転生したらスライムだった件 ■■の魔王   作:灰ノ愚者

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今回は八月に入ってからなんとかすぐに『最新話』
を無事に更新をすることができました‼︎


今回は『15297文字』までの膨大な量を頑張って
書きましたが豆腐のようなクソナメクジメンタルの
自分はきちんと面白く書けているのかとても心配に
なります……(汗)


【お気に入り】や【しおり】、【投票】、【感想】
などいただければ、豆腐のような脆いメンタルで
脆い自分も更に『創作意欲』が増していきます‼︎


面白く出来ているかどうか心配でいっぱいですが
一生懸命にたくさん書きました。


最後まで読んでいただければありがたいです‼︎


道化達の企み

 

獣人族(ライカンスロープ)の王であるカリオンが強さを求めて魔王を

名乗ったのが四百年前の事。

 

 

当時は激動であり、新旧の魔王の入れ替わりの激しい

時代であった。五百年周期で発生すると言われる世界

大戦。その終戦間際の出来事である。

 

 

カリオンの同期に誕生して生き残った魔王が

フレイだ。その後百年程遅れて生まれた魔王が

クレイマンだ。

 

 

そして、今から二百年前に呪術王(カースロード)を倒して自ら魔王

を名乗ったのが、レオン・クロムウェルなのである。

 

 

 

この若い世代の魔王四人を”新世代” と呼ぶ。

 

 

 

対する旧世代は、二度以上の対戦を生き残った猛者達

であり、強さの桁が違うと言われていた。

 

 

故に新世代の魔王達は、己の勢力の拡大を画策する者

が多いのだという。

 

 

カリオンもそうした魔王であり、彼が強者は求める

のは至極当然の事だったのだ。

 

 

魔王カリオンの三獣士の一人である”黒豹牙(コクヒョウガ)”フォビオ

は、そんな主の心情を一番理解している男である。

 

 

だからこそ、恐怖すら感じる程に圧倒的な魔王ミリム

に敗北したにもかかわらず、未だに深い森の中に潜伏

しているのだ。このままオメオメと惨めに戻る事

など、出来ない相談だったからである。

 

 

魔王カリオンならば、事情を話せば笑って許して

くれるだろう。だが、それをフォビオの矜持が

許さぬのだ。

 

 

大恩あるカリオンの期待を裏切るなど、フォビオには

耐えられるものではなかった。

 

 

「そんなのは絶対に許せねえ!」

 

 

唸るように叫ぶフォビオ。

 

 

「落ち着いて下さいフォビオ様!」

 

 

「あの敗北は不可抗力です。魔王ミリム相手では、

カリオン様でも──」

 

 

「馬鹿野郎! 魔王ミリムだけばならまだしも

あんな野郎(ロムルス)にもいいように言われ更にカリオン様を

貶されたんだ。カリオン様ならこんな惨めで無様な

姿は晒さなかっただろうぜ。俺が未熟だった話よ。

だが、このまま成果なく国に戻るのは俺の誇りが

許さんのだ」

 

 

怒りを込めて話すフォビオに、部下四人も言葉を

失う。

 

 

潜伏して、既に一週間が経過していた。その間、

常に交代で町を見張っているのだが、魔王ミリムは

ずっと滞在しているようである。更には、道路を拡幅

する者達や建物を建設する者達と、目的ごとに魔物達

が出入りしているようであった。

 

 

「それにしてもよ、アイツ等は自分達で町を作って

いやがるんだな……。下等な魔物だと侮っていたが、

俺達でも及ばぬような技術を持っていやがる……」

 

 

「全くです。配下に加えるなどと言わず、国として

国交を結びたい程ですな」

 

 

猿の獣人であるエンリオが、知恵者としての一面

を見せてフォビオに同意した。何班かに分かれ、

それぞれが統率者命じられるまま規則正しく作業

を行っているのだ。それは、エンリオ達の国──

獣王国ユーラザニアの石組みの家と剥き出しの土

を均しただけの道とは比べよりもない程の、高度な

技術が駆使されているのは明白だった。

 

 

「ああ……。魔王ミリムがいなかったとしても、

俺の対応は間違っていた。頭ごなしに配下にしよう

とする遣り方では、ヤツ等の信頼は得られなかった

だろうからな。だが、今更だぜ。それに魔王ミリム

とロムルスってヤツやられた屈辱は、怪我が癒えても

消えはしねえ。カリオン様に迷惑をかけねーように、

なんとかして復讐してやりたいんだよ! 頭では無理

だってことはわかってるんだが、こればっかりは理屈

じゃねーんだよ」

 

 

そう話すフォビオの表情は、普段の快活さが消えて

幽鬼のように暗いものだった。

 

 

今まで絶対的な強者としてきたフォビオが、初めて

体験した挫折によるものである。

 

 

フォビオはカリオン以外の者に負けた事がなかった

なかったのだ。ミリムに負けた事は仕方ないと頭では

思っても、グレイの見下すような軽い威圧で怯んで主

であるカリオンを侮辱されてフォビオの心には屈辱の

火が消える事なく燻っていたのである。

 

 

「しかし、そうは申されましても──」

 

 

エンリオにもフォビオの気持ちはわかっていた。

だが、ミリムやロムルス(グレイ)に復讐など現実的ではない。

フォビオをなんとか思い留まらせようと口を開いた

のだが──

 

 

「いやいや、わかりますとも。その悔しい気持ち、

私にもよーく理解できますねえ」

 

 

という声に邪魔される。

 

 

「何者だ⁉︎」

 

 

「一体いつの間に?」

 

 

フォビオの部下達が慌てて警戒するが既に遅い。

その人物は、焚き火を囲うフォビオの側まで歩み

寄ってからいたのだから。上位魔人であるフォビオ達

に気付かれる事なく接近してきた事からも、その人物

の能力の高さが窺えるというものである。

 

 

「ほーーーっほっほっほっ。ご機嫌よう、皆様!

私はフットマンと申します。中庸道化連が一人、

怒った道化(アングリーピエロ)”のフットマンとは私の事。どうぞ、

お見知りおきを!」

 

 

律儀に挨拶する謎の人物。

 

 

太った身体に、怒りの表情をした道化面。

 

 

陽気な口調で話すそう道化(ピエロ)は、一種異様な空気を

醸し出している。

 

 

「そうそう。そんなに警戒しないで欲しいな。

アタイはティア。アタイも中庸道化連の一人なんだ。

そして”中庸道化連”というのはなんでも屋だから、

貴方達の敵じゃないよ!」

 

 

その道化(ピエロ)──フットマンの後ろから現れたのは、

涙目の道化面の少女である。

 

 

怒りの道化面の男と、涙目の道化面の少女。

そんな怪しい組み合わせの二人が、フォビオに

話しかけてきたのだった。

 

 

フォビオ達からすれば、警戒するなというのが

無理な相談である。だが、忽然と現れた事からも、

その二人の実力は確かであろう。ならば、敵ではない

というその言葉を信じ、フォビオは先ず二人の目的を

確かめる事にした。

 

 

「ほう。”中庸道化連”なんていう名のそのなんでも屋

なんざ、聞いた覚えがないがな。だが、それはいい。

それよりも、お前等の目的はなんだ?」

 

 

フォビオの問いに、嬉しそうに答えたのはフットマン

である。

 

 

「ほっーほっほっほっ。私わね、怒りと憎しみの感情

に呼ばれてやって来たのですよ。この場所にて、上質

な怒りの波動を感じました。持ち主は貴方でしょう?

一体、何をお怒りになっているのか、是非とも我々に

お聞かせ下さい。きっと力になってご覧に入れます

から」

 

 

怒りの表情を器用に変化させ、怪しげな笑みを象る

フットマン。

 

 

「そんな怪しげな話を受けるとでも思っているのか?

フォビオ様、このような怪しげな者共の話を聞く必要

は御座いません。排除しても宜しいでしょうか?」

 

 

「そうですよ。こんな場所に呼ばれもせずにやって

来るなど、普通ではない。どうやら貴様等も上位魔人

のようだが、相手が悪かったな。俺達は魔王カリオン

の獣王戦士団に属する者。野良の魔人程度が相手に

なるとでも思ったか?」

 

 

フォビオの部下達は、フットマンの話を聞くまでも

ないと断じる。余りにも怪し過ぎる上に、野良の魔人

程度如きが自分達に力を貸すなどと豪語してきた事に

腹を立てたのだ。彼等は魔王カリオン配下の中でも

エリートであり、怪しげな者達の力を必要とする程

落ちぶれていないからだ。

 

 

だが、そんな彼等の言葉を気にせず聞き流すように、

フットマンは続ける。

 

 

「力が欲しいのでしょう? 御座いますよ、

とびっきりの力が。当然ですが、危険も大きい。

しかし、その危険に克った時、得られる力は

絶大です」

 

 

「──ほう」

 

 

「そうだよ。勝ちたいんだよね、魔王ミリムに。

だったらさ、アンタも魔王になっちゃいなよ!」

 

 

その場はいつしか静寂に包まれていた。

 

 

ゴクリ、と誰かが唾を飲み込む音が響く。

 

 

「魔王、だと? お前等、そんな戯言でこの俺を

騙せるなどと──」

 

 

暴風大妖渦(カリュブディス) ──御存知ありませんか?」

 

 

フットマンの呟いた一言は、効果絶大であった。

カリュブディスの名前を聞いた途端、フォビオの

動きが止まったのである。

 

 

 

そして更に ──

 

 

 

「かの大怪魚の邪悪な力なら、魔王にも匹敵する

んだけどな。要らないんなら、他を当たるから

もう行くね!」

 

 

追い討ちをかけるようにティアが言う。そして、

フットマンを促してその場から立ち去る素振りを

見せた。

 

 

迷い焦らせて、判断力を奪い、冷静な思考を

邪魔する。それは悪魔の囁きだった。

 

 

「 ──待て」

 

 

フォビオは自らの欲望に負けた。

 

 

 

「なりません、フォビオ様!」

 

 

「コイツ等の話を聞いてはいけません!」

 

 

フォビオを諌める部下の声を無視し、ティアを

呼び止めたのだ。

 

 

「詳しく聞かせろ」

 

 

フットマンに向けるフォビオの瞳は、野望と狂気に

染まっている。

 

 

かの強大な力を持つ魔王ミリムや主であるカリオンを

侮辱したロムルス(魔王グレイ)に、ひと泡吹かせる事が出来るかも

知れない。それ所か、自身が魔王となり君臨する事

すらも夢ではないかも知れないのだ。

 

 

それを想像して、フォビオは冷静さをかなぐり

捨てた。

 

 

(そうだよ。俺は最初から面白くなかったんだ。

なんで単なる雑魚のオークロード如きが、魔王に抜擢

されるんだよ。ふざけるな。そうだよな……そんなに

新しい魔王が必要だと言うなら、俺がなっても文句は

ないはずだ。俺が強くなるんなら、カリオン様だって

笑って許してくれるだろうぜ!)

 

 

元から短絡的に思考がちだったフォビオは、ティアと

フットマンの甘言に簡単に乗せられていた。

 

 

「おお! 流石は噂に名高い三獣士の”黒豹牙(コクヒョウガ)

フォビオ様ですねえ。そうでしょうとも。魔王と、

なるのは、貴方をおいて他にはいませんとも!」

 

 

「おお、やる気になっちゃった? そうだよね、

やっぱり強い者が魔王に相応しいしならないと

間違っているよね! アタイもそう思うよ。

その点、フォビオ様なら適任だよね!」

 

 

それでもフォビオは馬鹿ではなかった。

 

 

持ち上げてくる二人に睨みを利かせながら、

聞くべき事を忘れない。

 

 

「うるせーぞ! 詳しく聞かせろって言ってるんだ。

俺がその話を受けるとして、テメー等に何の得が

ある? 当然、何かしら目的があるんだろうが!

それは一体なんだ」

 

 

そんなフォビオの質問は、ティアとフットマンに

とっては想定済みである。

 

 

「利益はあるよ。フォビオ様が魔王になったら、

アタイ達を贔屓にしてくれたらいい。当然、色々と

便宜を図ってもらいたいしね!」

 

 

「ほっほっほ。それに、我々だけではカリュブディス

を従える事は出来ませんからねえ。せっかく封印を

された場所を見つけたというのに、このままでは

宝の持ち腐れ。そんな時に丁度タイミング良く、

フォビオ様をお見かけしたのですよ!」

 

 

と、フォビオにとって納得しやすい理由を述べた。

 

 

「なるほど、な。だが、俺がカリュブディスを

従えるかどうかは ──」

 

 

「ほーーーっほっほっほっ、それはご安心を。

フォビオ様ならば必ずや成功するでしょう!

それに、万が一失敗したとしても、なんらかの報酬

を要求したりは致しません。我々は常に、成功報酬

しかお客様から頂きませんから。その点()()は、

我々なんでも屋”中庸道化連”を信用して頂きたく

思います!」

 

 

なるほどな、とフォビオは思った。自分が魔王に

なった時に、もっとも役に立ったという実績が

欲しいのだろうと、判断したのだ。

 

 

それならば、念の為にフォビオが魔王カリオンの

部下を辞めていれば、失敗したとしても損はない

だろうと。

 

 

フォビオ自身、力への渇望はある。

そしてカリュブディスを従える自信もあった。

故に、失敗を恐れるのではなく成功を確信し、

この話を決意を確信し、この話を受ける決意を

したのだ。

 

 

それに二人に持て囃され、フォビオは既に魔王

となったように気が大きくなってしまっていた。

あるいは、既にその時には、フォビオは二人の

術中に嵌ってしまっていたのだろう。

 

 

「良かろう。そう話、引き受けようじゃねーか!」

 

 

こうして、フォビオは了承した。

 

 

本能の命じるままに、ティアが差し出した契約書

にサインしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

フォビオは部下達に最後の命令を行う。

 

 

「お前達は、カリオン様のもとへ戻れ。そして事の

顛末を伝えるのだ」

 

 

「フォビオ様⁉︎」

 

 

「しかし……」

 

 

動揺する部下達を制し、言葉を続けるフォビオ。

 

 

「いいか、お前達。カリオン様に迷惑はかけられ

ねえから、三獣士の地位を返上し野に下るとお伝え

してくれ。在野の魔人が勝手に起こすそんな行動だ、

誰からも文句を言われる筋合いはないだろうぜ。

そして──今から俺は修羅となり、俺の力を魔王

ミリムとロムルスに認めさせてやる」

 

 

フォビオの決意は固い。というより、不自然な程に

思考が魔王ミリムとロムルス(魔王グレイ)への復讐へと向いて

いた。屈辱と怒り、そうした感情消える事なく

フォビオを突き動かしているのかの如く……。

 

 

エンリオは、そんな上司の姿を目にしつつ、沈黙

を守りながら熟考していた。他の仲間達が口々に

フォビオを諌める様子を横目に、ずっと観察を

続けていたのである。

 

 

フォビオの腹心として長く仕えたエンリオだから

こそ、フォビオが一度決意した事を簡単にした事を

簡単には翻さない事を良く知っていた。そして今、

フォビオの決意は固くその心を動かす事は出来ない

と悟ったのである。

 

 

だからこそ──

 

 

「わかりました。先ずはカリオン様にご報告を

致します。しかし、カリュブディスの力は未知数。

その力は魔王にすら匹敵するとも言われる恐るべき

怪物です。くれぐれも、簡単に従える事が出来るとは

思わぬように、気をつけて下さい」

 

 

そう忠言を残し、魔王カリオンへの報告を優先する事

にしたのだ。

 

 

エンリオは他の仲間を促し、その場を後にする。

魔王同士で相互不可侵の約定を結んでいる以上、

ここでフォビオがミリムに喧嘩を売るのは大問題と

なる。そうなる前に、カリオンに報告し対策を講じる

必要があった。

 

 

エンリオとしても不本意だが、情に絆されて優先順位

を間違うような愚かな真似は出来ない。

 

 

それはフォビオの命令でもあり、そこに最後の理性を

見出してもいた。

 

 

(フォビオ様は愚かなお方ではない。あのような

怪しげな者達に騙されたままいるとは思えぬ。

仮に本当にカリュブディスがいるのだとしても、

フォビオ様ならば従える事が出来るはずだ──)

 

 

そう考え、フォビオを信じて行動する。

 

 

 

 

 

 

 

その場に残ったのは、ティアとフットマン、そして

フォビオである。

 

 

「では、向かうとしましょう」

 

 

「ああ。俺の力を示し、軽くひねってやるさ。

そして、俺とカリュブディスの力を合わせたなら、

あの魔王ミリムとカリオン様を侮辱したあの野郎(ロムルス)

泣きっ面に変えてやれるだろうぜ」

 

 

「うんうん。そうだよね! アタイも応援している

からさ、油断しないでよね! それじゃあ、早速

行こうか」

 

 

フットマンとティアに促されるままに、フォビオも

後を付いて行く。そして辿り着いたのは、ジュラの

大森林の中でも奥まった地区にある小さな洞窟

だった。

 

 

「ここにカリュブディスが?」

 

 

「そうだよ」

 

 

「今はまだ復活していませんが、それでも破壊への

渇望が洩れ出ています。そうした感情が大好物な我々

だからこそ、発見する事が出来たのですけどね」

 

 

そう言って、フットマンは邪悪な笑みを浮かべた。

 

 

フォビオは洞窟から感じる異様な妖気(オーラ)に気を取られ、

それには全くもって気が付かない。それを見越して

いたかのように、フットマンは続けて言う。

 

 

「さて、では説明致しましょう。カリュブディスの

復活には、大量の死体が必要です。カリュブディス

とは精神生命体の一種であり、その本質は悪魔族(デーモン)

同じ。この世で力を行使するには、肉体を与えて

やらねばなりません。そこで──」

 

 

チラリ、とフットマンはフォビオに視線を向けた。

 

 

その視線の意味するもの、それを読み取りフォビオ

は、ゴクリと喉を鳴らして唾を飲み込む。

 

 

「──まさか、お前……」

 

 

「そう、そのまさかです。カリュブディスを従える

とは、つまりはカリュブディスをその身に宿し、

自身と『同一化』するという事なのですよ!」

 

 

フットマンは高揚したように、声高に説明する。

そしてそれを受けるように、ティアが続けた。

 

 

「うんうん。止めるなら今だよ? でもこの封印は

長くは保たないから、そうなったらどこかの戦場や

魔物同士の争いが起きたその場所で、自動的に

カリュブディスが復活しちゃうから。というか、

多分だけど残っている力の残滓だけで、自分の復活

に必要なだけの魔物の大量の死体を用意をしちゃい

そうなんだよね……。そうなったら、アタイ達は

くたびれ損になっちゃうんだよ」

 

 

その言葉は本当なのだろう。ティアの様子には、

若干だが焦りの色が見えた。

 

 

「カリュブディスが自動復活しちゃったら、制御は

無理だろうし。純粋な破壊の意思だから、誰の命令も

聞かないだろうから……。倒しても言う事を聞かない

と思う」

 

 

そこで一旦言葉を区切ると、言葉を選んで慎重に

続ける。

 

 

「──だから、復活する前に封印を解き、

力を奪わないと駄目なんだよ」

 

 

そう言って、ティアは話を締めくくった。

 

 

そして、真っ直ぐにフォビオンに視線を向ける。

 

 

フットマンとティア、二人の視線がフォビオを

射抜く。それは言葉よりも雄弁に、どうするのかと

問うていた。

 

 

「いいだろう。既に覚悟は決めているんだ、

今更ビビって止めたりしねーさ。カリュブディス

の力、この俺のものにしてみるぜ!」

 

 

迷いを断ち切るように、フォビオは言い放った。

 

 

「うん! そうこなくちゃ!」

 

 

「ほーーっほっほっほ。流石はフォビオ様。我等も

頼りがいのあるお方と巡り会えて、この身の幸運に

感謝せねばなりますまい」

 

 

話は決まった。

 

 

こうしてフォビオは、一人で洞窟に赴く。

 

 

彼の目にあるのは、上位魔人としての誇り。失敗を

恐れず、ただ自分の勝利を信じる純粋な意志である。

だが残念な事に、その心の奥底には魔王ミリムと

ロムルス(魔王グレイ)への恨みがあり、自分の未熟さを呪う怒り

の感情が押し隠されていた。

 

 

それはつまり、精神生命体(カリュブディス)の大好物だ。

 

 

ティアとフットマンの甘言に乗った時点で、フォビオ

の運命は定まっていたのである。

 

 

それに気付かぬまま、フォビオは洞窟の暗闇へと

飲み込まれていく──

 

 

 

 

 

──そして、暫くの時が経過した。

 

 

 

「行きましたねえ──」

 

 

「行ったねえ──」

 

 

「ほっほっほ、ほーーっほっほっほ!」

 

 

「あはは、あーーはっはっは‼︎」

 

 

洞窟にフォビオが入った事を確認するなり、ティアと

フットマンは大爆笑し始めた。

 

 

「流石は脳筋のカリオンの部下ですねえ。色々と

言い訳を用意したのに、大した質問もされません

でした」

 

 

「だよね、だよね! あの付き人の猿の方が賢そう

だったよね」

 

 

そんな事を言い合い、フォビオを馬鹿にする二人。

 

 

実際、怪しげな自分達を信用させるべくそれなりに

仕込みを用意してきたのだが、怒りと欲望で目が

曇っていたフォビオは思ったよりも簡単に騙されて

くれたのである。

 

 

ティアとフットマンからすれば、拍子抜けする程に

簡単に事が運んだのだった。

 

 

「ティア、仕事はこれで終了ですか?」

 

 

「うんうん。クレイマンからは、カリュブディスを

復活させて魔王ミリムに向かわせろとしか聞いて

ないよ」

 

 

「新しい依頼は出ていないと?」

 

 

「うん。これで依頼は終了でーす! あ、そうそう、

念の為に用意してた下位龍族(レッサードラゴン)の死体、もう要らない

からここに捨てちゃうね」

 

 

「そうですねえ。せっかく仮初めの肉体として

用意しましたが、あの馬鹿が肉体となるのなら、

これはもう不要でしょうね」

 

 

そんな事を言いつつ、二人はレッサードラゴンの死骸

を投げ捨てる。その数は十数匹にも上り、群ごと始末

してきたのが丸わかりだった。

 

 

レッサードラゴンは、ヴェルドラのような”竜種”とは

系統の異なる魔物であり、普通に肉体を持っている。

魔法も行使できない知恵なきそんな魔物ではあるが、

その強靭な肉体は強固な鱗に守られて、近接攻撃に

対しては無類の強さを誇る種族であった。

 

 

人間が定める基準ではB+からA-ランクに位置する

強力な魔物なのだが、そんなレッサードラゴンで

あっても上位魔人二人の敵ではなかった。無惨にも

命を奪われ、ゴミのように扱われてしまう。

 

 

人間の町に持ち込めば、素材だけでもひと財産

なのだが、ティアとフットマンにとっては煩わしい

だけの荷物でしかない。

 

 

空間魔法により収納していた死骸を放り捨てると、

二人は仕事を終えた満足感を味わいながらその場を

後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミリムが来てから数週間、それはあっという間に

過ぎ去った。

 

 

毎日が戦争である。

 

 

農地を見学し、畑を耕すのを手伝った日もある。

 

 

多分だが、現代の耕作機を使うよりも早く、木を伐採

した後の土地が耕されていく。恐ろしいまでの速度で

畑が作られるのは、見ていて爽快だった。

 

 

また別の日は、工房の見学だ。

 

 

クロベエが刀を打つその姿にウットリと見蕩れ、

そして直ぐに飽きて自分でやりたいと駄々を捏ねる。

やらせてみれば乱暴で、一撃で台座もろとも作業場を

破壊しそうになっていた。

 

 

ミリムに細かい作業は無理なのだと、皆が理解した日

となったのである。

 

 

そんな感じで、波乱だが平和な日々が続いて

いたのだ。

 

 

 

 

 

 

ヨウム達が出発した後も、俺達の生活に変化はない。

違うと言えば、お客さんが滞在している事だが……。

 

 

 

カバル達三人だけでなく、フューズも俺達の町に

したままなのだ。

 

 

「おい、そろそろ帰らないとまずいんじゃないのか?

いつまで滞在するつもりだよ?」

 

 

と、聞いてみた。

 

 

ミリムをカバル達三人とウツロさんが引き連れて狩り

に行ってくれているので、その間にフューズの真意を

確かめる事にしたのだ。あの三人も子供の扱いが

上手くて懐いているが、ウツロさんの方があの三人

よりも子供の扱いが上手くて俺に次いでミリムが

懐いているのでウツロさんがいてくれて本当に

助かっている。

 

 

この機会は有用に利用しないとならない。

 

 

「いやあ、色々とあるんですよ。もう少し滞在しても

宜しいですかな?」

 

 

そう考えて直球で質問したのだが、フューズはそんな

感じに滞在を引き延ばそうとした。

 

 

そして、町のあちこちを見回っている。こちらは

ミリムとは違い、目を離しても問題は起きないの

だけど、どうにも落ち着かない気分ではある。

 

 

「おいおい、まだ俺達が無害だと納得して

いないのか?」

 

 

そもそもフューズが滞在しているのは俺達──

というよりも俺を疑っているからだし、滞在が

長引けば長引く程に、不安になるものも当然だった。

 

 

「あ、いえ。リムル殿の疑いはとっくに晴れては

いるんですがね……」

 

 

言葉を濁すフューズ。

 

 

「じゃあ、なんでまだいるんだよ?」

 

 

追及する俺に、観念したのか口を開く。

 

 

「いやあ、ここは実に居心地が宜しいですな。

考えてみれば、私も最近は碌に休みが取れて

いなかったですし……。この機会にゆっくりと

羽を伸ばすのも良いのではないか、そう思った

次第でして……」

 

 

抜け抜けとそう言い放ったのだった。

 

 

おい⁉︎ こっちが心配して色々と気を配っていたのに、

フューズの野郎は観光気分で寛いでいただと⁉︎

 

 

「お前なあ、俺達を見極めるとか格好いい事を言って

いたから、滞在を許可したんだぞ……」

 

 

呆れて物が言えないとはこの事だ。

 

 

段々と丁寧に接するのがバカバカしくなってきた。

 

 

「それに、ヨウム達を英雄に仕立て上げる強力を

してくれる約束はどうなったんだよ?」

 

 

それと、忘れてはいけない一番肝心な事を聞いて

みると……

 

 

「あ、それは問題はないですよ。リムル殿を信用

出来ると判断したので、既に手の者に伝えて仕込み

は終わらせておりますで」

 

 

自慢気に答えるフューズ。

 

 

ブルムンド王国への報告や、ファルムス王国への

根回しは既に終えているらしい。

 

 

自分がゆっくりと休養を取る傍ら、仕事はキチンと

終わらせていたようである。抜け目がないというか、

油断出来ないというべきか……。

 

 

「それなら、まあいいや。で、気に入って

くれたのか?」

 

 

「ええ、ここは素晴らしいですね! ブルムンド王国

の近場にこのような保養所が出来たのは、これは素直

に喜ばしいと歓迎致しますよ。ただ……どうしても

住復路の危険を考えてしまいますが、ね」

 

 

保養地として、この場所を気に入ってくれた

ようである。

 

 

苦労して温泉を作ったり、食事の質を高めてきた

甲斐があったというものだ。これは俺だけの成果では

なく、シュナやドワーフ三兄弟、そしてロムルス君の

力も大きいのだけどね。

 

 

特に食事について言うと、ここ数週間で劇的に

変化していた。

 

 

完成されたメニューは乏しいのだが、一つ一つの

料理がかなり良くなっているのだ。

 

 

しかもロムルス君は胡椒などの様々な香辛料や砂糖

などの高価な物を売ってくれたのだ。

 

 

最初は高い金額を支払わなければならないと思って

いたのだが、条件として魔国連邦国(テンペスト)の知識や技術を

提供し共有してくれるなら砂糖や胡椒などの香辛料を

半額にしても良いと言ってきて俺は悩んで考えた

結果、その条件を受け入れたのである。

 

 

そんな様々な香辛料を手に入れた結果、シュナの

才能と相まってとてつもないレベルの高い料理が

出せるようになったのでまさに充実である。

 

 

「ああ、毎日こんな美味しいものが食べられる

なんて。ワタシは幸せなのだ!」

 

 

ミリムも御満悦である。

 

 

いつの間にやらシュナに懐いたようで、味見と称して

つまみ食いをするのが毎日で日常の一コマになって

いるくらいだ。

 

 

シュナもミリムを可愛がっており、最早、魔王として

見ていないのではないかとさえ思える程である。

 

 

まあ、仲が良いのは良い事なのだ。

 

 

調理人として、シュナの弟子達も教育中だ。女性だけ

ではなく、男性も交じって修行している。

 

 

シュナのようにユニークスキル『解析者』による

『解析鑑定』がないから、自分の五感を頼りに料理を

行わなければならない。その分真剣にシュナの教えを

良く守り、この町に住む者の胃袋を満足させるべく

頑張ってくれているのだ。

 

 

各種族がやって来た事で、大幅に住民が増えている。

その為、料理を賄う者達の数も、自然と大人数に

なっているのだった。

 

 

町の治安維持に加え、宿の掃除や料理洗濯。

得手不得手があるので、料理・掃除・仕込み・裁縫

・手伝い・その他と、それぞれに適した役割分担が

決められていた。

 

 

この辺りを統率して割り振ったのはリグルドだ。

その手腕は大したもので、この町の魔物を纏め上げる

役を見事にこなしてくれているのだった。

 

 

ヨウム達も、料理の味は絶賛していた。それに、

彼等を宿泊させた施設にも満足していたようで、

この地での生活をかなり気に入ってくれていた

ようである。

 

 

そうでなければ、鬼のハクロウの修行から早々に

逃げ出していた事だろう。

 

 

町の者達も、ヨウムやフューズ、ロムルス君やウツロ

さん達を持て成す反応から、自分達の仕事に満足感を

覚えているようである。これならばロムルス君達以外

の商人達がやって来ても、上手く対応をする事が

出来そうだ。

 

 

今後も皆で精進し、この地を観光地にまでに発展

させたいものだ。それについては色々と腹案がある

ものの、具体的な計画はまだである。

 

 

今はともかく、俺達に危険がないのだと知ってもらう

のが先決なのだから……。

 

 

しかし、住復路の危険、か。

 

 

それはそうだろうと思う。槍脚鎧蜘蛛のような大物は

滅多に遭遇するものではないが、それでもかなりの数

の魔物が生息しているのは事実なのだ。

 

 

それに、樹木生い茂る深い森というのは、人間の住む

場所ではない。魔物に遭遇をする危険だけではなく、

道に迷い食糧が尽きる恐れもあるのだ。

 

 

怪我をすれば治療も出来ないし、旅の途中で病気に

なる恐れもある。片道だけでも二週間近くかかるの

だが、様々な要因から日数が増える事も当たり前

なのだ。

 

 

俺達にとっては『影移動』等で直ぐに移動出来る場所

でしかないが、冒険者達にとってはそうでもないの

だろう。カバル達のような熟練の者でさえ、速くても

十日後は移動にかかると言っていた。戦闘になって

自分の森での位置を見失ったりしたら、それこそ数日

は余計に費やす事になるのだがこの世界での常識

だったのだ。

 

 

この町の宣伝をして、商人に利用してもらう。それが

俺の計画なのだが、それを実現するにはまだまだ課題

が多いという事だろう。

 

 

「なるほどね。やはり、道を作るのが一番手っ取り

早いか」

 

 

「は? それはどういう──」

 

 

「いや、今はドワーフ王国への道路を舗装させている

ところなんだけどさ、それとは別の部隊が建物の建設

関係を行っていたんだよ。で、そっちが今ひと段落が

した所だから、ブルムンド王国までのその道を整備を

させようかなってね。そうすれば、少なくとも迷う者

はいなくなるし」

 

 

「いや、え? いやいや、それは大規模な国家事業

になりますぞ? 莫大な予算が──」

 

 

「そこだよフューズ君」

 

 

「く、君? リムル殿にそう呼ばれると、なんだか

背中がむず痒いのだが……」

 

 

「そんな事はいいんだよフューズ君。街道通して

舗装してしまえば、馬車での移動も可能になって

時間短縮になる。今後の取り引きにも便利だろう?

当然だが、作業は俺達が引き受けようじゃないか。

ただし──」

 

 

「──ただし?」

 

 

「約束通り、ちゃんと宣伝を行って欲しい。

俺達が危険のない魔物なのだと、皆に知らせて

くれればそれでいいから。それと、関税について

詳しい人物の紹介を頼みたい。他にも、我が国の

特産品を売りつけたいので、諸々の相談が出来る

人物の紹介も頼んだよ?」

 

 

と、提案する。

 

 

今あるのは、馬は抜けられるが馬車は通り抜け

出来ない獣道である。ドワーフ王国に向けては

道を通し始めているが、ブルムンド王国方面は

木々の伐採すら行っていなかった。

 

 

目立つのを警戒したというのが最大の理由だが、

それは森の騒乱以前の話。今となっては森も

落ち着きを取り戻しているし、町の貿易にも街道

を整備したいは急務である。森の中は俺の管理下

に置かれるので、そこの整備はこちらの負担で行う

つもりだった。

 

 

今回はそれを恩着せがましく言い募り、フューズに

色々と頑張ってもらおうと考えた。そしてそこは

成功したようで、フューズは俺に感極まったような

感謝の視線を向けてきている。

 

 

「リムル殿、そこまでして頂けるのですか?

では、我々としてもできる限りの便宜を図りたい

と思います!」

 

 

うむ。チョロイな。

 

 

これでフューズも、国に戻ったら頑張って宣伝して

くれるだろう。少なくとも、俺達を偏見や差別的な

目で見ないでくれるなら、それだけで成功と言える

のだ。

 

 

有り余る労力で道を通すだけで感謝されるなら、

安い買い物というものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまあこんな感じにフューズを籠絡した所で、

カバル達とウツロさんが帰って来た。

 

 

「わはははは! 今日も大量なのだ!」

 

 

ミリムは嬉しそうに駆け寄ってきて、俺にそう報告

してくれる。

 

 

見ると、カバルとギドが二人して、大量の魔物を

背負っていた。

 

 

「ミリムちゃんやウツロさんは凄いんですよぅ!

直ぐに魔物を発見するので、今回も狩りが楽らく

でした!」

 

 

「そ、そこまで言わなくても……それに私は大した

事はしてないよ……」

 

 

ミリムに続いて、手ぶらのエレンとシズの二人は

そう言いながらやって来た。

 

 

どうやらエレンはキツイ重労働を男連中に任せて

いるらしく、全く汚れている様子がない。シュナ

お手製の新作衣装を着ているので嫌がったのだろう。

 

 

そもそも、そんな格好で狩りに行くなよという話

なんだが……。

 

 

「ふぃーーー、ようやく帰り着いたぜ」

 

 

「二人にこんな重労働を任せちゃってごめんね……

私も手伝えば良かったかな……」

 

 

「問題ねーよ。こういう力仕事は毎日の事だから

慣れているしな」

 

 

「そうでやすよ。それにしても疲れやしたね。

ですが、温泉に浸かってその後に──」

 

 

「おうよ! ここの果実酒最高だぜ!」

 

 

「あ、あはは……」

 

 

とまあ、扱き使われているカバルとギドには、

そうした自覚は皆無である。

 

 

男連中が甘やかしているのも原因なのだし、

今更俺が要らぬ口出しをして揉めさせるのも野暮と

いうものだ。彼等が納得しているのなら、それは

それでいいのだろう。

 

 

どの世界でも、男とは女に利用される生き物なのだな

としみじみ思った。なので、俺はウツロさんのように

彼等に優しく接してやろうと思い声をかける。

 

 

「おう、お疲れさん。それじゃあ、先に汚れを

落としてこいよ」

 

 

「そうですね、貴方達のように汚れたままというのは

感心しません──」

 

 

俺に続き、シオンがそう言い掛けた時──

 

 

「むっ⁉︎」

 

 

「これは……⁉︎」

 

 

シズは素早く反応して慈悲の紅蓮の剣(イグリット)に手を添えて

構えておりミリムも素早く俺の隣に立ち、前方に視線

を向ける。

 

 

「──何者⁉︎」

 

 

シオンが俺をミリムに渡し、前方に向けて誰何した。

 

 

というか、俺の重荷ではない。何を当たり前の

ように、貴重品を扱うように遣り取りされている

んだか良く分からない……。

 

 

俺が軽く不満に思っている間に、ミリムの背後に

ベニマルとソウエイが立っていた。

 

 

いつの間にやらハクロウも木陰に佇んでいる。

今まで修行していたようだが、服装には一切の

乱れはない。

 

 

ランガが俺の影から湧き出て、この町に残る主要な

戦力は勢ぞろいした。

 

 

ゲルドは依然として道路工事を行なっている為、

ここにはいなかったのだ。

 

 

数日前に怪しい気配を感じた気がするという報告

をしてきたが、周囲には誰もいなかったそうだ。

気のせいかも知れないとの事だったので、そのまま

工事続行を命じていた。

 

 

あと一人忘れているヤツがいるような気もするが、

これだけ揃っていれば問題ないだろう。

 

 

それに、この気配には見覚えがあるし──

 

 

「お久しぶりで御座います盟主様──」

 

 

やはり樹妖精(ドライアド)の一人、トレイニーさんの一人である

トライアだ。

 

 

「ああ。それより、その殺気と姿はどういう訳だ?」

 

 

俺の前に跪いたトライアに問う。

 

 

遠距離からでも気付く程の殺気は、ミリムやシオン、

そしてシズが反応する程の鋭さだった。それに半透明

となった姿は、かなりダメージを受けているのか所々

がかすれて消えかけている。一目で何かあったと

分かる状態なのだ。

 

 

「──はい。緊急事態で御座います。災厄級魔物(カラミティモンスター)

である暴風大妖渦(カリュブディス)が復活致しました。かの大妖は、

魔王に匹敵する暴威であります。我が姉君達が足止め

を行っておりますが、まるで歯が立ちません。そして

──かの大妖の目的は、この地である模様。大空の

支配者たるカリュブディスに対し、地上戦力では

無力。至急、防衛態勢を固め、飛行戦力を用意を

すべく進言に参りました」

 

 

色濃く浮かべた顔で、俺に向けてそう告げた。

 

 

それを聞いて、一気に場が緊張に包まれる。

 

 

真っ先に反応したのは意外にもフューズだった。

 

 

最初にトライアの姿をその目にした瞬間、

「ドライアドだと⁉︎」と絶句していたのだが、

カリュブディスの名を聞いて脳が再起動したらしい。

 

 

一気に顔を青ざめさせて、喚き出した。

 

 

「カリュブディスだとっ⁉︎ おいおい、本当に復活

したのなら、魔王以上の脅威となりますよ。何しろ

魔王と違い、話が通じる相手ではないのです。厄災級(カラミティ)

でありながら、災禍級(ディザスター)以上の脅威と考えられている

魔物ではないですが……」

 

 

フューズの説明によると、強さは魔王に匹敵する

ものの軍団を擁したりせずに、勝手気ままに暴れ

まわる魔物なのだそうだ。

 

 

言ってみれば、知恵なき魔物であるらしい。

ただし、固有能力『魔物召喚(サモンモンスター)』により空泳巨大鮫(メガロドン)

という鮫型の魔物を呼び出して暴れるのだと言う。

 

 

この『魔物召喚(サモンモンスター)』で呼び出された異界の魔物は、

一定時間が経過すれば魔素で作られた仮初の肉体が

崩壊するらしいのだが、それでもA-ランクという強力

な能力は無視出来るものではない。

 

 

一度に十数体呼び出せるらしいので、この従魔だけ

でも厄介なのだそうだ。

 

 

フューズの話が本当なら、正直な話、オークロード

よりも危険度で言えば上であった。

 

 

「何故か知らんが、この町が目標となっているのなら

かえって好都合じゃないですか。さっさと戦力を選り

すぐって、迎撃態勢を整えましょう」

 

 

ベニマルはやる気だ。

 

 

だが、飛行出来る者でなければ……って、忘れてた!

 

 

「そうか、ガビルのヤツを忘れてたな。洞窟で研究

しているだろうから、誰か呼んできてくれ」

 

 

リムルがそう言うとソウエイはガビルを呼びに

向かった。そして対策会議を行う為に会議室に

移動しようとしていると

 

 

「リムル様、宜しいでしょうか?」

 

 

「ロムルス君?」

 

 

背後から声が聞こえたので振り返ってみると

グレイが立っていた。

 

 

「話は聞かせてもらいました。暴風大妖渦(カリュブディス)の名前が

聞こえたので僕達も何かしらの協力が出来るのでは

と思ったので是非ともその会議に参加をさせて

もらえませか?」

 

 

「ふむ……」

 

 

グレイがそう言うとリムルは右手を顎に当てて

考えていた。

 

 

(彼等をこの会議に参加させて大丈夫なんだろうか?

ベニマルや大賢者が危険だと言う程のそんな正体不明

の存在を信じても大丈夫なのか?)

 

 

リムルがそんな不安が脳内で駆け巡っていると

 

 

《告。個体名:ロムルスとウツロをこの会議に参加

させるべきだと進言します》

 

 

大賢者が俺にそう言ってきたのだ。

 

 

おいおい、大賢者もあれ程言っていたじゃないか。

ロムルスとウツロさんに対しては細心の注意と警戒を

すべきだって、それに情報を漏洩させてしまうそんな

可能性だってあるかもしれないのに今回の会議に参加

させる理由はあるのか?

 

 

《是。こんな時だからこそ個体名:ロムルスとウツロ

出来るだけ目の届く範囲で監視すべきであり目を離す

のはあまりにも危険だと感じました》

 

 

うーん。確かに大賢者の言葉には一理ある気がした。

正体不明の商人と名乗るロムルスに対してはそう思う

場面はあった。

 

 

特に一番印象に残ったのはフォビオと会話をしていた

時だった。

 

 

準魔王級に区別出来る程の、強力な魔人で決して

弱くはないのにロムルスの一瞬の威圧で怯える様に

萎縮させて黙らせてしまう程の存在感を出していた。

 

 

そんな彼等を目を離してしまったせいでとんでもない

事になってしまったら取り返しがつかなくなって大変

だもんな……

 

 

《是。故にマスターにこの案を提案します》

 

 

分かったよ……。

 

 

リムルは大賢者の提案に心の中で頷いた。

 

 

「分かったよ。ロムルス君達も是非とも会議に参加

してくれ」

 

 

「分かりました」

 

 

リムルは内心警戒をしながらもロムルス(魔王グレイ)にそう言うと

ロムルス(魔王グレイ)はそれを察したのかこれ以上、リムルに自分

が更に警戒して怪しまれない様に明るい声で素直に

リムルに返事をした。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます‼︎


これからも皆さんが『応援』をしていただければ
『更新』の頻度が更に上がるそんな可能性がある
かもしれません‼︎


自分的にはかなり難しかった件について……(汗)


『他の投稿作品』もあるので是非ともそちらも
楽しんで見ていただければありがたいです‼︎




【報告】

『デート・ア・ライブ■■■の精霊』の『最新話』
を『更新』しています。それとですが、近いうちに
『東方墨染ノ残花』の『最新話』をする予定です
のでこれからもよろしくお願いします。
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