ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン   作:Schuld

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ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン・アフターマス7

 「この子を見たことはありませんか?」

 

 「しらな……グワーッ!!」

 

 「この子を見たことはありませんか?」

 

 「だからホントにしらな……グワーッ!?」

 

 「この子を見たことはありませんか?」

 

 「マジで通ってな……グワーッ!?」

 

 さて、東京キングダムは第二首都構想によって東京湾に新たに作られた人工島であるが、そのズサンにしてウカツ極まる計画によって頓挫。現在は碌なインフラも整備されておらず放置された魔境であるのだが、陸橋や完成しなかった鉄道橋など幾つか東京と往き来できる道がある。

 

 どれも物の出入りに非常に重要な物なので、マフィアやギャングが奪い合いを繰り返しており、何度となく支配者が変わるため今誰が管理しているかは訪ねて行った時次第というケオス具合である。某独裁国家の国境でもここまで煩雑に手続きが変わりはするまい。

 

 なのでサツバツナイトは碌でもない魔族混じりのマフィアを片っ端からスレイし、その中の一人に顔写真を見せながらインタビューの最中であった。

 

 場所は最も入場が簡単な海上ハイウェイの出口であり、多数の放棄車両や痛んだ区画のせいで使えなくもないが危険ではある道。そこを現在管理しているのは龍門という中華系の大規模マフィアであったのだがお構いなしだ。

 

 報復? しにくればいい。来た順番に殺す。それがサツバツナイトの流儀であるから。

 

 ブッダも三発殴って嘘だと言えば嘘だと言っていた気がするので――いや、これはジーザスであっただろうか――四回目は聞かず壁で顔面を粉砕して、マフィアが二度と悪さできないようにしてやったのだが、その時彼はふと気付いた。

 

 みゃぁみゃぁと猫めいた音。海猫の飛び交う青空。

 

 ここはネオサイタマではない。東京キングダムも放棄されたとはいえど重酸性雨が降る末法の土地ではなく、むしろ公園の木々が野放図に繁殖した結果、緑が多い方だ。

 

 そして、水面に映る海鳥の影、都市を行き交う鳥の影、誰かがたまに釣果をお裾分けしているのか塀を歩く猫の影。

 

 「しまった!」

 

 何たるウカツ! 三軒もマフィアのゲートをハシゴして大勢魔族をスレイして情報を捻り出そうとしていたのに、こんな簡単なことにも気付けないとは。

 

 サクラの影遁は影の大きさを選ばないし、この活用法を教えたのは己であることを思い出してサツバツナイトは過去の自分を呪った。

 

 人間より素早く、人間では行けない場所を飛ぶ海鳥の影を伝っていけば、わざわざマフィアが入場料を取ろうとする玄関口なんぞ使わなくても済むのは道理ではないか。

 

 サクラ=サンは既に東京キングダムに入っている。

 

 いや、何ならヨミハラに潜伏していることを知って、地下に降りている可能性もあった。

 

 「拙い! サクラ=サン」

 

 駆け出してビルの上を飛びながら、サツバツナイトは次の手がないことに気が付いた。

 

 当て所なく駆け巡るには東京キングダムも外殻放水路も広すぎる。況してやヨミハラは5km四方ある混沌の坩堝だ。一人一人にインタビューしている時間などないし、行く宛ても思いつかない。

 

 「テメェ! 見つけたぞサツバツナイト!」

 

 「よくもウチの検問所を!」

 

 「スッゾコラ!!」

 

 しかし、そこでアンブッシュの気配を感じたサツバツナイトは空中に飛び上がって、体操選手の如く三回転。浴びせ掛けられる銃弾の弾を躱した。

 

 龍門の構成員が遅ればせながら増援としてやって来たのだ。

 

 「ええい、邪魔立てするな!!」

 

 「アバーッ!!」

 

 来た順に殺すと言ったが直ぐ来いとは言っていない! サツバツナイトは心底鬱陶しそうにスリケンを投げて追いかけてくる違法改造バギーの運転手を射殺! コントロールを喪った車両は廃墟にぶつかってしめやかに爆発四散!!

 

 「今相手をしている暇はないというのに!」

 

 「テメェの都合なんぞ知るかゴラァ!!」

 

 「死ねッコラー!!」

 

 精度の悪い密造突撃銃や車載機銃を雨霰と浴びせ掛けてくるマフィアの数は一〇では利かない。大事な利権に傷を付けられて大激怒した龍門は二〇台もの部隊を差し向けてきている。

 

 そして、その中には恐るべきことに台湾有事の際、裏社会に大量流出した米連のAPCまで紛れているではないか!

 

 「イヤーッ!!」

 

 「冗談だろ!?」

 

 発射される30mm砲! 迎撃するスリケン! 近接信管の砲弾は発射されると同時にスリケンが突き刺さり爆発! 周囲のセイキマツめいた違法バギーを数台巻き込んでAPCごと爆散した。

 

 それでもまだ追ってくる。マフィアにとって命より重いメンツを傷付けたサツバツナイトにケジメさせるべく。

 

 電柱の上を跳び暇な時に空想するニンジャより素早く走っても、東京キングダム中の連絡網を活用した龍門を撒くことは困難であった。行く先々に回り込まれて隠行することも難しく、さりとて何の咎もない難民を追走劇に巻き込むことも良心が咎めるため閉所に逃げ込むことも難しい。

 

 「諦めの悪い……よかろう! 邪魔だてするというならば、望み通り一人ずつ順番に殺してくれる!!」

 

 ここに来てサツバツナイトも考えを変えた。逃げ回って時間を空費するよりも、相手が諦めるまで殺し続けた方が速いしジッサイ効率的である。

 

 ニンジャスレイヤー=サンも言っていた。最終的に全員殺せば良いのだと。

 

 「イヤーッ!!」

 

 「なにー!?」

 

 彼は併走して射撃しようとしてきたバギーに飛び乗ると、一回転してチョップで搭乗員全員の首を切断! そして、器用に足袋を履いた足を機銃席から延ばしてハンドルを掴むと、軽機関銃が装填されていることを確認して勢いよく射撃を始めた。

 

 「イヤーッ!!」

 

 「「「グワーッ!!」」」

 

 指切り射撃で背後の運転手達を射殺。ワザマエ!

 

 そう、彼はニンジャスレイヤー=サンと異なり血中カラテから、ほぼ無限に近いスリケンを精製できる訳ではない自分の弱点を知って銃器の扱いを習熟しているのだ。時に米連との小競り合いにおいては、敵から遠距離武器を拝借した方が早いことも珍しくないため、拳銃から小銃、機関銃は勿論、やろうと思えば戦車砲の操作もできるのがサツバツナイトの特異性である。

 

 二百連ボックスマガジンを撃ち尽くした彼は、即座に米連放出品と思しき短機関銃二挺を強奪。両手に構えて車を乗り捨て、次の一台に乗り移ると共に乱射。搭乗員を皆殺しにした後、手近な標的に打ち込んで戮殺するという現地調達&ハッソウトビキリングに戦法を切り替える。

 

 スリケンは貴重なのだ。今日はもう三発放っているため、残り一七枚。こんなサンシタオークとチンピラの混成軍相手に使ってやる余裕はなかった。

 

 しかし、敵にも思いきりの良いタツジンがいた! 一人の魔族が柳葉刀を両手に構えて銃弾を弾きながら跳躍! 同じ車両に乗り込んで斬りかかってくる!

 

 銃弾の軽さがここに来て響いた。スリケンと違って重みがあり速度も出せる武器と違って、高々9mmの弾丸ではストッピングパワーが足りない! 空中で銃弾の雨を切り払った魔族は、着地と同時にサツバツナイトの短機関銃を両断する!

 

 「イヤーッ!!」

 

 「おらぁ!!」

 

 そこで彼は即座にカラテに切り替え、柳葉刀をいなし続ける。チョップの先端を刃ではなく刃の横に叩き付けて斬れぬ位置で弾き飛ばし、一瞬の隙を狙って足を蹴り上げる。寸でのところで顎を蹴り砕く上段蹴りを躱した魔族であったが、そこから間髪置かず振り下ろされた踵落としを回避することは不可能であった。

 

 「イヤーッ!!」

 

 「アバーッ!!」

 

 眼球が圧力に負けて飛びだし、両耳から脳漿と共に血液が噴出! なんたるサツバツ!

 

 「テメッ……」

 

 「イヤーッ!!」

 

 「あっ、あれ!? 弾が出ね……」

 

 辛うじて運転席で生き残っていた男が、ベルトに挟んでいた拳銃を抜いて突きつけてきたが、サツバツナイトはそのスライドを握って後ろに押し込んで強制排莢。ついでに指でスライドストップを上げて勝手に再装填できぬようにした上、男に強烈な貫手での目潰しを放った。

 

 「イヤーッ!!」

 

 「グワー!!」

 

 眼球が破裂し頭蓋が陥没。ほぼ即死した男を置いて、彼は次の足場にバイクを選んだ。近くの建物を使ったトライアングルリープからヤリめいた蹴りを繰り出し、操縦手を蹴り飛ばして強奪。そのままアクセルを噴かして前方へ離脱しようとした瞬間……。

 

 「楽しそうなことしてるじゃねぇの!!」

 

 「っ……!?」

 

 畳三十枚分ほど先の空中歩道に一人の魔族が立っていた。普通にではなく、その縁にだ。

 

 「速疾鬼!!」

 

 サツバツナイトは思わず叫んだ。

 

 欄干に立つのは額から生える二本の角が目立つ、桃色の髪を持つ鬼族だった。釣り上がった金色の瞳と大酒を飲むのに似合いの広い唇からなる美貌を見間違えようがない。そして着崩したキモノの隙間から上半分が完全に露出するくらいに豊満であった。

 

 彼女は鬼武衆という鬼から成る一団を率いる東京キングダムにおける巨頭の一つであるが、その目的はただひたすらに鬼らしく暴れること。それ以外に興味がなく、強敵とあれば上から下まで喜んで殺し合いに出てくる性質の悪さが、サツバツナイトに〝できれば拘わりたくないマゾク〟という分類をさせていたのだ。

 

 少しでも触れるとこうなるからだ。

 

 「鬼武衆のシマに踏み入った上、私抜きで楽しそうなことやるたぁどういう了見だい! 混ぜろ!!」

 

 イクサが激しくなるにつれ、いつの間にやら彼女が治める領域に入り込んでいたらしい。拙いことになったとサツバツナイトは更にアクセルを噴かす。すると、速疾鬼は拳を高々と掲げたかと思えば……ただの一振り、たったの一撃で空中歩道を砕いたではないか。

 

 辛うじてその下を潜り抜けるサツバツナイト! 遅れてクラッシュする後続! 爆発! ナムサン!!

 

 「はっははははは! マゾクスレイヤー! いやさサツバツナイト! やっと殺る気になってくれてうれしいよ私ぁ!!」

 

 「巫山戯るなラーヴァナ=サン! 今、オヌシに拘っている間はない!」

 

 「そういうなよ! 女からの誘いを断るもんじゃないぞ!!」

 

 豪快に笑って色つきの風となって追走してくる速疾鬼にサツバツナイトは大きく舌打ちをした…………。




体調不良でずっと寝ていたのですが、流石にずっと寝ていられなかっ……アイエエェェェェ!? 評価人数800人間近!? ナンデ!?

速疾鬼=サンの容姿を詳しく知りたい方は改めてWiki参照な。
ただしビジュアルチェンジまででもR-18めいているから本当に検索時周囲の安全重点な。
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