シャーレのエージェント   作:すのー

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Log.32 すべきこと

 パルクールアクションを決めながら、ミズキは対策委員会のもとへ急ぐ。

 遠目から見える限り、便利屋68のメンバーも対策委員会と合流して、共同でカイザーPMCの隊員たちと戦闘を繰り広げていた。

 唯一、ミズキと同じ場所にいたアルはいないが、彼女の本職はスナイパーなので、援護射撃できるレンジ内にいてくれれば十分だ。

 拳を握り直し、ミズキは更に速度を上げ、建物と建物を飛び渡る。

 そして、本丸に近い建物の屋上へ着地すると、地面へ飛び込む。

 

「なっ、う、上からですっ!」

「怯むなっ! 撃ち落とせっ!」

 

 戦闘の真っ只中へと飛び込んできたミズキを見て、理事の護衛役の隊員たちがこちらへ銃口を向けてくる。

 ミズキも愛銃を隊員たちへ向け、銃弾の応酬が始まる。

 銃弾と銃弾が弾かれ、別の銃弾をも巻き込む状況のなか、ただ1度も被弾することなく、ミズキは理事との距離を詰めていく。

 

「何をしているっ! 奴は空中にいるんだぞっ!」

「はっ! これでもくらえっ!」

 

 理事の怒声に、別のPMC隊員が割って入り、ロケットランチャーをミズキへ向けて発射する。

 空中のミズキも避けることはできず、かといって銃弾のように銃弾で軌道をそらすこともできず、命中するかと思われたその1発を。

 

「なっ!?」

「ミ、ミサイルを……」

 

 ミサイルのボディ部分に手をつき、跳び箱の要領で飛び越す。

 それによって飛距離が伸び、カイザー理事の目の前まで詰め寄ることができたミズキは、右の拳を強く握り。

 

「おおぉぉおあぁあっ!」

 

 理事の顔めがけて振り抜いた。

 

「ブルアァアアアア!」

 

 ミズキの拳を顔面に受け、理事の身体が回転しながら吹き飛ぶ。

 そのまま数メートル後ろへ倒れ込む。

 

「ん、すごい」

「うわ~大胆っ」

 

 その様子を見ていた、対策委員会や便利屋68も、驚きの表情を隠せない。

 

「ぐっ……おの、れぇ……」

 

 殴られたところを手で抑え、丁度着地したミズキを睨みながら、理事が上体を起こす。

 すぐに護衛の隊員たちが駆けつけ、理事の身体を支えて立ち上がらせる。

 

「この、クソガキ、共……がぁ」

「黙れ」

 

 恨み節を吐き続ける理事へ、ミズキは冷たく言い放ち、銃口を向ける。

 

「ホシノさんを、返してもらう。ここ(アビドス)は、彼女の、いや……対策委員会にとって意味のある場所なのっ!」

 

 理事を睨みながらそう告げ、ミズキは1歩理事との距離を詰める。

 しかし、護衛の隊員たちが理事の身体を1歩後退させるため、距離が詰まることはない。

 

「理事っ、そのお身体では無茶ですっ! まずは治療を……」

「くっ……全軍に伝えろ。一時退却して立て直せっ」

 

 説得に応じた理事の指示を受け、護衛の1人が通信機越しに、指示を伝える。

 その様子を一瞥し、理事は対策委員会を改めて睨みつける。

 

「これで終わったと思うなよ……。この借りは必ず……」

 

 そして、と言葉を区切り、ミズキに視線が向けられる。

 

「貴様だけは、絶対に許さん……からな」

 

 それだけ言い残すと、護衛の隊員たちに支えられながら、理事はその場を後にした。

 それに続く形で、カイザーPMCの隊員たちも、アビドスから撤退を始める。

 

「カイザーPMC、退却していきます……」

「まさか、あんな三流悪党のセリフ、聞くことになるなんてねー」

 

 アヤネからの報告に、ムツキが率直な感想をこぼす。

 カイザーPMCにとっては、アビドス制圧に乗り出したものの、10人にも満たない生徒の抵抗で制圧に失敗し、挙げ句司令官たる理事が負傷して撤退せざるを得なくなってしまった。

 とんでもない失敗であり、とんだ笑い草だろう。

 おまけに、負け惜しみのようなセリフを残す始末で、ムツキだけでなく、この場にいるほとんどのメンバーも同じことを思っているだろう。

 

「……便利屋のみんな、ありがとうね」

 

 先生からの御礼の言葉に、アルはフフンと胸を張る。

 

「当然でしょ? 便利屋68(私たち)とシャーレは協業関係のパートナー。困っているのを放って置くのは、アウトローでもなんでもない、ただの外道よ」

「実はね、ミズキちゃんが向かった後に、真っ先に救援へ行こうって言ったの、アルちゃんなんだよね」

 

 もっとも、その横でムツキがミズキへネタバラシしており、それに気がついたアルトムツキがやいのやいの始めたので、締まらなくなったが。

 

「まぁ、私たちも得るものはあったから。後は風紀委員会を相手にした時、通用すれば良いけど……ね」

 

 代わりに、カヨコが締めると、対策委員会のメンバーへ一礼し、踵を返す。

 

「じゃ、私たちは今度こそ行くから。……こういうのは無責任かもだけど、あの委員長の救出、頑張って」

 

 カヨコの後に続く形で、ハルカも一礼して後を追う。

 少し置いて、2人が移動しているのに気がついたムツキとアルも、同じように後を追っていってしまった。

 

「……みんなもお疲れ様。と言いたいけど、まだやることがあるね」

 

 便利屋68の姿が見えなくなった頃、先生が切り出す。

 今のはあくまでアビドス防衛であって、本題のホシノ救出については、まだ何も始まっていないのだ。

 

「ん、ホシノ先輩を助けないと」

「ですが、どこにいるのかもわかりませんし、次の戦いはこれまでで1番大きなものになると思います」

 

 勇むシロコをたしなめるように、アヤネが意見を述べる。

 ホシノが退部届を提出したのと入れ違うかのようにカイザーPMCが攻め込んできたことを考えるに、カイザーが絡んでいるのは間違いない。

 しかし、仮にアビドスの何処かにいるとしても、捜索範囲があまりにも広く、現状で探すのは無理だ。

 それに、負け惜しみの3流台詞を吐いたとは言え、今度は理事側も本気で迎え撃ってくることが考えられる。

 無策で突っ込むのは、流石に無謀だろう。

 

「シロコ先輩の言う通り、早くホシノ先輩を助けたいけど……アヤネちゃんの言うことも正しいと思う」

「はいっ、1度戻ってちゃんと対策を考えましょう。また5人でアビドスへ戻ってこれるように」

 

 セリカ、ノノミの意見を聞いて、シロコも首を縦に振る。

 こうして、ミズキと対策委員会は、1度アビドス高校へと帰還した。

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