夕方になり501の隊員たちは食堂に集まっていた。今日は給料日であり、給料の入った封筒がそれぞれ隊員たちに配られていく。
「はい、結城さん」
結城は、ミーナが手に持っている封筒を受け取る。中を確認すると多額の給料が入っている。
(この仕事はホントに金回りが良いぜ。)
結城は、中に入ってる多額の給料を見て上機嫌になる。ウィッチは、ネウロイと戦う手前、常に死と隣り合わせであり給料は正規兵より多額である。彼にとって航空歩兵という仕事は単なる“金を稼ぐ手段”としか考えておらず、ウィッチたちの故郷や民のために戦うという気持ちなんか全く持ち合わせていない。
「今回はどうするの?」
「また、いつものようにしておいてくれ」
「少しは手元に置いとかないと……」
「衣食住全部出るのにそれ以外必要ない」
ミーナは、やれやれと困った表情を見せる。結城は、ミーナとバルクホルンの会話をなんとなく聞いていたが、自分には関係ない話なのですぐに聞き流した。
全員が給料を受け取った後、隊員たちは各自解散でそれぞれ食堂を後にするのであった。
「ねぇ、リーネちゃん。さっきミーナさんからお給料貰ったんだけど、お金貰えるなんて思わなくてビックリしちゃった。」
「芳佳ちゃんらしいね」
給料を受け取った後、宮藤とリーネは一緒に風呂に入っていた。話の話題は、つい先ほどの給金についてである。
宮藤は、まさか自分が給料貰える事に驚いていた。おそらく彼女からしたらお手伝いの延長線上とでも思っていたのだろう。
「ところで、1ポンドっていくらなの?」
宮藤がリーネに1ポンドの為替レートを聞く。
「確か扶桑のお金は……」
「円だよ」
「えーと最近のレートは……」
リーネは、扶桑の通貨単位を聞いてから1ポンド何円か指を当てて考えていると不意にどこからか声がした。
「今は1ポンド 19.6円だ。」
「坂本さん、入ってたんですか!?」
「気付かないとは注意力が足らんな」
宮藤は坂本に教えられたレートで自身の給料の金額の計算を始める。
「1ポンド 19.6円って大体、米一俵だから……10ポンドってご飯4000杯分!?」
自分の給料の高額さに宮藤は驚きの声を上げる。ついこの間まで女子中学生だった自分がいきなり高給取りになったのだ。驚くのは無理もない。
「計画的に使えよ。ちなみに今回の俸給は半月分だ。」
「えっ!?坂本さん、何でこんなに貰えるんですか?」
宮藤の素朴な質問に坂本は、真剣な面持ちになって語り始める。
「……いいか。私達は常に最前線に立っているんだ。それは“明日死ぬかもしれない”危険と隣り合わせだからだ。だから、せめて悔いだけは残さぬようお金だけは困らないようにとの配慮だ。」
坂本の話を聞いて宮藤は、改めて自分が死と隣り合わせの戦場にいるという事を再認識する。基地内の身の回りの事をやっていたせいでそんな当たり前の事を忘れていたのだ。
「そんな理由のお金なら、私欲しくないな……。」
いつ死んでも困らないよう渡される高額な給金。戦争嫌いな宮藤にとって、とても素直に喜べるものではない。
「それでも実家に仕送り出来るから私は助かるけどね」
「仕送り?そっかぁ!私もお母さんとお祖母ちゃんに送ろうかな」
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夜の待機室にてバルクホルンは明かりを点けずに窓辺に立って思いにふけていた。そこへミーナがバルクホルンに声をかける。
「どうしたの?電気も点けないで……妹さんの事を考えていたの?」
「……………………。」
ミーナの質問にバルクホルンは無言になる。その表情は暗い。
「あれは……貴方のせいではないわ……。」
「いや……あの時、もっと早くネウロイを攻撃する事が出来ていたらクリスまで巻き込まずに済んだはずだ……。」
4年前、故郷を守れなかっただけでなく妹のクリスを戦争に巻き込んでしまい大怪我を負わせてしまった。この事がバルクホルンを苦しめていた。
「敵の侵攻を遅らせて、街の人を避難させる時間を稼いだわ!」
「故郷を守れなかったのは事実だ!」
「……それは貴方だけではないわ」
「すまない…………。」
故郷を追われたのはバルクホルンだけではない。少なくともウィッチーズのメンバーの半数はネウロイに故郷を追われた身なのだ。
「休暇も溜まってるし、しばらく休みを取ったらどうかしら。お見舞いにも行ってないでしょう?」
「その必要はない。私の命はウィッチーズに捧げたのだ。……それに私にはクリスに会いに行く資格なんか無い。」
故郷を守れず、妹に怪我を負わせた自分が出来る事はネウロイを倒し続けるのみそれが彼女に与えられた償いである。すると後ろから声がした。
「祖国を陥落され、妹さんに怪我を負わせた贖罪が1体でも多くネウロイを倒すことか……。」
声の主は結城であった。彼は休憩室の入口にもたれて立っており、2人の会話を聞いていたようだ。
「………………下らない。」
「なに?」
溜息混じりにそう言う結城。彼の言葉にバルクホルンが聞き返す。
「下らないと言ってんだ。償いだとかウィッチーズに命を捧げるとかそんな事全てが下らないと言っているんだよ。」
「大尉、やめなさい!」
結城の言葉にミーナは止めに入る。
「な…………何が言いたい?」
バルクホルンは声を絞りながら言った。
まだ理性で抑えているが、見るからに身体を震わせて怒りを露わにしている。
「そのままの意味さ。アンタはなにかと理由をつけて目の前の現実から逃げ回ってると言ってるんだ。」
「貴様!!」
結城の言葉にバルクホルンは激昂し、彼をキッと睨みつける。だが結城は動じることなく言葉を続ける。
「アンタが宮藤を避けるのは妹さんと被ってしまってそれらを思い出してしまうから。」
「…………黙れ!」
「会いに行く資格がないと言ってるが、結局は妹さんに会うのが怖いんだろ。」
「……黙れ!……黙れ!」
「カールスラントのスーパーエースと言っておきながら、とんだ臆病者なもんだ。妹さんに会うのを怖がり、過去から逃げ回っている……臆病者の姉を持って妹さんもさぞかし哀れなもんだな。」
冷ややかな笑みを浮かべて、結城はバルクホルンを“臆病者”と蔑称した。
――――――プツン
その言葉を聞いた瞬間、バルクホルンの中で何かが切れる音がした。
バキッ!!
切れたバルクホルンは、結城を殴り飛ばした。殴られた勢いで結城は床に倒れ込む。バルクホルンは、倒れた結城の上に馬乗りになって彼の顔面をさらに何発も殴りつける。
「黙れ!!貴様に何が分かる!!家族も祖国も全てを失った私の気持ちなんか貴様に分かるものか!!」
「止めなさい!トゥルーデ!」
慌ててミーナは、馬乗りになっているバルクホルンを羽交い締めにして結城から引き剥がす。
「離せっ!ミーナ!コイツは私だけでなく、妹のクリスまで侮辱したんだぞっ!!」
「いいえ離さないわ!それにバルクホルン大尉!これ以上の暴力行為をするなら上官の権限で貴方を処分にする事になるわ!」
ミーナ本人も本心は結城の行き過ぎた発言には思うことはある。だが、今ここでバルクホルンを止めないと本気で彼を殺しかねない。ミーナの言葉を聞いてバルクホルンはやっと冷静を取り戻す。
「すまないミーナ……もう大丈夫だ。」
バルクホルンは休憩室を後にした。
休憩室にはミーナと結城の2人だけになる。
「……結城さん、私は貴方を心から軽蔑するわ。」
ミーナは、床に座り込んだ結城を睨みつける。苦楽を共に過ごした戦友の心を平気で傷付けた彼を許せなかった。ミーナが休憩室を後にしようした時、結城はミーナを呼び止める。
「中佐、1つ忠告しておく。あのままじゃバルクホルンいつか死ぬぜ。今の彼女、まるで死に急いでいるようでとても危なかっしい……。」
「トゥルーデは大丈夫よ。あの子は妹さんを残して死ぬような事はしないわ。」
ミーナもその場を後にする。休憩室には結城1人だけ残る。結城はポケットから煙草を取り出し、口に咥えてライターで火をつける。肺いっぱいに紫煙を吸い込んだ後に脱力するように吐き出した。
「あ〜っ、痛ってぇ……。」
後になって殴られた頬が痛みだした。口の中を切ってしまったせいか、口の中は血の味がしている。ふと彼は、バルクホルンが言った言葉を思い出していた。
「家族と祖国を失った気持ちか……。そんなもん、とっくの昔に味わってるよ……。」
結城の呟きは、誰にも聞かれることなく夜の闇に消えていった。
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翌日、新人の宮藤とリーネを指導するため結城、バルクホルン、坂本が滑走路に集まっていた。
ちなみに朝、結城が両頬を腫れ上がった状態で食堂に現れた時は、ミーナとバルクホルンを除くウィッチ達一同は驚き、宮藤に治癒魔法してもらって……とそれなりに騒動になっていたのは別の話である。
「今日は、編隊飛行の訓練を行う。結城の2番機にリーネ、バルクホルンの2番機には宮藤が入れ。」
「はいっ!」
「えっ……」
坂本の指示にリーネははっきりと返事するのに対し、宮藤は当惑気味にバルクホルンに視線を向ける。
「宮藤!返事はどうした!?」
「……あっ、はいっ!」
少し遅れて宮藤は返事する。
結城たち4人はストライカーを履いて空に上がる。インカム越しから坂本にロッテ編隊と訓練内容が伝えられる。
『2番機は常に1番機の後についていけ、他は見るな。1番機は常に敵から目を離さず2番機に的確な指示を出している。宮藤とリーネは1番機に続いていけ。今回の訓練は結城隊が逃げるのでバルクホルン隊はそれを追え。』
「了解。」
『……どうしたバルクホルン。聞いてるのか?』
バルクホルンから返事がなく、坂本は聞き返す。
「……大丈夫だ。行ってくれ」
遅れてバルクホルンが準備が完了した事を伝えて訓練が始まる。
「行くぞリネット!遅れるな!」
「はいっ!」
「行くぞ、新人……。」
「はいっ!」
結城とバルクホルンが2番機にそれぞれ指示を出して編隊飛行に移る。すると編隊訓練が始まって間もなく、基地内から警報が鳴り響く。
「敵襲ッ!グリッド東07地区、高度15000に侵入!」
訓練に参加していた4人はすぐさま編隊を組み、ネウロイの出現地点へと向かう。基地から出撃した坂本、ミーナ、ペリーヌもすぐに合流する。
「最近、奴らの襲撃サイクルはブレが多いな」
ネウロイの襲撃の不安定さに坂本が愚痴をこぼす。
「カールスラント領で動きがあったみたいだけど詳しくは…………」
「カールスラント!」
「どうした?」
「……いや、なんでもない。」
ミーナと坂本の話を聞いて、カールスラントという言葉に反応するバルクホルン。坂本が聞くが、バルクホルンはすぐに誤魔化した。
「よし、隊列変更だ。ペリーヌはバルクホルンの2番機に、宮藤は私の所に入れ。結城はいつも通り遊撃に回れ!」
「了解。」
(また少佐と……!)
坂本の命令を受けて結城は、右手に持つMG151/20のセーフティを解除する。
ペリーヌは、坂本と組む宮藤が気に入らず嫉妬し宮藤を睨みつける。
「敵、発見!」
坂本が魔眼で捕捉し、すかさずミーナが隊員達に指示を出す。
「バルクホルン隊突入!!」
「了解!」
ミーナの号令とともにバルクホルンは降下してネウロイに突入を開始していく。
「少佐、援護に回ります。」
「分かった!行くぞ宮藤!」
「はいっ!」
坂本は宮藤を連れて上昇し、結城も続いて高度を上げて上空から攻撃する機会を伺う。バルクホルンがネウロイに弾丸を浴びせて離脱した所で結城は、急降下してネウロイに攻撃を仕掛けていく。
射程に入り、引き金を引こうとした瞬間、バルクホルンが射線上に入る。
「どけ!バルクホルン!邪魔だっ!!」
結城が怒号に近い叫び声でバルクホルンに呼びかけるもバルクホルンは結城の声に耳が入らずネウロイに攻撃をしている。
「ちぃっ!!」
結城は、反転してネウロイの攻撃をやり過ごす。
「あのボケッ!!一体何考えてやがるっ!!昨夜の嫌がらせのつもりか!!」(カールスラント語)
自分の攻撃する機会を邪魔された結城はバルクホルンにブチ切れる。あまりの怒り具合に彼の口調はカールスラント語になっていた。
「やっぱり……おかしいわ!」
「えっ?」
ミーナがバルクホルンの違和感に気付く。横にいたリーネは何の事か分からず聞き返す。
「バルクホルンよ!あの子はいつも2番機に視界を入れてるのよ。なのに今日は、1人で突っ込みすぎる!」
それを聞いて結城はバルクホルンを見る。今日のバルクホルンはネウロイに急接近して、ホバリングしながらビーム発射口に弾丸を浴びせている。明らかに危険すぎる行為である。
「突っ込みすぎだバルクホルン大尉!!オイッ!聞いてるのか!?」(カールスラント語)
結城はバルクホルンに向かって怒鳴りつける。しかし、戦闘時の興奮のせいか彼女の耳には彼の言葉は全く聞こえてない。
「あそこを狙って!」
「はい!」
ミーナの命令を受けて、リーネは対装甲ライフルの引き金を引く。対装甲ライフルから放たれた13.9ミリ弾はネウロイのビーム発射口に命中して、細かい破片が散らばる。
ネウロイも幾つものビームを放って反撃をする。至近距離で銃撃するバルクホルンにもビームを放つもそこは歴戦のエース。彼女はシールドを張らずに上昇して攻撃を躱す。しかし、すぐ後ろにはペリーヌがおり、シールドを張るも反動で後ろへ飛ばされる。
さらに悪いことに、ペリーヌが飛ばされた先にはバルクホルンがおり、2人は空中で衝突してしまう。その隙を逃さずネウロイはバルクホルンに向けて攻撃を集中させる。咄嗟にシールドを張るが、まともにビームが食らってしまい彼女の持つMG42機関銃にビームが当たって暴発する。
「大尉っ!!」
「バルクホルンさんっ!!」
「あのバカ野郎!だから言わんこっちゃない!」
負傷したバルクホルンは、そのまま地上へと堕ちていく。すぐに宮藤とペリーヌが救助に向かった。
落下していくバルクホルンを捕まえた宮藤とペリーヌは、森の中へ降りていった。バルクホルンを地面に寝かせた後、宮藤は軍服の胸元を開けて、傷の具合を確認する。
「私のせいだ……どうしよう……!」
「出血が酷い……!動かしたらもっと酷くなる……ここで治療しなきゃ!」
自分のミスで上官を負傷させてしまい、ペリーヌは狼狽える。傷の具合は深手で出血が止まらない。
「お願い……大尉を助けて……!」
ペリーヌの言葉に宮藤は強く頷き、治癒魔法を発動する。
「焦らない……ゆっくりと、集中して」
宮藤は、自分に言い聞かせながらバルクホルンの傷に魔法力を注ぐ。すると、宮藤を中心に青い半球がバルクホルンを包みこむ。
「こんな力が……!」
宮藤の強大な治癒魔法を初めてみたペリーヌは驚愕して声を漏らす。直後、ネウロイが地上にいる3人に攻撃をしてきた。
「しまっ……!」
ペリーヌが気付いた時にはビームが目前に迫っており、シールドの展開に間に合わないとペリーヌは覚悟するが、別のシールドが展開してビームを弾いた。
「ゆ、結城大尉……。」
「クロステルマン中尉!ボケっと突っ立ってる暇があるならシールド張って、治療の時間を稼げ!」
「は、はいっ!」
その後もネウロイは容赦なく、地上に向けてビームを放つ。その攻撃も激しさを増す。
「このゴキブリめが!死にやがれ!!」
結城がMG151で銃撃し、ペリーヌがシールドを張って治療の時間を稼ぐ。
治癒魔法の効果があってかバルクホルンが目を覚ます。
「いま治しますから!」
「私に張り付いてはお前達も危険だ。離れろ……私なんかに構わず、その力を敵に使え……。」
「嫌です!必ず助けます!仲間じゃないですか!」
「敵を倒せ!私の命など……捨て駒で良いんだ……。」
バルクホルンの言葉を聞いた結城は、目付きを変えた。
「大尉……それは、本気で言っているのか……?」
「当然だ。冗談でこんな事は――――っ!?」
「―――この、馬鹿野郎っ!!」
結城は、持っているMG151を地面に投げ捨ててバルクホルンの胸ぐらを掴み、バルクホルンの顔面を殴りつける。
「ちょっと結城さん!?」
「結城大尉、一体何をしてまして!?」
「黙ってろ!!」(カールスラント語)
結城のあまりの剣幕に宮藤とペリーヌは口を噤む。
「自分の命は捨て駒で良いだと……!?テメェ、ふざけんじゃねぇぞ!!妹さんを孤児にさせる気か!!妹さんが目を覚まして“あなたのお姉さんは戦死しました”と聞いたらその子がどんな気持ちになるか考えた事あるのか!!」
3人は驚いていた。いつもは、感情を表に出さない結城が感情をむき出しにして怒っていた。
結城は許せなかった。この目の前のウィッチは唯一の家族がいるのにそれをないがしろにしたこと、航空歩兵として生きる事を簡単に放棄したことに。
結城は、バルクホルンの胸ぐらを突き放すように離して地面に置いてあるMG151を拾い上げる。
「大尉……。お前がココで野垂れ死のうがどうなろうが俺は知ったこっちゃない。だがな……これだけは覚えとけ。俺たち航空歩兵は、生き残ることが勝利なんだ。生き残る意志の無い奴に航空歩兵の資格はない。お前はどうするんだ?ゲルトルート・バルクホルン大尉」
それだけ言うと結城は、空を飛び戦闘空域に戻る。
“生き残る意志の無い奴”そう言われてバルクホルンは思い出していた。あれは、いつだったか……ヨーロッパ本土からブリタニアへの撤退戦の時だ。ネウロイの大群に単騎で突っ込んで行ってガランド中佐に同じ事を言われた。まさか同じ轍を踏むとは……。
(そうだ……!私はまだ死ねない……!クリスの為にも、仲間の為にも、祖国を取り戻す為にもこんなところで死ぬ訳にはいかないんだ……!)
「宮藤……早く治してくれ!アイツは、私が倒す!」
バルクホルンは、上空にいるネウロイに睨みつける。
「さてと……死んでもらうぜネウロイ!」
坂本たちと合流した結城は、MG151でネウロイのコア部分を中心に掃射する。
肉を抉り取るようにネウロイの装甲が削れていき、敵のコアが露出する。
「コアだっ!」
坂本がネウロイのコアを確認する。
「……後は頼むぜ、バルクホルン」
直後、坂本たちの間を高速で通り過ぎる人影が。宮藤の治癒魔法で回復したバルクホルンがMG42と九九式二号二型改13ミリ機関銃の2丁持ちでネウロイに肉薄する。
「うおああああああああああああっ!!」
バルクホルンは、機関銃が弾切れになるまでネウロイのコアを撃ちまくる。コアを撃ち抜かれたネウロイは白い破片となって爆散する。
その様子を空と地上で見ていたメンバーたち。そして、ミーナはバルクホルンに飛んで駆け寄る。バルクホルンは、ミーナの存在に気付き後ろを振り向く。
「ミーナ―――」
パァンッ!
ミーナは、バルクホルンの頬を引っ叩いた。
「何をやってるの!?貴方まで失ったら私達はどうしたらいいの!故郷もなにもかも失ったけど、私達はチーム……いえ家族でしょう!この部隊の皆がそうなのよ!貴方の妹のクリスだってきっと元気になるわ。だから妹の為にも新しい仲間の為にも死に急いじゃダメ!!皆を守れるのは私達、ウィッチーズだけなんだから…………!!」
沸き上がる気持ちを抑えきれずミーナはバルクホルンを抱きしめた。眼には涙を浮かべており、その顔は友人を想う1人の少女の姿であった。
「すまない…………。私たちは、家族だったんだよな。休みを………休みを貰えるか?見舞いに行ってみる。」
バルクホルンの言葉にミーナは、微笑みながら頷く。
その光景を見ていた結城は、思いを馳せる。
(家族か……。俺にとって家族とは……。)
その横顔は、どこか物悲しい表情を浮かべていた。
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その日の夜、バルクホルンはクリスの見舞いに行く為に執務室にいるミーナに休暇申請書を提出し、部屋を出た。
自室に戻る道中、バルクホルンは今日の出来事を振り返っていた。何も考えなしに1人で突っ走った結果、ネウロイの攻撃を受けて重傷を負うも宮藤の治療のおかげで一命を取り留めた。彼女がいなければ今頃自分は死んでいただろう。
「宮藤には、いつか礼を言わないとな。……ん?」
そのまま自室に戻ろうとしていてると、休憩室に佇む人物に気付く。
「結城」
誰か呼ぶ声がして後ろを振り返るとバルクホルンが居た。今の彼女は、思いつめていた様子もなく、憑き物が落ちて晴れやかな表情をしている。
「バルクホルン、こんな夜中にどうした?」
「ミーナに休暇の書類を出しにいったところでな。部屋に戻る途中でお前を見かけたんだ。」
「そうか……。」
暫しの沈黙の後に、バルクホルンが声を掛ける。
「結城、その……昨晩は殴ってすまなかった。頬はまだ痛むか?」
バルクホルンは、昨晩殴った事に頭を下げて謝罪した。
「いや、もう大丈夫だ。それにバルクホルン、お前が謝る事じゃないから別に気にしてないさ。」
「それは違う……。あの時は結城……お前を責めるような事を言ったんだが、本当に責められるべきなのは自分自身なんだ……。」
バルクホルンはそのまま話を続ける。
「私自身、本当は分かっていたんだ。自分が過去から逃げている事に……妹のクリスに会うのを怖れていた事に……。ネウロイにやられた時、このまま戦場で死んでこの苦しみから解放されたらどれだけ楽かと思ったことか……。
だが、結城に言われて気付いたんだ。私にもまだ大切な物があるという事に。」
「……………………。」
「あの後、宮藤から聞いたよ。お前の両親が4年前のあの戦いで亡くなっていた事を……。」
結城は、バルクホルンの話を聞いて口を開く。
「4年前……両親がネウロイの攻撃で死んだ報せを聞いた時、自分の無力さを思い知らされたよ。俺にとって両親は“守るべき存在”であったから…………だから両親が死んだ時、胸が張り裂けそうな思いでとても辛かった。バルクホルン、家族を……妹さんを大事にしろ。俺のように家族を亡くして孤独を味わうのはゴメンだからな。」
「ああ、約束する。―――それに結城、お前にも家族は居るじゃないか。私達ウィッチーズが家族だ。」
バルクホルンの言葉に結城はポカンと面食らうもすぐにフッと微笑む。
「そうか、俺達は家族か……。」
自分には、家族と呼べる居場所がある。その言葉を聞いて安堵する結城であった。
結城くんにとって、ウィッチの戦いは“金を稼ぐ手段”としか考えておらず、ウィッチーズの“誰かを守りたい”という信念なんか最初から持ち合わせいないのです。