速飛行が

可能となったのである。

 

 

今回、俺は焦らなかった。『水圧推進』を取得した

時の失敗を、俺は忘れてはいなかったからだ。

 

 

 

思いつくままに行動しては、洒落にもならない事態

を招く。そう考えて、毎晩ゆっくりと能力(スキル)の検証を

行ったのだ。

 

 

浮くところから初めて、ゆっくりと飛ぶ練習をした。

翼にて多少は制御出来るので、思ったよりも簡単に

習得出来たのである。

 

 

今では、翼を出さずに飛べる程だ。

 

 

空気抵抗すらも『多重結界』で防げるので、その内に

音速を超える飛行も出来るだろう。

 

 

今後ゆっくりと練習していく予定なのだ。

 

 

 

 

そんな事を考えていると、シュナが呆れたように

溜息を吐きつつ、俺に話しかけてきた。

 

 

「リムル様、また上の空になっていましたよ。

今日は我が兄ベニマルと、リグル殿をお見送りする

大事な日です。気を引き締めて、威厳あるその御姿

を見せて下さいませ」

 

 

「そうか、今日だったな。わかったよ」

 

 

そうだった。

 

 

今日は、ベニマル達が旅立つ日なのだ。

 

 

 

 

 

ミリムが去って、数ヶ月が経過していた。

 

 

穏やかで、平穏な毎日。

 

 

忙しさは相変わらずだが、実に平和である日々が

続いている。

 

 

そんな日々の中に、獣王にして魔王であるカリオン

からの使者がやって来たのだ。

 

 

正式な文書による協定は結んでいないが、カリオンは

約束を守るつもりであるようだ。

 

 

使者曰く、『互いの国から使節団を派遣して、国交を

結ぶのが、有益となるかどうか、見極めてみようでは

ないか』との事。

 

 

俺も一も二もなく賛成して、使者に同意の旨を伝えた

のだった。

 

 

そして、今日。

 

 

獣王国ユーラザニアに向けて使節団を派遣する、

記念すべき日なのである。

 

 

使節団の団長は、俺の片腕であるベニマルだ。

 

 

その補佐として、リグルドの息子であるリグルを任命

している。今後の国家運営などに携わる前に、他国を

訪れて見聞を広げてもらうのが目的だった。

 

 

他にも人鬼族(ボブゴブリン)の幹部候補が数名、使節団入っている。

 

 

 

ジュラ・テンペスト連邦国(れんぽうこく)──略して、魔国連邦(テンペスト)

 

 

 

俺達の国である。

 

 

この国は出来たばかりであり、全ての面でその経験が

足りなかった。それを補うべく、全員が一丸となって

日々の努力を重ねているのだ。

 

 

そんな彼等だからこそ、獣王国ユーラザニアから得る

ものも大きいのではないかと思う。

 

 

そして、魔王カリオンが派遣してくる使節団への

備えも万全だ。

 

 

俺達の国を見てもらい、良い所などは取り入れて

もらえればと考えている。上手くいけば、今後も

良好な関係が続くだろうし、貿易が開始される

可能性もあるかも知れない。

 

 

そうなれば、正式に国交を結べるようなる日も

遠くないだろうから。

 

 

とにかく、先ずは一歩ずつ、である。

 

 

気持ちを切り替えて、皆を送り出す事から始めよう。

 

 

俺は意識を覚醒させると、人の姿になった。

 

 

式典もあるので、それなりにきちんとした礼服へと

着替える。

 

 

こうしてみると、着る物も少なかった頃の事が

懐かしい。今でも各種様々な服が用意されており、

日本で生活していた頃よりも品揃えが良いのだ。

 

 

砂糖や香辛料などはロムルスからの購入で解決をして

いたのだが、砂糖は無事に精製する事に成功したが、

胡椒などの香辛料はとても高価で更には貴重過ぎる

ため、ロムルスの購入などに頼っている状態だ。

 

 

煮込み料理も追加されたし、まだまだ種類などが

少ないが、お菓子類までも用意されるようにまで

なったのだ。

 

 

惰眠を貪るという技術まで身に付けてしまった今、

次に考えるべきは娯楽だろう。

 

 

俺の目指す先は長い。

 

 

色々と考える事が次々に湧き出てくるので、非常に

辛い。頑張っても頑張っても、俺の欲望は留まる所

を知らないようだ。

 

 

ポテチでも齧りながらゲーム三昧のそんな日々が

送れるようになるのは、一体いつの日になる事やら。

 

 

だがそれでも、諦めずに目標を高く掲げよう。

 

 

その為にも、使節団には頑張って交流を確かなものに

してもらわねば。

 

 

 

 

 

礼服に身を包み、広場に集まった皆の前に立つ。

 

 

一気に騒然となる魔物達。

 

 

各種様々な魔物達が、滅多に見られない俺の人化姿を

見て興奮しているようだ。

 

 

暫く騒ぎが続くかと思ったのだが……。

 

 

「静まりなさい!」

 

 

というシオンの怒号により、一瞬にして皆が黙った。

 

 

流石はシオン。

 

 

こういう荒事に関しては、非常に優秀である。

 

 

俺を見て興奮をしていた魔物達が落ち着いたので、

挨拶を行う事にする。

 

 

俺を見て興奮していた魔物達が落ち着いたので、

挨拶を行う事にする。

 

 

 

「諸君、是非とも頑張ってきてくれたまえ!」

 

 

 

激励の挨拶を述べた。

 

 

「──それだけ、ですか?」

 

 

困惑したように、シュナが聞いてきた。

 

 

うーん、ちょっと短すぎたか。

 

 

校長の話とか長すぎると誰もが聞かないし、人前での

演説も似たようなものだと思ったのだが……どうやら

俺が思っている以上に、皆は俺の言葉を楽しみにして

いたようである。

 

 

「ちょっと言葉が足りなかったかな。

じゃあ、もう少しだけ──」

 

 

そう前置きしてから、俺は向こうの国に行ってからの

注意事項を説明した。

 

 

魔王の一角──それもバリバリの武道派である、

魔王カリオン。そんなカリオンが治めてる国は、

そもそも法治国家なのかどうか疑わしい。

 

 

「いいか、お前等。相手は”力こそ全て”とか思ってる

魔人達の国だ。決して舐められるな。引いた時点で、

全て相手の言いなりになってしまうぞ。戦ったなら

負けるかもしれんが、心では負けないようにとにかく

頑張ってくれ! お前等の後ろには、俺や町の仲間達

がいる。それを忘れずに自分達の意思は、キッチリと

相手に伝える事。そして、戦いになりそうだったらば

逃げて帰ってこい。今回は、相手と今後も付き合って

行けるのかを見極める、という目的がある。我慢など

をしながらじゃないと付き合えそうもないのであるの

なら、そんな関係は要らん。気持ち良く友誼を結べる

のか、君達の目でシッカリと確かめてきて欲しい。

頼んだぞ!」

 

 

最後にそう締めくくると、割れんばかりの大歓声が

広場を満たした。

 

 

まるで、アイドルコンサートの如き様相だった。

 

 

多分、話の内容はどうでもいいのだろう。単純に、

俺の言葉が聞きたいだけで。

 

 

使節団の面々は真剣に聞いていただろうけど、

その他の者はお祭り騒ぎがしたいだけに見えた。

 

 

まあ、いいか。話を真面目に聞いてきただけでも、

纏まりのない魔物からすれば大した進歩はない

のだから。

 

 

ついでだし、重要な点に釘を刺しておくとしよう。

 

 

「後はそうだな……。多少の失敗は許しはするが、

こちらからは喧嘩を売るなよ? 特にベニマル、

大丈夫たろうな?」

 

 

向こうから喧嘩を売られる前提でこの様な話をした

のだが、こちらから仕掛けていては話にならない。

その点についてだけは、決して間違えないように

念を押しておかねばならないのだ

 

 

「フッ、お任せください。俺だって、色々と学習を

しましたからね。ミリム様を見ていれば、短慮な

行いは不味いと誰にでも理解出来るというもの

ですよ」

 

 

自信満々にベニマルが応じた。

 

 

比べる相手がミリムというのも、全く安心出来ない

要因である。あんなのと比べて自信を持たれても、

なんの保証もならないではないか。

 

 

まあ、シオンよりはマシだけど。

 

 

ベニマルの言葉に力強く頷くシオンを見て、俺は内心

で溜息を吐く。

 

 

本当ならば、俺の代理はシオンに任せたかったのだが

……それは余りにも危険な賭けだった。

 

 

いや……考えてみれば、ベニマルはとても思慮深い。

ミリムやシオンと比べてしまうのは、流石に失礼と

いうものだ。

 

 

「任せたぞ。本来なら、俺が出向くべきなのだろう

なんだけど……」

 

 

「いいえ。安全が確認されるまでは、魔王の領土への

立ち入りは控えるべきかと」

 

 

ベニマルは、やはり自分の目でカリオンが信用に足る

人物か見極めたいのだろう。それはカリオンに限った

話ではなく、彼の国の魔人達の全てを見定めるつもり

なのだ。

 

 

果たして、俺の国(テンペスト)にとって、有益となるのかどうか。

そして何よりも、この俺にとっての害悪とならないか

どうか、を。

 

 

ベニマルのその気持ちはとても嬉しい。

だからこそ、余計にも心配にもなるんだが……。

 

 

シオンのように天然にではなく、ワザと喧嘩を売って

相手を試したりしないか不安なのである。

 

 

かと言って、魔人の国にリグル達だけを派遣するのも

とても心配だ。護衛としても、戦闘能力の高い者達を

付き添わせる必要があった。

 

 

ソウエイは国を陰から守ってくれているし、ハクロウ

は兵士達の指南あって忙しい。

 

 

ゲルドは工事の指揮で離せないし、ガビルの方も

上位回復薬(ハイポーション)の抽出と下位回復薬(ローポション)の量産を頑張って

くれている。

 

 

シオンは論外だったので、こうして考えてもベニマル

しか残らないのだ。

 

 

「しかし、大丈夫なのですか……?」

 

 

「何がだ? ベニマル?」

 

 

「いや、俺がいない間、ロムルスを押さえる事などが

出来ないので……」

 

 

ベニマルが何を言いたいのか理解した。

 

 

以前、暴風大妖渦(カリュブディス)の一件でロムルスの異常なまでの

威圧感を間近で感じたせいか、自分が国を離れるのは

問題なのではないかと俺に相談した程である。

 

 

「ロムルスについては、ソウエイ達”隠密”などで

監視などを更に増やしたりしてどうにかするから

安心してくれ」

 

 

「し、しかし……」

 

 

「ロムルスも考えなしに表立ってそんな事をする程、

バカじゃないはずだから大丈夫さ、な?」

 

 

「分かりました。リムル様がそこまで言われるの

ならば、従います……」

 

 

俺がそう言うと、ベニマルは渋々と了承してくれた。

 

 

「それでは、頼む」

 

 

「御意!」

 

 

「リグル達も頑張ってくれ! 良い点は、どんどん

取り入れたいからな」

 

 

「心得ました。見聞を広めて参ります!」

 

 

目を輝かせて、リグルが応えてくる。

 

 

やる気が感じられる瞳の色であり、新しい事に挑戦を

したいという意欲は本物であるようだ。

 

 

これならば大丈夫、そう信じられた。

 

 

「ランガ、お前もベニマルの影に潜んで一緒に同行を

してくれ。そして影から悟られぬように、皆を守って

やってほしい」

 

 

「心得ました。ご安心下さい、我が主よ!」

 

 

ランガは俺の命令に従い、ベニマルの影にスルリと

潜り込む。ベニマルの妖気(オーラ)に隠れるので、ランガも

気付かれないと思いたい。

 

 

「よし! それでは、皆で盛大に送り出そう」

 

 

俺の言葉を受けて、シュナはそっと視線で合図を

送った。それに応えるのは、選りすぐりの者から

なる音楽隊が奏でる演奏だった。

 

 

盛大に、景気良く。

 

 

そして、町の住民が見守る中を、そんな使節団は

堂々と進み始める。

 

 

それは、希望の未来へ向けての歩みである。

 

 

こうした交流の積み重ねから、いずれは正式な国交が

樹立される事を願って。

 

 

こうして第一回の使節団達は、飛び立って行ったので

あった。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます‼︎


これからも皆さんが『応援』などをしていただければ
『更新』の頻度が更に上がるそんな可能性があるかも
しれません‼︎


『他の投稿作品』もあるので是非ともそちらも
楽しんで見ていただければ本当にありがたいです‼︎


それでは、2026年の新年もよろしくお願いします‼︎
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