ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン   作:Schuld

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ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン・アフターマス5

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 魔族の多くは人と似通った姿をしているが、その中でも獣の形質を汲む種族が数多いる。

 

 多くは特徴を受け継いだ獣の血と似た性質を持ち、文化、形質、精神的特性も似ていた。

 

 故に人界の、そして魔界の一般共通的な文化を理解しない個体も珍しくない。

 

 「やぁぁぁぁ!!」

 

 一人の人狗族が――人と犬と掛け合わせたような種族――ヨミハラの暗黒退廃ホテルにて暴れ廻っていた。退廃ホテルとは、一夜の宿に見せかけた、ただ男女が前後することを目的に作られた猥褻の極みにある建造物である!

 

 その上、ここは表向きはただの退廃ホテルながら、裏で奴隷娼婦を宛がうような退廃に更に退廃を重ねた非道徳施設で、そこの資本がノマドであることを知る人間は少ない。娼婦ビジネスを行う中でも一等の上客に〝特別な娼婦〟を宛がう場でもあるから、一見の客は入れないのだ。

 

 しかし、そんな場で護衛のオークや万一に備えて飼われているオーガを相手に日本刀で殺戮を繰り広げる人狗族は、言うまでもなく客でも逃げ出した娼婦でもない。

 

 ブロンドに近い栗毛に同色の耳と尾を生やし、眼から下を犬の面で隠した彼女は日本刀一本で自分の何十倍もの敵を美事に斬り割いていく。袴にも似た装束と淑やかに上半身を覆う薄いノースリーブシャツめいた服装は、民族衣装であろうか。そのバストはそこそこに豊満であった。

 

 研ぎ澄まされたタツジン級のカラテによって、雑兵は藁を刈るが如く倒されていくが……その勢いが止まることはない。

 

 「くっ、何、この数!」

 

 彼女は少し焦りながら刀を振り、オークに紛れて襲いかかってくる魔獣を斬り捨てた。犬に似たソレは魔界産の生物であり、異様なカラーリングの外皮に縄を練り合わせたような筋肉を持つ屈強な個体揃いで、そこら辺でかき集めてきたようには見えぬ。

 

 「きゃいん!?」

 

 「しかも硬いっ……!」

 

 しかも人狗族が自分達のナワバリを侵犯してきた、同種の魔獣を相手取ったことがあったが、それの何倍も硬いし速い。フウトン・ジツを纏わせて切れ味を何段も増させているはずの刃が斬り捨てる度に軋み、粘度の高い血と濃厚な血脂を浴びせて切れ味が落ちていく。

 

 そして遂に、単身で暴れ廻っていた彼女よりも武器に限界が来た。

 

 「そんな!」

 

 破滅的な音を立ててへし折れる刀! その隙を見逃すほど魔獣は優しくなく、手首や膝、動きを戒める部位に噛みついて動きを制限してくるではないか。

 

 とうとう倒れて組み付された彼女の下へ、ヘラヘラした笑いを浮かべる男がやってくる。なんたるケイハクにしてフソン! 挑発するように拍手を重ね、廊下に敷き詰められた血の絨毯を踏みしめながら歩み寄る姿は実に傲岸。

 

 「まぁまぁ頑張ったじゃないか犬のお嬢ちゃん」

 

 高級だが悪趣味な仕立てのスーツを着た彼は、ノマドの幹部。今日はたまたまここへ視察に訪れており、そのせいで防備が何倍も固かったのだ。

 

 正に、彼女は運が悪かったのである。

 

 「く、くっそぉ……ボクは、ボクはこの程度で負けたりしないぞ!」

 

 「なんだ、(めん)を取ったら存外可愛い顔をしてるじゃないか。こりゃ犬共も喜ぶなぁ」

 

 下卑た笑いを浮かべる男は指をパチンと鳴らした。

 

 そうすると、リードに繋がれた魔獣を何頭も連れた男が後ろからやってくる。

 

 「な、何をするつもりだ!!」

 

 「何って、()()()()()()()()だろう? お前に随分減らされちまったからなぁ。ノマドの怖さを教え込むのと一緒に……ちょっと数を取り戻させて貰おうかと思ってよ」

 

 何と言うことであろうか! リードに繋がれた犬達は局部が反り立っていたではないか!

 

 そう、あろうことか、この退廃ホテルでは娼婦と犬を前後させる退廃の極みにある出し物を目玉にした施設であったのだ。

 

 「ひっ……!?」

 

 脅える少女に下品な笑いを向けて、恐怖の顔を暫く堪能した後、ノマドの幹部は指を鳴らした。

 

 解き放て、の合図だ。

 

 しかし、リードを握ったトレーナーは手を離そうとしない。

 

 おかしいと思ってもう一度指を鳴らすが、反応はなかった。

 

 「おい!」

 

 格好良い演出を邪魔されたノマド幹部は憤って振り返るが、そこにあったのは異様な構えを取るトレーナーの姿!

 

 腰を落として掴んだリードを満身の力で握りしめ、上半身を深く捻転! そして、足首から順に力を溜めて溜めて……一気に引き絞る。

 

 「イヤーッ!!」

 

 「「「ぎゃん!?」」」

 

 そして、異常な速度で一気に引き絞られたリードが魔獣達の首を裁断! 大量の血が噴出して悪趣味なスーツを汚した! サツバツ!!

 

 間髪入れずスリケンが放たれ人狗族の少女を抑え込んでいた個体の額に命中! ブルズアイ!!

 

 「なっ、何ぃ!?」

 

 「ドーモ、ノマドの幹部=サン、サツバツナイトです」

 

 そして、トレーナーの衣服が剥ぎ取られ、その下から現れるのは赤黒いニンジャ装束と……殺伐の二文字!

 

 先んじてドッグトレーナーをスレイして乗り込んでいた、サツバツナイトのエントリーだ!!

 

 彼は忍犬の教練プログラムを受けたことがあったので、魔獣も直前まで手懐けることができたのだ。実に多芸な男である。

 

 「オヌシが今日来ることは把握済み。人と獣を前後させて喜ぶなど、それこそ獣の所業。故にこれは貴様にこそ相応しかろう。イヤーッ!!」

 

 「グワーッ!!」

 

 サツバツナイトはリードの一本を巧みにムチの如く操り、首輪部分を幹部に装着! 犬の太さに合わせていたそれは人間の首に全くあっておらず、肉に食い込んで責め立てる!

 

 そして、彼は更に無慈悲に引っ張って転倒させると、つり上げて締め上げを強化する! 立ち上がろうとする度にリードを左右に振り、仰向けになろうとうつ伏せになろうと首の締まりは強くなるばかりだ!

 

 「ぐ、ぐぐぐ……」

 

 「どうした、ちゃんと立たねば首が絞まるぞ。獣なら獣らしく四つ足で立ってみせろ」

 

 しかし、縄の高さは腕が丁度地面に届かぬ位置にある! 酸欠に陥ったノマドの幹部は顔をトマトめいて赤らめたかと思えば、次第に青黒く染め、鬱血でコケシの如く膨らんでいく。

 

 そして、一分も保たず酸欠で絶命した! 何たる惨たらしい殺し方か!

 

 「インガオホーだ。精々その無惨な死に様でノマドに与することの恐ろしさを知らしめるがよい」

 

 言うとサツバツナイトは傍らの窓を肘で破壊! そこから死体をデパートの吊り広告めいて陰惨につるし上げた!! インガオホーではあるが、なんと凄惨たるアピールか!!

 

 「マゾク、そしてノマド、殺すべし」

 

 「……キミもノマドを殺しに来たのかい?」

 

 「マゾクか」

 

 獣に襲われ、あわやというところを救われた人狗族は、血が出る傷口を庇いながら立ち上がった。彼は彼女の格好が対魔忍に似ていることから、よく観察するまで無謀な任務にアサインされた元同胞と勘違いしていたのである。

 

 そして少女は“目的を同じくする”言葉を吐いた男を信用し名乗る。

 

 「ボクは葉月だよ、えーと……サツバツナイト。ノマドに故郷を焼かれて、散り散りになった一族を探しながらノマドを狩っているんだ。キミも、そうなのかい」

 

 ここでサツバツナイトは雷で打たれたような気分になった! なんと、マゾクがアイサツを返したのだ! しかもサンこそ添えていないが丁寧に出自と目的まで晒して!

 

 「あらためてドーモ、ハヅキ=サン、サツバツナイトです。故郷をノマドに……やはり奴儕共は魔界でも暴虐を働いているのか」

 

 「ボクたち人狗族は仲間を何より大事にする。仲間を大勢殺して、故郷から追いやった連中を皆殺しにしてやりたくてここに来たんだ……でも……」

 

 「力及ばず、か」

 

 アイサツを返された衝撃もあるが、サツバツナイトは自分がマゾクと普通に喋っていることに驚いた。あれ程憎んでいる相手だというのに、同じ相手を憎み、仲間のため復讐に来た姿に自分を重ねてしまったか。

 

 「……今からオヌシにインタビューする。ノマド以外と交戦したことは?」

 

 「人界に来てからはないよ。ノマド以外を殺す理由がない」

 

 酷いカンショウではあるものの、リーシアの一件からサツバツナイトの中に小さな、しかし大きな変化が訪れていた。

 

 スレイする必要がないマゾクもいるのではないか、という。

 

 「……いいだろう、マゾクではあるものの志を同じくする者を態々殺す必要はない」

 

 「ちょっと待って!? ボクを殺すつもりだったの!?」

 

 「少し前まではな。オヌシがノマドの敵であり続けるなら話は別だ」

 

 元よりマゾクスレイヤーだった頃より魔族同士が殺し合うのを彼は歓迎していた。クソがクソを掃除してくれるなら、それほど楽で素晴らしいことはないと。

 

 しかし、真面な魔族もいるのでは? と気付いた今、力不足の魔族がノマドに挑み、十分な戦果を上げられないのは勿体ないと思うようにはなっていた。

 

 ニンジャスレイヤーが全てのニンジャを例外なく殺すべしと考えていたのから、ヤモト=サンやシルバーキー=サンを受け容れていったように、ここで初めて共に戦う魔族がいてもいいのではと気付いたのだ。

 

 勿論サツバツナイトは葉月が悪しき魔族に堕した瞬間、迷わずスレイするつもりであったが、今日投げたのはスリケンの代わりにメディキットであった。

 

 「使え。酷い怪我だ」

 

 「あ、ありがとう」

 

 「それと、オヌシはまだカラテの鍛え方が足りん」

 

 「え? カラテ?」

 

 葉月は自分が使っているのは人狗族の刀術だと言ったが、それもまたカラテだと言われて何のことだと首を傾げるばかり。

 

 「ハヅキ=サンはノマドを根絶やしにしたいのだな」

 

 「できるなら、したい。けど、今日力不足を痛感したよ。ノマドは大きくて……数が多い」

 

 「そうだ、ノマドは暗黒国際メガコーポ。ジッサイ雑兵ばかりだが万の有象無象が一のニンジャを殺すこともある」

 

 事実として対魔忍でもモータル、もとい武装した米連兵に屈することもあるのだから、数の力と技術を甘く見てはいけない。単身ではかなりのカラテとフウトン・ジツを持つ葉月でさえ、VIPの到着に備えた増強戦力に囲まれればこの様だったのだ。

 

 「しかし、万の兵をねじ伏せるカラテを手に入れれば話は別だ」

 

 「カラテ……」

 

 「故にハヅキ=サン、オヌシが人に手を出さず、邪悪なマゾクを、ノマドを狩るというのなら俺がカラテ・インストラクションを授けてやろう」

 

 「ボクを、強くしてくれるというのかい?」

 

 「そうだ」

 

 深くゆっくり頷くサツバツナイトに葉月は傾いていた。

 

 彼女は人狗族。強さが物を言う種族であると同時、恩義は絶対に忘れない犬の形質を汲む。圧倒的な強さを見せ付けた上、情け深い姿勢に引かれつつあったのだ。

 

 何より、群れで動くことを好む彼女に、仲間を失ってからの孤独は辛すぎた。

 

 「仲間の仇を取れて……ノマドを倒せるなら、何でもする。ボクを強くして欲しい、いいえ、強くしてくださいサツバツナイト!」

 

 「よかろう。ではカラテだ。カラテあるのみ。先ずはここで情報を集めてからさっさと撤退しよう」

 

 「分かったよ! ううん、分かりました!」

 

 「……次から俺を呼ぶときはセンセイと呼ぶように」

 

 「……ハイ! センセイ!」

 

 素直な葉月に一つ頷いたサツバツナイトの脳裏に一人の少女の顔がよぎった。直ぐ日焼けしてしまうせいで、冬場でも健康的な褐色の肌をした元弟子は元気だろうか。今もカラテを磨いているであろうか。

 

 自分が確実に変わっていることを実感しながら、サツバツナイトは退廃ホテルの残党を掃討し葉月と共にその場を去った…………。




アイエエェェェェ!? ブクマが6,000を越えている……こんなのセンタ試験にでなかったよ……(共通一次になる前だった人)

今回の、というより知人より熱烈に推されてバディになるのは葉月=サン。ノマド憎しで動いている殺戮者なのが同じなのでシンパシーを感じてしまいました。

こちら相対的に隠れている部分が多いのと、他が豊満すぎるせいで普通に見えるバグに襲われているイヌカワイイヤッター少女です。それでも職場閲覧注意重点な! いや、既に犠牲になったヘッズがいるようなので重ねて注意重点な……。
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