転生したらスライムだった件 ■■の魔王   作:灰ノ愚者

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今回は二月の『最新話』を無事に更新をすることが
できました‼︎



今回は『9833文字』まで頑張って書きましたが、
豆腐のようなクソナメクジメンタルの自分はきちんと
面白く書けているのかとても心配になります……(汗)
少なくて本当にすみません……(笑)


【お気に入り】や【しおり】、【投票】、【感想】
などいただければ、豆腐のようなメンタルで脆い
自分も更に『創作意欲』が増していきます。


2月27日に映画『蒼海の涙』が上映決定しました‼︎
本当におめでとうございます‼︎


面白く出来ているかどうか心配でいっぱいですが
一生懸命にたくさん書きました。


最後まで読んでいただければありがたいです‼︎


■■■■

その夜は歓迎の宴を催した。

 

 

シュナが腕によりをかけて大量の料理を準備して

くれたので、非常に楽しみにしていたのだ。

 

 

各種酒類も解禁である。

 

 

出来上がった料理を並べ終えると、宴が始まった。

 

 

見回りから帰還をしたゴブタがコミカルに踊って、

皆の笑いを誘う。

 

 

ハクロウが剣舞を披露し、獣人族からの沢山の尊敬を

勝ち取っていた。

 

 

シュナに声をかけ、玉砕をするドワーフ達。そのまま

自棄酒を飲み始めるまでがお約束である。

 

 

ヨウム達は堂々と賭け事を始めた。暇潰しのゲーム

として、麻雀を布教したのだ。

 

 

どうやら、先程ヨウムと戦ったグルーシスという

魔人も、興味本位で参加するようである。

 

 

それならば俺も参加しようとしたのだか、シュナに

怒られてしまった。

 

 

シュナ曰く、「リムル様は、賭け事が弱いのですから自重して下さい」との事。

 

 

自覚はある。

 

 

俺は熱くなると見境がなくなるからな。

 

 

脳内で『大賢者』が《その牌が南家の待ち牌である確率九十九%です》と忠告などをしてくれているというのに、『ここで通すのが(オトコ)だ! 確率なんてクソ喰らえ』と牌を捨て、直撃を喰らったりもした。

 

 

よくある話だった。

 

 

好きなのに下手な趣味、というものなのだろう。

 

 

少なくとも、『大賢者』を駆使すれば、百戦百勝は

間違いないだろうに……。

 

 

賭け事は、熱くなったら負けなのである。理解して

いても、止められない。

 

 

毎日の事だったのだ。

 

 

 

 

 

 

今回は、一応は接待が目的である。

 

 

シュナの言を聞き入れ、今日は獣人たちの聞き役に

なってやろう。そう思い、アルビスやスフィアの方を

向くと──

 

 

そこには、完全に出来上がった酔っ払いが二人。

 

 

必死に「それ以上飲むのをお止め下さい!」と制止を

する使者達。だが、彼等の主達は、そんな忠言を聞き

入れる気などないようである。

 

 

アルビスは酒樽を蛇の尻尾で抱きかかえるように、

グビグビと直接頭を突っ込んで勢いよく飲んでいる。

あれは林檎のブランデーで、非常にアルコール度数が

高いやつだ。

 

 

甘くまろやかで、後でゆっくり味わおうと隠していた

最上級品の酒である。

 

 

「誰だよ、樽ごと渡したのは……」

 

 

俺は悲しい気持ちになりつつも、視線をもう一人の

酔っ払いへと向けた。

 

 

そこで見たのは、白い大虎である。比喩ではなく、

見たままだ。

 

 

獣人かというレベルではなく、完全に獣の姿なって

しまったスフィアだったのだ。

 

 

こちらはこちらで、大杯に並々と注がれた蜂蜜酒(ミード)

ペロペロを舐めている。

 

 

それはもう、一心不乱に舐めていた。

 

 

──これは駄目だ!

 

 

というのが、俺の感想だった。

 

 

横に転がる樽十を越え、この二人がどれだけ飲んで

しまったのかは一目でわかる。

 

 

しかし、そんな事はいいんだ。蜂蜜とは言っても、

アピトから得られる希少なものではなく、巨大蜂蜜(ジャイアントハニービー)

の巣から取れる蜂蜜を利用してるし。天然モノなので

生産量は少ない酒ではあるのだが、そんなのは作れば

いいだけの事。

 

 

問題は、獣人として隠しておくべきであろうその本来

の姿を、思いっきり目の前で晒してしまってるという

事なのである。

 

 

「おいおい。獣人は『変身』した姿を、余り他人に

見せないものなのだろう?」

 

 

慌てて聞く俺。

 

 

ミリムに聞いたから間違いないと思ったのだが……

返事は驚くべきものだった。

 

 

「これはリムル殿、お恥ずかしい姿をお見せして

しまいまして──」

 

 

恥ずかしそうに答えてくれたのは、エンリオという名

の獣人だった。三獣士フォビオの腹心で、今回は俺に

そのお礼を述べに来てくれたのだそうだ。フォビオを

助けた事を、何度も何度も頭を必死に下げて感謝して

くれていた。

 

 

そんなエンリオが言う。

 

 

「確かに、獣化した姿は個人差があります。ですが、

それを見せてはならない、というようなそんな掟は

御座いません。ですがまあ、心を許した者以外には、

余り見せない姿なのは仰る通りでしょうな」

 

 

と、なんでもない事のように流されたのだ。

 

 

そしてエンリオは、ミリムが教えてくれた事などを、

より詳しく丁寧に教えてくれたのである。

 

 

「おいおい、それって獣人族の秘密なんじゃあ……」

 

 

「いいえ、そんな事は御座いませんぞ? これは別段

秘密でもなく、上位魔人ならば誰でも知っている事実

ですから」

 

 

我々は隠し事は苦手ですからなあ、と笑って続ける

エンリオ。どうやら本当に、獣人にとっては秘密でも

なんでもない話だったようである。

 

 

という事はミリムのヤツ──大して重大な話などでも

ないのに、さも秘密を打ち明けるというようなそんな

素振りで、俺を騙しただけだったのか……。

 

 

どうやら俺は、砂糖菓子などをまんまとせしめられて

いたらしい。チョロイと思って甘く見ていたのだが、

ミリムの方が一枚上手だったようである。

 

 

今度から油断しないようにしよう、俺はそう心の中に

誓ったのであった

 

 

 

 

 

獣人族御一行には、部屋に移ってもらった。

 

 

そちらの部屋にも酒樽を用意されている。秘密では

ないと言っても、女性が見せていい姿などではない

だろうし。お連れの皆さんにも、ゆっくりと寛いで

もらいたいしな。

 

 

そうして、歓迎の宴は無事に終了したのである。

 

 

 

 

 

明けて翌日。

 

 

爽快な表情で朝食の席に座る二人の美女。

 

 

スフィアとアルビスも、昨夜の酒はまったく残っては

いないようだ。酒豪なんてもんじゃないと、内心驚き

を押し隠す。

 

 

「昨日は本当に夢のようなそんなひと時でした。

大変に素晴らしい宴で、この感動を是非、我が主人

にも伝えようと存じます」

 

 

「おう、オレもあんなにあんなに美味い酒を飲んだ

のは初めてだ。あの味を知っただけでも、この国と

交流を持つのが正解だと思うぜ」

 

 

「これ、スフィア。そのような言い方は失礼ですよ。

ですが……、あのお酒は本当に濃厚で美味でした。

そう、あのように強い味わいは、私の生の中で記憶に

ないものでした。ええ、勿論料理も素晴らしかったの

ですが、やはりお酒の方が──」

 

 

二人揃って、料理ではなく酒をべた褒めである。

 

 

そんな話の中で、果物関係の伐採などに手を出せず、

豊富に収穫出来ないという話が出た。

 

 

実際の話、今の食糧事実は大幅に改善されている。

だがそれは、小麦や大麦といった主食となっている

穀物栽培や、効率が良くて副食となる芋栽培などを

重点的に行なっているからだ。

 

 

他にも、実験的に稲栽培にも手を出しているし、

優先すべきは米の品種改良なのである。

 

 

フューズ達に問い合わせたのだが、稲を栽培している

地方に心当たりなどはないそうであった。となれば、

自分自身で作るしかない。美味しいお米を作れる目処

が麦に回している耕地を水田にして、大規模に稲作を

始める予定なのである。

 

 

これは、決して俺の我侭だけで推し進めてる計画では

ない。米は非常に栄養価が凄く高く、麦など混ぜたり

して摂る事で、食のバランスが良くなるというもの。

 

 

肉体を持つ魔物達ならば、人間とそんなに体組成が

違わないというのもわかってきたので、バランスの

良い食事というものを目指す事にしたのだ。

 

 

まあ、米が手に入れば、日本酒なんかの量産も出来る

ようになるという、ちょっとしたそんな希望は持って

いるのだけれどね。

 

 

そうした理由もあり、果物の栽培などに手に回す余裕

はなく、新しい耕作地の開拓などにも手をつける暇は

ないのである。工事予定も目白押しで、ゲルドに無理

をさせているのだが現状だからだ。

 

 

俺としても甘味となる果物が欲しいのだが、まだまだ

飢えに対する備えが万全でない以上、贅沢を言う事は

出来ないと諦めていたのである。

 

 

 

 

 

そんな事を軽く説明した。

 

 

するとアルビスが──

 

 

「なるほど、そういう事ですか。それでは、我が国

ユーラザニアに奉納される果物を、コチラにまわす

ように手配致します。ですので──」

 

 

 

──それで酒を造って、こっちに寄越せ──

 

 

 

という副音声が聞こえた気がした。

 

 

「──割合は?」

 

 

俺の問いに、ニヤリと笑ってスフィアが答える。

 

 

「細かい事は任せる! オレは美味い酒が飲めれば

それでいいんだ。魔王領土の果実は品がいいから、

そこは期待していいぜ!」

 

 

そう言って、雑務一切をこちらに丸投げしてきた。

 

 

俺としても、そう簡単には返事出来ない所だったので

助かったと言える。

 

 

売りに出したりする訳ではなく自分達で消費する分

だけなのだとしても、出来上がった大量の酒類など

を運搬するのも一苦労だしな。

 

 

貨幣経済が成立するのなら、こんな物々交換で頭を

悩ませる必要もないのだが……。

 

 

獣王国では貨幣経済を理解はしても、その必要性の

なさから採用されていないのだそうだ。

 

 

通貨を用いぬ取引の、なんと面倒な事か。

 

 

その時ふと、そんな面倒に従事する専門家の存在を

思い出した。

 

 

そう言えば、コボルトの商人──代表はコビーという

名で呼ばれるようになっていた──達なら、魔王領土

などちょくちょく商業に出かけていると言ってたな。

ここは彼等に相談するのが良さそうだ。

 

 

早速だが来てもらうとしよう。

 

 

コビーは商人詰め所常駐しているので、呼べば直ぐに

来てくれたのだが……。

 

 

「り、リムル様、一体何事で──」

 

 

「コビーちゃん達は分かるけど、なんでロムルスくん

がいるのかな?」

 

 

コビーをこちらに呼んだというのに、要注意対象

である商人ロムルスがいたのである。

 

 

「コビー殿とは知り合いですので」

 

 

「は、はい! ロムルス様には恩義があります!」

 

 

リムルがロムルスに質問するとロムルスはコビーとは

知り合いだと言ってコビーに視線を向ける。すると、

コビーはロムルスの言葉を肯定するように頷く。

 

 

 

「エンデの商人のロムルス様ですね。フォビオ一件、

誠に申し訳ございません。我が主であるカリオン様に

代わって深くお詫びを申し上げます」

 

 

アルビスはロムルスにそう言って、丁寧に謝罪の言葉

を口にして頭を下げる。

 

 

「いやいや。別に構わないよ。別にこっちは被害は

なかったしね」

 

 

ロムルスがアルビスに平然とそう言う。

 

 

「ほう。テメェがフォビオやカリオン様が言っていた

ロムルスか、どの程度の実力なのか、オレがこの目で

確かめてやろうじゃねぇか!」

 

 

スフィアはそう言って、上機嫌になっていたからか

ロムルスを見て腕試しと言わんばかりに獣人らしく

血が滾り闘争本能を剥き出しにしてニヤリと笑う。

 

 

「控えなさいスフィア。カリオン様の言葉を忘れてた

のですか? それに無益な争いは控えるべきです」

 

 

「……チッ、分かっている」

 

 

アルビスがすぐにスフィアを諌めるとスフィアは不満

だったのか、舌打ちをして闘争本能が消える。

 

 

「誠に申し訳ありません。スフィアには厳しく言って

おきますので……」

 

 

「構いませんよ。こちらは問題はありませんから」

 

 

アルビスがロムルスに頭を下げると、ロムルスは

まるで大した事がないかのように、平然と答える。

 

 

「そう言ってもらえると、助かります。お約束の果実

は持って来ておりますので、部下のエンリオに案内を

させます」

 

 

「ありがとうございます。こっちとしても、有名な

三獣士様やカリオン様達とはこれからもお付き合い

出来たらと思っておりますので、どうかこれからも

ご贔屓にしていただけたらと思います」

 

 

「こちらこそ、そう思っております」

 

 

ロムルスはそう言って、握手するためにアルビスへ

手を差し出す。するとアルビスも手を差し出して握手

をした。

 

 

そんな中、ロムルスはアルビスの耳元へと近づいて、

 

 

 

「魔王カリオンにしっかりとお伝えください。

『次はない』、とね」

 

 

 

「──ッ‼︎ 」

 

 

ロムルスがそう言うと、アルビスは目を見開いて

視線をロムルスの方へと向けていた。

 

 

「それじゃあ、失礼させてもらいます」

 

 

ロムルスはそう言って、その場を去るとエンリオは

案内するためにロムルスの後を付いて行った。

 

 

 

 

 

 

「おい、アルビス。大丈夫か?」

 

 

引き攣つった表情を浮かべて震えているアルビスの

姿を見たスフィアは心配になったのか、声を掛けて

いた。

 

 

「え、ええ……」

 

 

アルビスはそう言って、一呼吸をした後、なんとか

スフィアに返事をする。

 

 

「スフィア……」

 

 

「なんだよ?」

 

 

アルビスの様子がおかしい事に気付きながらも、

首を傾げていた。

 

 

「決して、あの方に手を出すのは控えなさい。

部下達にも手を出さないように伝えてください」

 

 

「それ程までに注意するヤツなのかよ? 見た限り、

そんなに強く見えなかったぜ」

 

 

スフィアから見たロムルスからは妖気(オーラ)すらも一切

感じ取れなかったみたいで、アルビスが言うほど

脅威には感じられず、取るに足らない雑魚にしか

見えなかった。

 

 

「どうやら、フォビオが言っていた事は間違いなど

ではなかったみたいですね」

 

 

(監視として、エンリオを付けましょう……)

 

 

アルビスはそう言って、視線をロムルスが去った

方向へと向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、随分と質が良い林檎ばかりだね」

 

 

積荷の中には山積みの林檎が入っていた。

 

 

「カリオン様が迷惑をかけたその詫びの品だと、

そう言っておりました。ですので、受け取って

ください」

 

 

エンリオは笑顔でそう言うと、ロムルスは山積みに

なっていた林檎を一個手に取って眺めていた。

 

 

「確かに受け取りました。魔王カリオンの寛大な

配慮に感謝ですね」

 

 

「カリオン様としては、フォビオ様の一件を気にして

いたいましたし、何よりエンデと繋がりがある商人に

恩を売れると喜んでいました」

 

 

「そうなんだ……」

 

 

エンリオの言葉を聞いたロムルスは、興味なさそうに

返事をしていた。

 

 

「それで、これはどこに持って行きましょうか?」

 

 

「自分で運ぶから問題はないよ」

 

 

「そ、そうですか、わかりました」

 

 

エンリオは大量の林檎を運ぼうと言うが、ロムルスは

それを断るとエンリオは戸惑いながらも、返事をして

いた。

 

 

「魔王カリオンによろしくお願いします」

 

 

「はい。それでは、失礼します」

 

 

エンリオはそう言って、急いでアルビスやスフィア達

がいる場所へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

「さて、これから忙しくなるな」

 

 

ロムルスはそう言って、大量にある果物の積荷に

手を翳した瞬間、一瞬にして消えた。

 

 

「それに、そろそろ”例の計画” も最終段階に移行した

頃合いだろうな」

 

 

ロムルスはニヤリと笑って、右手を上に上げた瞬間、

ぐにゃりと歪んだ空間が現れた。

 

 

「『模倣の化身(イミテーション・アバター)』」

 

 

と言った瞬間、もう一人のロムルス(人形)が現れた。

 

 

「時間が惜しい。急ぐとするか」

 

 

そう言った後、ロムルスは『模倣の化身(イミテーション・アバター)』で作った

人形に肩に手を置いて、空間の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、期待しているよ。コビーちゃん!」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください! リムル様‼︎」

 

 

ロムルスと別れた後、リムルの色々な無茶振りをした

せいで、コビーは叫んでいた。だが、色々なやり取り

があったおかげか、落ち着いて冷静になっていた。

 

 

それから細かい内容の打ち合わせへと話は移った。

 

 

雑事の取り決めは従者の仕事のようで、エンリオの

部下の魔人が対応をしている。コビーも開き直って

からは商人らしさを見せて、臆する事なく交渉など

している。

 

 

そんなコビーを横目に、俺達はシュナの煎れてくれた

お茶で一息吐いた。

 

 

 

 

 

コボルトの商人は、ユーラザニアへの立ち入りなどは

認められていなかったのだそうだ。

 

 

それは何もコボルトに限った話だけではなく、弱者達

は立ち入る事などは決して出来ない修羅の国として、

獣王国ユーラザニアの名を馳せているのだという。

 

 

魔王カリオンが治める魔王領土全土から、中央へと

全ての富が献納される。故に、中央が欲するものは

全て満たされているのが普通だったのだそうだ。

 

 

コボルトの商人達は、そんな中央以外の被支配種族の

町や村を巡り、足りない必需品の手配を行うのが仕事

だったようである。

 

 

そんな状態から一気に御用商人まで格上げとなったと

あっては、コビーが目を目を白黒させてしまうのにも

頷けた。

 

 

これは、他の魔王領でも似たような感じらしい。

 

 

天空女王(スカイクイーン)”フレイという魔王の支配領域の場合は、

そもそも都市部に近付く事さえ、出来ないそうだ。

 

 

その天空の都──天翼国(てんよくこく)フルブロジアは、翼などを

持たない者は一切の進入を許されないのだそうだ。

 

 

噂では、天を突く山脈の中腹部をくり貫いて、積層型

都市空間を形成しているのだとか。

 

 

元建設関係に携わっていた身としては、是非とも一度

見学に訪れたいと願うものだが、話などを聞く限りは

難しそうである。

 

 

魔王ミリムの支配領域はここから遠すぎて、そもそも

行商が困難なレベルなのだそうだ。

 

 

唯一としての例外が、”人形傀儡師(マリオネットマスター)”クレイマンという

魔王で、全ての行商を自由に許可してるのだそうだ。

 

 

経済にも精通しているらしく、貨幣経済が成立をして

いるという。

 

 

東の帝国との取引も噂され、かなり洗練された思考を

持つ魔王だという印象を受けた。

 

 

ただし近隣の魔王の話を聞くに、豚頭帝(オークロード)を裏で操る

としたら、この魔王クレイマンしかいないだろうと

いう結論に落ち着くんだけどね。

 

 

財力があって、オーク達に大量の武具を用意出来そう

なのは、魔王クレイマンだけだろうし。

 

 

だが、証拠はない。

 

 

それに、魔王ではなく人間サイドのそんな思考などが

絡んでいた、という線も捨てきれない。

 

 

まあ今の所、この件保留である。

 

 

 

お茶の時間に、そんな話をアルビスやスフィアから

聞いた。

 

 

そうこうしていると、打ち合わせも無事に終わった

ようである。

 

 

「リムル様、不肖このコビー、本当に感謝の言葉も

御座いません。あのロムルス殿ではなく我が一族に、

このような大仕事をお任せ下さるとは──」

 

 

コビーは俺の前へきて跪き、感涙などしそうな勢いで

そう言った。今度は本当に、千切れそうな程に激しく

尻尾を振っている。

 

 

恐らくは自分達コボルトではなく、ロムルスに任せる

と思っていたのだろう。

 

 

「おうコビーちゃん。頑張ってくれよ。残念ながら

道の整備に取り掛かれるのが、まだまだ先の話に

なりそうだから、当分は移動に負担はかけるけど」

 

 

ゲルドには、ドワーフ王国への街道整備などに続き、

ブルムンド王国に向けての街道整備にもとにかく着手

させている。流石にこれ以上の同時進行をするのは、

ゲルドへの負担が増えすぎるというものだった。

 

 

「なんの! それが我等の仕事で御座います!」

 

 

コビーは俺の心配を吹き飛ばすように、晴れやかな

笑顔でそう返事をした。

 

 

犬の顔だが、嬉しそうな様子から、それが本音だと

一目でわかる。元々が悪事を行商する者達であった

ので、移動にはさほど苦痛を感じないそうだ。

 

 

「人手は足りているのかな?」

 

 

今更だが、肝心な事を聞いてみた。

 

 

「その点も大丈夫です。リムル様が、我等がこの町で

拠点を持つ事をお認め下さったそんなお陰でジュラの

大森林内での活動などがきちんと円滑に進むように

なっております。人員的には余裕がありますよ」

 

 

「そうか、それは良かった。では、腕の良い護衛を

こちらで用意しよう」

 

 

「ありがとう御座います。助かります!」

 

 

コビーは一頻りに俺に嬉しそう礼を述べると、表情を

引き締め決意に満ちた目付きとなって、自分達の拠点

へと駆け出して行った。

 

 

新たに舞い込んだ一世一代の大仕事に、全身全霊で

やる気になっているようだ。

 

 

良かった。本当に、良かった。

 

 

決まった商品のやり取りなら、転送魔法陣にて送る事

も可能ではあるのだが、決まった量しか不可能である

上に制限がある。少量ならともかく、こうした品々は

運送が基本なのだ。

 

 

それに、実際に品を見定め、更には等価交換などを

行わなければ、後の火種になる恐れもあった。

 

 

それにやはり、信用の置ける者を介在させるのが一番

なのである。その点、長い間小鬼族(ゴブリン)達との付き合いの

あったコボルトの商人ならば、この仕事を任せるのに

不足はない。

 

 

これ以上ない人選だと言えるだろう。

 

 

お陰で俺も安心して、煩わしい物々交換の悩みから

解放されたのである。

 

 

魔国連邦と獣王国ユーラザニアとの正式な交易は、

このようにして開始される事となったのだ。

 

 

 

 

 

 

それから数日滞在した後、三獣士であるスフィアと

アルビスは急いで獣王国ユーラザニアへと帰って

行った。

 

 

アルビス曰く、「カリオン様に伝えなければならない

事がある」との事。

 

 

配下である魔人エンリオや、その従者達は残ったまま

である。なんでも、この国の様々な技術などを学んで

くるように申し付けられたらしく、日々勉強の毎日を

送っている。

 

 

カイジンやドワーフ三兄弟の工房を見ては感心し、

建設中の建物を見ては熱心に強度などを調べていた。

また、街道整備を視察に出かけては、その効率の良さ

に驚いているようだった。

 

 

そしていつしか、実際に体験してみたいという話に

なったらしい。

 

 

「もしもお認め下さるなら、我等も一緒に働いて

みたいと存じます」

 

 

そう申請してきたのだ。

 

 

滞在期間などは特に取り決めていなかったのだが、

交代メンバー達が来るまではこの町で過ごしたい

との事。

 

 

リグルドと相談して、許可を出す事にした。

 

 

そしたら一月も経たない内に、一緒になって本格的な

作業をするようになっていたのだ。

 

 

思っていた以上に真面目で、気のいい奴等だった。

 

 

そんな獣人達の仲、一人だけ別行動を取る者もいる。

 

 

グルーシスだ。

 

 

エンリオ達は技術習得などを命じられたそうだが、

グルーシスは違うらしい。

 

 

「俺は謹慎中の”黒豹牙(コクヒョウガ)”フォビオ様に、リムル様方の

お役に立つようにとそう厳しく命じられております。

少しでも恩返しになれば、と──」

 

 

そう言って、町の警護を請け負ってくれたのだ。

 

 

とは言え、ゴブタ達と一緒に巡回などに出かけかけ、

弟子のヨウム達と一緒にハクロウの修行を受けたり、

結構好き勝手に行動しているだけに見えるけど。

 

 

まあ、楽しそうにしているのだから、特に問題は

ないだろう。

 

 

──こうして、獣王国ユーラザニアからの魔国連邦(テンペスト)

仲間達に自然と溶け込んでいったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結果は順調そうだね」

 

 

グレイはそう言いながら、空中都市エンデに戻って、

培養器などの大量の器具がある研究室である一つの

培養器を眺めていた。

 

 

「念の為に”原初の黄(ジョーヌ)”から()()を貰っておいて、

本当に良かったよ」

 

 

グレイは嬉しそうに笑いながらそう言って、灰色の

ローブの懐から大切に取り出したのは、”原初の黄(ジョーヌ)

から貰った混沌竜(カオスドラゴン)の遺骨で、その欠片を上に上げて

眺めていた。

 

 

グレイはある研究と実験をしていた。

 

 

 

それは、『人工的な魔王を生み出す』。それこそが、

グレイの目的である。

 

 

 

その為に必要な素材として注目して集めたのは、

混沌竜(カオスドラゴン)の遺骨とリムル=テンペストのスライム細胞。

 

 

そして、

 

 

「ミリムは本当に良くやってくれたよ」

 

 

ミリムが吹き飛ばしたはずの暴風妖渦(カリュブディス)の細胞を身体に

宿した『模倣の化身(イミテーション・アバター)』のグレイと瓜二つのロムルス(人形)としての自身と一万人以上の人間の魂などを含めた、

素晴らしい素材達を全て使って、研究室の培養器に

投入していた。

 

 

その結果、培養カプセルの中で漂ってる水色だった

スライム細胞は一瞬にして薄紅藤色に変化した。

 

 

そして人の姿へと変わって、かつてない程の妖気(オーラ)

膨れ上がって、一瞬にして培養カプセルに亀裂が

入っていた。

 

 

「これは、まさか……」

 

 

グレイは興味深そうに、今起きている培養カプセルの

異常事態を興味深そうに眺めながら近づくと、

 

 

 

「さっきから、ギャーたらギャーたら騒いでんじゃねぇよ」

 

 

 

「おいおい、これって……ッ‼︎」

 

 

グレイは目の前の光景に驚きを隠せなかった。

 

 

 

何故なら、目の前の培養カプセルから出て来たのが、

リムル=テンペストに似た姿の魔人が目の前にいた

からである。

 

 

リムルとは違って、赤い瞳に薄紅藤色の綺麗な髪で、

髪型はロングヘア。それ以外はリムルと全く同じ容姿

だった。

 

 

「ちょ、待っ──」

 

 

「っるっせぇよ‼︎」

 

 

グレイがリムルと同じ容姿をした魔人に制止をする

ように言うが、リムルと全く同じ容姿をした魔人は

そんなグレイの制止する言葉を無視して、そのまま

地面に叩き付けた。

 

 

「がはっ……」

 

 

「テメェの存在自体を捕食してやるよ」

 

 

リムルと同じ容姿をした魔人はそう言って、目の前に

倒れているグレイを一瞬にして捕食してしまった。

 

 

「さてと、名前がないのも不便だからな……名付ける

とするか」

 

 

リムルと同じ容姿をした魔人はそう言いながら、

少しだけ考え込んで、

 

 

 

「そうだな…… 「エミルス」で良いか。まあ、意味は

SLIME(スライム)の鏡映しだがな」

 

 

 

エミルスがニヤリと笑いながら自身の名付けすると、

エミルスの魂にその名前が刻まれた。

 

 

 

この日を境に、リムル=テンペストと同等以上の力を持つ一匹のスライム(怪物)が生まれた瞬間であった。

 




後まで読んでいただきありがとうございます‼︎


これからも皆さんが『応援』をしていただければ
『更新』の頻度が更に上がるそんな可能性がある
かもしれません‼︎

【報告】

今回は無事に『東方墨染ノ残花』の『修正』をして、
投稿作品『デート・ア・ライブ ■■■の精霊』
『五等分の花嫁 繋がり合う絆』などを近いうちに
『更新』する予定なので、是非とも楽しみにして
もらえたら本当にありがたいです‼︎


『他の投稿作品』もあるので是非ともそちらも
楽しんで見ていただければ本当にありがたいです‼︎
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