今回は一月に入ってからなんとかすぐに『最新話』
を無事に更新をすることができました‼︎
今回は『17269文字』までの膨大な量を頑張って
書きましたが、豆腐のようなクソナメクジメンタルの
自分はきちんと面白く書けているのか、とても心配に
なります……(汗)
最後まで読んでいただけたら、ありがたいです‼︎
ベニマル達を見送ったが、まだまだすべて事は
山積みだった。
早く人間の町に遊びにも行きたいのだが、仕事などや
ロムルス達などの監視や対応などが次々と湧き出て
くるので、そんな暇はないのである。
何事に於いても最初が肝心なのだ。
仕事でもそうだが、最初に手を抜くと後々とても
大変な目に遭う事が多い。国家運営ともなれば、
言うまでもないだろう。
遊びに行きたいからといって、今ここで投げ出すなど
以ての外なのだ。
特使団として警備部門と軍事部門のトップが抜けた
ので、その穴埋めもしなければならない。
警備部門に関しては、ロムルス達の監視を対応して
いるソウエイに。軍事部門に関しては、ハクロウに
代理を任せる事にした。
とりあえず、これで安心だ。
続いて、獣王国ユーラザニアから来る使節団達の
受け入れ準備を行う。
今見られて困るのは、ヒポクテ草の栽培と回復薬
生産現場である。これ以外は情報公開などしても
問題ないので、封印の洞窟を重点的に隠蔽する事
にした。
入り口は一つだから、そこを大岩で塞いでしまえば
侵入出来なくなる。ガビル達は転移の魔法陣で移動
出来るし、思い切って入り口を閉じる事にしたのだ。
酸素濃度の変化が心配ではあるが、空気穴は至る所
に空いているようなので問題なさそうだ。
それに、ベスターが便利な魔法を知っていた。
「空気、といいますか……環境の変化を察知する魔法
が御座います。生命活動に支障が出るようなら警告を
してくれる魔法も御座いますし、心配などは御無用
ですよ」
と、俺の心配を解消してくれたのである。
ベスター、本当に有能な男である。
性格が歪んだりしなければ、ガゼル王の片腕として、
今でもその才能を生かしていただろうに……。
寝泊まりする場合として、来賓用の迎賓館を新築
をしていた。これは、カバル達やヨウムの一味が
利用するような宿舎ではなく、贅を凝らした豪邸
のような
箱だけではなく、人材も育てている。
シュナの弟子達は、一流の料理人に育っていた。
今では直感で、適量の匙加減を見極められるまでに
なっている。火の扱いや包丁捌きにも慣れたもので、
どこに出しても恥ずかしくない、一人前の料理人達
なのだ。
の仕方などを学んでいた。王侯貴族などを持てなせ
と言われると辛いだろうが、一般人や冒険者を相手
にするには充分な教育が為されていたのである。
最新の仕上げとして、成績の優秀な者を選別して
実際に接客させる事にした。粗野な者のみを相手
にしていたのでは、来賓を任せるのに不安だった
からだ。
ここまで活躍したのがベスターである。
知識のない俺にはわからないそんな部分の指導を、
本物の貴族であるベスターにお願いをしたのだ。
その結果、従業員に選別した者達が、素晴らしい
仕事ぶりを発揮したのである。
「大変結構です。そのまま精進を続けていれば、
どの国の王族を招待しても恥ずかしくないレベル
に成長出来るでしょう。君達の今後の活躍に期待
しますよ」
それは正に、神経質なベスターをも満足させる
最高の御持てなしだった。
「「「ご指導、ありがとう御座いました」」」
全員揃って、ベスターにお辞儀する。
それを満足そうに受け取るベスター。
「流石だね、ベスター。君に頼んで正解だったよ!」
「いやいや。こんな役得な仕事でしたら、いつでも
命じてください」
俺の労いに、ベスターが朗らかに笑う。
ベスターには御礼として、無料宿泊の権利を贈呈する
事にした。ベスターの宿泊は視察などにもなるので、
皆が気が弛んでないかチェックをする事が出来る。
まさに一石二鳥なのだ。
こうして、使節団の受け入れ準備は着々と整った
のである。
大きなイベントがもう一つある。
というよりも、こちらが本命だ。
ドワーフ王国──武装国家ドワルゴンへの外遊が
控えていたのだ。
これも使者をやり取りをして、日取りもなども既に
決まっていた。このイベントは、俺達の国にとっての
最重要の慶事である。
大国である武装国家ドワルゴンに
正式に認められていると、対外に向けて発信する機会
となるからだ。
文書にによる国交樹立だけではなく、こうした行事に
より諸外国へ俺達の存在を認めさせる事で、今後の
国家運営に役に立てたいのである。
魔物が新国家を興したとして、人にそれを受け入れて
もらえるのかどうか。
それが最大の課題だった。
だが、ヨウム達を英雄に仕立て上げ、フューズなどに
都合よく噂を流してもらった事で、俺達は英雄に協力
する友好的な魔物の集団だと認識され始めている。
こうした空気の中、大国が俺達を招いたのだ。
これは一気に信用を獲得出来る、またとない機会と
なるだろう。
このイベントを成功させるまで、気を抜く事などは
出来ない相談だった。人間の町に遊びに行くのは、
国家運営が軌道に乗ってからでも遅くないのだ。
「なんとしても成功させるぞ!」
という俺の言葉に、シュナとシオンが頷く。
「勿論ですわ」
「お任せ下さい。このシオン、秘書として全力を
尽くします!」
気合いを入れ直して、仕事に取り掛かる。
俺は精力的に、考えつく限りの問題の全て片付け
ながら、迫り来る運命の日を待ったのである。
使節団が到着するという先触れが来た。
俺の前に跪くトレイニーさんからの情報だ。
ジュラの大森林に使節団が入ったと、真っ先に
知らせに来てくれたのである。
「わざわざありがとう」
「いいえ、このくらいお安いご用意ですわ」
そう言って、トレイニーさんは微笑んだ。
相変わらずの美人ぶりである。透明感のある神秘的な
面立ちが、見る者の心を虜にするのだ。
俺もスライムじゃなかったら、コロリと落ちて
いただろう。
おっと、あんまり見つめていると、シュナやシオンが
不機嫌になってしまう。目もないそんなスライムなの
だというのに、何故か、俺の視線の先を把握が出来る
ようなのだ。
超能力でも持っているのか、あるいは女の直感か。
ともかく、無用な争いを起こすべきではない。
「また何かあったら頼む」
「勿論ですわ。それでは失礼致します」
微笑みを残し、トレイニーさんはその場から一瞬
にして消え失せる。神出鬼没っぷりは健在であり、
本当に謎めいた女性であった。
そんなこんなで、使節団が数日後に到着すると、
全員にお触れを出したのだ。
丁度その時、ヨウム達が町にやって来た。
ヨウムは俺の目論見通り、ファルムス王国で英雄
として登り詰めている。そんな男なのではあるが、
この町には素の自分に戻って羽を伸ばしにやって
来るのだ。
ハクロウに修行をつけてもらう──とかご立派な名目
を掲げているようなのだが、本当の目的が美味い料理
と温泉なのはお見通しである。
今日は数日は滞在するなどと言うので、トラブルを
起こさないように注意しておくのも忘れない。
「いいか、魔王カリオンの配下が使者としてやって
来るから、お前達も喧嘩になどならないように注意
してくれよ」
「おいおい旦那、俺達をなんだと思っているんだ?
魔王の配下相手に喧嘩を売るようなそんな馬鹿だと、
そう思っているのかい?」
肩を竦めてヨウムがそう言った。
それもその通りなのだが、世の中には想像を絶する
馬鹿がいるのも事実だしな……。
「と、その前にだ。なんで魔王の配下が、この町に
来るって話になっているんですか?」
俺がヨウムに答えるよりも早く、ヨウムが俺に質問
してきた。
魔王カリオン配下の大幹部の一人が、魔王級レベル
のモンスター『カリュブディス』の核にされていた。
大乱闘の末、俺が核から分離させて助けたのが縁で、
獣王国ユーラザニアとの国交を結ぶそんな話が出た
のだが……あの時には、ヨウム達はいなかった。
だから、その後の流れを知らないままだったのだ。
俺としても本当の事を話した方がいいのかどうか
迷っていたので、今まで説明せずにいたのである。
「そうだな、お前には説明しておくか。それじゃあ、
風呂から上がったら、応接室に来てくれ」
「ああ、わかったぜ」
ヨウムの返事を聞き、時間を指定する。
シオンが手慣れた感じで予約をメモしている。
形から入るように言ったのだが、案外、まともな
秘書らしくなってきていた。
さて、ヨウムへの説明をどうしたものか。
ヨウムにだけは、今までの経緯を説明しておいた方が
良さそうだ。そう考えて、ある程度の内情を話す事に
した。
簡単な俺の出自と、魔王との関係をだ。
どこまで教えていいものか考えものだ、この内容を
触れ回れたら困るかというと、そうでもない。逆に、
俺が元人間だと言っても、大抵の者などは信じない
だろうし。
この機会に全て話しておくのもいいかも知れない。
町に着いて早々に立ち話させるなんてのもなんだし、
こういう話題はとにかく落ち着いてする方がいい。
俺はそう考えて、ヨウムのみ後から部屋に来るように
言ったのだった。
旅装を解き風呂に入った後、ヨウムが応接室に
やって来た。
夕食後、指定おいた時間通りである。
「で、どんな話を聞かせてくれるんだ?」
「まあ慌てるなよ」
ヨウムに椅子を勧める。
背もたれと肘掛の付いた、革張りでフカフカの
俺も対面の椅子の前に移動する。
「一つ言っておくが、驚くなよ?」
「驚くだと? 俺がなんで──」
何か言おうとしたヨウムを無視して、俺は人の姿に
変化した。説明するより、見せた方が一番早いのだ。
「なっ⁉︎」
驚きで声を失うヨウム。
だから忠告したのに、効果はなかったようである。
「だから驚くなよと言ったのに」
そう言いながら、俺も椅子に腰掛ける。
そのタイミングを見計らったようにシュナが返事に
入ってくる。
予定通りだ。
会釈してから、俺とヨウムに飲み物をすぐに用意する
シュナ。ドワーフ三兄弟のニ男であるドルドが作った
細工が美しいガラス製のグラスに、無色透明な液体を
浅く注ぐ。
再度会釈をしてから、シュナは俺の後ろに控えた。
それが合図となり、俺はグラスを手に取る。
香りを楽しみ出来栄えなどに問題がない事を確認
してから、「まあ、一杯飲もうか」とヨウムに
勧めた。
俺の人化に驚き、シュナのその可憐さに見蕩れて、
動きが固まったままになってしまっているヨウム。
だが、俺に酒を勧められた事で、ヨウムはようやく
我に返ったようだ。
「あ、ああ。すまねえな、一杯頂くぜ──」
そう言いながら一気にグラスを呷り、盛大に咽せる事
になる。
「──ゲホゲホ、ゲホォ。ぐおお、こりゃあ一体⁉︎」
慌ててシュナが水を差し出し、ヨウムはそれを一気に
飲み干した。暫くの間、咽せてしまった後、ようやく
落ち着いたようだ。
「
ドワーフ王国の者達などと宴会になったんだけどさ、
酒がなかったのが不満だったみたいでね。この前、
しかしアイツ等、こんな酒では酔っ払ったりしない
とか言って、底なしに飲んでるんだよね。だから、
俺の知ってる酒を飲ませてやろうと思ったワケ。
これが試作第一号だ」
ドッキリ大成功である。
ヨウムも酒に強い事を自慢していたので、実験台に
なってもらったのだ。
今ヨウムが飲んだのは、ワインを蒸留したブランデー
である。
ちょっと卑怯だが、『解析鑑定』のお陰で、最高の
味わいを再現が出来ていた。さらに付け加えると、
俺のユニークスキル『
発酵と腐敗、その違いは有害か無害かという、
その点だけ。
俺の『
した結果、人体への有害物質を精製などさせずに腐食
させる事に成功した。
つまり、発酵である。
この能力を駆使すれば、酵母や麹の精製なども
容易だった。
酵母は既にシュナに託したので、パンも食卓に並ぶ
ようになっていた。酒については言うまでもなく、
目の前に並んだ品々が成果である。
麹については課題も沢山多く、現在研究中だった。
だがその内に、日本酒や味醂に、味噌も作り出す事が
出来るだろう。大豆が手に入れば、醤油を作る事など
も出来そうだ。
夢の広がる
こんな趣味趣向に
に思いもしたが、問題あるまい。有効利用してこそ、
真価を発揮出来るのだから。
第一段階の発酵酒が出来れば、後は簡単だ。
ブランデーだけではなく、ビールなどを蒸留した
ウイスキーも用意している。
どちらもアルコール度数が高めで、馴染みのない者
からすれば喉が焼け付くような刺激を感じるだろう。
だが、酒が好きな者にはとてもたまらない程の味わい
なのである。
俺はそんな事を説明しながら、正しい楽しみ方を実演
してみせた。
残念ながら、俺は酔っ払ったり出来ないそんな身体
なんだけどね。それでも、昔の感覚などを思い出す
せいか、酔ったような気持ちにはなれるのである。
「なるほど。確かにこれは、かなり美味い酒ですよ
旦那」
「だろう?」
「俺はどちらかというと、水で割るよりも氷だけを
入れた方が好きですね」
「通だね、ヨウムちゃん」
そんな感じに緊張が解けたのを見計らい、俺は本題
を切り出した。
「さて、それじゃあ──」
それから、大雑把に今までの出来事などを語って
聞かせた。
転生したという話や、その他諸々の細かい点も話した
のだが、どこまで理解が出来たのかは不明であった。
酒も入っているので、悪酔いすると忘れてしまうかも
知れない。それならそれでいいと、敢えて酒を出した
のだけどね。
こんな話を、素面で話すのもどうかとそう思ったと
いうのも理由だった。
魔王達との関わりが出来たとか、笑い話などにでも
しなければやってられないのである。
ところがヨウムは……。
「いや、信じますよ俺は。だって、魔物が町を作って
いるというその時点で、普通に考えて在り得ません
からね」
と、アッサリ言ってのけたのである。
適応力が高いヤツである。
今もブランデーが気に入ったようで、咽もせずに
美味しそうに飲んでいる。
「おいおい、信じちゃうのか?」
「信じるって言ってるじゃないですか。それより、
魔王か……。その配下なら、さぞかし強くヤツが
来るんでしょうね」
「うーん、どうだろうね。喧嘩などをしに来る訳
じゃないし、お互いに国交を結ぶ価値があるのか
どうかを調べに来るだけだしね」
「けど、向こうの方にはベニマルさん達が出向いた
んでしょ? それは、いざ、何かあっても対応など
出来るようにと考えたからですよね? だとしたら、
向こうも同じように考えて、それなりの強さの魔人を
寄越して来ると思うんですがね……」
「そうかも知れないけど、関係ないよ。こっちから
手出ししちゃったら、その時点で終わりじゃねーか。
魔王カリオンと敵対関係になっても、何一つ得なんて
しないからな。お前に言いたい事などはたった一つ。
昼も言ったけど、使者相手に喧嘩を売ったりなどは
するなよ。お前の部下達にも徹底させておいてくれ。
今回は平和的にいきたいからな!」
「了解ですよ、旦那。俺だって、危険な相手なんかに
自分から喧嘩を売るような馬鹿じゃないですって!」
それもそうだな。
俺もそう納得して、その話を終えた。
酒類も好評だったので、ドワーフ王国に出向く際の
いい土産になりそうだ。
それからヨウムとくだらない雑談などで盛り上がり、
その日の夜は更けていったのである。
「ただいま」
「ん? ああ、おかえりなさい」
シズがそう言って、宿屋の扉を開けるとグラスを
片手に持って飲んでいるグレイの姿があった。
「このお酒はどうしたの?」
「リムル=テンペストが新作のお酒を作っていた
みたいだったから、少しばかり戴いてきた」
「へえ、よく貰えたね……」
「ま、まあね……」
「グレイ? まさか……」
シズがそう言うと、グレイはシズからすぐに視線を
逸らしながら、苦笑いしていた。
その瞬間、シズは理解してしまった。
このお酒は貰ったのではなく、酒蔵に忍び込んで
拝借という形で手に入れてきたのだと。
「まあまあ、そんなお堅い話などは抜きにして、
飲んでみてよ」
グレイはシズにそう言って、グラスを作り出して
ゆっくりと酒をグラスの中に注いでいく。
「ほら、一杯飲んでみてよ。燻製した肉やチーズも
あるから」
そして、酒のつまみに燻製した最高級の肉とチーズを
一口サイズに切って、酒をシズに手渡す。
「い、一杯だけなら……」
シズは戸惑いながらも、そう言って恐る恐るとグラス
を手に取って一気にグラスを呷り、
「──ゲホゲホ、こ、これは何なの……ッ⁉︎」
シズにはキツかったのか、盛大にむせていた。
「ははっ、シズには早かったかな? 水などで割って
みたんだけど、もう少し入れた方が良かったかな?」
グレイはそう言って、ブランデーだけではなく、
様々な酒を蒸留した複数のウイスキーの
用意している。
どちらもアルコール度数が高めで、馴染みがないシズ
からすれば喉が焼け付くようなそんな刺激を感じた
のだろう。だが、味見をしたグレイにとってはとても
濃厚でたまらない程の好評な味わいだったのである。
「他にもあるから、そっちも飲んでみようか?」
グレイがそう言って、シズに他の酒を勧める。
その時、グレイは知る余地もなかった。
シズに酒を勧めてしまった結果、とんでもない事態に
なってしまう事を。
そして数日後。
予定通り、獣王国ユーラザニアから使節団達が
やって来た。
出迎えには、スライムの姿のままの俺を筆頭にシュナ
とシオン。リグルド以下、この国を運営などをする
ボブゴブリンの長老連中。
そして影からは、ソウエイが見守ってくれている。
何かあったら直ぐに飛び出せるだろう。
他にはヨウム一行も参列しているので、それなりに
物々しい感じになっていた。
そんな中を、使節団の一行がやって来る。
黄金で飾られた豪華絢爛な馬車の列。
それをひくのは、大型魔獣である
青白く放電する雷を纏ったその姿は、遠くからでも
武威を感じさせた。
馬ではなく虎がひいているので、虎車と呼ぶべき
だろうか?
あの力強さから考えるに、装飾を換装すれば戦車と
言っても通用しそうであった。
「流石だな……」
「大した事ありませんね。リムル様の威光を前に
すれば、あの程度の獣達を統べる程度ではハッタリ
にもなりません」
俺の感嘆の溜息は、シオンの馬鹿にしたようなセリフ
で掻き消された。
いやいやいや、シオンさん?
大した事あるでしょうよ。
「どう見ても、俺達に力などのを見せつけようとして
いるだろ。あの煌びやかさを大したことないなんて
言い張ってしまうのは、俺達が見栄を張ってしまって
いるかのようでかえって格好悪いぞ?」
「そうでしょうか? あのように飾り立てても、
戦闘では全く意味がありませんけど?」
「いやいや、この場面で戦闘は関係ないだろ……」
本当にシオンは……どこまで脳筋なヤツなんだ。
魔王カリオンが厳選したと思われる陣容を、実践的
ではないからと馬鹿になるなんて言語道断である。
「だがまあ、細工の高術性という点では、まだまだ
ではあるな。ドルド腕には及ばない。それにカイジン
やガルム達が協力をしてくれているし、俺達はかなり
恵まれているからな」
「そう言ってくれると嬉しいぜ旦那」
「俺達も鼻が高いってものでさ」
俺のそんな感想を後ろで聞いていたカイジンや
ドワーフ三兄弟達が、誇らしげな笑顔を見せる。
実際の話、俺の無茶振りに毎度毎度に応えてくれて
くれるので、非常に助かっているのは本当だった。
彼等の仕事振りは、もっと認められてもいいと
思うのだ。
そんなやり取りをしている間に、馬車の列が粛々と
町に入って来た。
先頭の一際豪華な馬車の扉が開き、二人の女性が
降りてくる。
一人目は、艶のある白髪をストレートに伸ばして、
しなやかな肢体に猫の瞳を持つ美人。明らかに女性
だが、その身に纏う
ようである。
二人目は、金と黒のまだら髪で、宝石のように美しい
蛇の瞳を持つ妖艶なる美女。一見お淑やかに見えるの
だが、その冷酷で凍りつく空気は、何人も寄せ付け
ないように思われた。
明らかに格が違う魔人である。
同格。つまり、この二人は恐らく……。
「お初にお目にかかります、ジュラの大森林の
盟主殿。私は、アルビス。”
という、魔王カリオン様の三獣士の一人ですわ」
やはり思っていた通りかなりの大物、まさかの
最高幹部のお出ましである。
という事は、もう一人も──
「フン! このような者共に挨拶などをする必要は
ないぞ、アルビス。噂になってるジュラの大森林の
盟主とはどのような魔物なのかと思って来て見れば
弱小なるスライムではないか。我々を馬鹿にするにも
程がある!」
「控えなさいスフィア。貴女のその振る舞いは、
カリオン様の顔に泥を塗るのと同じ──」
「煩いぞアルビス、オレに命令するな! そもそも
ドワーフはまだしも、人間などと──矮小で小賢しく
卑怯なそんな人間共とつるむなど、魔物の風上にも
置けぬわ!」
余程人間が嫌いなのか、散々文句を述べるスフィア
という魔人。
俺の事を馬鹿にするだけなら我慢しようと思っていた
のだが、この場にいる人間──つまりは、ヨウム達を
蔑むように罵るのだけは許さなかった。
俺だって元人間な訳だし、尚更である。
ヨウムは自分達が原因となって友好関係が崩れる事を
恐れて、何を言われても必死に我慢してくれている。
俺の忠告守ってくれているのだ。
思えばヨウムも、この数ヶ月でかなり腕を上げた。
こんな一方的に馬鹿にされる謂れなどは何もない
のである。
「おいおいそこのお前、ちょっと人間を馬鹿にしすぎ
じゃないのか? いい加減にしろよ。なあ、ヨウム?
お前も馬鹿にされたまんまなんてかなり悔しいだろ?
俺が許すから、ちょっとこの場で実力などを見せて
やったらどうだ?」
ヨウムが我慢してくれているというのに、俺の方が
我慢出来なくなった。
だって、仕方ないだろう。何しろヨウムは、ハクロウ
の下でウツロさんと一緒に修行などをした仲間でも
あるのだ。そりゃあ修行内容は全くもって違ったし、
俺やベニマル達に比べたら全然話にならない
あるのだが……。
それでも、そのふてぶてしく負けず嫌いな性格のお陰
なのか、音を上げずにハクロウの修行に無事に耐えた
のである。
それにヨウムは、どことなく日本での後輩だった
田村を思い出した。
生意気だが、可愛い後輩だった田村。俺を旦那と
呼んで慕ってくれるヨウムもまた、俺にとっての
可愛い後輩である。後輩というよりも──そう、
ハクロウを師を仰ぐ者同士、ヨウムはいわば弟弟子
のような存在なのだった。
ここまで馬鹿にされているのを見ると、自分自身の
事を言われる以上に腹が立ってしまう。少しだけ、
ガゼル王の気持ちがわかったような気がする。
「え、俺が⁉︎」
怒りに燃える俺に、ヨウムが驚いたような表情を
して聞き返してきた。
何を他人事のように驚いているのやら。ここは一発、
ガツンと目に物を見せてやって欲しい。
「おい。死ななければ回復などしてやるから、お前の
強さを教えてやれ!」
「おいおい旦那……、喧嘩を売らず平和的に
いくんじゃなかったのかよ?」
「馬鹿野郎! 甘えた事を言ってるんじゃねえぞ!
こっちから手を出すつもりはなかったが、向こうが
仕掛けてくるなら応えるだけの話だ」
そう、喧嘩を売ってくるのなら、買うまでの事。
それに、少し気になる事があったのだ。
「
「舐められたままじゃあ、格好つかないですぜ!」
ヨウムの手下の荒くれ達も、どうやら乗り気になって
いるようだ。
「チィ、しょうがねえな。旦那、ちゃんと骨を拾って
下さいよ?」
ヨウムはそう言ってニヤリと笑うと、愛用の
をスラリと抜いて構えた。俺の言葉に触発されて、
闘志に火が付いたようだった。
「任せろ。回復薬はタップリあるから、遠慮せずに
ドンと行け!」
「了解!」
そう応じて前に出るヨウム。
対するスフィアは、嬉しそうに高らかに笑った。
そして、言う。
「はーーーっはっはっはっは! いいぞ、人間。
オレを満足させる事が出来るかな?」
戦いを前にして、楽しそうに叫ぶスフィア。
と、その時。
俺の身体を抱きかかえていたシオンが、何を思った
のかシュナへと俺を渡した。
え、もしかして……。
そう思った途端、俺の考えた通りの行動をシオンが
とったのだ。
「待ちなさい。先程から黙って聞いてれば、リムル様
への様々な暴言の数々……。リムル様が戦うなと仰せ
だったのでこちらも我慢に我慢を重ねていましたが、
どうやらその必要はなかったようです。貴女の相手は
私です!」
目を血走らせて、止める間もなくシオンが動いた。
ヨウムが出るまでは許容範囲だと思っていたいたが、
シオンが出てしまうと洒落で済まなくなってしまう
のだが……。
まあ、仕方ないか。
この流れではシオンを制止出来ない。こうなって
しまっては、今のこの状況に任せる他なさそうだ。
それに何より、相手さんもやる気満々のようで、
今更ナシと言える雰囲気ではなかったのだ。
「面白い! スライムの配下がどの程度のものか、
このオレ── ”
くれるわ!」
獰猛な虎の本性などを剥き出しにして、スフィアが
吼えた。単純なる自身の闘争本能の命じるままに、
シオンとスフィアが激突する。
そして一瞬にして、その場は戦場と化したのだった。
一方、ヨウムはというと。
「──まったく。しょうがありませんわね、
スフィアは。グルーシス! 貴方があの人間の
相手をなさい」
シオンとスフィアの戦いを横目に、”
とやらが魔人の一人に命令した。
「いくら俺が獣王戦士団で末席だからって、人間の
相手なんて……。まあいい、遊んでやるよ人間!」
そんな風に文句を言いながら、精悍な若者が一人、
前に出てくる。
灰色の髪に、灰色の目。褐色の肌。筋肉質で、
しなやかな体躯である。
両手に大型のナイフを持って遊びながらも、
鋭い視線でヨウムを見据えていた。
その態度は完全にヨウムを見下しているように見えて
しまうが、眼光は鋭く、真剣に獲物を見定めようと
している狩人のものであった。
言葉とは裏腹に、決して油断などしていないのだ。
流石は魔王カリオンの配下だ。
なんのかんの言って、一流の戦士なのである。
確か、カリオンが統べる種族は
聞いている。
ミリムが色々と教えてくれたのだ。
最初は言い渋っていたのだが、俺が砂糖菓子などを
チラッと見せた途端「本当は駄目なのだが、特別に
教えてやるのだ」とか言いながら、かなり詳しく
喋ってくれた。
ちなみにその時の状況を見ていたロムルスとウツロ
さんからは「また、買収ですか……」というそんな
呆れた声が聞こえてきたが、聞こえないフリをした。
獣人とは、その名の通り獣へ変身する事が可能な
亜人種である。
犬、猫、猿、熊、蛇、鳥という代表的な種目に加え、
珍しい物では象などの大型種もいるそうだ。
そして、豚頭族や犬頭族などの下位の魔物達は、
変身出来なくなった劣化獣人だと言われている。
つまり獣人とは、魔物の中でも上位に位置する
者達だとみなされているのだ。
人と魔の性質を併せ持つ、生まれながらにして
下位魔人とも呼べる種族。
一度変身すれば、その持つ特質に応じた能力を
発揮するという。
生まれながらに戦う術を身につけた戦士であり、
弱肉強食のこの世界においても一目置かれた存在
なのだとか。
その情報が確かなら、獣人は人の姿から、獣の特徴を
持つ姿へと『変身』出来るはずである。
獣化した姿こそが本来の強さらしいので、油断はして
いなくとも本気ではない、という事なのだろうが……。
スフィアも未だ人の姿。
果たしてシオンは勝てるのか?
勝つか負けるか、どちらにせよ──
シオンとスフィア、ヨウムとグルーシス。
二組の戦いは、既に始まったのである。
俺はシュナの胸に抱かれつつ、その結末を見守る
のだった。
シオンとスフィアの戦いは、凄まじいの一言に
尽きた。
互いに戦闘に喜びを見出すタイプ──つまりは
戦闘狂だったので、周囲の事など目に入る事なく
戦いに没頭してしまっている。
現時点では、速さも力も互角。拮抗した戦いぶり
である。
だが、俺の見立てによるとスフィアの方が圧倒的に
分が悪いだろう。そのはずなのだが……。
シオンは大太刀も抜かず、素手でスフィアと
組み合っている。
殺すつもりがないからなのか、本気ではないという
意思表示なのか。格上の魔人相手にそんな余裕など
を見せている見せている場合ではないだろうに……。
シオンが参戦したのは予想外だったが、いずれにせよ
こうなってしまったのなら、全力で勝利を目指すべき
だろう。
「大丈夫かシオンの奴? 刀も抜かず、相手の土俵で
戦うつもりみたいだが……」
「大丈夫ですよリムル様。ああ見えて、シオンは兄様
次いで強いのです」
俺の呟きに答えたのはシュナだ。
シオンが
は見抜いているらしい。今もシオン達の戦いを把握
しているようだし、シュナのユニークスキルである
『解析者』も侮れない。
それにしても、シュナもスフィアの強さに気付いて
いるはず。それなのにシオンを心配する様子などを
見せないのは、それだけ信頼をしているという
証なのか。
「──確かに。正面からのならば、俺よりシオンの方
が強いでしょうね。非常に不本意ですが……」
俺の影に潜むソウエイも苦々しく認めたので、
シオンは本当に強いのだろう。
ただの残念秘書ではなかったのだ。
そんな会話を交わしつつ、戦いを観戦する俺達。
シオンとスフィアと格闘戦に没頭している。互いの
技と力を競い合い、少しずつ相手の力を曝け出せて
いくのだ。
そうして均衡を保ったまま、二人の戦いは続く──
一方、ヨウム達は。
こちらは最初から、高度な技の応酬である。
ヨウムは本当に強くなった。数ヶ月とは別人の
ように。
この町とファルムス王国周辺の都市や村々を巡り、
魔物退治をして英雄としての名声を高める日々。
そうした戦いの日々を経て経験を積んだのだろう。
大幅に
今では文句なく、Aランクの強者となっていた。
一見すると、膂力に任せて
だけの攻撃に見えるだろう。
しかしそれは間違いだ。その一撃は、計算され
尽くした最初の一撃しかない。相手がその一撃を
回避して油断した隙を狙い、そのまま切り返して
多段攻撃へと繋げるのだった。
軽々と
ような超人めいた技と力で、相手の魔人を追撃する
のだった。
相手の魔人──グルーシスも負けてはいない。
一撃必殺となろうかと思えるヨウムの斬撃を、
紙一重でかわしてみせる。それだけではなく、
変幻自在の動きをもって、ヨウムに向かって
反撃を仕掛けるのだ。
両手に持った大型のナイフで、凄まじく素早い
連続攻撃を披露する。それは舞を舞うように
美しく、獲物を追い詰め切り刻んでいく。
グルーシスという魔人が、いかに速さに自信を持って
いるのかわかるというものだった。
そんな魔人グルーシスを相手にしているにも
かかわらず、ヨウムは楽しげに笑っている。
実力を十全に発揮して魔人と戦えている事に、
自分の成長を実感しているのだろう。
攻撃と防御、攻守交替が瞬く間に繰り返される。
ヨウムに向けてナイフを投げるグルーシス。
なんなくそれをかわしていくヨウム。そしてそのまま
を放つ。
しかしグルーシスは、全方の地面へと転がるような
受身をとり難を逃れた。ヨウムの足元をすり抜ける
ように、見事に背後へと回ったのだ。
それを追撃しようとヨウムが振り返ったその時、
グルーシスが投擲していたナイフがブーメランの
ように回転をしながらグルーシスの手元に戻る。
両手のナイフを交差させる斬撃。
それを受けるのは、一本の大剣。実力伯仲。
感嘆の溜息が出るような、名勝負である。
「やるな、ヨウムの奴。あのグルーシスという
魔人と、互角に戦っているぞ……」
「左様ですね。見事な戦いぶりです」
俺は関心してヨウムを褒めた。俺を抱えたシュナも
同意である。
どうやらヨウム、俺が思っていた以上に成長していた
みたいだ。
ゴブタもそうだが、ハクロウの指導は何よりも速度を
重視する。少しでも反応が遅れると、手痛い扱きなど
受ける羽目になってしまう。それが嫌だったなら必然
などと、先読みの
それこそが、ヨウムの反応速度の秘密だった。
それに加えてもう一つ。
この鎧は軽量でありながら、非常に防御力が高いのが
特徴だ。だがそれ以上に、装着者の動きを補助して、
反応を高める効果があったのである。
魔素がが通う武器や防具は、所有者との相性によって
性能が変化する。使い込めば使い込む程に、その性能
が上昇するのだ。
この
に馴染んだのだろう。
ヨウムがここ数ヶ月の戦い中で、
自分の物とした証拠だと言える。
ヨウムはこの二つの要因により、魔人グルーシスに
遜色のない強さを身に付けていたのだ。
こうして、二組の戦いは熱を増していく。
そんな中──
シオンとスフィア、互いに相手の底を測るのに、
その攻撃はより苛烈さを増して……。
「ははは! こんなにオレを楽しませるとはな」
「フン、舐めるな獣人! 天を裂き地を砕く
鬼人の力、今こそ見せてあげるわ‼︎」
「はははは、いいぞ見せてみろ! そして、オレを
もっと楽しませるがいい!」
決着の時が訪れようとしていた。
スフィアが笑うながら、長く伸びた両手の爪でシオン
へと切り付ける。その鋭い爪は青白く発光し、発電を
してた。
スフィアは雷をを操る能力を持っているのだろう。
しかし、シオンも負けてはいない。
大太刀を抜く事のないままに、放電するスフィアの
鋭い爪を両手で受け止めたのだ。そしてその瞬間、
避雷針に雷が流れるが如く、シオンの体表を電流が
走り抜けた。
スフィアの爪はシオンの表皮を切り裂く事などはなく
受け止められている。そして青白い電流は地面へと
流されて、シオンに決定的なダメージはない。
それに気付いたスフィアが、ほう、と感心したように
目を細めた。
今シオンが使っているのは、〈
”金剛法”である。気を操り、身体を鋼鉄のように硬く
する技だ。そして体表を闘気をで守り、敵からの攻撃
を分散させる。
言うまでもないが、簡単に出来る技などではない。
それをシオンが実践で、手本になるほど見事に使い
こなして見せたのである。
「さあ覚悟しなさい! 次は、私の番ですよ──」
「ああ、来い! オレも血が滾って来たぜ‼︎」
スフィアの次はシオン。
そんな約束はないだろうに、シオンはさも当然である
とばかりに構えを取った。
ハクロウは素手での格闘術なども一通り教えてくれて
いるが、これは違う。シオンは威力のみを重視をした
ような、極大の魔力弾を放つみたいだ。何を考えて
とち狂ったのか、全身全霊を込めて
始めたのである。
ハクロウの技ならば、戦いの中で自然に決め技として
用いる。あんなに堂々と、全身から
放つような真似はしないのだ。戦いの最中にそんな隙
を見せれば、相手に攻撃する機会を与えられるだけに
なるのだから。
それなのに、スフィアもそれが当然であるがの如く、
両手を広げて待ち構えるつもりのようだ。
本当に戦闘狂の考える事は、俺にはサッパリ理解不能
である。
シオンの準備が整ったようだ。
戦闘としては致命的なのだが、観戦する者にとっては
短い時間が経過している。
その間、スフィアは楽しそうに笑いつつも決して
動かなかった。
そんなスフィアに向けて、笑みを見せるシオン。
「待たせたわね。では、喰らいなさい!」
シオンの両手の間に練り込まれた
力を秘めたそれを放とうとして──
「それまで!」
それは、戦いを告げる声。
シオンの前に突然、金色の錫杖が突き出された。
アルビスが制止に入ったのである。
気弾を放とうとしていたのはシオンだけでは
なかったようで、スフィアの前にもアルビスの
尻尾が翳されていた。
尻尾。
そう、アルビスは半人半蛇の獣人だった。上半身は
美しい女性のままに、下半身のみ黒い大蛇と化して
いた。
誰にも気付かれる事はなく本来の姿へと『変身』──
つまり、『獣身化』したのだろう。そして気配もなく
移動し、シオンとスフィアの戦いに割って入ったので
ある。
その身からは一切の
技量であった。
流石は三獣士。ここは素直に称賛するとしよう。
アルビスの制止にの叫びを聞き、グルーシスも戦いを
止めた。つられてヨウムも動きを止め、困惑していた
ようで俺へと視線を向ける。
俺も片手を上げてヨウムに頷く。
「これで満足か? それで、俺達は合格なのか?」
「ええ、充分に堪能しましたわ。ねえ、スフィア。
貴女もこれで認めるでしょう?」
「ああ。オレとしても不満はない。我等が対等に
付き合うべき価値は充分ある。そう確信したぜ」
一点の曇りもない笑顔で、スフィアが答えた。
その上──
「お前達も納得したな? これ以上人間だから文句を
言うのは、このオレが許さん!」
と、獣人族の同胞達に宣言してくれたのである。
ヨウムと戦ったグルーシスも頷き、言う。
「スフィア様の言う通りだ。俺とこれだけやり合える
人間なんざ、滅多にいない。お前等、それを踏まえて
礼儀を持って行動しやがれ!」
そう言って、高らかに笑った。そして、ヨウムに手を
差し出すグルーシス。
ヨウムも苦笑して応え、二人は友情が芽生えたのか、
固く握手したのである。
──和解が成立した瞬間であった。
アルビスの反応で確信していたが、やはりコイツ等の
思惑は、俺の睨んだ通りだったようである。
つまり、俺達を試していたのだ。ワザと俺達に喧嘩を
売り、俺達の反応を見たのだ。
おかしいなと思ったのは、スフィアが俺の事を
スライムと馬鹿にした時である。
何しろ、魔王カリオンは俺のスライムの姿を見て
知っているのだ。それを、自分の部下達に話して
いない訳がない。
それに──
友誼を結ぶ約束を、自分の名にかけて誓ってくれた
魔王カリオンが、俺がスライムだからと馬鹿にして
話をひっくり返したりはしないだろうと考えたので
ある。
スフィアが俺達を挑発するのに利用したのでは、と
ピンときた。相手の主を貶せば、ほぼ確実に暴発する
者が出るとでも考えたんだろう。
そして、もう一つの理由。
この獣人達だが……俺が思うに、余りにも素直
すぎるのだ
例えば、二つ名。
”
見ればその理由は明白だ。何しろ、下半身が蛇で頭
には二本の角が生えているからだ。枝分かれをした
龍のような角は黄金色に輝き、如何にも秘密などが
ありそうな特徴を有していた。
”
なのは間違いないと思う。先程の戦いなどでは雷撃を
纏った爪を武器としていたし、俺の考えは当たってる
はずだ
多分だが、この前来た ”
獣人で牙の攻撃が攻撃が得意だったりしそう得意そう
である。あるいは、硬い牙を武器にする黒豹統の獣人
なのかも知れないが……。
そんな風に、本来隠すべき特徴を二つ名にしてしまう
程に、正直な種族なのだろうと思ったのだ。
本当になんというか──獣人族とは、正面から
正々堂々と戦うのを誇りとする種族なのだろう。
そんな彼等が、主である魔王カリオンの命令に叛く
はずがない。
そう睨んだ俺の考えは正しかったのだ。
さて、残るはもう一組だが。
「シオン、お前もそれでいいか?」
未だ極大魔力弾を練り上げたままのシオンに声を
上げると、シオンは困ったように俺を見る。
「それは問題ないのですが……リムル様、コレ、
どうしましょう?」
コレとは、魔力弾の事だろう。
「消せないのか?」
「──無理です。といいますか、気力の限界です」
よく見ればシオンは全身を小刻みに震わせ、今にも
膨大な魔力弾を解き放ってしまいそうになっていた。
しかも、涙目である。
限界なのは一目瞭然であった。
ザワリと、シオンの周りから離れる一同。
「お、おい。落ち着け。そっとだ。そっと、ソレを
上に向けるんだ」
一番焦ったのは、標的にされているスフィアだろう。
アルビスなど、ササッと錫杖を手元に戻し、避難を
終えている。見事なまでの逃げ足の早さだ。
──蛇だから、足はないけど。
スフィアも後ずさろうとしたのだが、バチっとシオン
との間に電が走り、その動きを止めざる得なくなる。
どうやらスフィアの纏う雷光と、シオンの
をし合い、そんな絶妙な力場が出来上がっている
みたいなのだ。
「おい、気合いだぞ!」
シオンへと、必死に声援を送るスフィア。自分の命が
かかっているとあって、その声には特に必死さなどが
感じられる。
まったく、しょうがねーなシオンは。
自分でも制御出来なくなるくらい、全力で力を凝縮
させるなんて……。
「シオン、撃て!」
俺はシュナの腕から飛び出すと、シオンとスフィアの
間に素早く回り込んだ。そしてそのまま人化をして、
シオンに向けて左手を翳して叫ぶ。
「ですが──」
「大丈夫。俺を信じろ!」
「はい!」
シオンはアワアワと狼狽していたが、どの道、
既に限界だったのだ。
放たれる極大魔力弾。しかし、それは短い光芒を
残し、俺の左手に吸い込まれて消える。
俺がユニークスキル『
唖然する獣人族一行。
安堵して座り込むシオン。
呆れたように溜息を吐く俺。
そして、盛大に湧き上がる歓声。
こうして、戦場は落ち着きを取り戻したのだった。
ちなみに、もしも俺達が挑発に乗らなかった場合、
どうするつもりだったのか少し気になった。
「俺達が誘いに乗らなかったならどうするつもり
だったんだ?」
「む? それは困っただろうな。だが、戦う事も
出来ぬ腰抜けを、我等が友と認める事などはない。
この話はなかった事になっただろうが、カリオン様
も許して下さっただろうさ」
町へ案内をする道すがら聞いてみたのだが、実に
アッサリとした返事だった。
裏を読む必死はない、真っ直ぐな者達なのだ。
これならば、今後の交流も気持ち良く続ける事が
出来そうである。
そう考えて、俺の気持ちが楽になったのだった。
後まで読んでいただきありがとうございます‼︎
これからも皆さんが『応援』をしていただければ
『更新』の頻度が更に上がるそんな可能性がある
かもしれません‼︎
『他の投稿作品』もあるので是非ともそちらも
楽しんで見ていただければ本当にありがたいです‼︎