ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン   作:Schuld

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ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン 2

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 地下に穢れた重酸性雨が降る、というのも奇妙な話ではあるが、ここ〝東京キングダム〟の地下、首都外殻放水路の成れの果て、その更に地下300mに建築された不法な地下都市においては珍しくないことだ。

 

 新首都の治水機能を守るはずだった放水路の下にズサンかつヤスブシンに作られたせいで、地面に染み込んだ水が僅かずつ浸透し、時に許容量を超えると大雨が降る。テヌキのせいで重金属を大いに含んだ土壌を流れてきた、人体に有害な重金属雨の下で彼は景気の悪い雨脚を鬱陶しく感じながら、煙るようなセンコの灯火めいた瞳を煌めかせて都市を睥睨している。

 

 その対魔忍は雑然とした都市の中、一際背の高い高層建築物の上にしゃがみ込む形で悪徳と退廃、そして人類と魔族の悪を煮詰めた街を油断なく眺めていた眺めていた。

 

 視線の中央にあるのは、四方5kmはあろうかという、地下空間にしては巨大すぎる空隙の中央に作られた、巨大な競技場であった。

 

 「やはりカオスアリーナか」

 

 呟いた対魔忍、マゾクスレイヤー手には一つの首が握られていた。どういう理屈か口元に線香の束を咥えさせられた元対魔忍の抜け忍であり、彼が狙う甲河 朧の私兵、その幹部の一人。

 

 これは彼なりのセンコだ。この町で理不尽に消費されていった男女への鎮魂。せめてもの慰めになればと、一際高いビルに見せしめのように魔族や抜け忍の首を晒すのが習慣と化している。

 

 マゾクスレイヤーは苛烈な〝インタビュー(拷問)〟の末に、この広大なヨミハラと呼ばれる街にて、甲河 朧の活動拠点を掴んでいた。

 

 その詳細は敢えて語るまい。

 

 男女共にピッタリとした露出度と体の線がよく出るスーツを纏う面々の中で――対魔粒子なる、特別な因子を効率的に発散するという合理的理由はあるのだが――一人だけ僅かにダボ付いた、これぞ特撮のニンジャと言わんばかりの赤黒いニンジャ装束を纏う男の感性は他と大きくズレていた。

 

 凄まじいまでのニンジャ膂力、そして体から溢れる特殊なジツによって、彼はこの界隈において珍しく〝物理的な説得〟を得意としているのだ。

 

 多くの対魔忍が敵と見れば即殺しにかかり、貴重な情報源の口を訊けなくしてしまう中で、ただ一人。そして、そのワザマエは魔界の拷問官でさえ怖じ気づく領域に達している。

 

 最初は朧様のことなど一言も漏らさぬと意気も強く断言していた幹部が、僅か五分で命乞いをしながら全ての情報を吐露するほどに。

 

 「しかし、流石に本丸に乗り込むのには無理があるな」

 

 されど、情報を得たとして即座にカオスアリーナに乗り込むのは無理がある。あそこはヨミハラの娯楽、その中心であると共に暗黒国際メガコーポ“ノマド”の工業中心地なのだから。

 

 だが、彼が敬愛する前世からの趣味たるニンジャスレイヤーの主人公、フジキド・ケンジならばこう行ったであろう。

 

 〝最終的に全員殺せば良いのだ〟と。

 

 「周りから少しずつ削るか」

 

 魔族は――あと問題行動を起こす抜け忍や、それに与する物共も――絶対に全員殺すが、後先は問題ではない。用は効率的に殺しさえすれば良いのだ。

 

 ならばと、彼は暗黒国際メガコーポ、ノマドの幹部たる朧が経営する数多のシノギの中でも繁栄と享楽を誇る、極めて悪趣味な娼館を襲うことにした。

 

 ニンジャ野伏力を如何欠く発揮し、娼館の裏手に忍び込み現状を具に観察する。ニンジャ第六感に嫌な予感はない。

 

 見張りは三人。魔族の中でも低俗で〝生殖豚〟とも揶揄される下位存在ながら、尋常の人間であればアルミ缶のように捻り潰せる〝オーク〟という魔族が三人。そして、丁寧なことに見張りがサボっていないかを確認するための監視カメラも設置されている。

 

 状況判断を終えた彼の行動は迅速であった。裾と腿に設置したスリケンホルスターから一枚引っこ抜き指に挟んで構える。対魔忍が体に宿しているのはあくまで対魔粒子であるが故、彼は血中カラテ成分からスリケンを自己生成することができないため、対魔忍組織の技術部に頼んで専用のホルスターを用意してあったのだ。

 

 故に敬愛するドラゴン・ゲンドーソーセンセイの教えである、大事なインストラクションワン。〝百発のスリケンで倒せぬ相手だからといって、一発の力に頼ってはならぬ。一千発のスリケンを投げるのだ〟を守ることができないことを心の底から残念に思っていた。

 

 それは兎も角、四方手裏剣と呼ばれる一般的なスリケンは隠密性を加味して亜音速で投擲され、監視カメラを一撃の下破壊した。

 

 そして、その音に訝って首を上げたオーク達の隙を見逃さず、彼は〝二体〟のオークの首を手刀で刎ねた。

 

 「Wasshoi!!」

 

 独得のエントリーに伴う叫びを上げながら、色つきの颶風と化して飛翔したマゾクスレイヤーは、一刀の下に大の大人の太股ほどはあろうかというオークの首を両断する。

 

 しかも、体内で循環する対魔粒子を過度に活性化させることなく、そのニンジャ膂力と素の技術のみにおいてだ!! ゴウランガ!!

 

 ニンジャには一つの不文律がある。アンブッシュ、名乗りのない攻撃は一度までと定められている。

 

 それは、名乗るまでの価値がないほどの敵ならば、一撃で屠っても構わないと言うマッポーにしてサツバツな掟によって支えられており、彼はこれを律儀に守っているのだ。

 

 それにしても何たるワザマエ! 自分が死んだことも理解できぬまま頽れたオークを捨て置き、彼は生き残った、否、生かしおいてたオークの背に貫手を叩き込むと、その心臓を鷲づかみにした。

 

 「グワー!?」

 

 「ドーモ、オーク=サン。マゾクスレイヤーです。今からオヌシにインタビューする。より苛烈な尋問を受けたくなくば、素直に答えよ」

 

 一瞬で自分の生殺与奪を握られたことを把握したオークは、自分の命惜しさに全てをぶちまけた。カードキーは二枚同時に差し込まねば扉が開かぬこと。両手で届く位置にないため、協力者がいなければ解錠は不可能なこと。

 

 「なっ、たっ、頼む! 開けるのを協力する! だから助け……」

 

 「マゾクは皆、殺す。例外なくだ。安心しろ、心臓を潰されれば即死だ」

 

 「話が違っ……」

 

 最後まで言い残すことができず、オークは心臓を一息に握り潰されて絶息した。派手な音を立てぬよう体を静かに横たえた彼は、内心で独り言ちる。

 

 尋問すると言ったが、答えたからと言って助けてやるとは一言も言っていないと。

 

 カードキーを手に入れた藤木戸は、恐ろしきニンジャ瞬発力を用い、常人が手を伸ばしても鍵を同時にスロットに通すことなどできない距離を、ただの反復横跳びで埋めるというワザをやってのけた!

 

 その誤差は0.01秒未満。ピーッと電子音を立てて扉が開いた。

 

 監視カメラの異常に気付いて守衛が駆けつけてくるまで、そう時間は掛かるまい。彼はニンジャ野伏力を発揮しながら施設に侵入し、無辜の娼婦以外を根切りにする覚悟でジュージュツの――どちらかと言えば、それは拳法のそれに似ていた――構えを取って駆け出す。

 

 殺戮の夜は始まったばかりだ…………。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 ジゴクというものがあれば、こういう物だろうという光景がノマド傘下の娼館、そのVIPルームにて繰り広げられていた。

 

 散らばる護衛であった者達の残骸、部屋の隅で血塗れになりガタガタ震えている、元対魔忍であろうと推察できる奴隷娼婦。

 

 そこで藤木戸ことマゾクスレイヤーは、一人の男をネックハンギングツリーで持ち上げていた。ギリギリ足が付き、藻掻きさえすれば呼吸することができるギリギリの塩梅で加減された男は、過剰な中年太りに豪奢なスーツが似合っていない醜悪な男だった。

 

 「きさっ……まっ……私を、誰だと心得て……」

 

 「参議委員議員、枚方 俊三だな。チンケな街頭演説よりも安っぽい笑顔が三面記事に良く映えるだろう」

 

 「そ、それを……知っての、ろ、狼藉か……いいのか、私の背後にはヤクザも……ノマドも……」

 

 「大した問題ではない。悪徳を貪ったオヌシはここで殺す。やってくるノマドもヤクザも全員殺す。開戦の狼煙にしては丁度よい高さだ。インガオホーを呪うがよい」

 

 「まっ、ま、待て!!」

 

 ゴキリ、鈍い音を立てて悪徳を散々に貪った参議委員議員の首は、使い終えた楊枝の如き気軽さでへし折れた。

 

 勢力を背景にした脅しとは、当人がそれを畏れなければ何の意味もないのだ。

 

 事実、暇ができたとき、マゾクスレイヤーは人間のクズを煮詰めた、魔界と繋がりのあるヤクザ達も全員スレイしていた。魔に加担する者も、また魔族だと断じるが故。

 

 頸椎を一撃で潰されたことで全身の筋肉が弛緩し、死体から糞便が漏れるのを不愉快に思ったマゾクスレイヤーは枚方を投げ捨て……虚空に語りかける。

 

 「それで、大口顧客を失うまで見守っていた理由はなんだ」

 

 「……所詮それは使い捨ての顧客。お前の戦闘能力を見たかっただけだ」

 

 「大層な言い訳だ。まぁ、貧相な語彙力を捻り出す必要はもうないぞサンシタ。何故なら、貴様は私がここで惨たらしく殺すからだ」

 

 部屋の中、忽然と現れたのは、一人の対魔忍装束を着込んだ男だ。しかし、襟首の井河一族の紋章は焼き潰されており、抜け忍であることが一目で分かる。

 

 「貴様こそよく回る口だな、下郎。狼煙を上げると大言を吐いたな。そういはいかん、ここで水を掛けて終わらせてやる。朧様の手を患わせるもない」

 

 堂々と現れて構えを取る抜け忍に、マゾクスレイヤーは相応の礼として挨拶を交わすこととした。手を合わせて頭を下げ、何時もの文言を口にしようとするが……。

 

 「……ドーモ、マゾクスレイヤーで……」

 

 「隙ありぃぃぃぃ!! 喰らえ! 火遁術!!」

 

 しかし、敵にアイサツの文化はない。スゴイシツレイを、藤木戸が知る限りの前世ではたった一人の腐れたサンシタしかやったことがない外道行為に手を染めるニンジャに容赦する必要は無かった。

 

 両手の手首から先が人体を焼き潰す熱量を持とうが知ったことはない。即座に美事なブリッジで回避したマゾクスレイヤーは、そのままバク転に移り壁際に移動すると、壁を蹴って凄まじい速度で敵に迫った。

 

 相手も速度には自信があったのだろう。だが、カラテを極限まで磨いたマゾクスレイヤーの瞬発力はそれを優に上回る。

 

 「イヤーッ!!」

 

 「ぐぅぅぅぅぅぅ!?」

 

 まずは両足! 膝から下を鋭いチョップが跳ね飛ばした。

 

 「イヤー!!」

 

 「わぁぁぁぁぁ!?」

 

 そして、返す刀で両腕を根元から焼き潰す。

 

 しかし、敵ニンジャはそれでも死んでいなかった。

 

 あろうことか〝傷口が焼き潰されて〟止血が施されていたのだ。

 

 「あっ、あああ、ぐわぁぁぁぁぁ!!」

 

 「改めてインタビューの時間だ。貴様が知る限り朧の影響がある娼館、クラブ、そして賭場を吐け。さすればひと思いに終わらせてやろう」

 

 センコの光めいた憎悪の炎が瞳に宿る。

 

 イモムシの如く四肢を断たれた朧の子飼いにできることは、いち早くこの苦痛から逃れるべく、精神操作の影響さえ脱して全てを口にすることだけであった…………。

 

 




忍殺語の濃度をどれくらいにしても大丈夫か悩みます。
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