東方海魔伝   作:嘘しか言わん狐

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秘密暴露神摩多羅隠岐奈

霊夢と魔理沙が意識不明の重体となって帰ってきて、すでに一日経った。計算通りならあと3日で幻想郷は滅亡する。

 

八雲紫は焦っていた。いまだに八景龍は影も形も見つからない。

 

「こんな大変な時に、隠岐奈はどこに行ったのよ!」

 

「呼んだかね?」

 

ヌルッ…と後ろから車椅子のようなモノに乗った金髪の胡散臭い女が現れる。

 

秘密を明らかにする神、摩多羅隠岐奈。

一応幻想郷の賢者の一人である。

 

「いるならさっさと来なさいな、それでも幻想郷の賢者の一人かしら?」

 

それに対して嫌味を言う金髪の胡散臭い女。ご存知紫である。

 

「はっはっはっ…まぁそう言うな!こちらも何もサボっていたわけではない。八景龍海魔の正体を…探っていた」

 

「なに?八景龍の正体ですって…?」

 

やはり知らなかったか…!と勝ち誇ったような顔をする隠岐奈を見てイライラし始める紫。同族嫌悪である。

 

「では今に語ろう!この私が調べ上げた八景龍の正体を!今に!今に!」

 

「勿体ぶらずにさっさと言いなさい」

 

両手を広げて立ち上がる隠岐奈は一息ついて車椅子に座り直す。

 

「奴の正体は『リヴァイアサン』と呼ばれる西洋の怪物、および悪魔である!奴は神格を持つものに種を滅ぼされ、たった一人生き続けてきた〝生き場所のない惨めな怪物〟なのだ」

 

「リヴァイアサン……人に取り憑く能力を持つと聞いたことがあるわね、海に住む最強と謳われた怪物…」

 

「うむ、奴はどこかの神に家族を殺されたあと、その神の管轄外であろう日本に移り住んだ。日本では船を沈める妖怪として認識され、妖怪としての格をも得た」

 

「ムラサ…?確か霊夢が最初に遭遇した操られた子も、ムラサだったわね、偶然かしら?」

 

紫は少し考え込むと、メモを広げて黙々と資料を書き込む。

 

「奴に弱点は無い…!故にまた封印を…」

 

「奴の弱点は光熱よ。うちの魔理沙や、霊烏路空の攻撃は通用していた。一時は追い詰められたのだから、殺れるはずよ」

 

「え?」

 

「あら?知らなかったの?ふーん…知らなかったのね〜」

 

「…ふっふっふ」

 

摩多羅隠岐奈は笑ってごまかした。

知らなかった、とは言いたくなかった。

 

「それで、とうの魔理沙は決戦までに使い物になるのかね?」

 

「万が一でも同じ役割なら幽香もできるわ。でもね、霧雨魔理沙という人間をなめないで頂戴。あの子はお前如きが推し量れるようなちっぽけな人間ではない」

 

「ふっ…随分買っているな紫よ、あの娘は特別か?」

 

「当然よ、魔理沙も、霊夢も、この幻想郷の全てが私の大切な宝よ。あなたこそ随分と魔理沙を気にするじゃない、惚れてるのかしら?」

 

「……かもしれんな、だが惜しい。なぜあの水属性の才能をまったく活かさないのか……」

 

「それが人間よ。生まれ持った本能に従う妖怪とは違う。だから美しいのよ」

 

「過保護が過ぎる」

 

もしも水の魔法を極限まで鍛え上げれば、おそらくはあのリヴァイアサン、八景龍海魔にすら匹敵するだろうに、惜しい。

とはいえ本来適していないマスタースパークをあそこまで研鑽してみせるとは恐るべき才能だ。

というか恋魔法だの星魔法だのなんなんだ?

あれは炎魔法じゃないのか?

 

「紫……と、隠岐奈か」

 

噂をすればなんとやら、包帯塗れの魔理沙が立っていた。

いつもよりも覇気のない姿が痛々しい。

 

「魔理沙…!あなた、怪我は大丈夫なの?」

 

「いや、まだダメだってよ。一ヶ月は絶対安静だって」

 

「なら休んでいたらどう?我々だけで充分」

 

「いやいや、私も一枚噛ませろよ…霊夢はまだ起きないからな、私がやる」

 

どうせこうなったら何を言ったって聞かないだろう。

紫は魔理沙の姿を見て思案する…もし、決戦までに霊夢が目覚めなかった場合、作戦は封印ではなく魔理沙、お空、幽香の最大火力を同時に浴びせることによる確殺計画となるだろう。

 

しかし、今の魔理沙にできるだろうか?

自らの放つマスタースパークに耐えられるほど回復したと言えるのか?壁に体重を預けてようやく立っているような状態だ。

 

「……霊夢が、起きなかった時だけ…参戦を認めましょう」

 

その場合、最悪霊夢と魔理沙、両方を喪うかもしれない。

いや、そうはならない、私の愛する博麗霊夢と霧雨魔理沙を信じるほか無いのだ。

 

「あぁ…明日か明後日、嫌でも決戦だろ?…もっかい寝てくる。リヴァイアサンだかなんだか知らないが…この幻想郷は私達が守るさ」

 

痛みに滲む汗を気にせず、魔理沙はふらふらと病室へ戻る。

その背は痛々しく重症者のそれにもかかわらず、どこか頼もしかった。

 

「……お前も、甘いな」

 

「お前こそ、口を挟まない礼儀はあるのね」

 

「ふっ…ひどい言い草だ八雲紫よ」

 

 

博麗神社の裏へ作られた簡易的な病室へ戻ると、魔理沙はいまだ目覚めない霊夢の隣に座り込む。

 

「なぁ霊夢、置いてっちまうぞ。速く起きて、一緒に異変終わらして、一緒に呑もう」

 

魔理沙は霊夢の手を握ると、確かな暖かさに安心を求める。

大丈夫、霊夢は生きている。私みたいにひょっこり生き返って、「あんたに先を越されるなんてね」なんて悔しそうに言うに決まっているんだ。

 

「霊夢、咲夜の美味い海鮮料理も食いそびれちまって、悔しいだろ?美味かったぜ〜イカスミパスタにエスカベッシュ?とかいう…南蛮漬けみたいな奴とかさ!安心しろよ、また作ってくれるってよ」

 

視界が歪むのは、きっとまた腹の傷でも痛んできたんだろう。

霧雨魔理沙はこんなところで止まってる暇はないのだ。

幻想郷を守りにいかないといけない。どっかの寝坊助巫女なんかとは違う責任感の強い魔理沙さんなのだ。

 

「頼む…死なないでくれ…なぁ霊夢…起きてくれよ…」

 

霊夢に縋り付いてとめどなく泣く魔理沙の姿は、誰も知らない。

少なくとも魔理沙はそう思ってるし、それでいいと思っている。

 

努力を人に見せないように、こんな弱い姿も見せられない。

それでも魔理沙は霊夢に縋って泣いた。

今泣ききって、また起きて会った時、泣かないために。

 

祈りにも近い声と共に静かに夜は更けていく。

 

 

ーーー幻想郷の命運をかけた決戦は近い。




とうとう八景龍の正体が明らかになった…
しかし最強の敵、八景龍海魔にはもう一つ秘密がある
八景島にはリヴァイアサンっていうコースターがある!

次回東方海魔伝 『名前3分で考えられた女』
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