東方海魔伝   作:嘘しか言わん狐

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咲夜の世界

十六夜咲夜と鈴仙・優曇華院・イナバは直近で八景龍が現れたという迷いの竹林に来ていた。

 

海面に揺れる月の兎、鈴仙・優曇華院・イナバ。

直近で休みなく雑務をこなして実働隊としても闘う忙しい兎。

 

「鈴仙・優曇華院・イナバ」

 

「バカ」

 

「カタストロフィ」

 

「イカ」

 

「海魔」

 

「真っ赤」

 

「〝れ〟攻めやめろとは言ったけど〝か〟で攻めてくるのもやめてくれない?」

 

見回りが暇すぎて始めたしりとり。現在は咲夜が20連勝中である。

 

「まぁいいや、か…壁紙」

 

「3日」

 

「か…!花京院典明!」

 

「金貨」

 

「んぁぁぁあ!!魂掛けられたぁぁ!!」

 

時刻は深夜0時、幻想郷滅亡まで残り、4日。

 

「うまいこと言うわね…」

 

紅魔館には紫から仕入れた最新の漫画コーナーがある。

咲夜は特にJOJOにハマっており、鈴仙や妖夢に布教しているのだ。

 

「…って、あれあんたんとこの雇い主じゃないの?」

 

「え?あ、ほんとだ、輝夜さんだ」

 

海上に佇む月の姫、蓬莱山輝夜。

ただ立っているだけで、どこか幻想的な雰囲気を放っている。

 

「…居眠りしてて捕まったんじゃなかったっけ?」

 

「あっ…じゃ、じゃあ敵って」

 

(時は止まる…!)

 

咲夜の時間を操る程度の能力と、輝夜の永遠と須臾を操る程度の能力は原理が違う。

止まった時の中を輝夜が動いてくるかは分からない。

だが、とりあえず封魔針を投げつけるのは当然の事。

 

止まった世界で針が動きを止めると、再び時を動かそうと……

 

「まずいっ、介入してきた!」

 

「わざわざ受けて上げる道理も無いわよね」

 

止まった時の中を、咲夜と輝夜、二人だけが動く。

ナイフによる牽制を躱す輝夜に対し、本命の蹴りを放つと輝夜はそれを拳で迎撃する。

 

「っ…!」

 

衝撃は軽くはない、地面に脚を叩きつけるように加速したナイフを突き出すと、輝夜は避けるわけでもなく、あえて刺されることで動きを封じてから掌底を咲夜の腹に叩きつける。

 

「がはっ…!」

 

「…て事なの!?…え?あ、咲夜!」

 

今の衝撃で時が動き始めた。

鈴仙は突然吹っ飛んでいった咲夜を心配しながら、輝夜に指先を向ける。

 

数発の弾丸を撃ち出す鈴仙の身体がピタリと止まる。

弾丸を払い除けながら輝夜は紅いレーザーを乱れ撃つ。

 

新難題「エイジャの赤石」

 

無数のレーザーに、大きな紅い弾が咲夜を襲う。

 

「時止め…こんな感じかしら?」

 

完全に時止めを覚えられた。

弾幕を避けながら、無数のナイフを放つ。

 

「ふふ、時はすでに止まってるのよ、そんなに投げていいの?」

 

「ええ、いいのよ」

 

「むっ…?」

 

躱したナイフが戻ってきた?

輝夜は不思議そうに肩に刺さったナイフを引き抜く。

 

「…防がれた、さすがに手強いわね」

 

いつから後ろにいたのか…いや、後ろにもいたのか?

確かに十六夜咲夜は今輝夜の目の前にいた。

にも関わらず、今後ろから襲いかかってきた咲夜は何者か。

 

「これは真似できるかしら?」

 

5人の咲夜が同時に輝夜に襲いかかる。

ナイフが、針が、襲い来る中、輝夜は全包囲を薙ぎ払うように弾幕を放ちながらおそらく本物と思われる咲夜に接近しようとする。

 

「人間如きが…!」

 

輝夜が接近した瞬間、時が動き出す。

 

「うぁっ!?」

 

「……!?」

 

「ナイス鈴仙」

 

鈴仙からすれば、急に弾道が曲がったと思ったら曲がった先になぜか輝夜がいて、自分から当たりに来たように思えた。

 

「鈴仙!時は止まる!」

 

「!」

 

再びの時間停止、輝夜は背中の痛みに悶えながらも傷を再生させると、咲夜に向き直る。

 

「やってくれたわね…!」

 

「最初はちょっとばかし焦ったけど、あなたは時を止められるだけ、私は時を操るのよ」

 

「時止めは無意味よ、時なんて止めないでイナバとかかってきたほうがよかったんじゃない?」

 

「鈴仙は必要ない。なにせ、あなたに私は倒せない」

 

「私はあなたに!近づかない!!」

 

新難題「金閣寺の一枚天井」

 

それは、ロードローラーを彷彿とさせる一撃だった。

圧倒的な質量攻撃、金閣寺の天井で咲夜を押しつぶし、ダメ押しにと力強く擦り付ける。

 

咲夜の身体を押し潰す大きな天井を叩きつけた輝夜は、勝ちを確信した。

人間である以上、押しつぶされて平気なハズはない。

 

「言ったでしょう、あなたに私は倒せない」

 

天井をぬるりと〝すり抜けて〟現れる咲夜に、さすがの輝夜も言葉を失った。あり得ない、時間を操る程度の能力でこんな事が出来るはずがない!

 

「ごぷっ……!?」

 

針…?いつの間に…?

咲夜との戦いでは特に、一瞬の動揺が命取りになる。

輝夜の背中には封魔針がしっかりと突き刺さっていた。

 

 

 

 

 

 

「…で、これで良いのよね?」

 

「ええ、部下の弟子にいいようにしてやられたなんて思わせないようにする、というのも従者の努めよ」

 

「本当にすり抜けなんてできるの?」

 

「できるわけないじゃない。そんな能力じゃないもの」

 

「輝夜さんショックだろうなぁ…人間なんかに負けた〜って」

 

「しかし、鈴仙。よくあれで気付いたわね」

 

「まぁね、あんた口から血出てたし、手伝えってことでしょ?」

 

「ええ、あなたのおかげよ鈴仙」

 

蓬莱山輝夜を連れて博麗神社へ戻る咲夜達。

輝夜はしばらく呆然としていた。

 

ーーー十六夜咲夜、迷いの竹林にて勝利。




咲夜さん大活躍に見せかけてMVPは鈴仙
時を止められる者同士の闘いは三つの要因で勝敗が決まる

一つ、永く時を止めてきたという年季の差

二つ、自分の能力を過信せず、仲間に頼る事

三つ、JOJOの奇妙な冒険第三部スターダストクルセイダースを読んでいる事…実はこれが一番大事なのだ

次回東方海魔伝 『多分だけど、海魔出なそう』
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