シャーレのエージェント   作:すのー

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Log.31 急展開

「っ、爆発!?」

 

 ミズキも含め、この場にいる全員が動きを止める。

 一瞬、カイザーPMCがアビドスを爆破してでもアビドス高校を陥落させるつもりかとも考えたが、当のPMCの隊員たちも理事すらも驚いている以上、それはないだろう。

 かといって、対策委員会のメンバーが動き出した、というのもあり得ない。

 彼女たちの中で、あれだけの規模の爆発を扱える生徒はいない。

 一体誰の仕業だろうかと思案している間にも、断続的に爆発が続く。

 

「バカな……アビドスの連中はこいつらで全員のはず……。まさか、シャーレの助っ人か……?」

「ふっふっふっ……」

 

 不意に聞こえた、聞き覚えのある新しい声に、全員そちらを向く。

 

「目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く……。それが、あなたたち覆面水着団のモットーじゃなかったの?」

「便利屋……68……?」

 

 爆発によって巻き上がった煙の中からゆっくりと出てきたのは、先程引っ越しのためにトラックの荷台へ荷物を積み込んでいたはずの、便利屋68のメンバーだった。

 予想だにしない登場に、ミズキはもちろん、対策委員会のメンバーたちも驚きの表情を浮かべる。

 ミズキを一瞥したアルは、対策委員会のメンバーを見渡すと、ビシッと指を突きつける。

 

「仲間が今、危機に瀕しているんでしょう!? それなのに、くだらないことばかり考えて、このまま全部奪われて、納得できるわけ!?」

 

 そこから始まる怒涛の説教に、ミズキはこっそり先生との無線をつなぐ。

 

「……そろそろ、止めた方がいいですかね……? 流石に対策委員会がちょっとかわいそうに見えてきて……」

「……いや、もう少し待ってみよう。シャーレと生徒の関係じゃない、等身大同士の彼女たちからの呼びかけの方が、今のシロコたちには刺さるかもしれないから」

 

 あまりにも目に余るようなら、合図するから。

 その先生の方針に従い、ミズキは無線を切り、静観を決める。

 丁度、アルがハルカへ指示を出し、ハルカがリモコン式爆弾を起爆させていた。

 断続的かつ的確な爆発により、カイザーPMCの隊員が次々と倒されていく。

 その様子を眺めていると。

 

「まさか……こんな形ですぐ実現するなんてね……」

 

 アルが愛銃であるワインレッド・アドマイアーを構え、ミズキの隣へ歩み寄ってきていた。

 彼女の言葉で、先程かわした話の内容を思い出す。

 そう言われれば、そういう話をした直後にそんな機会が巡ってくるのは、まず無いだろう。

 

「先生、ミズキ、合わせて頂戴。あの腰抜けたち(対策委員会)、真のハードボイルドの力を、見せつけてやるわっ!」

「ミズキ、便利屋68のサポートに回って。アル、カヨコ、ムツキ、ハルカ、指揮に入るよっ!」

「了解!」

 

 先生の指揮下へ便利屋68が入り、ミズキが便利屋68をサポートする、という即席の編成が組まれる。

 そのまま、カイザーPMCと対峙し、別区画で起こった爆発とともに、新たな銃撃戦が始まった。

 

――なるほど。伊達にゲヘナの風紀委員会が指名手配を出すだけはある、ね。

 

 過日の風紀委員会との戦闘での共闘は、ミズキ自身はほぼ囮として稼働していたので気が付かなかったが、対策委員会にも引けを取らない戦力だ。

 特に、学区の保護を抜けて奔放しているからか、メンバー間の連携の練度の高さは、目を見張る物がある。

 厳密に分析すれば、流石に小鳥遊ホシノを有する対策委員会の方が戦力としては上だが、当の本人が不在の今、実力的には五分五分、精神面などを考慮するとやや優勢といったところだろう。

 そして、便利屋68の戦闘のスタイルは、比較的シンプルであった。

 

「ムツキ、ハルカ。B-5地区へ」

 

 便利屋68の最年長のカヨコが、的確に相手をポイントへ誘導し。

 

「さぁ、いっくよ~!」

「い、行きますっ!」

 

 先回りしたムツキとハルカが、爆弾やショットガンで誘導された相手を一掃する。

 その波状攻撃から逃れたとしても。

 

「ふふっ、残念ながら私たち(便利屋68)からは、逃げられないわよ」

 

 スナイパーのアルからの的確なヘッドショットの洗礼が待っている。

 次々と相手へ命中させる精度はもちろんのこと、誰を射抜けば1番効率よく相手を混乱させられるかを、彼女はよく理解している。

 

「ホントはあの風紀委員会への戦闘を想定してたけど……まぁ、よい予行演習になるか」

 

 通信越しに聞こえたカヨコの呟きだったが、あの風紀委員会相手だと、若干過剰な攻撃な気もしてしまう。

 便利屋68が想定している風紀委員会が、ヒナ込みであれば、そうではないのだろうが。

 ただ、ヒナを除いてしまうとよくてイオリぐらいで、他は完璧に抑えこめるだろう。

 実際、彼女たちの戦略は突出した戦力を有していないカイザーPMCには効果てきめんで、次々と戦力を削られていた。

 

――今は出番がない……けど、流石にいつまでもやられっぱなしじゃないだろうし……。

 

 そんな事を考えながら、ミズキはサポート要員として縦横無尽に駆け回る。

 先生が指揮する必要もないのではと思いたくなるような連携を見せる便利屋68であるが、流石に戦闘のプロであるカイザーPMC側も黙ってはいない。

 体勢を立て直し、便利屋68の連携を断ち切るための策を練っているのが、うかがえる。

 そんな中で、便利屋68によって生じた爆発に乗じて、1小隊が離れていくのが見えた。

 

「先生、あれの座標は……」

「これだね。恐らくミズキの読み通り」

 

 送られてきた座標情報を手早く確認し、気が付かれないように移動を始める。

 カイザーPMC側に立った時、現状で何が脅威かを考えれば、答えは自ずと見えてくる。

 

「追加のオーダーが来たよ。ミズキを信じる、って」

「……了解」

 

 先生との無線を終え、スピードを上げる。

 座標地点近くまでたどり着くと、近くの建物の壁を三角飛びの要領で登っていく。

 

「……タイミング、バッチリっ」

 

 建物の屋上へ飛び上がると、ちょうど座標地点へ向かってカイザーPMCの隊員たちが階段を駆け上がっている様子が見えた。

 彼らはただ逃げるために階段を上がっているわけではなく、現在その建物の屋上を陣取っているアルを無力化するためだ。

 アル自身も先生から無線を受け取っているはずだが、それを踏まえて陣取り続けている辺り、こちらへの信頼度がうかがえる。

 となると、こちらとしてもその期待を裏切るわけにはいかない。

 懐からスモークグレネードを取り出し、目的の建物の屋上出入り口めがけて投げ込む。

 

「っ、スモークグレネード!」

 

 丁度屋上のドアを開けた、カイザーPMC隊員の声が響く。

 直後、スモークグレネードが爆ぜ、辺りが煙で覆われる。

 ミズキは手早くワイヤー射出用の銃を取り出し、アルのいる屋上のフェンスへ発射する。

 鈎爪付きワイヤーがフェンスへ引っかかり、巻き戻る勢いに乗って、ミズキは飛ぶ。

 煙の中へ入り、屋上の入口付近へ銃弾を撃ち込みながら抜けていく。

 隊員たちも、発砲音からアル以外の誰かもいることには気がついたであろうが、煙で視界を奪われている以上、同士討ちのリスクを避けるために、発砲まではしてこない。

 しかし、今この場においてその選択は、間違いだ。

 

「アルっ!」

「ふふっ、任せて頂戴」

 

 ミズキの呼びかけに応じたアルが、振り向きざまに神秘が込められた1発を放つ。

 悲鳴とともに身体が地面へ倒れる音が聞こえたのを確認し、ミズキはワイヤーを切り離す。

 そのままアルがいる屋上を通り過ぎ、隣の建物の屋上へ着地する。

 

「ミズキ、アル。クリア確認」

「了解。……流石は社長、ってとこね」

「ふふっ、当然ね」

 

 通信越しにそんな会話をしていたが、先生から別の通知音が届く。

 

「ミズキ、シロコたちも動き出した。援護行ける?」

「……便利屋68は……?」

 

 視線をアルへ向ける。

 ホシノ不在の対策委員会で、カイザーPMCの戦力とどこまで渡り合えるかは正直読めない。

 先生が指揮を執れば負けることはないだろうが、カイザーPMCを撤退させられるかはわからない。

 ミズキが更に加われば対策委員会側の戦力は十二分となるだろうが、今度は便利屋68側の戦力低下が起こってしまう。

 彼女たちの戦闘を見る限り、無用な心配とは思うが、こちらがフォローできない状態での継戦を強いるのは、少し不安が残る。

 

「……先生、便利屋68も合流するわ。十分かき回して時間は稼げたし、後は対策委員会と一緒に突破するだけよ」

「オーケー、ならアルは便利屋68をお願い。ミズキは聞いた通りに」

「了解っ!」

 

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