「さて、改めて作戦の説明をするね」
先生からの通信が入り、ミズキは物陰へ身を潜め、通信内容を聞き始める。
アビドス高等学校へ襲撃してきた暴力組織――カタカタヘルメット団――を、シャーレからの補給や2名体制のオペレータ支援もあってか、ミズキがサポートする前に退けた対策委員会。
そのデブリーフィングで、ホシノの一声がきっかけとなった。
「これまで奴らは、数日のサイクル襲撃をしてきていた。追い返した直後の今なら、奴らは一番消耗しているし、先生やミズキちゃんもいるから、補給とかの面倒事も解決できるし」
そのままあれよあれよと言う間に、ヘルメット団への襲撃作戦が立案、決行されることとなった。
その中で、ミズキと先生は、対策委員会とは別働隊として作戦へ参加することになっていた。
「ヘルメット団は、対策委員会が何らかの物資補給をしたことまではわかっているだろうけど、支援部隊が来ている間では把握していないはず。その虚を突いて、2面から攻めよう」
先程の襲撃の際、ミズキが直接戦場へ立っていないおかげで、ヘルメット団は対策委員会にシャーレの支援があったことを完全に把握できていないはず。
その情報の差を突く提案に、シロコたちは賛同の意志を見せた。
唯一ホシノは微妙な態度を見せていたが、後輩たちがやる気なのと、先生の説得もあり、渋々了承してくれた。
「今アヤネが対策委員会をオペレートして、ヘルメット団と正面から戦闘している」
「みたいですね、遠くでそんな音がしてます」
先行していた対策委員会は、すでにヘルメット団と戦闘に入っているようだ。
となると、あまりゆっくりしている余裕はない。
通信は切らずに、ミズキは物陰から移動を始める。
遠目に見える建物――ヘルメット団の基地――は、慌ただしさを見せており、こちらまで意識が向いていないように見える。
しかし、そのまますんなり入るのは、流石に無理だろう。
「ミズキ、いつも通りの
「了解」
最後に確認事項とも言える、約束事を交わし、先生との通信が終了する。
肩に掛けていたアサルトライフル――All for one――を装備し、ヘルメット団の基地が見える位置まで足を早める。
――さて、と……。どうやって潜り込もうかな……。
裏口付近までたどり着いたところで、ミズキは改めて基地の様子をうかがう。
基地の建物を挟んで向こう側では、シロコたち対策委員会が戦闘を継続しているのか、断続的に銃声や爆発音が響いてくる。
基地のヘルメット団員も、対応のために駆り出されてはいるものの、見張り要員までは動員されておらず、裏口もしっかり見張りが立っていた。
状況を把握したミズキは、物陰からほんの少しだけ身を出し、見張りへ照準を合わせる。
「なっ!?」
隣の見張りが急に倒れたことで、もう片方の見張りの団員が、そちらの方を向いた。
通常、近くの味方が撃たれた場合、取ると予想される行動は3つ。
1つ目は、すぐに近くの物陰へ身を潜め、次の銃弾から身を守ること。
しかし、反対側で銃声が鳴り響いており、こちら側で発生した銃声とすぐに判断できるかは、団員の練度次第だろう。
2つ目は、銃声のした方へ銃口を向けること。
しかし、これも1つ目と同様、こちら側の銃声かを判断できるかにかかっている。
そして3つ目は、目の前の見張りのように、撃たれた仲間の方を見ること。
注意が周囲ではなく、撃たれた仲間の方へ向くので、追撃が来てもすぐに対処できない。
ミズキは横を向いた見張りへ照準を向け、もう1発発砲する。
もう1人の見張りが倒れたのを確認し、ミズキは物陰から出て、サッと基地内へ侵入する。
「おっと」
基地内に侵入した直後、建物の影から、ヘルメットが見え、ミズキはすぐに側の生け垣へ身を隠す。
直後、1小隊程度の団員が、次々と近くの建物へ入っていく。
「くそっ、どうして対策委員会が攻めに転じられるんだっ!」
「知らない、とにかく物量差で押し返すしか……」
建物に入っていく団員たちの愚痴を聞きながら、ミズキは頭の中でマッピングを進める。
建物に入った団員が、踵を返すようにすぐ出てきたことや、出入りの前後で装備が増えていることから、あそこの建物は武器庫なのだろう。
いくら先生の支援で物資を調達したといっても、流石に武器庫総出で戦闘を継続されれば、先に物資が尽きてしまうだろう。
となると、ミズキがすべき仕事は1つ。
――あの武器庫を……落とすっ。
入って行った団員が出ていったのを見計らい、ミズキは生け垣から出て、武器庫の入り口付近へ移動する。
入口の壁に身を寄せ、ちらりと中の様子をうかがう。
補給要員と思われる団員たちが、せわしなく動いで、あちこちから武器や弾薬を中央に設置された補給所と思われるところへ集めていた。
――さて……と、どうしようかな……。
ざっと見えただけでも、ヘルメット団員は4人。
ここから見えないところにも補給要員がいると考えると、8から10人程度だろう。
そして武器や弾薬が1箇所に集められている関係で、先程のように銃撃で無力化していくのも難しいだろう。
とはいえ、ここでいつまでも手をこまねいているわけにもいかない。
補給のために戻ってくるヘルメット団員と鉢合わせしてしまったら、今までの成果が台無しとなってしまう。
ちょうど、見えた団員たちが全員別の方向を向いた隙に、ミズキは武器庫内へ侵入し、すぐに棚の影へ身を潜める。
後は、音を立てずに動き、1人ずつ無力化していく。
「おしまいっと」
武器庫内を全域確認し、この場にいたすべてのヘルメット団員を無力化し、ミズキは一息つく。
幸いにも、無力化の途中でヘルメット団員が補給に戻ってこなかったため、予想より早く制圧できた。
無力化したヘルメット団員を適当な場所に集めておき、テーブルの上に座って入口の方を見ながら、足をプラプラさせていると。
「……足音」
こちらへ向かってくるような足音が聞こえてきた。
補給のために、団員が戻ってきたのだろうか。
愛銃のセーフティを解除し、ミズキは重厚を入口へ向ける。
団員の姿が目に入り次第、いつでも発砲できる状況だ。
次第に大きくなってくる足音に注意をはらいながら、ミズキは引き金にかけている指の力を少しずつ強めていく。
「ん、ミズキ、こんなとこにいた」
「シロコ……?」
入口に見えたのは、ヘルメット団員ではなく、シロコだった。
引き金にかけている指の力を抜き、銃口を降ろし、ミズキはテーブルから降りる。
「ヘルメット団は逃げていった……。ミズキは、ここで武器庫を押さえていた、わけと」
「そんなとこ。対策委員会のみんなの実力なら、ヘルメット団程度なら遅れを取ることはないし。懸念は敵さんの本拠地だから、補給物資の物量で押されること、だったからね」
シロコの側へ近づきながら、ミズキは続ける。
「それで……この物資、どうする?」
「……みんなで、運ぼうか」