ことができました‼︎
今回は『10112文字』 までの膨大な量を頑張って
書きましたが、豆腐のようなクソナメクジメンタルの
自分はきちんと面白く書けているのかととても心配に
なります……(汗)
【お気に入り】や【しおり】、【投票】、【感想】
などいただければ、豆腐のようなそんなメンタルで
脆い自分も更に『創作意欲』が増していきます‼︎
面白く出来ているかどうか心配でいっぱいですが
一生懸命にたくさん書きました。
最後まで読んでいただいてもらえたら嬉しいです‼︎
エミルスがこの部屋から移動しようとした瞬間、
「いやー、とても面白いもの見させてもらったよ。
ついつい見惚れてしまったよ」
エミルスは声がする方へ視線を向けると、そこには
捕食されたはずのグレイが立っていた。
パンパンパンと両手で拍手をして、笑顔でエミルスの
魔素量や能力など利用して、自身の分身を無力化して
捕食するその姿を見て素直に賞賛する。
「チッ……まだ、生きてやがったか!」
エミルスは舌打ちしながら、壁に飾られていた刀を
手に取って、グレイに斬りかかってくる。
「ッ!」
グレイはすぐに急拵えで作ったその刀を取り出して、
エミルスの刃を受け止める。
「どこ見てんだよ? よそ見は良くねぇぜェ?
なぁ!」
その度に、鉄の強く打ち合った音が何度も鳴り響き
攻防戦が続く。
殺さない程度に入れた斬撃をエミルスの首筋に向けて
斬りかかるが、ギリギリのところで回避され分身体に
大量の魔素を流され消滅させられる。そこに生まれた
僅かな隙を狙い空中に殴り飛ばす。
「ガハッ──‼︎」
エミルスは蹴り飛ばされたその勢いを止めたと同時に
核激魔法を生成、分裂し、魔力弾をグレイに向け腕を
伸ばしグレイに向かって不規則に乱撃する。
すると、あることが分かった。
(不味い。このまま核激魔法を打たせたら──!)
グレイはすぐにエミルスの横腹を蹴り飛ばし地面に
叩きつける。
ドゴォォォォォン‼︎
かつてない程の地響きが周囲に響き立たせ砂埃などが
目の前に舞う、邪魔で仕方がないので砂埃を消す。
「
グレイがそう言った瞬間、グレイが一瞬にして四人
に増えた。
そして、蹴り飛ばされたエミルスを仰向けにさせて
四人掛かりで暴れないように手足を押さえる。
「はい。少し落ち着いて」
「ぅるっせぇ! 俺に触んじゃねぇ! 今すぐどけろ
クソ野郎……!」
グレイが落ち着くように言うが、エミルス本人は
聞く耳持たず、無我夢中になって暴れている。
「やれやれ、困ったね……」
グレイは困っていた。正直、リムル=テンペストの
劣化した量産型が生まれると思っていた。しかし、
素材が良過ぎたのか、リムル=テンペストよりも
強くなってる人工魔王が生まれていた。しかも、
しっかりと自我も芽生えている。
このまま、エミルスの自我を奪っても良いのだが、
しかし、これ程までの最高傑作を消してしまうのは
もったいない。
「おい外せよ! 俺はお前なんかに従う気なんて
ねぇからな!」
警戒心MAXの野良猫のようにグレイを睨みつける。
まるでワガママな子供を扱っているかのようだった。
取り敢えずエミルスを落ち着かせないとまともに話
すらも出来ない。
「エミルス。君に生きる意味を与えてあげるよ」
「何を言ってやがる……ッ!」
グレイがそう言うが、エミルスはギロリとグレイに
向けて殺意の宿った瞳で睨み付けてきたのである。
まったく、困ったものである。
ならば、
「リムル=テンペスト」
「ッ!」
リムルの名前を口にしたその瞬間、エミルスの動きが
一瞬して止まった。やはり、リムルの名は彼の脳内や
細胞などに刻まれているのだろう。
「リムル=テンペストよりも、君が優れているという
証明すれば、君が最強だという事になるよ」
「…………」
グレイがそう言うと、暴れていたエミルスの動きが
一瞬にして止まった。
「……本当に、リムル=テンペスト勝てば、俺が最強
だと証明出来るのか?」
グレイのそんな言葉に興味を持ったのか、エミルスは
視線をグレイに向けていた。どうやら、グレイの言葉
に思うところがあったのだろう。
警戒をしながらも、確認するかのようにグレイに
質問していた。
「もちろん。君が望むのなら」
グレイがエミルスにそう言った瞬間、覚悟決めたのか
エミルスの目は真剣になっていた。
そして。
「俺を強くしてほしい。
誰よりも強くしてほしい」
「強くなれるかは、君次第だね」
エミルスは目の前に立っているグレイに向かって、
打倒リムル=テンペストのその言葉を口にしていた。
熱を出して苦しんでいる子供が見える。
その額に乗せられた冷たく冷やした布。
温くなる前に新しい布を水で冷やし、絞る。
甲斐甲斐しく世話をする。
自分の子供ではないのに。
薄く目を開いたその子に、『大丈夫よ』と微笑んで
見せた。
安心したのか、再び目を閉じて眠りに入る子供。
繰り返される夢。
暗転。
場面毎に、子供は入れ替わる。
苦しそうな子供達。
──そう、それは夢であるはずなのに。俺の心を、
酷く重苦しくさせるのだ。
うーむ……。
せっかく眠る練習をして惰眠を貪れるように
なったのに、見る夢は重苦しいものばかり。
これは、俺に対する罰なのだろうか?
いや、そんなはずはない。
後ろ向きな思考は止めて、前向きに考えよう。
俺が暗い顔をしていると皆が心配するし、
明るくいかないとな──
そろそろドワーフ王ガゼルとの約束の日である。
長らく留守だったベニマルがようやく帰還したので、
安心してドワーフ王国へと出掛けられるというもので
ある。
もしもベニマルが遅れるようならば、予定を延期して
もらう手筈になっていたのだ。何しろ、俺が出かけて
いる間の国の守りが不安となるからだ。
ベニマルとリグルから、獣王国ユーラザニアの様子を
聞いた。
最初にベニマルが口を開く。
「戦士団は流石の一言です。一兵士に至るまで、
徹底的に鍛え上げられていましたよ。魔王カリオン
とリムル様を計算に入れず、俺達だけで戦った場合、
勝利出来るかどうかは怪しいですね」
ベニマルは主に、軍事面での視察を重点的に
行ったようだ。
その判断によると、獣人の軍団はかなりの力を
有していたという。
「向こうさんの使者も、こちらの戦闘訓練を褒めて
いたが……」
「そりゃあハクロウがいますからね。錬度で言えば、
ウチも負けてはいませんよ。だが、数と基礎能力の
違いなどは大きい。ハッキリ言って、
よりも獣人五万の方が危険です。戦争回避したのは
正解でしたよ」
自信家のベニマルをして、勝てると断言が出来ない
戦力。やはり、魔王軍というのは一筋縄ではいかない
ようだ。 なんにせよ戦争するのは最終手段なので、
そういう状況などにならないように交渉するのが賢い
外交というものなのだけれども。
「ま、それならそれで、正面から戦わないですむ
ように戦術を練った方がいいんじゃないか?」
「戦術、ですか?」
「うん。基本的には戦いは、相手の大将を倒せば
勝ちだろ? 集団として迫ってくる部隊などを潰す
んじゃなくて、その中でも指揮官だけを狙い撃ちに
すればいい。そして、横の繋がりや縦の繋がりを
なくしてしまえばいいんじゃないか?」
「指揮官を狙う……なるほど……」
「いや、難しく考えなくてもさ、
そうだっただろ? 二十万全滅させるんじゃなくて、
頭だけを潰す。部隊単位でそれをするだけの話だよ。
相手の頭を狙うように訓練などをしておけば、かなり
有利に戦況を動かせると思うよ」
「確かに。指揮系統を寸断してしまえば、相手は
烏合の衆という訳ですね」
「そうそう。言うまでもないのだけど、相手にそれを
やられたら面倒だろう? やられて嫌な事などを先に
すれば、こっちが有利に立てるって話さ。個々人の
技量を底上げをするのはとても難しいだろうから、
そうした連携を訓練させればいい。そしてこちらは
『思念伝達』なんかを利用して、誰が指揮官かすら
不明なように隠蔽すれば、ちょっとは戦力の底上げに
なるんじゃないか?」
「面白い。新しい訓練方法を思い付きましたよ。
最近ではハクロウの修行すらも音を上げなくなって
いるし、次の段階に進むには丁度いいタイミングだ」
「おう。じゃあ、そういう感じに頼むな」
ベニマルは嬉しそうにニヤリと笑った。
獣王カリオンの自慢の軍団を見て、危機感を抱いて
いたらしい。
だが、俺のアイデアに何かを閃いたのか、そうした
不安が吹き飛んだようだ。
俺の留守を守ると同時に、ハクロウと協力して魔物
の兵士達の鍛え上げを約束してくれたのだった。
続いて、リグル。
「ユーラザニアの建築物は、俺達の国に比べれば粗末
なものでした。しかし、王宮には贅が凝らされ、富の
一極集中が顕著のようですね。ですが、悪い意味では
ありません。住民達がそれを望んでいる、というのが
その理由です。魔王カリオンと、その配下達である
獣王戦士団の影響力などは凄まじく、民を遍く平穏に
守っているようでした」
流石は魔王カリオン。
自国の安全は、完璧に守っているようである。
あの覇気を思い出すだけで身震いしてしまっている
程なので、その報告も当然と頷けた。
リグルは報告を続ける。
「建築だけでなく、工芸その他も今の我が国の技術力
が上回っております」
「ほう。まあ、カイジン達が来てくれたその上に、
クロベエやシュナがいるからな。俺達の国の技術力
も満更じゃないってトコか。そう聞くと嬉しいな」
「ええ、リグルの言う通りですね。俺から見ても、
獣人やその庇護下の種族たちは質素な生活などを
しているようでした」
ほほう。
リグルだけではなく、ベニマルもそう感じたのか。
とすると、俺達の生活レベルはそれなりに向上して
いるという事だな。
豊かな国と言われる魔王の直轄領などと比べても、
遜色ないという事なのだから。
そう思っていると、リグルが更に続けて言った。
「しかし一点、目を見張る程に素晴らしいものが
御座いました」
「それはなんだ?」
「はい。農業です。彼の国には、我が国とは比べ物に
ならぬ広大な田畑が広がり、様々な農産物が彩り豊か
に実っておりました。流石は豊かなる大地。そして、
その大地を維持管理する確かな技術ですな」
そう言って、リグルが報告を終える。
なるほど、豊かなる大地か。
その実りの一部を輸入し、出来上がった商品を輸出
する契約を結んだが……それとは別に、大地を耕す
技術を習得出来ないだろうか?
「その技術は、俺達でも習得出来そうなものか?」
「……恐らくは、可能かと」
「よし! それじゃあ、次の使節団には、管理部門
からリリナに推薦された者達をメンバーに入れると
するか。そして、我が国にもその技術が応用可能か
どうか、念入りに調査してもらおう」
「そうですな。今では食糧事情はかなり改善されて
おりますが、いまだに試行錯誤を続けているものも
あります。そうした状況の改善に、何か役立つかも
知れません」
俺の提案に、リグルドも賛同した。
こうして、次回の使節団に何を重点的に勉強させる
とするか、その目的が決定したのである。
後の細かい事柄に関する打ち合わせはリグルド達に
任せて、俺は会議室を出た。
ドワーフ王国に向けて出発するので、細々とした
準備をする必要があるからだ。
ガゼル王へのお土産の選定や、商品の開発状況を資料
として纏めたり、俺自身が着る専用の服を用意したり
と忙しい……。
考えると面倒──じゃなくて、大変な作業なのだ。
当然のようにベニマルも付いて来る。
「あれ? 使節団の団長として、話をなど聞いて
いなくていいのか?」
「ああ、大丈夫ですよ。魔王カリオンは信用が出来る
人物でしたよ。道中への護衛などは必要でしょうが、
彼の御仁が我等を闇討ちするような心配は皆無です。
それが俺とリグル殿の共通の見解でして、次回からは
俺の代わりにリグル殿が団長として使節団を率いると
決まったのですよ」
「そうか、それならいいんだ。お前達が認めたの
ならば、魔王カリオンは力に頼るだけの愚物など
ではないって事だな」
「そうですね。実は喧嘩を売ってみたのですが、
笑っていなされましたし」
ちょおおっと待て! 何をサラッと重要な事を
言い出すんだ!?
「おま、それで大丈夫だったのか? 本当に怒ったり
はしていないんだな?」
「ええ。流石に〝
コテンパンにされましたしね。俺もまだまだです。
力任せの技に頼ってばかりでは駄目だと、ハクロウ
の言葉を思い出しましたよ。ミリム様に鍛えられて、
強くなったつもりだったんですがねえ──」
と、平然とのたまうベニマル。
駄目だ。ベニマルは外に出さない方がいい。
実際、あのロムルスにも喧嘩を売ってみてみたと
ソウエイやゴブタから聞いている。
しかし、ロムルス本人はそんなベニマルの挑発を
軽くいなしている。それどころか、興味すらない
示していないらしい。
ベニマルの行動には、本当に肝が冷えてしまう。
話が逸れてしまったが、リグルが団長になるのなら、
間違いなくその方が問題を起こさないだろう。
案外、リグルもそう思ってそれを提案したのかも
知れないな。
それに、俺はリムル様の留守を守る必要がありますし
──と、ベニマルは言った。
そうだな。ベニマルには、俺の留守を守るという
重大な仕事がある。
「任せたぞ」
「了解です。〝
勝ちましたし、魔王級のヤツが来ない限りは、皆を
守ってみせますよ!」
おお……。
喧嘩などを吹っかけた時点で褒めては駄目なんだが、
フォビオに勝つとは凄いな。これも全て、魔王ミリム
という格上相手の戦闘訓練の賜物か。
ベニマルも成長したものである。
攻撃的な性格では外に出すのは不安だが、留守を
守ってくれるならば安心だ。
今後は俺の外出頻度も増えるだろうし、ベニマルには
守りの要となってもらうべきだろう。
そして、出発の日。
着替えを済ませて、外に出た。
皆は慌ただしく準備しており、暇そうなのは俺だけ
である。
いや、他にもいた。
カイジンと、ドワーフ三兄弟である。
普段着ないような立派で綺麗な正装に身を包み、
思いつめたような表情でウロウロしている。
面白いくらいに緊張しているようだ。
「おはよう諸君!」
「あ、旦那!」
「「おはよう御座います!」」
「……」
ミルドは相変わらずずっと無口だな。無口なりに、
言いたい事が理解出来るのが不思議だけど。
四人は久しぶりの帰郷となる。
だから思いつめて、色々考えてしまっていたそうだ。
「だけど旦那のお陰で、また祖国に帰れます。
本当にありがてえ話で」
「本当ですよ。なあ、お前達?」
「まったくでさあ」
「……」
そう言われると照れるが、ミルドのそんな反応を見て
笑ってしまう。だが、四人が嬉しそうな表情している
のだから、俺としても良かったと思う。
何せ、四人から故国を奪ってしまう形になって
いたので、ずっと気がかりだったのだ。
「俺も嬉しいよ。お前達とのあの縁があって、本当
に良かった。カイジンには武器の作製だけではなく、
生産関連などの総責任者も任せているし。ガルムの
工房には、この国の防具類などを一手に任せている。
ドルドには工芸品だけではなく、魔法具作製まで。
ミルドにはこの国の建設部門の補佐と、各建築物の
設計すらにも携わってもらっているし。皆のお陰で
助かっているんだ」
「へへへ。そう言ってもらえると、職人冥利に尽きる
ってものでさあ!」
カイジンの言葉に、嬉しそうに頷く三兄弟。
本当に職人だよ、お前等は。俺も嬉しくなって、
一緒になって笑い合ったのだった。
そんなこんなで少し待つと、出発する準備が整った
ようである。
ドワーフ達との会話のお陰で、そんな重苦しい夢を
綺麗さっぱりと忘れる事が出来た。
楽しい気分で、旅立ったのである。
順調に進む道程。
ゲルド達の頑張りのお陰で、街道が綺麗に整備されて
いたからだ。
道が広く拡幅されて、馬車でも楽に通行可能と
なっていた。
その成果を享受すべく、今回は二台の馬車での
移動である。
いや違うな。
獣王国ユーラザニアからの使節団は虎車だった
のだが、俺達の場合は狼車になるか。
車をひくのは、ランガの配下たる
見事な体躯の狼達に車をひかれて、俺達は悠々と
道を進んでいたのである
今回の外遊に参加をするのは、俺とドワーフ達を
除いても十名近くになる。
先ずは、俺の第一秘書としてシオン。
第二秘書として、シュナ。シュナは秘書というより、
専属料理人という扱いにもなる。織物の商品説明など
なんかすらも頼めるので、今回は活躍をしてもらう事
になりそうだ。
実は、シオンには留守番をしてもらうつもりだった。
だがしかし、猛烈な反対により連れて行く事になった
のである。
「ズルイです! ズルイのです!! シュナ様だけ……
自分お一人で、リムル様と旅行だなんて──」
とまあ、泣くわ喚くわ。怪力任せに暴れるわ……。
ともかく、大変だった。
別に旅行ではなく、大真面目に仕事なんだけど──
と説明しても、聞く耳を持たなかったのである。
仕方ない──というか、説得が面倒だった──ので、
連れて行く事になった。
今は嬉しそうに、俺を胸に抱きニコニコ顔で狼車に
乗っている。
一台目の狼車へと乗るのは俺とシオンだけではなく、
シュナも同乗している。なので旅の間中、俺はシオン
とシュナに交互に抱かれる事になったのだった。
二台目の狼車にはドワーフ達四名が乗っているので、
向こうはさぞかしむさ苦しいだろう。だからなんの
かんのと言って、美人二人に構われる旅は楽しい
ものであると言えるのだ。
ちなみに、ランガも連れて来ている。ランガの姿は
見えないが、影から俺を守護してくれてるのである。 比喩ではなく、『影移動』を応用して、ずっと俺の影
の中に潜んでいるのだ。今も俺の
気持ち良さそうに目を細めているようだ。
窮屈じゃないか? とランガに聞いてみたのだが、
「問題ありません、我が主よ! 寧ろ、心地良さを
感じております」との答えが返ってきた。なので、
ずっと俺の影に潜むのを許しているのだ。
いざとなったら直ぐに呼び出せるので、俺としても
心強い。皆も護衛として適任だと言っていたので、
ランガは陰の護衛者として当分は影に入ってもらう
予定であった。
他には護衛部隊として、ゴブタ率いる数名の
ゴブタ直轄の部隊らしい。
その中に一人だけ、異常に抜けた感じのヤツがいた。
ゴブゾウという名の見習いだ。俺が適当に名付けた
一人なのだろうが、それにしても間抜けな顔をした
ヤツである。
「大丈夫なのかアイツは?」
「ゴブゾウっすか? 大丈夫っすよ!」
ちょっと抜けているけど、大丈夫だとゴブタは言った。
ちょっと抜けているゴブタが、ちょっと抜けている
というホブゴブリン。ボヘーっとした間抜けな顔を
見ていると、なんだか心配になってくる。
余り大丈夫ではなさそうだが、それを気にしては
負けだろう。一応は、スターウルフに乗りこなして
いるしな。
ゴブタ以下、六名の
俺達は街道を進む。
車体部分は安定しており、乗り心地はそれなりに
快適だ。通常の馬車ではあり得ないような速度、
時速四十キロ近くで走行しているにもかかわらず、
である。
その秘密は、独自の衝撃吸収装置にあった。車軸部分
を固定させず、独立させているのだ。そんな仕組みの
お陰で、衝撃などを吸収して高速移動にすらも対応が
出来ている。
これもまた、ドワーフの鍛冶技術の精巧さを証明する
作品なのである。
そして、タイヤにも秘密があった。
通常は、車輪の補強を行う程度だったらしいのだが、
それだけでは直ぐに傷んで壊れてしまう。そこで、
樹脂を固めてタイヤ代わりにして、衝撃吸収の一助
としたのだ。
樹脂は思ってた以上に柔軟で、丈夫だった。タイヤの
素材としては、元の世界の物にも引けを取らない性能
となったのである。
ゴブタなどは仕切りに感心し、興味深そうに車軸や
車輪を眺めていた。
なんでも昔、自分自身でも荷車を作ってみた事がある
そうで、それと比較したのだろう。感心をしたように
溜息を吐きつつ「凄いっすね! こういう風に作って
いれば良かったんすねえ!」と口にしていた。なので
今度ゴブタにも、小さな荷車を一緒に製作してやろう
と思ったのだった。
話が逸れた。
こうした工夫などの結果、俺達の旅が快適なものと
なっていた。
もっともそうした車体の性能以上に、ゲルド達が道を
整備して綺麗に平坦にしてくれていたのが最大の理由
なのは、言うまでもないだろう。
そうして旅を続けて二日目。
遠方にカナート大山脈が見えてきた。
道が整備されていたお陰で、実に楽で快適な旅程と
なっている。
移動距離にておよそ千キロ程になるが、森の中の移動
では大きく時間が掛かっていたのだ。
前回の旅と掛かった日数は同じでも、その内容は大幅
に改善されていたのである。
今回の場合、俺達は国賓扱いだ。
そんな俺達が全力疾走して相手国を訪れるのは、
流石にTPOを弁えていないと思えた。
それで今回は、余裕のある日程で進んで来たのだ。
前回とは違って、ある程度の区間毎に小屋まで用意
してある。工事の際に利用されたものだったのだが、
後に交易路となった時には旅館などとして利用出来る
ように。
なので、夜間の宿泊にも問題はなかったのだ。
旅の途中、舗装工事の最中の
偉そうな監督の厳しい指導の下、規律正しく作業など
が進められている。実に手馴れた感じで無駄がなく、
正直言うと、前世での工事現場よりも理路整然として
いるように見えた。
理想的な環境がそこにあったのだ。
「ご苦労さん!」
と気軽に労うと、全員一斉に跪き俺達の方へと礼を
してくれた。
「こ、これはリムル様! 工事の進捗状況は予定通り
で御座います。整地はつつがなく完了しまして、現在
は表面仕上げの段階となっております。ドワーフ王国
方面より折り返して参りましたので、この地より先は
全て完成した道で御座います!」
チラッと先を見渡せば、そこには綺麗に舗装された
道が連なって見えた。
砂利を敷き詰め、砕石を敷き均して強固に固めただけ
の路面。それだけでも十分に道としてのそんな役目を
果たしていたのだが、その上に切り出した石材を敷き
詰めてある。
所謂、石畳というヤツだ。
こんな短期間でこれだけの石材などを用意し均等に
並べるなど、前世ではどう考えても不可能である。
だがこの世界には、卑怯なまでに便利な
ものがあった。
ゲルドの所有しているユニークスキル『美食者』の
『胃袋』にて、ハイオーク間では小さな物資の運搬
──というよりは、転送──が行える。この性質を
利用すると、石切り場にて加工されたその石材が、
そのまま現場の作業員の手元に送られる。
そりゃあ、素晴らしく効率的ですよ。こんな楽な作業
方法などがあれば、前世の方でもどれだけ楽に仕事が
進められた事か……。
材料の置き場に頭を悩ませる事もなく、運搬に苦労を
する事もない。能力を最大限に利用した、実に魔物
らしい施工方法だったのだ。
だが、ハイオーク達が一生懸命に頑張ってくれている
のは本当だ。能力があるからサボっている、という
ような話ではないのである。
なので、俺は感謝の気持ちを伝える事にした。
「ほほう! よく頑張ってくれたね。じゃあ、今日は
早めに仕事を終えて、ゆっくりと休んでくれたまえ」
そう言って、『胃袋』から酒樽を幾つか取り出す。
そして、それをドンと地面に置いた。
「飲みすぎるなよ」
沸き起こる大歓声。
口々に述べられる感謝の言葉を受けて、その日は
その場にて逗留する事にしたのである。
翌日。
「「「リムル様、オハヨウ御座います!!」」」
俺がシオンに抱かれて小屋から外に出ると、そこには
整列した数百名のハイオーク兵がいた。
「うお!」
と、驚きの声を上げてしまう。
昨日は作業中で俺に挨拶出来なかった者達が、
朝の内からやって来て並んで待っていたらしい。
「うむ。御苦労!」
偉そうに、且つ満足そうに頷くのはシオンだ。
シュナは苦笑しつつ、皆に挨拶している。
ゴブタ達は「ひゃー! 壮観っすね!」などと囁き
あっていた。
ランガは我関せずとばかりに、俺の影の中へと潜り
込んでいる。道の良し悪しなどには興味がないので、
ランガにとっては他人事なのだろう。
俺はランガと違って、この先の完成した道の仕上がり
には興味があった。なので、数百名のハイオーク達に
感謝の言葉を述べたのは言うまでもない。
「皆の働きを嬉しく思う。今後も頼むぞ!」
という簡単なものだったが、皆の士気は大いに上昇
したようだった。
そして皆の挨拶を聞き、一人一人を労う。皆の顔が
笑顔になったので、俺としても嬉しい限りだ。
ちなみに昨夜褒美に渡した麦芽酒は好評だったので、
出発間際に隊長さんに数樽渡しておいた。
やはり、感謝の気持ちは大事なのだ。
今後陣中見舞いに出向く際は、嗜好品として酒類も
届けてやるように、申し渡しておこうとそう思った
のだった。
そうして再開した工事状況を一頻り見学してから、
その場を後にしたのである。
完成した道に入ってから、狼車の状態が安定した。
速度も若干速くなったように感じる。これならば、
工事した甲斐があったというものだ。
加工した石畳は、表面がザラついている。そのお陰で
車輪に装着した樹脂製タイヤと噛み合い、滑り止めに
なっているのだ。
雨の日でも、車輪が大きくブレたりしないよう配慮を
していたのである。それが車体への安定に繋がるとは
想定外だったが、ロムルス達みたいな旅をする商人達
には喜ばれそうなので嬉しい誤算だった。
俺は満足しつつ、狼車に揺られて進む。
そして四日目の昼。
ようやく目的地に着いたのであった。
最後まで読んでいただきありがとうございます‼︎
これからも皆さんが『応援』をしていただければ、
『更新』をする頻度が更に上がる可能性があるかも
しれません‼︎
今回の更新は『デート・ア・ライブ ■■■の精霊』
や『五等分の花嫁 繋がり合う絆』。そして更には、
『とある暗躍の幻視者』などを更新しますので、
見てもらえれば嬉しいです!
他にも『投稿作品』 がありますので、そちらの方も
よろしくお願いします!