シャーレのエージェント   作:すのー

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Log.4 対策委員会

「ふぅ……」

 

 アビドス廃校対策委員会の部室で、ミズキは一息つく。

 まさかシロコと共に部室の中に入ったら、やれ男の人を連れてきたのだの、やれどこかの学校の生徒を拉致したのだの、一騒動が起こるとは思わなかった。

 普段のシロコの言動について、注意深く観察しておこうと、心の中に仕舞い込み、ミズキは改めて対策委員会のメンバーを眺める。

 

「まず、手紙を送ってくれたのが、1年生の奥空アヤネさん」

「はいっ、来ていただいてありがとうございますっ!」

 

 礼儀正しくお辞儀する、赤色の眼鏡にカチューシャのように編み込まれた部分がアクセントの黒髪に、特徴的なエルフ耳をもつアヤネ。

 

「同じく1年生の黒見セリカさん」

「えぇ、よろしく」

 

 若干警戒色が見えるのは、アヤネよりも濃い黒色のツインテールに、髪と同じ色の猫耳が特徴のセリカ。

 

「シロコと同じ2年生の十六夜ノノミさん」

「はいっ☆」

 

 明るく返事したのは、ベージュのロングヘアに高身長の、お嬢様みたいな雰囲気のあるノノミ。

 

「みんな、よろしくね。私がシャーレの先生で、こっちが専属生徒の……」

「碧空ミズキです。アビドスのみんな、よろしくお願いします」

 

 一通り確認したところで、先生とミズキも自己紹介をかわす。

 そうして互いの話をした頃で、碧空ミズキは1人足りないことに気がつく。

 

「シロコは、対策委員会は5人いるって言っていたけど、あと1人は……?」

「そうです、ホシノ先輩。せっかくシャーレの支援が来たんですから……」

 

 周囲を見渡し始めるアヤネに、セリカは立ち上がると手を挙げる。

 

「委員長なら、多分どっかで寝てるでしょ。探して起こしてくる」

 

 そう告げると、セリカは部室から出ていく。

 その様子を見届けたミズキは、アヤネたちへ視線を向ける。

 

「じゃあ先に物資の補給を済ませちゃいましょうか」

「そうだね。ちょっとこのテーブル、借りるよ」

 

 部室の奥の方にあるテーブルへ移動し、先生はテーブルの上にあるものを、一旦別の場所へ避ける。

 そして、持参した鞄の中へ手を入れ、補給物資を1つずつ出していく。

 箱でできた4段ピラミットが1つ、また1つ積み上がって行くたびに、シロコたちの目の輝きが増していく。

 

「すごくいっぱい入ってますね〜」

「ん、でも背負ってたときはそんな重さを感じなかったから、すごい」

 

 鞄の容量以上の物資が出てきた辺りで、ノノミとシロコがそんな感想を漏らす。

 傍から見れば、ほぼ無限に湧いてくる物資が、この鞄に入っているとは思わないだろう。

 1度先生に聞いたときは、シャーレの地下にある特殊な物質生成器から生成されたものであることと、その物質生成器をみせてもらったが、いまいち原理はよくわからない。

 そんなこんなで物資を出し続けていると。

 

「ほらホシノ先輩っ! シャーレの人来てるんだから、もっとシャキッとしてよっ!」

「むにゃぁ……もう少しお昼寝させてくれてもいいじゃないかぁ、セリカちゃんの鬼ぃ」

 

 半ば抱えるように戻ってきたセリカと、そのセリカに抱えられた生徒が部室へ入ってきた。

 セリカがホシノ先輩と言っていたことから、彼女が件のホシノなのだろう。

 ノノミと比較しても、遜色ないほど長いピンク色の髪に特徴的なアホ毛、寝ぼけ眼越しに見えた瞳はオッドアイ。

 ただし、シロコとは違って右目は黄色で左目は青と、オッドアイと聞いて連想するようなタイプのものだ。

 

「んぁ〜、知らない大人と生徒……。そっか、セリカちゃんが言ってたシャーレの先生と、そのエージェントの……ミズキちゃん? よろしくねー」

 

 ほんの一瞬だけ目が空いたかと思えば、的確に挨拶を返してきたホシノへ、ミズキと先生は会釈を返す。

 また夢うつつとなったホシノを、セリカが引きずっているのを見ながら、ミズキは先生の方を見る。

 

「何と言うか……すごく、マイペースな生徒だね」

「えぇ。でも、ちゃんとこっちを見てましたね」

 

 あの雰囲気とは裏側に、こちらの様子をしっかりと見ていた。

 仮にミズキたちが手を出そうとすれば、即座に制圧される、そんな予感すら感じさせられた。

 とはいえ、これで対策委員会のメンバー全員とも顔合わせはできたし、依頼の物資補給も終わった。

 次にすべきことは、手紙に書いてあった暴力組織の話を聞くことだろう。

 そうミズキが口を開こうとした瞬間。

 けたたましい警報音が鳴り響いた。

 

「っ! カタカタヘルメット団ですっ!」

 

 アヤネがモニターを操作し、警報音を発したエリアのカメラを映し出す。

 名前の通り、フルフェイスヘルメットを被った武装集団が、列をなして侵攻してきているのが映っていた。

 

「あいつら……性懲りもなくっ!」

 

 シロコの言葉からも、ヘルメット団がかなりの頻度で襲撃を仕掛けてきているのが、容易に連想できる。

 

――地域の暴力組織……それをたった5人でどうにかしないといけない。……となると、確かに回らない……ね。

 

 モニターに映っていた武装集団の人数は、そこまで多くはなかった。

 しかし、こういう類の相手は、ごく一部の部隊で波状的に攻めてきて、こちらを消耗させてくるのが常だろう。

 実際、その作戦はそれなりに成果を上げており、それが対策委員会の物資不足につながっているのだろう。

 校舎付近まで攻め込まれているのも、アビドスが追い詰められている現状を表しているのだろう。

 

「ホシノ先輩! ヘルメット団の連中が来たから! シャキッとして!」

「うへぇ〜せっかくのお昼寝日和なのにぃ……」

 

 ホシノの両肩を揺らしながら、無理やり覚醒させようとするセリカ。

 それに対してホシノは、文句を言いながらも、出撃準備を進める。

 端から見れば、起きているのか寝ているのかさえ怪しいが、出撃準備を進める動作は驚くほど無駄がない。

 一先ずは置いておいても問題なさそうと判断し、ミズキは視線を残り3人の対策委員会のメンバーへ向ける。

 

「ん、準備万端。先生とミズキのお陰で、不安だった弾薬もいっぱいあるし」

「ですねっ、おいたする子たちをいっぱいこらしめちゃいますよ☆」

 

 シロコとノノミは出撃準備が完了していて、いつでも出撃できる状態だった。

 シロコの方は、今朝も見たアサルトライフル――WHITE FANG 465――で、一般的な武装だと結論づける。

 そしてミズキは、ノノミの方へ目を向けて、思わず目を疑った。

 

――ミ、ミニガンを軽々と持ってる……?

 

 彼女の愛銃――リトルマシンガンⅤ――のベースモデルの重量を考えれば、本体の持ち運びだけでもかなりの重量があるはずだ。

 それを見た限りは軽々と持っているし、どこかの区画で固定砲台として運用するのかと思えば、その他必要なものもカバンへ詰め込んでいるから、全部1人でするのだろう。

 となると、総重量はとんでもないことになるはずだが、ノノミの表情は先程見たのと同じで、特に苦にしている様子はない。

 

「先生、ミズキさん。私がオペレーターを担当しますので、サポートをお願いしますっ!」

 

 最後の1人、アヤネはモニターを切り替えながら、ミズキたちへ声をかけてくる。

 先生は頷くと、ミズキへ目線を向けてくる。

 

「ミズキは、万一に備えて準備しておいて。アヤネ、オペレートのサポートは私がする」

 

 そう指示を出し、先生もタブレットを取り出して、アヤネの隣に立つ。

 ミズキも、シロコたちが出撃していくのを見届けた後、手早く出撃準備を始めていった。

 

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