東方海魔伝   作:嘘しか言わん狐

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夢想の拳

博麗霊夢、東風谷早苗チームは以前魔理沙が八景龍海魔と遭遇した魔法の森…があったはずの海に来ていた。

以前はマングローブのようにまだ木が見えていたのだが、今は完全に水没している。

本当に人里は大丈夫なのだろうか?

紫の水抜きがどれ程か分からないが、そんな局所的に浸水を抑えられるのだろうか。

 

「…霊夢さん、どうしたんですか?」

 

「え?…あぁ、ちょっと考え事よ」

 

「珍しいですね、霊夢さんが考えるなんて」

 

「どういう意味よコラ」

 

「あ、いえそういう意味では無くて…なにか悩んでますよね?異変関係で悩むこと無いじゃないですか。いつも即断即決って感じで、異変の時はずっと悩む前に決めてますし」

 

東風谷早苗は時々言葉が足りないと思う事がある。

お前こそ即断即決で喋るだろ、と霊夢は思った。

 

「別に、異変は解決するだけ。今回は…まぁ半分はこちらの責任だし…困ったことに」

 

「?どういう事です?」

 

「さとりが言ってたのよ、八景龍の心を読んだって、アイツの本心を…だから、いつもみたいに終わってほしいだけ」

 

「同情してるんですか?それとも共感ですか?……霊夢さんらしくもない」

 

「どういう意味よコラ」

 

まるで霊夢には人の心が無いかのような物言い。

いつもみたいに終わったらそれで仲良く、酒でも呑めればそれでいい。そう終わってくれるならそれがいい。

 

「殺さずに終わるならそれがいい」

 

「…それには同意します」

 

これは戦争である。少なくとも紫はそう捉えている。

弾幕ごっこではなく殺し合い、向こうが殺しに来るんだからそれはそうなのだが、霊夢は迷っていた。

 

「霊夢さん、見えました」

 

「…?……あれ、妖夢か。襲ってきそう?」

 

「ええ、凄く。以前取り憑かれてた方々とは違います。凶暴化の度合いが全く違う、おそらくは入れられている黒い水の量が多いんでしょう」

 

黒に囚われた二刀流剣士、魂魄妖夢。

ゆらりと力を抜いて立っているだけのように見えるが、その実全く隙のない。

 

「待っていました、霊夢。きっと八景龍と会ったこの地ならば誰か来るだろうと…思っていました」

 

楼観剣を上段に、白楼剣を正面に構えて深く腰を落とす。

素人目に見ても見事な隙のない構えだった。

 

「妖怪が鍛えたこの楼観剣、斬れぬものなどあんまりない!」

 

「来るっ!早苗、援護!」

 

「もちろんです!奇跡「神の風」!」

 

早苗を中心に全包囲を攻撃する弾幕、うまく妖夢の動きを制限するつもりだった。

 

「しゃあぁっ!!!」

 

最早、今の妖夢に弾幕ごっこに付き合う気持ちはない。

避けるのでは無く正面から弾幕の一つ一つを切断すると、早苗に楼観剣を振り下ろす。

 

「夢想封印!」

 

「うぐっ!」

 

夢想封印は針と同じように妖怪が嫌うありがたい力を持っているのだが、どうやらこれで追い出すことはできないらしい。

 

(肉体に阻まれたから…?)

 

であれば、避けられるかも知れないがやはり針を使うしか無いのか。

 

「一瞬で切り刻んでくれる!」

 

風のように速く、気付けば霊夢の胸元に血が滲んでいた。

目にも止まらぬ連続斬撃を辛うじて避けるが、少しずつ身体に傷が増えていく。

 

対する妖夢にもアザや擦り傷が目立ち始めた。

蹴りや手刀、お祓い棒による殴打、霊夢の攻撃は確実に妖夢にダメージを与えていた。

 

あげく、常に早苗が遠距離から妖夢に弾幕を加えている。

それでも倒しきれないのはまさしく黒い水の強化を受けているからだろうか。

本来よりもパワー、スピードが遥かに増しているのだ。

 

 

故に普段の妖夢を知っているものほど、一手遅れる。

 

 

「霊夢さんっ!」

 

「げふっ……」

 

「貰ったァ!」

 

白楼剣の一太刀が袈裟懸けに霊夢の身体を斬り裂いた。

吹き出す血を眺めながら、霊夢には恐怖は微塵もない。

 

「なっ…?」

 

トドメの楼観剣を振り下ろした時には霊夢の脚が吸い込まれるように妖夢の顎を蹴り抜いていた。

 

「っ…な、なんで!あの状態から…」

 

「不思議だわ、どう動けばいいか分かる」

 

「霊夢さんが…覚醒した…?」

 

「なにを!」

 

楼観剣の斬撃を最小限の動きで躱しながら妖夢に拳を叩き込む。

 

「なるほど…無意識無想…なにも感じない、なにも」

 

封魔針をするりと取り出すとゆったりと構え…

 

「ほざけ〜っ!…あっ…」

 

妖夢の斬撃を見切り、無意識のうちに針を胸に突き刺した。

 

「ありがとう妖夢、八景龍と戦う前に…いい技を覚えられた」

 

夢想天生は魔理沙が名付けた物だが、この新たな技にも夢想の名を冠することにする。

 

「殺気を読み無意識無想に封印する…無意識無想であればもはや隙は無く間合いもない。…名付けるなら…夢想印殺」

 

「む…夢想…み、見事……がふっ…!」

 

黒い水を吐き出しながら崩れ落ちる妖夢とすれ違うように、霊夢もまた倒れ込んだ。

 

「お疲れ様でした霊夢さん、凄かったですよ」

 

早苗は倒れ込んだ霊夢と妖夢を抱えながら、博麗神社へと戻る。

 

 

ーーー博麗霊夢、魔法の森海上にて新奥義覚醒、勝利。




迷いを断ち切る白楼剣により覚醒した霊夢
新たなる奥義夢想印殺で選んだのは封印か、殺害か
情深き故に迷った博麗の巫女と八景龍の闘いの行方やいかに!

次回 東方海魔伝 『実は元ネタ的には無想陰殺って無想転生の下位互換なんだよね』

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