「2手に分かれたぞっ!」
「1人になった方を追え! 1人捕まえれば、後はどうとでもなる!」
次にマーケットガードの小隊と接敵したタイミングで、ミズキたちは2手へ分かれる。
マーケットガードの動きだけが気がかりであったが、ミズキたちの事前の予想通り、1人となったミズキの方へ標的をシフトしてきた。
「ガラ空きですよ~☆」
ミズキの方へ標的をシフトしたことで、フリー気味となった対策委員会とヒフミが。横槍の銃撃を入れてくる。
弾丸自体は装備で防げても、対策委員会を完全無視して対応はできない。
加えて、不意をついた強襲だからか、先程よりも難なくマーケットガードの隊員を倒していく。
後方の憂いがなくなり、ミズキは更に加速し、目的地のビルへ急ぐ。
「さて、と……」
目的地のビルの屋上へたどり着き、今も追跡を続けているヘリコプターを見上げる。
こちらを注視しているものの、単独行動しているミズキを排除するような動きは見せていない。
やはり、先程の小隊を横から奇襲した対策委員会たちの動きを警戒しているのだろう。
「それじゃあ、行きますか」
ヘリコプターと一直線上に向かい、クラウチングスタートの姿勢を取る。
そのまま、地面を思い切り蹴って一気に加速し、屋上のフェンスの縁を利用して跳び上がる。
ただしその速度は、人間砲弾ばりだ。
「ミズキ、ヘリが
先生からの通信通り、ヘリコプターはミズキが跳躍したのを見て、高度を上げ始める。
いくら人間砲弾ばりの速度で跳躍できても、空中では方向転換やさらなる跳躍はできない。
ミズキの跳躍から、どれぐらい高く跳んでくるかを予測して、最高地点より高く移動すれば、後は勝手に落下すると踏んだのだろう。
しかし、それは当然ミズキも想定しているし、その対策も用意している。
懐から、銃口に鈎爪が取り付けられた特製の拳銃を取り出すと、ヘリコプターの着陸脚へ向ける。
そのまま引き金を引いて鉤爪を発射し、ヘリコプターの着陸脚へ引っ掛ける。
鉤爪と拳銃をつなぐワイヤーが伸び切った瞬間、高速で巻き戻しが始まり、その勢いでミズキはヘリコプターへ一直線に飛び込む。
その勢いのまま、ヘリコプターの着陸脚から、ヘリコプターのドアの取手を掴む。
「なっ!」
「動かないで」
取手を動かすと、ロックを掛けていなかったのか、ドアはすんなりと開いた。
追跡用だから、撃墜のリスク対策としてロックを外していたからわからないが、随分と不用心だ。
そのまま機内へ突入し、左手でアサルトライフルを操り、パイロットが動くよりも先に銃口を向ける。
操縦桿を握る手のみ動かすのを許可し、右手でパイロットのヘッドホンのコードを掴んで引き抜き、通信機の電源を切る。
強引に通信を切断したため、マーケットガードの司令部も何かしらのアクションを起こしては来るだろう。
とはいえ、向こうも向こうの立場がある以上、いきなり撃墜する、などの暴挙はとらないだろう。
――本当は、このヘリで全員回収したいけど……。
ヘリコプターを奪取したので、空路での逃走も可能となったが、ヘリコプターは予想より手狭だった。
これでは、対策委員会とヒフミを更に乗せて飛ぶのは、無理だろう。
そして、このヘリコプターがマーケットガードの所有物である以上、こちら側から解除できない発信器の類もどこかに仕込まれているだろう。
これを解除せずに適当なところで着陸しようとしても、回り込まれるだろうし、下手をすればそのままアビドスまで追跡を許してしまうだろう。
結局、空からの追跡と地上部隊への支援妨害ぐらいしか、できなさそうだ。
「ミズ……S号、高速道路の方を見て」
現状を報告してから数分後、先生から新しい通信が入る。
銃口をパイロットへ向けながら、視線を高速道路の方へ向ける。
普通ならありえない爆発が断続的に起こっており、よく目を凝らしてみると、乗用車より一回り大きな兵器が絶えず砲撃をしているのが見えた。
両腕にはガトリング砲、頭部には主砲と思われる巨大な砲身を載せ、巨大な二足で進行するそれは、二足歩行型の戦車と言っても、差し支えないだろう。
「あれは……」
「おそらくマーケットガードの主力兵器、だろうね」
主力武器を投入するほど、向こうも本気なのだろう。
しかし、あの二足歩行型戦車をどうにかしなければ、ブラックマーケットからの脱出は不可能だろう。
「シロ……他のメンバーは?」
「交戦中。だけど、流石にあの兵器を抜けるだけの火力はない、ね」
アサルトライフルやショットガンがメインの対策委員会とヒフミの装備では、あの二足歩行型戦車の装甲を抜くのは無理だろう。
ホシノが接触状態でショットガンを撃ち込めば、可能性はあるだろうが、あの火力と弾幕から後輩たちを護りながら接近するのは難しいだろう。
――なら、これしかないか……。
ミズキ自身の武器でも、二足歩行型戦車の装甲を抜くのは無理。
なら、《他の武器を使えば良い》。
ヘリコプターの操縦桿へ手を伸ばす。
「なに、を……?」
当然、パイロットから訝しむ目線を向けられるが、ミズキは目線だけで黙らせる。
左手に持っていたアサルトライフルを仕舞い、代わりにパイロットのスーツを掴む。
そしてそのまま、操縦桿を一気に倒す。
ガクンと大きく揺れ、ヘリコプターが急降下を始める。
急降下による重力や高度低下による警報音を無視して、ミズキは操縦桿を握り続け、目線を高速道路にいる二足歩行型戦車へ向け続ける。
「まさか、お前……」
ミズキの思惑に気がついたのか、信じられないような表情でパイロットがこちらを見ていることに、気がつく。
そうはさせまいと、操縦桿を上げようと躍起になっているが、ミズキが押さえている限り、操縦桿が上がることはない。
一方の二足歩行型戦車も、こちらが近づいていることに気がついたのか、右腕のガトリング砲は対策委員会たちの方へ向けつつ、左腕のガトリング砲をこちらへ向けてくる。
「うわっ、まず……っ」
こちらへ向けられたガトリング砲の銃口が回転を始めたのを見て、舌打ちする。
威嚇射撃などの温い砲撃ではなく、明らかに撃ち落とすための砲撃だ。
乗っ取られたとはいえ、味方がまだ搭乗している状態で味方ごと撃墜する、と判断してくるとは。
ガトリング砲を浴びれば、ヘリコプターはもちろん、ヘイローのない隊員など、ひとたまりもない。
とっさに操縦桿から手を離し、掴んでいたパイロットのスーツを引っ張って操縦席から引き剥がす。
そして機体のドアを蹴飛ばし、パイロットの身体を抱えて、ヘリから飛び降りる。
直後、二足歩行型戦車のガトリング砲が火を吹き、無数の銃弾がヘリコプターへ襲いかかる。
プロペラやフロントガラスなどへ次々と命中し、エンジン部分や燃料タンクあたりがやられたのか、機体から火を吹き始める。
それから数秒と待たずに、機体は盛大に爆発した。