東方海魔伝   作:嘘しか言わん狐

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博麗神社での休息

パチパチと火の粉が舞う。

イカにアジ、目鯛や鮫の焼ける音を聞きながら博麗霊夢は月を見上げていた。

 

「どうしたんだ霊夢、センチな顔しちゃって」

 

「別に。私が地底や早苗と話してる間…先を抜かされたと思って」

 

「そんな事か、へへ、悔しいか?」

 

「ええ、魔理沙でも倒せそうだったんでしょ?じゃあ私にだってやれるはずよ……何が夢想天生なら或いは…よ!」

 

「倒せそう…か。どうだろうな、結局倒せなかったし、蹴り一発で内臓割れてたし」

 

魔理沙が酒瓶を差し出すと何も言わずコップを差し出す。

とくとくと酒を注いで霊夢と魔理沙が静かに乾杯を上げる。

今日は落ち着かない夜だ、博麗神社に集まる面々が特に落ち着かない。大賢者八雲紫…はまだいい、神社にいるのは何時ものことだ。

八坂神奈子、洩矢諏訪子、八意永琳、聖白蓮、西行寺幽々子、とそうそうたるメンバーが揃っている。

うちは老人ホームじゃないんだぞ、なんて言ったら八景龍海魔を倒す前に博麗霊夢が幽々子と同じ木の下に埋められる事は明らかだった。

 

「実際に闘った私からすると、確かに隙だらけだ。だけど倒しきれなかったらすぐに再生する奴相手じゃあなぁ……今までの異変みたいに弾幕ごっこで片が付くならいいんだが……」

 

「じゃあ尚更夢想天生でどうしろってのよ…あれ防御技よ?」

 

「再生するのにも体力使うんだろ?無敵VS再生で持久戦だろ」

 

「ばっかじゃないの?」

 

目算が甘すぎる。

夢想天生だって疲れないわけじゃない。

 

「お師匠様〜!大変だ〜!」

 

突然永琳の所の兎、因幡てゐの声が聞こえた。

 

「てゐじゃない。どうしたの?」

 

「あ、霊夢!お師匠様は?」

 

「今は紫と根詰めて話し合ってるわ。鈴仙なら怪我人の治療してる」

 

「鈴仙はいいや……」

 

海上の兎、因幡てゐ。

一応名医永琳の弟子である。

 

「まぁまぁ、私と霊夢に話してみろよ、力になれるかもしれないぜ」

 

「うーん、まぁいいか……実は永遠亭無くなっちゃった」

 

「……は?」

 

「無くなったって…どういう事よ」

 

しれっととんでもない事を言う。

壊れたとかなら分かる。無くなったってなんだ?

霊夢と魔理沙はお互いの顔を見合わせて困惑した表情を浮かべる。

 

「まて、何があったんだ?詳しく言え」

 

「突然空から巨大要塞が飛んできて、永遠亭や兎たちを飲み込んでしまったんだ。輝夜様は寝てるし、お師匠様も鈴仙もいないし、永遠亭を丸ごと盗まれたんだよ!」

 

「別の異変の話してる?」

 

「八景龍ってそんな事するのか…?」

 

まるでこの後八雲紫にそっくりだが真逆の信念を持つ敵でも現れそうな展開だ。多分真面目に働く胡散臭くない紫だろう。

 

「だからお師匠様に報告をと…」

 

「話しは聞かせてもらったわ。恐らくは八景龍に取り憑かれた河童達の造ったものでしょうね」

 

ルナ・マーレのケレブルム、八意永琳。

てっきり怒ってるかと思ったが、やはり頭脳冷静である。

 

「なんのために…あ、そっかヤマメの病気…」

 

「ええ、奴は相当な弱体化を強いられていた。存外病には弱いらしいわね、だから永遠亭を…その中にある薬を狙った」

 

「おいおい…まずいんじゃねーか?」

 

「八景龍は河童の技術力を得た。病も薬で治る。再生能力も完全になる…」

 

「妹紅も呼び寄せたいのだけど…姿が見えないのよ。八景龍以上の再生能力に奴の苦手な炎の力、持久戦なら妹紅がいれば安心なんだけど…姫は捕まったらしいし」

 

「捕まったというか紛れたと言いますか…」

 

「まずいことになったわね、てゐ、来てくれる?紫達とまた作戦を練り直さなきゃならなくなったわ」

 

おそらく、八景龍海魔は完全に傷を癒し、1000年前の全盛期の力を取り戻してしまう。

 

「お空ヤマメコンボは?まともに闘えるのは何人いるの?」

 

「同じ手が通用するかは分からん…マスタースパークだって、二発目は突進してからゼロ距離で撃ったから当たったんだ。多分、一回目と同じように遠くから撃っていたら避けられていた」

 

お空にそんな頭を使った闘いができるとは思えない。

なんて言った魔理沙のそれも特攻みたいなものだが。

 

「最高戦力は火力のお空、魔理沙。神力のある私、早苗、神奈子、諏訪子。妖怪からは紫、天狗達…紅魔館の連中はどうしたのかしら」

 

「レミリアとフランはどうなんだ?吸血鬼って流水がダメなんだろ?海には波がある。チラッとみたら紅魔館水没してたしあいつら動けないんじゃないか?」

 

「……助けにいく?紫のスキマなら…」

 

「そうだな…」

 

 

 

 

ーーー紅魔館

 

 

かつて、幻想郷を赤い霧に包んだ恐るべき吸血鬼の居城。

今は完全に水没しているその紅き館で、かの吸血鬼は今…

 

「わぁ〜!水族館みたい!美鈴あれ、あれとってきて!」

 

いろんな意味で永遠に紅い幼き月、レミリア・スカーレット。

この水没した幻想郷を全力で楽しんでいた。

 

「え、またですか?今上がってきたところなのに…」

 

色鮮やかな魚を捕る門番、紅美鈴。

水着を着せられ寝る間も惜しんで魚捕りを強いられている。

 

「お嬢様、八雲紫より救助の打診を受けておりますが」

 

「なに?救助?別に困ってないけど」

 

「今回の異変の相手、相当厄介だそうで、協力要請も受けています。お嬢様のお力を借りたいとの事で」

 

完全で瀟洒なマリンメイド、十六夜咲夜。

じつは時間停止中にちょくちょく泳ぎに行ってる。

 

「ふーん……じゃあ行こうかしら。たまには運動もしないとね」

 

こうして、作戦に加わった紅魔館の面々。

心強い仲間が加わった霊夢達は決戦の日を待ち構える。

 

 

「キノコと白身魚のアクアパッツァですわ」

 

「なによこれ美味しすぎる…お魚の旨味をキノコやミニトマトが引き立てて、逆にキノコやトマトの美味しさをお魚が引き立てて合うようなそんな関係、にんにくとオリーブオイルのバランスも完璧よ、例えるのならワンチーム、大一大万大吉、ワン・フォー・オールオール・フォー・ワン!」

 

「これくらい普通よ」

 

霊夢としては美味しい食事が加わったのが何よりも嬉しかった。

 

決戦まで英気を養いながら、刻一刻と時間は流れ…

幻想郷完全水没まで、あと5日。




永琳の医療ミスで重体に陥る霧雨魔理沙
どうして魔理沙が死ななきゃいけないのよ紫!
異変は会議室で起きてるんじゃない、幻想郷で起きてるのよ!
三途の川封鎖できませぇん!!!

次回東方海魔伝 第七話 『金髪の娘かわうそ霊』
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