シャーレのエージェント   作:すのー

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Log.35 ホシノ救出作戦 - 2

 カイザーPMCの基地内へ突入したミズキたちは、何度かの戦闘を経て、ホシノが捕らえられている地点へと急ぐ。

 途中、量産型ゴリアテの襲撃があったが、丁度合流した便利屋68が引き受けてくれたため、当初の想定より消耗を抑えられていた。

 そんな中、ミズキは軍事基地に似つかないものが、点在していることに気がつく。

 

「これは……学校の備品? なんでこんなところに……」

 

 ホシノ救出が優先のため、足を止めずに進もうとしたが、後ろでシロコたちの速度が遅くなったのを感じ、ミズキも足を止めて引き返す。

 改めてよく見ると、何年も使われていないであろう机やロッカー、黒板などが点在していた。

 

「砂漠の真ん中に学校……もしかして」

「あぁ。ここは、かつてアビドス高校の本館があった場所だ」

 

 突如、男性の声が割り込んでき、ミズキたちは振り返る。

 

「……カイザーの理事……っ」

「……まさか、ここまで来るとは思わなかったぞ、アビドス対策委員会」

 

 そして。と言葉を切った理事はミズキへ目線を向けてくる。

 

「シャーレのエージェント」

「……まさか、1人で出向いてくるなんてね。ご自慢の隊員たちははもう弾切れ?」

 

 いくら本拠地と言え、理事が単身ミズキたちのところへ現れるのは予想外だった。

 理事の反応を伺うように挑発するミズキに対し、理事は何も言わずゆっくり周囲を歩き始める。

 

「ここは、もともとアビドスの中心だった。かつて、キヴォトス最大と謳われた学校、その残骸だ」

「……ホシノ先輩は、どこですかっ!」

 

 珍しく怒気を含んだ声色を見せるノノミに対し、理事は少し離れた建物を指差す。

 

「あの副生徒会長なら、あの建物の地下実験室だ。……まぁ、ゲマトリアが実験を始めているだろうがな」

「……みんなは、早くホシノさんのところへ行って。ここは、私が止める」

 

 理事の言う実験やゲマトリアなる単語も気になるが、理事の言うことが事実なら、こちらに残された時間はあまりないだろう。

 向こうの思惑はわからないが、ここで全員足止めをされるわけには行かない。

 それに、ホシノを救出するためには対策委員会みんなの力が不可欠で、ここで1人たりとも脱落させるわけには行かない。

 そう判断したミズキは、シロコたちへ先行するよう伝える。

 

「シロコちゃん行きましょう。今はホシノ先輩を助けるのが先です」

「ノノミ、でも……」

 

 ノノミに諭されてもなお、シロコは渋る。

 そんなシロコへ、ミズキも声を掛ける。

 

「大丈夫。シロコも知ってるでしょ? 私の強さ」

 

 それに、とミズキは言葉を続ける。

 

「ホシノさん助けて、みんなで帰るんでしょ? なら、ここで立ち止まってたら、協力してくれたヒフミや便利屋68、みんなに顔向けできないよ?」

 

 そこまで言って、ようやく納得してくれたのか、シロコも再び歩き出した。

 が、すぐに立ち止まり、こちらへ振り向く。

 

「待ってて。すぐにホシノ先輩連れて戻って来るから」

 

 それだけ言うと、今度こそ彼女はノノミたちと走っていた。

 それに対し、ミズキはサムズアップをして見送ると、視線を理事へ向け直す。

 

「……まさか、対策委員会のために囮を買って出るとは、な」

「それが、私にできることだから、ね」

 

 そう言い、ミズキは愛銃の銃口を理事へ向ける。

 しかし、理事は動じることなく口を開く。

 

「……対策委員会、あいつらがずっと目障りだった……」

 

 そこから始まった理事の独自に、ミズキは銃口を下ろして言葉を聞き続ける。

 ホシノ救出を妨害したいなら、こんなことを言う暇は向こうにはないはず。

 にも関わらず、1人語る理事の目的は何なのか。

 

「あいつら……いや、あいつらとお前らシャーレのせいで、私の計画はめちゃくちゃだ!」

「……くだらない」

 

 ようやく終わった理事の独自を、ミズキは切り捨てる。

 

「何を話すかと思えば、その程度のことで、彼女たちの思いを踏みにじれるとでも?」

 

 それに、とミズキは続ける。

 

「あの子たちは本当の意味で強いよ。そんなこともわからないなら、彼女たちがあなたの思い通りになるなんて、絶対にないっ!」

 

 その間も周囲へ警戒を張っていたが、理事以外の誰かがこちらへ来る様子はない。

 予め伏兵を仕込んでいればすり抜けられるだろうが、ここまでしても動く様子がなければ、本当に理事1人でここへ来たのだろう。

 なら、これ以上ここで舌戦を繰り広げる意味はないし、理事を無力化してシロコたちと合流すべきだろう。

 そう判断し、行動へ移そうとしたミズキへ。

 

「……果たして、そうかな?」

 

 理事が不敵な笑みを浮かべる。

 直後、悪寒を感じて数歩後退すると、2人の間へ割って入るように、パワードスーツが着地する。

 

「ゴリアテ……いや違う、これは……」

「ふふふ……。我がカイザーPMCが極秘裏に開発していた新型パワードスーツ、だ」

 

 ここで使うことになるとは思わなかったがな、と続けた理事は、パワードスーツの前へ移動する。

 すると、パワードスーツが起動し、理事の四肢へ装着される。

 エネルギーの通りを示すように光るラインを強調していく理事に対し、ミズキはため息を付く。

 

「……ハリボテに、ハリボテをつけたところで、勝てるとでも?」

「ぬかせ。すぐに後悔させてやる!」

 

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