ストライクウィッチーズ 黒き槍騎兵   作:ブンブク

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更新しました。サーニャ回はこれにて終了です。


第11話 2人の誕生日

「ねぇ、エイラさんとサーニャちゃんの故郷ってどこ?」

 

朝食を済ませて、サーニャの部屋に戻った宮藤たち女性陣は昨日と同じくベッドの上に固まって雑談をしていた。

その最中、宮藤が2人の故郷がどこか尋ねる。

 

「わたし、スオムス」

 

「オラーシャ」

 

宮藤の質問に2人が答える。

 

「えっと……それってどこだっけ?」

 

「スオムスはヨーロッパの北の方、オラーシャは東」

 

とエイラが簡潔に場所を伝える。

 

「ヨーロッパって確かほとんどがネウロイに襲われたって……」

 

「うん。私のいた街もずっと前に陥落したの」

 

「じゃあ、家族の人達は?」

 

「街を捨ててもっと東に避難したの。ウラルの山々を越えたもっとずっと東まで……」

 

「そっかぁ、よかった!」

 

サーニャの話を聞いて宮藤はホッと安堵の声を漏らす。

 

「何が良いんだよ、話聞いていないのかオマエ?」

 

「だって、今は離れ離れでもいつかはまた皆と会えるって事でしょ」

 

「あのな……ウラルの向こうったって扶桑の何十倍もあるんだ。人探しなんて簡単じゃないゾ。だいたい、その間にはネウロイの巣だってあるンダ。」

 

エイラの言う通り、いまオラーシャ帝国はネウロイの侵攻により領土の大部分がネウロイの占領下にある。加えて、ここからウラル山脈の間にはネウロイの巣が存在しており、扶桑方面へ遠回りしない限り容易に近付く事は出来ない。

 

「それでも、私は羨ましいな」

 

「強情だなオマエ」

 

宮藤の強情さにエイラは呆れ顔を見せる。

 

「だってサーニャちゃんは、早く家族に会いたいと思ってるでしょ?」

 

宮藤の問いにサーニャはコクリと小さく頷く。

 

「だったら、サーニャちゃんの家族だって早くサーニャちゃんに会いたいと思ってるはずだよ。そうやってどっちも諦めないでいれば、きっといつか会えるよ。そんな風に思えるのって素敵な事だよ」

 

(宮藤さん……。)

 

―――諦めなければいつか会える。

宮藤の言葉を聞いて、サーニャはいつか会えるであろう両親との再会に希望を抱くのであった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「はぁ……!はぁ……!」

 

結城・ヴェルナーは夢を見ていた。

何もない真っ暗闇な空をストライカーを履いて飛んでいた。そんな結城を囲むように複数のウィッチ達が並行して飛んでいた。

 

『何故、お前だけ生き残った…………?』

 

『私ももっと生きたかった…………。』

 

『私達を見捨てておいて…………。』

 

『死神め…………。』

 

結城の耳から聞こえる死んだ戦友たちの罵詈雑言の数々。彼女達の身体には痛々しい傷があり、全員が生気のない目をしていた。

 

『自分だけのうのうと生きてるなんて許せない…………。』

 

『許せない……許せない……許せない……許せない……許せない……。』

 

『だから、貴方も私達のところに連れて行く…………。』

 

そう言うと彼女達は、手に持っているMG42の銃口を結城に向ける。

 

『やめろ!!やめてくれ!!』

 

結城の制止を待たずに彼女達はMG42の引き金を引く。四方から連射された7.92mm弾が結城の身体を貫き、結城は瞬く間に蜂の巣にされる。そして、そのまま仄暗い暗闇の中へと堕ちていった……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――うわああああああっ!!」

 

叫び声とともに結城は勢い良くベッドから起き上がる。自身の胸や腹に手を当てて今の出来事が夢であることを悟った。夢の中に出てきたウィッチ達はかつてレッド9時代で苦楽を共にした戦友たちであった。その戦友も俺を除いて、みんな戦場で死んでしまった。

彼女達は未だに生き残った俺を恨んでいるのだろうか…………。

 

「Scheisse!!」

 

2日連続で悪夢を見てしまい、結城は辟易していた。時間はまだ昼間だが、目が冴えて眠れない。

寝汗をかいて、体中汗まみれになっていたので結城は風呂に入ろうとベッドから立ち上がり、部屋を出る。

 

「結城」

 

「……バルクホルンか。」

 

風呂場に向かう途中でバルクホルンに会った。バルクホルンは結城が重い足取りで風呂場に向かっているのを見て思わず声を掛けた。結城は声を掛けられるまでバルクホルンの存在に気付いていなかった。

 

「風呂に行くのか?」

 

「ああ……誰か使ってるのか?」

 

「いや、今は誰も使ってないから大丈夫だ。…………それより大丈夫か?かなり顔色が悪いぞ」

 

「大丈夫だ。ちょっと悪い夢を見ただけだ。」

 

「悪い夢?」

 

「前の部隊の夢だ。気にしないでくれ」

 

「……………………。」

 

それを聞いてバルクホルンは黙った。彼がいた前の部隊というのは彼が地獄と呼んでいた『レッド9』の事だったからだ。結城がその場を後にしようと歩き出した所でバルクホルンは結城を呼び止める。

 

「結城」

 

「…………?」

 

「その……あまり1人で抱え込むなよ。私達は家族なんだ。相談なら何時でも乗ってやるから。」

 

バルクホルンの言葉に結城は一瞬驚きの表情を見せて僅かに笑顔を見せる。

 

「…………ありがとう」

 

そう言って、結城は風呂場に向かった。

そして、夕方になって入れ替わる形で女性陣は任務前にサウナで汗を流して、今夜も4人は夜の空を飛ぶ。

昨日は闇夜に怯えていた宮藤であったが、すぐに慣れてサーニャ達のサポートも無しに夜間飛行をこなしていた。

 

「ねぇ聞いて!今日ね、私の誕生日なの!」

 

「え……。」

 

「なんで黙ってたんダヨ!」

 

「私の誕生日はお父さんの命日でもあるの。だから何だかややこしくて、皆に言いそびれちゃって……。」

 

(なるほど、確かに複雑だろうな……。)

 

宮藤の言葉に結城は納得する。

 

「バカだなぁオマエ、こういう時は楽しい事を優先したって良いんダゾ」

 

「そうかな?」

 

「そうダヨ。」

 

自身の誕生日が父親の命日という事もあり、少し元気を無くす宮藤であったが、エイラからの励ましで元気づけられて宮藤は笑顔を取り戻す。

 

「宮藤はこれで何歳になるんだ?」

 

「15歳です。」

 

「そうか、15歳になるのか……。」

 

何を思い立ったのか結城はユニットの出力を上げて、3人の前に出るとバレルロールを始める。

ぐるぐると回転した後にスナップロールをして垂直に上昇する。一定の高度まで上昇して速度が落ちる。揚力を失い、ストールして結城は落下するように降下する。そこから1回宙返りして上昇。今度はユニットの出力を左右で調整してからスピン機動のまま螺旋状に描いて降下していった後、身体を立て直して3人の元に合流した。

 

『………………。』

 

突然、目の前に繰り広げられた結城の曲技飛行に3人は呆気を取られるも、すぐに宮藤が笑い出し、それにつられてサーニャとエイラも笑う。

 

「な、何だよ?そんなに笑うことか?」

 

まさか宮藤達に笑われるとは思わず、結城は困惑する。

 

「だって、普段の結城さんならそんな事しないから余計におかしくって……。」

 

「本当ダナ、まさか大尉がそんなお茶目な行動をするナンテナ」

 

宮藤の誕生日だから、曲技飛行を披露したのに当の宮藤にはその凄さが伝わらなかったようだ。

 

(慣れないことはするもんじゃないな……。)

 

結城は頬を赤らめて心の中で呟く。そうして笑い合っていると、今度はサーニャが宮藤の隣に近付く。

 

「……宮藤さん、耳を澄まして」

 

サーニャに言われるままに宮藤は耳を澄ませる。すると、インカムから雑音に混じって人の声や音楽が聞こえてきた。

 

「あれ?何か聞こえてきたよ?」

 

「これは……ラジオか?」

 

と結城が音の正体を答えて、結城の問いにサーニャが頷く。

 

「夜になると空が静まるから、ずっと遠くの山や地平線からの電波も届くようになるの。」

 

「へええ、凄い凄い!こんな事が出来るなんて!」

 

サーニャの説明を聞いて、宮藤はまるで子供のように無邪気にはしゃぐ。

 

「2人だけの秘密じゃなかったのカヨー」

 

エイラがサーニャの横に近付き、宮藤達

に聞こえないよう小声で話す。

 

「ごめんね……。でも、今夜だけは特別」

 

「……ちぇっ、しょーがないナー」

 

2人だけの秘密を知らされて不満気なエイラであったが、サーニャの笑顔に負けて許すことにした。

 

「え、どうしたの?」

 

エイラの反応が気になり、宮藤が尋ねる。

 

「あのな、今日はサーニャも―――」

 

とエイラが答えようとしたその時であった。サーニャのリヒテンシュタイン式魔導針が激しく反応を示し、警戒色に変化した。その直後、どこからか気味の悪い謎の音が4人のインカムから流れてきた。

 

「何だ……?」

 

「これ……唄……?」

 

インカムから流れる謎の音にエイラと宮藤が反応する。その音は禍々しく、低い唸り声で一定のリズムを取っていた。

宮藤は、このリズムに見覚えがあった。

 

「似てる……!まるでサーニャちゃんの唄に……!」

 

突如聞こえてきたネウロイの唄。サーニャは、その場を動けずにいた。

 

「どうして…………?」

 

口を震わせながらサーニャは呟く。ネウロイが歌を唄っている。しかも自分が普段口ずさんでいる歌をだ。

 

「敵か!?サーニャ!」

 

「ネウロイなの?どこ!?」

 

「―――3人とも、避難して!」

 

そう言うと、サーニャは魔導エンジンの出力を上げ、一気に急上昇して3人の元から離れる。

 

 

 

ゾワッ……!!

 

 

 

その時、結城は雲海の中に潜む強い殺気を感じ取った。

 

「避けろっ!!サーニャ!!」(カールスラント語)

 

「―――!」

 

結城の叫び声と同時に雲海の中から赤い光線がサーニャに目掛けて発射された。直撃こそ免れたが、左脚のストライカーが被弾、破壊されてしまいサーニャはそのままバランスを崩して落下していく。

 

「サーニャ!!」

 

エイラは、魔導エンジンを全開にして、

錐揉み状態で落ちていくサーニャをキャッチする。

 

「バカ!!1人でどうする気ダヨ!!」

 

サーニャの無茶な行動にエイラは、サーニャを怒鳴りつける。

 

「て、敵の狙いは私……間違いないわ。私から離れて……もし一緒にいたら……。」

 

身体を震わせながらサーニャは、自分から離れるように言う。

 

「バカッ!ナニ言ってんだ!」

 

「そんな事出来る訳ないよ!」

 

サーニャの言葉にエイラと宮藤が反論する。その間に結城は、目の前の状況を冷静に整理していた。

 

(―――サーニャは、左側のストライカーをやられて片肺状態……戦闘はまず不可能だろう。一方で夜間飛行に慣れた宮藤だが、夜間での戦闘経験はない。

おまけに、ネウロイが電波妨害を発しているのか基地とは連絡が取れず、通信が途絶している…………。)

 

『3人のこと頼んだぞ』

 

結城の脳裏に坂本の言葉が浮かぶ。

 

「…………やるしかないか。」

 

結城は、背負っていたMG151を構えて、セーフティを解除する。

 

「……エイラ」

 

「何だ?」

 

結城に声を掛けられて、エイラが返事する。

 

「……俺が囮になって敵の目を自分に引きつける。エイラは攻撃に専念してくれ。」

 

「分かった。―――サーニャ、コレ借りるゾ」

 

「えっ、うん……。」

 

エイラは、サーニャを宮藤に任せた後、サーニャが使用しているフリーガーハマーを手に取る。そして右手にフリーガーハマー、左手にMG42を持ち構える。

 

「宮藤は、防御に専念してエイラを援護しろ。」

 

「はいっ!」

 

と宮藤は力強く返事する。

 

「サーニャは、雲海に潜む敵の位置を探査してエイラに教えてやれ。」

 

「ハイ……」

 

と、結城は冷静にそして的確に3人に指示を出す。サーニャは不安な表情を見せており、顔も俯き気味だった。

 

「サーニャ!」

 

結城に声を掛けられ、サーニャがハッと顔を上げる。

 

「雲海に潜む見えない相手では、お前の固有魔法が頼みの綱だ。任せたぞ!」

 

「っ! はいっ!」

 

結城の言葉にサーニャは力強く、そしてはっきりと返事をする。先ほどの不安な表情とは違って、その顔は自信に満ちていた。宮藤はサーニャに屈託のない笑顔を見せる。その笑顔を見て、サーニャは不思議な安心感を抱くのだった。

 

 

 

 

 

敵の目を自分に向けるよう結城は、雲海スレスレのところを飛んでいる。その間にもネウロイから攻撃があったが、結城はその攻撃を躱し続ける。

 

「―――ネウロイは、ベガとアルタイルを結ぶ線の上を、真っ直ぐこっちに向かってる距離3200…………」

 

固有魔法『広域探査』で敵の位置を正確に見出すサーニャ。サーニャの指示でエイラが指定された位置にフリーガーハマーを構える。

 

「こうか?」

 

「加速してる。もっと手前を狙って……そう、あと3秒……」

 

「当たれヨ!」

 

トリガーを引いて、3発のロケット弾が雲に向かって飛翔していく。ロケット弾はそのまま雲海に着弾、爆発する。今の爆発で雲海に3つの風穴が出来上がる。ネウロイもお返しとばかりに雲海の中から赤いビームを放つも、エイラの固有魔法『未来予知』で回避する。

 

「外したっ!?」

 

「速度が落ちたわ!ダメージは与えてる!」

 

「クソッ!いい加減出てこい!」

 

悪態をつきながらエイラは再度、ロケット弾を3発放つ。ネウロイが進む位置にロケット弾が着弾するが、ネウロイは姿を見せない。フリーガーハマーの残弾数もあと3発、次の一撃で弾切れになる。

 

『サーニャ、敵は付いて来ているか?』

 

サーニャのインカムから結城の通信が入る。

 

「はい。結城さんを追い掛ける形でほぼ真後ろにいます。」

 

『分かった。―――エイラ、俺に向けて撃て』

 

「ゆ、結城さん!?」

 

結城の発言に宮藤は声を上げて驚く。それはそうだ。結城の発言はまともな人間からすれば正気の沙汰じゃない。

 

「…………分かった。当てるつもりで撃てばいいんダナ?」

 

「エイラ、一体なにを言って……!?」

 

サーニャも宮藤と同じように驚きの声を上げる。

 

「安心しろサーニャ。大尉には絶対当たらないから。」

 

サーニャの表情を見て、エイラはそう言った。

 

『合図とともに迷わず撃て―――1……2……3……Feuer!!』

 

結城の合図でエイラはトリガーを引く。残り3発のロケット弾が結城に向かって飛んでいく。しかし、結城はそれをヒラリと回避する。

 

「さあ、姿を見せろ!化け物め!」

 

ちょうど結城の近くにほぼ3発同時に着弾したロケット弾は雲海の雲を吹き飛ばすほどの大爆発を起こす。結城は、その爆発に巻き込まれて体勢を崩すも、そこはベテランならではの飛行技術で体勢を立て直す。

今の攻撃でネウロイは、3発のロケット弾の直撃をまともにくらい、金切り声に近い悲鳴を上げる。先ほどの大爆発による爆風で雲海の雲は綺麗に消し飛んでいた。

 

『出た!!』

 

ようやく雲海に身を潜めていたネウロイの姿が明らかになる。細長くシャープな見た目で先端が鋭く尖ったミサイル型の形状をしている。

ネウロイは、エイラ達3人がいる場所に目掛けて真っ直ぐ突っ込んでいく。

エイラは、撃ち尽くしたフリーガーハマーを投棄して自身が使うMG42に持ち替えてネウロイを迎撃する。

 

「エイラ!援護するぞ!」

 

そこへネウロイを引きつける囮役を務めていた結城が3人の元に戻る。結城もネウロイの迎撃を援護をする為に主武装のMG151を撃ち始める。

MG42の7.92ミリ弾とMG151の20ミリ弾でネウロイの装甲を削り取り、効果的にダメージを与える。ネウロイは、最後の手段としてエイラ達に刺し違えるつもりで速度を落とすことなく真っ直ぐ突っ込んでいく。

 

「エイラ!結城さん!逃げてっ!!」

 

「そんな暇あるカ!」

 

2人の身を案じてサーニャが叫ぶ。回避する時間が無いと判断した結城とエイラはその場を動くことなく、ネウロイの迎撃に専念する。

 

「―――!」

 

その時、2人の前に巨大なシールドが展開される。宮藤のシールドだ。膨大な魔法力を持つ彼女ならではの得意技である。

 

「Danke!宮藤!」

 

「大丈夫!私達、きっと勝てるよ!」

 

「それがチームだ!」

 

ネウロイに立ち向かう3人の姿を見て、サーニャは意を決して行動に移す。

宮藤が背中に掛けている九九式改13ミリ機関銃を手に取って構えると、すかさずトリガーを引いた。

エイラ、結城、サーニャ、3人の集中砲火でネウロイの装甲は更に削れていき、最終的にネウロイはコアを破壊されて自壊して白い破片に変える。

ネウロイの自壊で発生した衝撃波や破片が4人を襲うも宮藤の巨大なシールドがすべてを防ぎきった。

 

 

 

『〜♫〜♪〜』

 

 

 

ネウロイを撃墜して、静まり返る夜空であったが、インカムからは未だに音楽が聞こえていた。

 

「……まだ聞こえる。」

 

「何で?敵はやっつけたんじゃ……。」

 

「っ! 違う……これは、お父様のピアノ……!」

 

そう言うとサーニャは、片肺状態で器用にバランスを取りながら上昇していく。

 

「…………そうか!ラジオだ!届いているんだ。この空の何処かから!スゴいよ!奇跡だよ!!」

 

「そうでもないかも―――今日は、サーニャの誕生日だったんダ。正確には昨日かな。」

 

「え……?じゃあ、私と一緒?」

 

時刻は0時を回っており、日付が変わっていた。昨日は、宮藤の誕生日であると同時にサーニャの誕生日であったのだ。

 

「サーニャの事が大好きな人なら、誕生日を祝うなんて当たり前ダロ。世界の何処かにそんな人がいるなら―――こんな事だって起きるんダ。奇跡なんかじゃない。」

 

「エイラさんて優しいんだね。」

 

「そんなんじゃねーヨ。バカ……。」

 

宮藤に“優しい”と言われてエイラは、顔を赤くする。

 

「お父様、お母様……サーニャはここにいます……ここにいます……。」

 

サーニャは、上空から遠く離れた両親に向けて言葉を送っていた。当然、そんな事をしたところで両親に届くはずがない。しかし、その思いはきっと届いているはずだ。

 

「お誕生日おめでとう!サーニャちゃん!」

 

宮藤は、サーニャの誕生日を祝福する。

 

「貴方もでしょう。お誕生日おめでとう宮藤さん。」

 

「おめでとうナー」

 

「おめでとう。」

 

サーニャとエイラ、そして結城からも祝福の言葉を貰う。宮藤は誕生日を祝福してくれた3人に「ありがとう」と笑顔で返すのであった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

不測の事態に見舞われながらもネウロイを撃墜した4人は、すぐに帰投して無事に501基地へと帰還した。

今回の戦闘で左脚のユニットを失ったサーニャは、大事を取って宮藤と一緒に医務室へと向かう事になった。

 

「私がサーニャを連れて行く!」

 

「お前は、俺と一緒に中佐に戦果報告しに行くんだろ。ワガママ言うな。」

 

宮藤がサーニャを医務室に連れていき、結城とエイラがミーナに戦果報告しに行くはずだったが、ここにきてエイラが駄々をごね始める。

 

「宮藤、サーニャのこと頼んだ。」

 

「あっ、はい」

 

宮藤は、サーニャと共に医務室に向かっていった。

 

「離せーーー!私が……私がサーニャを医務室に連れて行くンダーーー!!」

 

結城は、駄々をごねるエイラの首根っこを掴んで引きずるように執務室へと向かう。その道中、結城はエイラから罵詈雑言な恨み節を投げかけられたのは言うまでもない。

その後、2人はミーナに戦果報告をする。今回の戦闘で片方のユニットを喪失したサーニャのMiG60であったが、ブリタニア本国から新品のユニットがすぐに補充されるとのことであった。

新品のユニットが届くまでの間、サーニャは夜間哨戒出来ないのでその穴埋めとして結城とエイラの2人が夜間哨戒の任をつくことになった。

 

 

 

 

 

翌朝―――501基地ではささやかながら宮藤とサーニャの誕生日パーティーがウィッチーズのメンバー内で開かれた。最前線では滅多にない祝い事もあって、シャーリーとハルトマンとルッキーニが中心となって盛り上がっていた。

 

「結城さん、楽しんでますか?」

 

とミーナが結城のところにやって来る。

 

「ええ、こうやって皆で騒ぐのは本当に久しぶりですね。」

 

「…………結城さんがこの部隊に着任して3ヶ月になるかしら。」

 

「早いものですね。この部隊に着任したのがついこの間のように感じます。」

 

「そうね。着任初日からトラブルを起こした時は、どうなるかヒヤヒヤしたけどね。」

 

「む……あの時は、色々と申し訳ないというか…………。」

 

ミーナから着任初日の事を指摘されて、結城はバツの悪い顔をする。

 

「ふふっ、結城さん。最初の頃よりだいぶ打ち解けて来て安心したわ。」

 

「恐縮です。」

 

こうやって誰かの誕生日を祝うというのは結城にとって久しぶりでとても心地良いものであった。ミーナは、結城がこの基地に打ち解けるようになってホッと一安心するのだった。

 

 

 

 

 

坂本とミーナは、501基地近くにある岬に訪れていた。そこには、1つの石碑が立てられていた。宮藤芳佳の父親 宮藤一郎の墓である。数年前、不慮の事故で帰らぬ人となった宮藤博士。海を見渡せる岬に彼の墓標は設立されている。

 

「…………今回のネウロイは、明らかにサーニャに拘っていた。しかも、行動を真似してまで」

 

「ネウロイに対する認識を改める必要があるのは確かなようね。」

 

「上の連中、この事をどこまで知っていると思う?」

 

「さあ……もしかしたら、私達より多くの事を掴んでいるのかも」

 

「うかうかしてはいられないか……。」

 

上層部は、きっと私達ウィッチーズが知り得てない情報を隠し持っているはずだ。それが何かは分からないが……。

険しい顔をする坂本であったが、墓標に献花されている花の中にあるものが目に入った。それを見た坂本とミーナはクスッと笑みを浮かべるのであった。

そこには、1枚の写真が置いてあった。宮藤とサーニャの誕生会を祝った写真であり、坂本とミーナ以外の501メンバーが写った写真だった。

写真にはメッセージが書かれていた。

 

『15才になりました 芳佳』

 

『サーニャちゃんは14才です。』

 




原作では、すぐに元通りになっていたサーニャのストライカーですが、個人的に新しいユニットが補充されるまでにこういう流れがあったのではと思います。
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