転生したらスライムだった件 ■■の魔王   作:灰ノ愚者

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どうも皆さん‼︎ お久しぶりです‼︎


今回も出来るだけ早く更新をしている作品、
『転生したらスライムだった件 ■■の魔王』
『最新話』を更新させてもらいました‼︎


上手く楽しいお話に仕上がっているか、心配なって
しまう豆腐のようなとても脆くて繊細なメンタルの
自分としては、とても不安です……。


【お気に入り】や【投票】、【しおり】そして
【感想】などの『応援』していただけると本当に
ありがたいです‼︎


最後に『報告』がありますので是非とも楽しみ
にしてください。


最後まで読んでもらえたらとても嬉しいです‼︎


交渉の条件と辺境調査団

 

お馴染みの会議室に場所を移した。

 

 

ミリム服は、採寸が終わっているので新しいものを

用意する繋ぎだったらしい。なので、代用品に直ぐ

に着替える事が出来たようだ。

 

 

ミリムを甘やかすのもどうか思ったのが、結局は

昼食も用意した。気になる事を叫んでいたので、

詳しく話を聞きたいと思ったのも理由の一つ

である。

 

 

用意したサンドイッチを美味しそうに頬張る

ミリム。機嫌も直ったようで御の字だった。

 

 

会議室は緊張に包まれていた。

 

 

お気楽なのはミリムくらいのものである。

 

 

しかし、少し目を離すと問題が起こるとは、やはり

魔王は伊達ではないな。ミリムがいなくても起きた

問題だったかも知れないが、ここまで一瞬で拗れる

事はなかっただろうし。

 

 

まあ、起きた事は今更言っても仕方ない。今後の事

が重要なのだ。

 

 

「で、君達は何をしに来たんだ?」

 

 

俺は目覚めたフォビオに直球で質問した。

 

 

「フン。下等な魔人風情に、この俺が答える

とでも?」

 

 

そんなフォビオの返答に、ベニマルとシオンが

殺気だった。我慢するように目配せしたので、

不承不承だが成り行きを見守る事にしたようだ。

 

 

こちら側の面子は、俺にリグルド、ベニマル、

シオン、そしてロムルスさんとウツロさんだ。

後はミリムのみである。

 

 

フォビオ側は、フォビオと部下が三人。別に拘束

したりしていないので、態度が大きくなっている

ようである。

 

 

「下等と言うが、お前よりは俺の方が強いぞ。

それと、素直に答えるように忠告するよ。俺は魔王

カリオンとやらを知らないし、お前の態度次第では

カリオンは俺達と敵対する事になるんだぜ?

それともお前等は、このジュラの大森林全てを敵に

回すつもりなのか?」

 

 

お得意のハッタリを混ぜつつ、俺は尊大な態度で

そう告げた。

 

 

「ハン! スライム如きが、偉そうに言うもの

だな。この町は、こんな下等な魔物に従うのかよ?

雑魚ばかりだと大変だな。ミリム様に気に入られて

いるからと調子に乗るなよ?」

 

 

基本的に魔人は弱肉強食で、強さを信奉するきらい

がある。こんな言葉で一々反応していては、疲れる

だけなのだ。

 

 

それに、このフォビオという魔人の強さは本物だ。

 

 

魔王カリオンの三獣士にして”黒豹牙(コクヒョウガ)”の二つ名を

与えられる程の猛者。自分で豪語するだけであり、

かなりの魔素量(エネルギー)を誇っている。

 

 

ミリム相手では雑魚にしか見えないが、ベニマルや

シオンよりも強そうだ。

 

 

豚頭魔王(オーク・ディザスター)を喰った今の俺ならともかく、少し前の

俺では厳しい相手だった。

 

 

準魔王級に区別出来る程の、強力な魔人だった

のである。

 

 

俺の方が強いというのは多分間違いないと思うが、

試してみたいとは思わない。

 

 

面倒なだけだし、勝ったとしても得るものがない

からだ。

 

 

下手をすれば魔王カリオンの怒りを買い、冗談抜き

で戦争になりかねない。それは避けたいので、言葉

巧みに話を聞き出す必要があったのである。

 

 

「下等な魔物だと? おい、お前。ワタシの友達に

舐めた事を言うじゃないか?」

 

 

サンドイッチを食べ終わるなり、ミリムが怒り

始めた。

 

 

火薬庫どころか、爆弾そのもの。俺の交渉術を

生かす前に、ミリムが全てを台無しにしそうな

気がする。

 

 

だが俺も、ミリムの扱い方のコツを掴んだようだ。

食べ物で釣れば、簡単にミリムを大人しくさせる

事が出来るのである。

 

 

「ミリム、待て。お前、今度何かしたら、マジで

晩飯を抜くからな?」

 

 

「わ、わかった。大人しくするのだ」

 

 

ミリムが大人しくなった所で、聞き取り再開だ。

 

 

「さて、俺は確かにスライムだ。だが、俺がこの森

の三割を支配しているのは本当だし、そちらが

その気なら戦争するのも止むを得ないと思って

いる。なので、よく考えて返事をする事だ」

 

 

少々『威圧』を織り交ぜつつ、俺はフォビオに質問

を開始する。

 

 

すると、思ったよりも素直にフォビオは返事くれた

のである。

 

 

どうやら、ミリムに凄まれたのが効いたらしい。

俺の『威圧』じゃなかったのは残念だが、聞きたい

事が聞けたので良しとしよう。

 

 

不機嫌そうに語ってくれた内容によると……。

 

 

オークロードが謎の魔人達、生き残っていた方を

配下へとスカウトするように、魔王カリオンより

命じられてやって来たのだそうだ。

 

 

謎の魔人達というのは俺達の事だな。どうやら

ミリムと同じく、俺達の戦いを見ていた魔王が

他にもいたらしい。となると、ゲルミュッドが

言っていた後ろ盾の魔王とは、ミリムの事では

ない可能性もあるのか。

 

 

魔王が複数名関与しているとは思わなかったが、

考えてみるとミリムがそんな面倒な計画を立て

られるとは思えない。他の魔王だと考えるのが

自然だ。

 

 

話を戻そう。

 

 

 

オークロードにしろ謎の魔人達にしろ、勝利者は

強力に育って可能性があった。そこで、準魔王級

である”黒豹牙(コクヒョウガ)”フォビオが派遣されたのだそうだ。

 

 

魔王カリオンの着眼点は中々良かったと思うの

だが、残念ながらフォビオは脳筋過ぎた。俺を

落とすつもりなら、利益を提示出来る知能的な

魔人を寄越すべきだったな。

 

 

まあそれ以前に──

 

 

 

「カリオンのヤツ、互いの邪魔しないという

約束を破りおって……」

 

 

頬を膨らませて怒るミリム。そんなミリムを

恐るように、フォビオが目を逸らす。

 

 

せっかくの準魔王級の強者も、本物の魔王の前

には形無しだ。

 

 

プンプンと怒っているミリムを横目に、コイツが

いたんじゃあ、誰が来ても失敗だったろうな、

と思った。それと……カリオンとの約束とか聞き

捨てならない事を言ってるし、後で問い詰めねば

なるまい。

 

 

 

すると、

 

 

 

 

「まったく、魔王カリオンもどうやら人を選ぶ

目がないみたいだね」

 

 

「あ"?」

 

 

グレイがそう言うと不愉快だったのかフォビオは

低い声を出してギロッと殺気のこもった視線を

グレイに向けて準魔王級の妖気(オーラ)を抑えることなく

解放していた。

 

 

「テメェ…なんて言いやがった……」

 

 

「魔王カリオンの人選ミスなんじゃないのかって

言っているんだよ。この黒猫」

 

 

「ンだと‼︎ 雑魚のくせに調子に──」

 

 

フォビオは席から立ち上がってグレイに向かって

豹牙爆炎掌という技を放とうとした瞬間、

 

 

 

「お前こそ一体、何様のつもりなんだ」

 

 

 

グレイが低い声でフォビオにそう言うと、

 

 

 

「ぁ────」

 

 

フォビオは放とうしていた豹牙爆炎掌(ひょうがばくえんしょう)を霧散

させていた。

 

 

何故なら、グレイの『威圧』によってフォビオは

怯んでしまい動けなくなってしまったからだ。

 

 

「ろ、ロムルスくん……?」

 

 

「こ、これは……」

 

 

「い、一体、なにが……」

 

 

リムル達はグレイの『威圧』に言葉を発する

どころか動けずにいた。

 

 

「こ、これは……‼︎」

 

 

「ふ、フォビオ様…ッ‼︎」

 

 

「だ、大丈夫ですか⁉︎」

 

 

フォビオの三人の部下達は怯えながらもフォビオ

の心配して言うと

 

 

「テメェは、一体、何者なんだ……」

 

 

フォビオ顔を青ざめて歪めながらも額に大量の汗

をかいて恐る恐ると目の前にいるグレイに聞く

 

 

「別に誰だっていいでしょ?」

 

 

そもそもさ、と言ってフォビオに視線を向ける。

 

 

「リムル様達テンペストの魔人達を自分達の陣営

にスカウトしたいのならもっと利益を提示出来る

知能的な魔人を寄越すべきだったと思うけど?」

 

 

「俺には向いてないって、そう言いたいのかよ‼︎」

 

 

「実際、そうでしょ? いきなり来たと思えば

自分の力を誇示するためにいきなり自分よりも

弱い魔人を痛ぶり暴力を振るう。交渉という簡単な

事すらも出来ていないし自分の主の魔王カリオンの

顔に泥を塗っている事すらも分からないの?」

 

 

「んだと‼︎」

 

 

「ストップ‼︎ ストォォォォォップ‼︎」

 

 

俺は急いでフォビオとロムルスくんの間に割って

入りできるだけ大事にならないように仲裁をして

止めに入る。

 

 

「な、なにをしやがるんだ‼︎ 」

 

 

「リムル様?」

 

 

フォビオはそんな俺の行動に不愉快と思ったのか

視線をリムルに向けて怒りの声を出してグレイは

首を傾げこちらを見てくる。

 

 

「悪いけど、魔王カリオンに伝えてくれ。

日を改めて連絡をくれれば交渉に応じる、とな」

 

 

俺はフォビオにそう言って急ぎお引取り願った。

 

 

まあ、聞きたい話は聞けたしな……

 

 

それにミリムがいる以上、フォビオとしては力に

頼れない。俺とミリムとロムルスくんを睨みつけて

 

 

「きっと後悔させてやる!」

 

 

と舌打ちしながら捨て台詞を残して去って行った

のだった。

 

 

魔王カリオンへと伝言したが無駄だろうな。

伝えるか伝えないかはフォビオ任せなので、

自分に都合がいいようにしか伝えないと思う。

 

 

任務に失敗した以上は正確に報告した方が本人の為

なのだが、それを判断するのはフォビオだ。

 

 

こちらとしては魔王カリオンがどう出てもいいように、

彼の性格やその他、出来うる限りの情報をミリムから

仕入れておくべきだろう。

 

 

さて、どうやってミリムから話を聞くかだが……。

 

 

「よし、ミリム。詳しい話が聞いたい」

 

 

「それは駄目なのだ。お互いの邪魔しないという約束

をしたから、リムルにも教えることは出来ないぞ」

 

 

はい、秘密があると自白を頂きました。

 

 

ここからは、大人と子供の化かし合いである。

正直、負ける気がしない。

 

 

「あれあれ? それはお互いの事を秘密にしよう

って約束したのか?」

 

 

「──いや、それはしていないけど……。

でも、邪魔は──」

 

 

「大丈夫だって。カリオンだって、部下にミリム

の事を教えていただろ? 俺達は親友(マブダチ)なんだから、

お互い助け合うじゃん? だったら、俺もミリム以外

の魔王の事を知っておいた方がいいと思うんだよね。

それにほら、ミリムがどんな約束をしたのか知って

おかないと、俺が知らずにミリムの邪魔しちゃうかも

知れないしさ!」

 

 

親友(マブダチ)という言葉を強調しつつ、ミリムに聞いてみた。

 

 

「確かに、でも……。親友(マブダチ)──」

 

 

 

もう一押し。

 

 

 

「そうだ、今度俺が武器を作ってやるよ。やっぱ

親友(マブダチ)としては、ミリムが心配だしさ」

 

 

玩具(おもちゃ)で御機嫌を取る作戦に出てみた。

 

 

「わはははは! そうだな、やはり親友(マブダチ)は一番

大事なのだ!」

 

 

ミリム、陥落。チョロイ、あまりにもチョロ過ぎる。

 

 

 

「リムル様……物で買収するなんて……」

 

 

「ちょ⁉︎ ちょっと、ロムルスくん‼︎ 買収だなんて

人聞きが悪いぞ‼︎」

 

 

おいおい、「姑息ですね」というそんな目で見ない

でくれよ……これは買収などではなくて、これは

立派な大人の駆け引きの結果なのだよ。分かって

くれるかな? ロムルスくん!

 

 

俺はそう思いながら悪い笑みを浮かびそうになる

のをぐっと我慢し、ロムルスくんに返答しながらも

大人の余裕で頷いたのだった。

 

 

 

こうして、ミリムから情報を得る事に成功する。

 

 

 

ミリム以外の三名の魔王と、その企み。

 

 

今回の出来事と、その裏での遣り取りについて。

 

 

一連の謎について、ある程度の情報を聞く事が

出来たのだった。

 

 

 

しかし──

 

 

魔王達が、傀儡(かいらい)魔王(まおう)の誕生を企むとは……。

 

 

 

ミリムは単なる退屈しのぎのつもりだったよう

だが、これはかなり本格的な計画だったのでは

ないだろうか?

 

 

というか、それを邪魔した以上、俺達が狙われる

のも当然な訳で──

 

 

「これは……他の魔王も絡んでくるでしょうね──」

 

 

「なんという事ですじゃ……。トレイニー様にも

相談せねばなりますまい」

 

 

 

「大丈夫です。リムル様ならば、他の魔王畏れる

に足りません!」

 

 

一人を除いて、頭を抱える大問題だった。

 

 

 

「僕達もこれで失礼させてもらいますね」

 

 

「ロムルスくん。君達も出ていくのか?」

 

 

「えぇ、もうこの場所にいる理由はありません

からね」

 

 

リムルのおかげでミリムから有益な情報を引き出し

てくれたおかげでとても楽になった。

 

 

クレイマン、カリオン、フレイ、という名前が出て

きたがあまり聞いた事はない。おそらく僕よりも後

になって魔王になった新参の魔王達なのだろう。

 

 

そう考えている間、ある事が気になった。

 

 

それはシズである。さっきから黙っていたみたい

だがさっき傲慢な態度を取っていた魔王カリオン

の配下である三獣士の”黒豹牙(コクヒョウガ)”フォビオや魔王達の

企みを聞いたせいかかなり不愉快になって更には

不機嫌になっているのが仮面越しでも分かる。

 

 

なので、急いでシズの心のケアをしなければ

いけないのだ。

 

 

「という訳で失礼させていただきます。

行くよ。ウツロ」

 

 

「……分かった」

 

 

グレイは不機嫌そうにしているシズにそう言うと

シズは不機嫌そうに返事をしながらこの会議室を

後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、ベニマル」

 

 

「なんでしょうか、リムル様……」

 

 

俺はベニマルの名前を呼ぶとベニマルは何かを

察したのか真剣な表情を俺に向けて返事をする。

 

 

「どう思う?」

 

 

「それは、どっちの意味ですか?」

 

 

「もちろん戦闘面についてだ」

 

 

「そうですね……」

 

 

俺がベニマルにそう聞くとベニマルは右手を顎に

手を当てて少し考え込むような仕草をしていた。

 

 

「そうですね。ほんの僅かだったので分かり

ませんけど……」

 

 

 

 

恐らくなのですが、俺達が全員で束になっても

勝てる気がしませんね。

 

 

 

 

ベニマルはそう言って額から冷や汗を流しながら

困った表情を浮かべていた。

 

 

 

「あのフォビオって奴でも恐らくロムルス殿には

勝てないでしょうね」

 

 

俺もロムルスくん……いや、ロムルスのほんの僅か

だったが悍ましい『威圧』を感じたからだ。

 

 

「では、この私がリムル様の為にこの剛力丸で奴等

のところに行って叩っ斬ってやりましょう‼︎」

 

 

「うむ! ならばワタシもシオンと一緒に奴等と

軽く遊んでやるのだ‼︎」

 

 

 

「ちげえぇぇえええし‼︎ そんなこと絶対にしなくて

いいからな‼︎」

 

 

そんなシオンとミリムのお門違いな発言に

リムルは頭を抱えてかつてないほどの大声を

出していた。

 

 

まったくシオンとミリムの奴、ちゃんと話を

聞いていたのか本当に心配になるものである。

 

 

ほら、ベニマルすら呆れた顔してるじゃん……。

 

 

「と、とにかくだ‼︎ 彼等の正体は分からない以上、

シオンもミリムも絶対に勝手な行動をするなよ? 

この案件はソウエイ達隠密達に更に厳重に監視を

してもらうように伝えておくとする‼︎」

 

 

「了解しました」

 

 

「了解ですぞ」

 

 

「分かりました……」

 

 

「わかったのだ……」

 

 

 

俺はベニマル達に釘を指すようにそう言って

魔王ミリムの来襲とともに巻き起こった暴風は、

より勢い増しつつ俺達の国(テンペスト)を飲み込んでいく事

になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファルムス王国。

それは、西側諸国の玄関口と呼ばれる大国である。

 

 

東の帝国と西側諸国には、直接的な取り引きはない。

国家間の取り引きではなく、大商人が個人的に特産品

を流通させているのが現状である。

 

 

これら交易の大半は、ドワーフ王国──武装国家

ドワルゴンを通して行われている。武装国家では

あるが中立都市としての顔を持つ故に、ドワルゴン

を通す貿易は両陣営からも黙認されていたのだ。

 

 

そして、ファルムス王国は、ドワーフ王国に隣接

する国土を持つ。ジュラの大森林を通るルート以外

では、西側諸国がドワーフ王国に向かう為には

ファルムス王国を通るしかない。

 

 

危険な魔物が棲息するジュラの大森林を通るよりも

ファルムス王国を通る方が安全で、高い関税を

払ったとしても結局は安上がりとなる。商人が

こちらのルートを選ぶのは当然だと言えよう。

 

 

それはつまり珍しい東の帝国の品々だけでなく、

質の高いドワーフ製の武具もこのファルムス王国

を通して西側諸国へと流通する事を意味する。

 

 

故に、ファルムス王国の首都マリスは、各国から

人が集う商業都市として有名だったのだ。西側諸国

の玄関口と呼ばれる所以である。

 

 

そうした事情によりファルムス王国の国庫には、

交易品に掛ける高い関税や金払いの良い商人への

サービス業の税収からなる、膨大な富が集約されて

いた。

 

 

西方で一、二を争う程の豊かな国──それが、

ファルムス王国なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二ドル・マイガム伯爵は憤慨していた。

 

 

ファルムス王国は豊かな大国である。だがしかし、

中央政府の羽振りの良さは、辺境の領土を任されて

いる貴族には無縁のもの。富は中央に集約し再分配

されず、二ドル・マイガム伯爵領が納めなければ

ならない税を支払う必要があったのだ。

 

 

それなのに、森の脅威から国土を守る防衛任務

だけは、厳しく責務として担わされていた。

 

 

二ドル伯爵の憤慨は、そうした中央への不満から

くるものだった。

 

 

「そんな馬鹿な話があるか‼︎」

 

 

先程の財務大臣の言葉を思い出し、吐き捨てるよう

に罵る。

 

 

思い出すのも腹立たしい。

 

 

 

『”暴風竜”の脅威は消滅した。故に、中央政府より

支給していた別対策援助金の支払いは本日を以て

終了する』

 

 

 

そう言って、一方的に話を打ち切られた。中央に

呼びつけた上で、三時間も待たされたあげくに、

である。

 

 

確かに、今までの援助金は非常に助けになっていた。

 

 

ジュラの大森林に接する伯爵領は、ファルムス王国

の辺境に位置する防衛の要なのだ。だがそれは辺境

だけの問題ではなく、ファルムス王国全土の問題で

あるはずだった。

 

 

「それを、恩着せがましく何様だ!」

 

 

怒りのあまり、思った事が口に出るのを

止められない。二ドル・マイガム伯爵はそんな

自分をどうする事も出来ないままに、今後の領地

運営について考える。

 

 

封印されていたとはいえ、”暴風竜”ヴェルドラが

特にS級の脅威である以上、放置は出来ない。

だからこそ中央政府は、辺境領に対し特別対策

援助金の打ち切りは理にかなっていると言えなく

もない。

 

 

しかし、今は時期が悪い。

 

 

”暴風竜”は魔物にとっても脅威だった。その脅威

の消滅が意味するのは、支配者が消えた事による

魔物の動きの活発化である。

 

 

辺境の警備をより強化する必要があるのに、

このタイミングでの支援打ち切り。

 

 

二ドル伯爵の憤慨の原因はこれであった。

 

 

中央政府にも言い分があろうが、二ドル伯爵に

とっては関係ない。

 

 

今後、どう領地を守るべきか……。

 

 

傭兵を雇うにも金がいる。自由組合の冒険者は、

いざという時にあてにならない。

 

 

本来ならば中央政府が頼みの綱となるべきなのに、

事態を全く把握していない無能ぶり。

 

 

万が一にも二ドル・マイガム伯爵領が魔物の群れに

飲み込まれでもしたら、周辺諸国や大商人に対する

信用を失う事になる。そうなった時に一番困る

のは、それを許した中央政府だというのに……。

 

 

二ドル伯爵は自分の責を棚に上げ、中央政府への

罵詈雑言を口にする。そして少し気が晴れたのか、

馬車の中でゆっくりと溜め息を吐いた。

 

 

最後の希望の王家だが……二ドルは国王の顔を思い

浮かべ絶望する。あの強欲な国王が、辺境の領主の

事を慮る事などないだろう。口にすると不敬となる

が、それが偽らざる二ドル伯爵の感想だった。

 

 

”暴風竜”という名目がなくなった今、下手をすれば

増税されるおそれさえあった。

 

 

二ドル・マイガム伯爵領が面しているのは、中央と

ジュラの大森林のみである。

 

 

他国から侵略に備える理由はないので、軍隊を常備

する必要はなかった。実際の所、魔物や魔獣に

備えた伯爵領軍は、騎士百名程度の小規模なもの

だったのである。

 

 

その事に思い至って、二ドルは顔をしかめる。

 

 

正直に言うならば、特別対策援助金は二ドル伯爵

が着服していた。

 

 

”暴風竜”ヴェルドラが封印されて以降、ジュラの

大森林への警戒を怠らぬようにと支給され続けて

いた特別対策援助金。だが、先にも述べた理由で

大規模な軍隊を保有する意味もなかったこの地方

では、魔物への対策のみで事足りたのである。

 

 

特にここ十数年の間に自由組合が台頭してきた

事で、魔物対策は格段に低料金で済ます事が

出来るようになっていた。

 

 

今回の事態は、本来行うべき対策を怠っていた

二ドル伯爵の、自業自得という側面も併せ持って

いたのだ。

 

 

その事を自覚しつつも、二ドル伯爵は苦々しい

思いを捨て切れなかった。

 

 

 

 

事の始まりは、西方聖教会からの通達である。

 

 

魔法通信にて”暴風竜”の消滅が西方聖教会より

正式発表されるなり、二ドル伯爵としても

動かざるを得ないと悟った。

 

 

西方聖教会とは、神聖法皇王国ルベリオスの国境

である。唯一神ルミナスを絶対神と定め、西側諸国

で遍く信仰されている宗教の総本山だった。

 

 

西方聖教会が広く信仰されているのには理由

がある。

 

 

一人でAランクの戦力を超えるとも噂される

最強の騎士──聖騎士(ホーリーナイト)達を従える組織であり、

対魔物のエキスパートとして信頼されている

からだ。

 

 

魔物の殲滅を教義とし、小国対応困難な魔物が

出現した際などは聖騎士団(クルセイダース)を動員し助けとなって

くれる。

 

 

そうした”善意”から成り立つ組織である以上、

その発表に間違いなど考えられない。

 

 

西方聖教会が魔物の活性化を警戒するように警告

した以上、それはそれは起こると考えるべき

なのだ。

 

 

しぶしぶではあったが、二ドル伯爵騎士団の増強を

働きかけた。

 

 

ジュラの大森林への警戒任務だけならば、騎士百名

だけでも可能である。だが、魔物の暴走など発生

した場合、それに対する備えがなくなってしまう

のは問題だ。

 

 

騎士団は動かせない。それが、二ドル伯爵の出した

結論である。

 

 

緊急時を理由に退役した者なども呼び戻し、普段の

三倍近い数を揃える事には成功した。

 

 

しかし、それだけでは不安があった。魔物達に

新たな秩序が生まれるまで、少なくとも十年は

かかるだろう。退役者に頼るばかりでは、この先

十年も耐えるのは難しい。

 

 

自由組合所属の冒険者達の微用は、財政への圧迫

が問題となる。

 

 

緊急招集を発令するのは最後の手段であり、今は

各人よる任意よる働きに期待するしかない。

 

 

冒険者達は森周辺の魔物討伐する役割を請け負って

くれるが、危険度ランク評価により高額な依頼料が

発生するのだ。普段から常駐させるなど、もっての

外だったのだ。

 

 

だがそれでも、最悪の場合は自由組合への依頼も

考慮に入れていた。援助金を使い込んでいたと

いっても、領地運営が逼迫する程ではない。

二ドル伯爵の遊興資金に当てられていただけなの

だから。

 

 

退役者が騎士団に復帰してしている今の内に、

新たな若手の育成取り組むしかない──二ドル伯爵

はそう考えていた。

 

 

二ドル伯爵なりに、一応の対策を立てたのだ。

 

 

この後にを及んでは金を惜しんでいる場合ではない

と、援助金だけでなく私財も投じていた。そして

ようやく目処が立ったのだが──そんな矢先の中央

への召喚である。

 

 

そして聞かされたのが、特別対策援助金の打ち切り

宣告だった。二ドル伯爵が慌れるのも無理はない話

だったのだ。

 

 

今まで対策を怠っていた上に、資金の着服までして

いたのでは、一切の同情など出来ないのだが……。

 

 

自分の領地に戻る馬車の中、二ドル伯爵は今後の

対策に頭を悩ませ続けた。

 

 

援助金の打ち切りの事で頭がいっぱいの二ドル伯爵

には、それ以上の難問が待ち構えているなど想像

する余裕はない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自領に帰り着いた二ドル伯爵を待ち構えていた

のは、領内自由組合支部長(ギルドマスター)フランツからの面会

の申し出であった。

 

 

今後の領地防衛について相談したい事があった

二ドル伯爵はこれを了承し、翌日には話し合いの場

が設けられる事になった。

 

 

悠長な事を言っている場合ではないと凄むフランツ

に押し切られた感はあるが、普段穏やかな人物と

して知られるフランツが鬼気迫る様子だったという

のが気になった。二ドル伯爵は嫌な予感を覚え、

本来の手順を無視する形で面会許可を出したの

だった。

 

 

そして、話し合いの席にて。

 

 

「未確認の情報ですが、豚頭帝(オークロード)が出現したとの事

で御座います──」

 

 

フランツが挨拶もそこそこに切り出した話に、

二ドル伯爵は気絶しそうになった。

 

 

 

大問題である。

 

 

「……なんと申した? オークロードだと⁉︎

未確認とはどういう事だ?」

 

 

激昂する事で自分を奮い立たせて、二ドル伯爵は

フランツに問い質した。

 

 

フランツは動じる事なく、淡々と状況を説明する。

 

 

ブルムンド王国の冒険者からオークロード出現の噂

が出ている、と。

 

 

「我等の要求としては、この事態を見極める為の

協力を要請したいのです。具体的に言いますと、

調査団の派遣をお願いしたい」

 

 

自由組合支部長(ギルドマスター)の顔となったフランツは激昂する

二ドル伯爵に要求を突きつけた。これは何も無茶な

自由組合は慈善団体ではなく、ましてや国家の下に

位置する組織でもない。相互協力関係にある、

国家の枠組みを超えた組織なのだから。

 

 

「調査を依頼されるのでしたら、特部価格で

お受けしますが──」

 

 

「黙れ! この強欲が‼︎」

 

 

貴方には言われたくないと思ったものの、フランツ

は表情に出さずに黙るのみ。

 

 

どちらにせよ、調査は必要なのだ。

 

 

フランツとしても、組合員を守る義務がある。

報酬もなしに危険な任務を請け負う事は出来ない。

 

 

通常の場合、魔物の討伐依頼が出されるまでには

手順がある。

 

 

村から町からの正式な依頼として、自由組合に情報

が寄せられる。目撃情報などから魔物の危険度を

割り出し、場合によっては適切な者が調査に赴いて

いた。

 

 

自由組合の規定により、明確に勝てない魔物の討伐

依頼は受けさせないという方針があった。危険な

任務であれば尚更、事前の調査により適切レベルを

知る事が何よりも重要となるのだ。

 

 

何しろ魔物を狩ろうと思ったら、同格の冒険者

複数名──組合の規定では三名以上──が必要

なのだ。一対一で勝てるというのが昇級時の判定

だったが、安全率を計算してそう決まっていた。

 

 

危険度ランクに満たない格下の冒険者が複数名に

向かったとしても、大概の場合は全滅する。勝てた

としても何名かは確実に死ぬし、生き残った者にも

重篤な怪我を負う場合がほとんどだったのである。

 

 

普段であれば余裕を持って対処可能なのだが、

ここ最近は魔物の出現頻度が高過ぎた。

 

 

手が回らないのである。

 

 

依頼を受けて討伐に向かい、そして戻って来る。

村や町を移動する、そのタイムラグが問題となり、

冒険者が不足し始めていたのである。

 

 

村々を巡回し、依頼を待たずに討伐する役目を

担う組織が必要という状況であったのだ。

 

 

フランツが調査団の派遣を要求したのは、至極当然

の話だった。

 

 

状況を懇切丁寧に説明され、二ドル伯爵は黙る

しかない。

 

 

町を守るという理由から騎士団は動かしたくない

が、さりとて周辺の村々を見捨てる訳にも

いかない。税収がある以上、二ドル伯爵には彼等

を守る義務があるのだ。調査団として冒険者が

出向いてしまうと、村々を守る事も出来なくなる。

それはひいては二ドル伯爵の首を絞める事になる

だろう。

 

 

フランツの説明は理論整然としており、二ドル伯爵

が口を挟む余地はない。

 

 

実際に人手が足りないからこそ、フランツから面会

を申し込んで来たのだろうから。

 

 

そしてオークロードだ。あの全てを喰らうという

化物が出現したとなると、放置しておける問題では

ない。さっさと中央政府に具申し、援軍の派遣を

申し出なければならない。

 

 

その為にも、情報を得るのは最優先課題だった。

中央を動かすにも、確かな情報が必要なのだから。

 

 

調査は行う必要かある。それも、早急に──

 

 

「──そうでした。これも未確認である為に

言い難いのですが……」

 

 

調査団の派遣をどうするか思案し始めた二ドル伯爵

に、フランツが重々しく口を開く。

 

 

その表情は苦りきっており、不吉な予感を二ドル

伯爵に抱かせるものだった。

 

 

「もったいぶらず、申してみよ」

 

 

「では失礼して。オークロードの軍勢は──」

 

 

「待て、軍勢だと⁉︎ まさか、もうそこまで育って

いるというのか⁉︎」

 

 

「はい、残念ながらそのようでして……。

で、その数なのですが、およそ──二十万、だと」

 

 

「──っ、はああ? そんな馬鹿な話が

あるかぁーー‼︎」

 

 

絶叫する二ドル伯爵。だが、フランツはピクリとも

表情を動かさない。

 

 

冗談でこんな話をするはずもなく、二ドル伯爵にも

これが本当の話なのだと理解は出来るのだ。しかし

それを認めるのは難しい。この話が余りにも現実

離れし過ぎていたからである。

 

 

「確信はあるのだろうな?」

 

 

気絶しなかった自分を褒めてやりたいと思いつつ、

二ドル伯爵は問うた。

 

 

「状況証拠から、かなりの確率で真実だと判断

しております」

 

 

「対策は?」

 

 

「軍勢の進行方向を見極め、速やかな避難誘導

しかありますまい──」

 

 

「町を見捨てろ、と?」

 

 

「勝てる算段がおありでしたら、我々は止めは

致しませんよ。ただし、依頼として協力せよと

申されましても、具体的な作戦を聞かない限り

引き受ける事は出来ませんがね」

 

 

「もう良い。勝てる算段など、あるはずも

なかろう」

 

 

ガックリと項垂れつつ、二ドル伯爵は力なく

そう呟く。

 

 

「それでは、調査団の件はお任せ致します」

 

 

フランツは最後に念を押すと、速やかに部屋を

退出して行った。

 

 

 

二ドル伯爵は考える。

 

 

町を見捨てる事になるかどうかはともかく、

最悪の場合に備える必要はある、と。

 

 

であれば、騎士団は動かせない。だが、調査団は

必要だ。

 

 

どうすればいいかのか?

 

 

今までなんの対策も行っていなかったツケが

怒涛の如くやって来た感じだが、文句を言っても

始まらなかった。

 

 

悩んだ末、名案を思いつく二ドル伯爵。

 

 

情報さえ入手出来ればそれでいい。それならば

転移魔法が使える魔法使いを派遣し、調査が終了

次第帰って来させればいいのだ。

 

 

護衛の者共には事情を知らせず、現地まで保てば

それでいい。死んでもいい者を集め、調査団を

立ち上げれば支払う金も少なくて済むというもの

だった。

 

 

生きて帰ってきたならば、それはその時。

重要なのは、オークロードの動向なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

そのような事情を受けて、二ドル・マイガム伯爵

が用意した組織。

 

 

その名を、辺境調査団。

 

 

その数、三十名。

 

 

村で食い詰めた者が町へ出て悪さをして捕まったり、

町で喧嘩自慢が暴れて捕まったり。そうした小悪党

収容している矯正施設があった。

 

 

騎士団の下働きを強制して行わせ、ある時は、

騎士団の模擬戦の相手を務めさせる。そうした、

矯正という名の下働きを行わされる者達。彼等の

一人に団長を任せて今回の調査に赴かせる。

 

 

二ドル伯爵からすれば、彼等が死んでもなんの

痛痒も感じない。懐も痛まないので、望ましい

くらいであった。

 

 

その程度の考えで集めた者達だったのだが……。

 

 

二ドル伯爵の思惑とは異なる組織となった。

 

 

 

「ふん、強欲の狸が。まあ自由をくれたのだと、

前向きに受け取っておくさ」

 

 

三十人の荒くれ共を纏める男が嘯く。

 

 

辺境調査団の団長に任命された男、ヨウム。

 

 

目端が利く精悍な若者であり、油断のならない

目付きをした男であった。

 

 

褐色に日焼けしたしなやかな肉体は、筋肉に

覆われて引き締まっている。背はそれほど高く

ないが、正面に立つと威圧されるような怖じ気を

感じる。それは、ヨウム覇気に気圧されるからだ。

 

 

どちらかと言えば整った顔立ちしているが、

その酷薄そうな笑みにより近寄りがたい雰囲気を

醸し出していた。

 

 

本来なら、小悪党から暗黒街のボスへと上り詰めて

もおかしくない男であった。しかしヨウムは、

なんの因果か辺境調査団を率いてジュラの奥地を

目指して行った。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます‼︎


これからも『応援』などをしていただけたら
更に投稿する頻度が早くなるかもしれません。


それと『他にも投稿している作品』もありますので
そちらも見ていただければとてもありがたいです‼︎




【報告】

『デート・ア・ライブ ■■■の精霊』を優先して
更新する可能性があるので、期待していただけたら
本当にありがたいです‼︎
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