東方海魔伝   作:嘘しか言わん狐

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巫女と風祝

どこもかしこも海ばかり。妖怪の山も殆どが水没していた。

だからこそ目立った。諏訪子の能力だろう地盤を動かし守矢神社だけが空高い場所にあった。例えるならドラゴンボールのカリン塔としか形容しがたい光景だった。

 

「早苗?ご両親元気?」

 

「両親ではないですが元気ですよ。お二人共すでに博麗神社に向かってます。私は霊夢さんを待っていました」

 

「あそう、話が早いわ」

 

常識を捨てた風祝、東風谷早苗。

こんな状況でも慌てない、なぜなら常識を捨てているから。

 

早苗は霊夢と二人で博麗神社へ向かって飛び立つ。

 

「あの黒い水の対処は分かってるわね」

 

「ええ、近所のもみじさんが取り憑かれたので、弾き飛ばしました」

 

「河童は?」

 

「にとりさんを含め、全員姿を消しました。恐らくは取り憑かれています」

 

「面倒ね……」

 

この海ばかりの環境で河童が敵に回るのは避けたかったが、仕方ない。出会い次第洗脳を解除するしかない。

 

「天狗は?」

 

「天狗は全て空を飛んで回避したようです。博麗神社へ向かいました、その他の妖怪はあらかた解除しましたが、取りこぼしもありますね」

 

「上出来よ、こっちは時間がなくて馬鹿船長しか治してないけど、一応同じ針は大量に渡しておいたわ」

 

「馬鹿船長…?む、村紗さんですか?うちにも来ましたよ。大変助かりました」

 

一応ちゃんと手伝ってくれてたようで安心である。

 

「なんで馬鹿船長なんですか?」

 

「え?あぁ、あいつは私の夢を弄びやがったのよ。伝説の宝船だと思ったら聖輦船とかいうボロ船……私はアイツを許さないと決めたわ、なんか話通じなかったし」

 

霊夢は歯を食いしばって拳を握りしめる。

 

「私怨じゃないですか〜!結構いい子ですよあの子。……そもそも宝船の件は恨むべきはぬえなのでは?あの人自分はエイリアンだって嘘ついたんです!」

 

「それはあんたが悪いと思う…」

 

勝手に勘違いして勝手に恨んでいるあたり、二人共どっちもどっちである。

 

「……止まって、あれは」

 

「なんです?」

 

「魔理沙!」

 

アリスと共に飛ぶ、ボロボロの魔理沙の姿があった。

魔理沙もこちらに気づいて手を降っている。

 

「魔理沙!どうしたのよその怪我は!」

 

「あぁ、ちょっと八景龍と会っちまって…惜しいとこまで行けたんだけどなぁ〜」

 

「霊夢、私と魔理沙は博麗神社に戻るところだけど…そっちは?」

 

「こっちもよ、早苗とね」

 

「こんにちはアリスさん」

 

なんともまぁ心強いメンバーである。

役1名死にかけているが、博麗神社へ帰るだけなのでまぁ大丈夫だろう。

 

「アリスさんはどうして?」

 

「私は八景龍に操られていたのよ。でもまぁ、色々あって治ったわ」

 

「魔理沙が…?神力じゃなくても弾ける…?」

 

「あ、いや。アリスはなんか、勝手に治った」

 

「「勝手に治った?」」

 

魔理沙の言い分を頭が理解を拒むのは、巫女としての常識があるからだろうか?普通そういうのは巫女や風祝が除霊してようやくって代物なのだが、なんで気合いとか根性みたいなので解決しているんだ?

 

「プライド高いからな、アリスは」

 

「あー…うん、そうなんだ、すごいわね」

 

「霊夢さん私って常識捨てられてなかったみたいです」

 

「そんなに褒めないでちょうだい」

 

誰も褒めてなどいない。

ただドン引きしてるだけである。

 

「だってあり得ないでしょう!洗脳されておきながらプライドで破る?ベジータしか許されないでしょそんなの!」

 

「ま、まぁ…うん、アレじゃない?洗脳された事でプライドが怒りを爆発させて、その爆発力であの黒い水を追い出したみたいな…なんか、そういうの…」

 

「魔理沙が信じてくれたんだもの、なんだってできるわよ」

 

魔理沙はもう、何も言わなかった。

突然洗脳が解けたと思ったら人の帽子にゲロった事とか、言わないであげようという優しさが魔理沙にはあった。

 

アリスのためにもにとりの為にも。

 

「ま、まぁいいわ。二人にも渡しておくわね、この針を刺せば勝手に解除してくれるから、操られてそうな奴は見つけ次第指しなさい」

 

「んな便利なもんがあるのか…まぁアリスにはいらないんだろうが」

 

「見て見て、強くない?」

 

総勢百体の上海人形に針を持たせて自立させている。

一体どこから取り出したのか。一体どころではないが。

 

「いいじゃない、片っ端から刺してきて」

 

「ええ、わかったわ…」

 

「あら、早速誰か来たわよ」

 

遠くから飛んできた新たな刺客を迎え撃つのは妖怪退治の専門家三人と根性使いのアリス。なぜ一人で挑みに来たのか。

 

「最強のあたい!×最強の八景龍さま!つまりあたいはもっとさいきょー!」

 

「なんだバカか」

 

答えはチルノだからである。

 

「くらえ霊夢!あたいのスーパーウルトラファイティングゥ゙ゥ゙!サイキョーローリングブラスターミラクルぅぅぅう!うおおお!アルティメット凄い強い伝説のぉ!ウルトラ…!?」

 

「ウルトラ二回目じゃない?」

 

「まだ……技名を……言ってる…のに……」

 

海を漂う溶けかけの氷の妖精、チルノ。

技名が長すぎて、敗北。

 

「よし、戦力ゲットね」

 

「あぁ…海を凍らせて、奴が海に逃れるのを防げるかもな」

 

「レティでよくない?」

 

「今は夏ですから寝てるんじゃないですか?」

 

 

頭に針を突き刺したチルノを小脇に抱え、霊夢達は博麗神社へと戻った。

 

「あ、神奈子様、諏訪子様」

 

「あぁ早苗かい。今は紫と少々話をしていてね、今日はもう休むといい」

 

山派海アンチの神、八坂神奈子。

腕を組んで大きな紙を見据えている。

 

「紫、作戦はできたの?この海を大地で埋め立ててくれる」

 

過激派海アンチの神、洩矢諏訪子。

ダルそうに神奈子の背中に乗っている姿はマスコットのようだ。

 

「まだよ、お帰り霊夢今日は休みなさい、魔理沙は怪我をしてるみたいだけどもうすぐこちらに永琳がくるから寝てなさい」

 

紫は忙しそうに紙にペンを走らせている。

目に隈もできてるし、今日は昼寝してないらしい。

 

「……じゃあ、今日は休みましょうか」

 

いくらあの霊夢とはいえ眠らずに闘い続けることはできない。

博麗神社の離れ、霊夢の自宅で眠りにつく。

疲れを癒し、きっと異変を解決してくれるだろう。

 

……幻想郷完全水没まで、後6日。

 

 




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