ストライクウィッチーズ 黒き槍騎兵   作:ブンブク

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今回は、バルクホルン回。
タイトル決めるのに時間かかりました。


第5話 バルクホルンの苦悩

ゲルトルート・バルクホルンは、夢を見ていた。

祖国カールスラントが業火に包まれる夢だ。眼下に広がるかつての祖国の美しい街並みは瓦礫と炎に包まれて、もはや見る影もない。

バルクホルンは、上空に飛ぶ“敵”を睨みつける。生まれ育った祖国を灰燼に帰した諸悪の根源、巨大ネウロイが我が物顔に空を飛んでいる。

 

「う、うわああああああああああああっ!!」

 

バルクホルンは、怒りに任せてネウロイに向けて持っている機銃を乱射する。

ネウロイはすかさずビームを発射し反撃するが、バルクホルンはシールドを使って防御と回避をして敵に弾丸を撃ち込む。敵の装甲が削れて赤い結晶 コアが露出する。

止めの一撃にバルクホルンは、機銃の残りの弾丸全部をコアに撃ち込んだ。コアを撃ち抜かれたネウロイは白い破片に変えて燃え盛る街へと落ちていく。

そして、破片が落ちていくその先には燃え盛る街の中で泣いている1人の少女の姿が―――――

 

「クリスッ!!」

 

バルクホルンはベッドから飛び起きる。

燃え盛る街の風景ではなく、自室の風景が目に入り、自分は夢を見ていたのだと理解する。

 

「…………なんで今頃になって、あんな夢を」

 

部屋の中で1人呟くバルクホルンであった。

 

 

 

 

 

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翌朝。

食堂の厨房で宮藤とリーネが朝食の準備していた。

 

「ねぇ、芳佳ちゃん聞いた?カウハバ基地が迷子になった子供の為に出動したんだって。」

 

「へぇーそんな活動もするんだ。すごいね!」

 

「うん!たった1人のためにね」

 

カウハバ基地の話で盛り上がる宮藤とリーネ。2人は先のネウロイとの戦いにて協同撃墜で初戦果を上げて以来、親友となった。リーネ自身もこの初戦果でプレッシャーや緊張から抜け出せて、今ではこうして笑顔を取り戻し、自ら話しかける事も増えた。

 

「でも、そうやって1人ひとり助けないと皆を助けるのは無理だもんね。」

 

「皆を助ける……そんなのは夢物語だ。」

 

「え?」

 

「……すまん、独り言だ。」

 

バルクホルンは、それだけ言うと朝食を取ってテーブルの方に行った。他のウィッチたちも食堂にやってきて朝食を開始する。そんな中、バルクホルンだけは朝食に手を付けずにいた。

 

「どうしたの、トゥルーデ?浮かない顔ね」

 

「食欲も無さそう」

 

「……そんな事はない。」

 

ミーナとハルトマンの問いにバルクホルンは、すぐさま否定をして食事を始めるも手を止めて、宮藤の方を向いた。

 

「……ん?」

 

「どうしたの?」

 

「誰かに見られているような気がしたんだけど……気のせいかな?」

 

「……おはよう。宮藤」

 

「結城さん、おはようございます。」

 

宮藤は誰かの視線を感じたが、結城が食堂にやって来た事でさっきの事はすぐに忘れる。

 

「おかわりー!」

 

「あ、はーい!」

 

矢継ぎ早にルッキーニからおかわりの要求が来たので宮藤はテーブルへと向かう。するとバルクホルンの前に置かれた食事がほとんど手つかずである事に宮藤は気付く。

 

「あの……お口に合いませんでした……?」

 

宮藤がバルクホルンに聞くが、バルクホルンは無言で立ち上がりそのまま片付けていった。すぐにルッキーニからおかわりの催促が来たので宮藤はそっちに意識を向ける。

 

「バルクホルン大尉じゃなくてもこんな腐った豆なんて―――とてもとても食べられたもんじゃありませんわ。」

 

ペリーヌが納豆に文句を言う。確かに、納豆に馴染みのない人間からしたらただの腐った豆にしか見えないのだから無理もない。

 

「納豆は体に良いし、坂本さんも好きだって言ってますし―――」

 

「坂本さんですって!?「少佐」とお呼びなさい!!私だってどれほどさん付けで…………!」

 

坂本の名前にすぐさま反応し、ペリーヌは宮藤に詰め寄る。ましてや、“さん付け”で呼んだ事で過剰に反応してしまう。ヒートアップして“さん付け”辺りから顔が赤くするペリーヌ。完全なる自爆である。

 

「―――と、ともかくいくら少佐がお好きでも、この臭いだけは我慢なりませんわ!」

 

「おーかーわーりー!」

 

「クロステルマン中尉、ルッキーニ少尉!今は食事中だ。少し静かにしてもらえないか」

 

結城から指摘されて2人は静かになる。宮藤はこの騒がしさに解放された事に結城に心の中で感謝する。食堂が静かになったので結城は食事を再開する。

 

「よ、よく食べれますわね……そんな腐った豆を……。」

 

さも当たり前のように納豆を食べる結城の姿を見てペリーヌは軽くひいていた。

 

 

 

 

 

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最前線といえど敵の襲来がない時は、とにかく暇を持て余す。結城はスケッチブックと鉛筆を手に持ち、基地周辺の風景画を描いていた。絵描きは結城の趣味の1つでもあり、こうして時間を見つけては絵を描いたりして時間を潰していた。

 

(……あれは、バルクホルン大尉とハルトマン中尉か。)

 

上空では、バルクホルンとハルトマンが飛行訓練をしていた。

さすがはカールスラントのスーパーエース。息の合った2人の編隊飛行は見事としか言いようがない。しかし、結城は少しばかり違和感を覚える。

 

(大尉がわずかに遅れている…………?)

 

パッと見た感じでは分からないが、バルクホルンの方が一瞬遅れているように感じた。その違和感に気付いたのは結城だけではなかった。

 

 

 

 

 

「のれてないな」

 

「ええ、遅れがちね」

 

別の所では、坂本とミーナが地上からバルクホルンとハルトマンの飛行訓練を見ていた。坂本とミーナは、バルクホルンが遅れがちという事に気付いていた。

 

「完璧主義のバルクホルンらしくない。次のシフトでは外した方が良いか?」

 

「エースが使えないと少し不安ね。」

 

坂本がバルクホルンをシフトから外す事にミーナは懸念する。エース1人が欠けると、それだけ戦力に影響を及ぼす。ましてやバルクホルンのようなスーパーエースになれば尚更だ。

 

「どうも、宮藤さんが来てからなのよ」

 

「宮藤が?」

 

「ええ」

 

ミーナの言葉に坂本は顎に手を当てて少し考え込み、そしてある提案をした。

 

「……ならば、宮藤と組ませてみるか。」

 

バルクホルンと宮藤を組ませる。少し荒療治かもしれないが、それでバルクホルンの調子が戻るならやってみる価値はあるだろう。坂本の視線の先には、リーネと共に洗濯物を干している宮藤の姿があった。

 

 

 

 

 

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洗濯物を終えた宮藤は、モップを使って基地内の清掃をしていた。モップに水をつけて壁を水洗いで掃除するが、あまりの基地の広さに宮藤は少し疲れの表情を見せる。

 

「ふぅー、本当に広いなぁ……この基地。」

 

「きゃっ!?」

 

宮藤がモップに肩を掛けた直後に、後ろから短い悲鳴が聞こえた。宮藤が振り返ると、そこには水に濡れたモップにまともに頭を被ったペリーヌの姿が…………

 

「あなたねぇ…………!!」

 

身体を震わせながら怒りを露わにするペリーヌ。

 

「わあ!ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

慌てて頭を下げて宮藤が謝るが、モップを持ったままなのでペリーヌの頭に水に濡れたモップが何度も頭に被ってしまっている。

 

「全く!貴方は、注意力が散漫過ぎですわ!」

 

とペリーヌは宮藤の注意力のなさを指摘する。宮藤は何かに気付き横を見る。そこにはハルトマンとバルクホルンが立っていた。宮藤と目が合ったバルクホルンは、少し目付きをキツくした後、ハルトマンと共に歩きだす。

 

「あ、あの……。」

 

「ちょっと宮藤さん!!人の話を聞きなさいったら!!」

 

後ろでは、宮藤に無視されたペリーヌが癇癪を起こしていた。

 

 

 

 

 

「芳佳ちゃん遅いなぁ。」

 

リーネは、食堂でアフターヌーン・ティーの準備をしていた。ティースタンドには手作りのスコーン、ケーキ、サンドイッチ等が乗っている。

 

「ごめん!遅れた!」

 

リーネが振り返ると、肩で息している宮藤の姿があった。

 

「どうしたの、心配したよ?」

 

「ごめんね〜広すぎて掃除が大変なの。さっ、手伝うね。」

 

そう言って宮藤もアフターヌーン・ティーの準備を始める。準備している最中、宮藤がリーネに話し掛けた。

 

「ねぇ……私ってバルクホルンさんに嫌われてるのかな?」

 

「どうして?」

 

「うん……何か避けられてるような気がして……。」

 

「気のせいだよ。だってバルクホルン大尉、誰にでもそんな感じだよ。」

 

表情を曇らせながら話す宮藤にリーネは、気のせいだと宮藤をフォローをするように言った。

 

「あ、ミーナ中佐とハルトマン中尉は別だけどね」

 

「え?」

 

「同じカールスラント出身で戦いから始まってからずっと一緒だったんだって」

 

「へぇー」

 

リーネの説明を聞いて宮藤は驚きの声を上げるのであった。と同時に宮藤はある事が気になった。

 

「なら、結城さんは?同じカールスラント出身だけど違うのかな?」

 

「どうなんだろう……?結城さん、あまり自分の事を話したがらないから」

 

言われてみれば、自分達より後に入隊してきた結城の過去どころか原隊そのものを知らなかった宮藤とリーネ。とは言っても配属初日のいざこざで有耶無耶になっていたのだが。

そんなやり取りをしながらアフターヌーン・ティーの準備を進めていくのであった。

 

 

 

 

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敵であるネウロイの襲撃には一定のサイクルがあり、その間、時間が持て余される。今日はウィッチーズのメンバーが宿舎のテラスに集まり、アフターヌーン・ティーが開かれていた。最前線でも緊張をほぐすという意味でリーネが提案したものである。例え戦場でも紅茶を欠かさないのはブリタニア人らしい―――――

 

「作戦室の報告では明後日が出撃の予定です。ですので皆さん今日はゆっくり英気を養ってください。」

 

「宮藤とリーネはこの後訓練だ。」

 

「「はい!分かりました!」」

 

宮藤は、カップを持って紅茶を口にする。しかし、マナーを知らなかった為に扶桑茶を啜るように音を立てて飲んでしまう。

 

「もう、下品なんですから……。」

 

呆れた表情をしながらペリーヌは頭を押さえる。宮藤は、何のことか分からず「え?」と聞き返す。

 

「芳佳ちゃん、紅茶は音を立てないで飲むのよ。」

 

リーネが小声で優しく教える。宮藤は何がいけなかったのかをすぐに理解して顔を赤くする。

 

「扶桑と欧米では文化が違うからな。知らないのも無理もない。」

 

結城は、宮藤にフォローを入れてから紅茶を口にする。宮藤はふと、結城の目の前に置かれているスケッチブックに目が入る。

 

「……あの、結城さんって絵を描かれるんですか?」

 

普段、結城と話す機会がないので宮藤はすかさず話題を持ち上げ結城に話し掛ける。

 

「ああ、趣味の範囲内だけどな」

 

「見てもいいですか?」

 

「芳佳ちゃん、それは…………」

 

結城と親交を深めたい意味で宮藤は絵が見たいと懇願する。一方のリーネは宮藤のお願いに彼の気に障ったりしないかと不安になった。

しかし、そんな彼女の不安は杞憂に終わる。結城は嫌がる素振りもなく、宮藤に自身のスケッチブックを渡す。

 

「うわぁ〜」

 

スケッチブックを開いて宮藤は歓喜の声を上げる。その横でリーネとペリーヌも結城の絵を見る。

思わずリーネとペリーヌは目を見張る。鉛筆画で描かれている彼のスケッチ。“趣味の範囲内”というからてっきり素人の絵描き程度かと思っていたら画家レベルかと思ってしまうほどの絵の上手さであった。対して、こういうのに疎い宮藤は、気にすることなくスケッチブックのページをめくる。部隊周りの風景画と兵士たちの日常が描かれている。

ページをめくっていって、宮藤はあるものに目が留まる。そこには男女2人のスケッチが描かれており、その隣のページに家族写真が貼られていた。

 

「結城さん、この絵と写真は?」

 

宮藤が結城に尋ねる。

 

「これは、俺の両親だよ。写真は子供の頃に家族で撮った1枚なんだ。両親の写真はこれだけでね。」

 

「そうなんですか……。じゃあ、今ご両親は元気にしてますか?」

 

紅茶を飲んで少し間を置いた後に結城は語った。

 

「…………死んだよ。4年前のカールスラント撤退戦で避難している時にネウロイの急襲を受けてね……。」

 

その言葉を聞いて宮藤は後悔してしまう。話を聞いていたリーネとペリーヌも何も言えなかった。その時の結城の顔がとても悲しい表情をしていたからだ。

 

「えっと、その……ごめんなさい……。」

 

知らなかったとはいえ、結城にとって辛い過去なのに無神経に踏み込んでしまった。そう思った宮藤は結城に謝罪した。

 

「なに、気にすることは無いさ。このご時世、こういう事は何も珍しい事ではないからさ。」

 

結城のこの言葉にペリーヌは暗い表情になる。彼女自身もネウロイによって故郷と両親を失っているからだ。

 

「……暗い話はここまでにしよう。宮藤、もういいかな?」

 

「え……あ、はい!」

 

宮藤は結城にスケッチブックを返した。宮藤たち3人は、今まで知らされなかった結城の過去を知り、何とも言えない気持ちになるのであった。

 

 

 

 




今回は、主人公の暗い過去と意外な趣味が明らかになりました。
結城は、501に配属してすぐにトラブルを起こしてるのでミーナを除いて501のメンバーは、結城の過去や原隊の事は知らないのです。
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