ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン   作:Schuld

21 / 78
ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン・アフターマス13

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 実のところをいうと、対魔忍は殉職率がそこまで高くない仕事である。

 

 殺してどうこうするより、純粋に前後して楽しもうとする阿呆や奴隷娼婦として売り払おうとする外道、果ては実験に丁度良いと捕獲を試みる奴儕までいるなど理由は様々だ。

 

 が、それは女性に限ってのこと。男性対魔忍は需要が乏しいのかバタバタ死んでいたりするが、女性は女性で殉職しないだけで、むしろ死んだ方がマシな目に遭うことも珍しくなかった。

 

 「くっ、コイツらっ!!」

 

 一人の対魔忍が機械的な施設の中で激しく争っている。襲いかかる無数のドローンは魔界技術が用いられており高性能であり、搭載されている殺傷兵器の火力も凄まじい。

 

 何より対魔粒子対応(アンタイ・ニンジャ)装甲に換装されているのだ。

 

 この型のドローンは生中なジツなら散らしてしまう最新型で、複合魔導合金との積層構造も相まって恐ろしく硬い。

 

 〝巨大な斧〟という運動熱量の塊を武器にする、現在交戦中の対魔忍でもなければ対処は困難であっただろう。

 

 彼女は困惑していた。よくある米連や、その出先機関が――CIAのパラミリやDSOに特務機関Gなど思い当たる節が多すぎる――用意した秘密施設かと思いきや、オークやオーガが群れをなしており、魔界産の技術も盛りだくさん。

 

 何もかもが事前情報と違う。先行部隊は何をしていた! 内心で怒鳴りながら斧の対魔忍はその暴を振りまいていたが、普段と戦いの感覚が違うことに戸惑いも覚えていた。

 

 対魔忍と見れば捕らえて前後するか売り飛ばそうとするのが普通の敵、その殺意が妙に高い。

 

 彼女は幾度かジツを発動するハメになったし、普通の対魔忍であったなら死んでいた攻撃も多数。今現在も犬型ドローンが装備している火器は50口径の大物で、如何に頑丈な対魔忍としてレッサー対魔忍(下忍)なら直撃すれば死ぬような火力を誇る。

 

 何処か雰囲気が違う敵に、彼女はもしやコイツらは自分に合わせて編成されたのではと疑念が過った。

 

 高火力、そして連発式の攻撃、更に斧を振り回しづらい幅が狭く長い通路の連続する地形は、彼女にとって鬼門の一つだ。

 

 「んあっ!?」

 

 その思考、僅かな逡巡のノイズがカラテを鈍らせた。迫り来る大口径弾が遂に直撃! 左腕切断! ついでバランスを崩した所に弾丸が襲いかかり右足切断! 四肢の半分を捥がれて動けなくなった対魔忍をドローンが囲み、油断なく頭部と胸に銃口をポイントする!

 

 オーテ・ツミだ! そして、この段に至って対魔忍は罠に嵌められたことに感付いた。

 

 彼女の名は八津 紫。敵を睨め付ける鋭い目が特徴的な、年齢に比しても怜悧と呼んでよい美貌の少女であり、その胸というかボディは全体的に豊満であった。

 

 「よもや、罠かっ!」

 

 妙に殺傷力の高いドローン、手足ばかり狙ってくる照準、そして彼女の家系相伝のユニーク・ジツ〝不死覚醒〟の弱点たる心臓と脳を同時破壊しない限り死なないという特性を知っているような動き。

 

 紛れもなく、紫個人を対象にしたような戦法ではないか。

 

 「くっ……これでは……」

 

 「フフフ、良い姿だな八津 紫」

 

 指先一つ動かせば殺される、そんな状況に陥った紫の前に下品な笑いを上げながら一人の男がやって来た。

 

 彼の名は桐生・佐馬斗。天才的な医療技術と魔界のソレと組み合わせた〝魔科医〟を自称するマッドサイエンティストであり、人品さえ備わっていれば数多の人間を救っていたであろう、天が一物も二物も与える対象を露骨に間違えたような存在にして、ブッダが寝ている証明のような男であった。

 

 「貴様は……! カオスアリーナの崩落で死んだはず!」

 

 「俺がその程度で死ぬわけがなかろう! この大天才魔科医の俺が!!」

 

 そしてノマドに所属していた彼はカオスアリーナでアサギを改造するべく手ぐすねを引いて待っていたのだが……読者諸君は既に知っての通り、代わりにやって来たのは“あの”マゾクスレイヤー。全てが台無しになった挙げ句建物ごと爆発四散した彼は、魔族の首から下を乗っ取って辛うじて生き延びていたのだ。

 

 しかし、その魔族との相性の問題か、このままでは知性を失うと悟った彼は、ほぼ不死に近い人間である八津 紫に目を着けて罠に嵌めるべく、この舞台を用意したのであった。

 

 「中々手間だったぞ~お前を捕まえるのに色々仕度するのは。さて、これからめくるめく実験と快楽の日々を送らせてやる」

 

 「この外道……!」

 

 「さぁ、助手、拘束具を用意しろ!」

 

 「ヨロコンデー」

 

 ん? と佐馬斗は首を傾げた。普段彼は自分の助手に興味がなく、名前は疎か顔すら覚えていないのだが、こんな棒読みな男だっただろうか。振り返って見てみても違いが分からない。

 

 「……まぁいいか。急いでで拘束しろ、それからアンプルの6番を打ったあと666番を5mmに4643番を12mm……」

 

 「ヨロコンデー」

 

 ガチャン、重い音を立てて拘束具の機構が噛み合った。

 

 佐馬斗の腕を捕まえて。

 

 「えっ?」

 

 「イヤーッ!!」

 

 困惑する佐馬斗! 突然のカラテシャウトと共に放たれるスリケンがドローンを破壊!

 

 そして、白衣を脱ぎ捨てた下に現れるのは赤黒いニンジャ装束!

 

 「きっ、貴様はっ!!」

 

 「だっ、だだ、誰だ!? 助手は何処へ行った!?」

 

 「ドーモ、ムラサキ=サン、サバト=サン、サツバツナイトです」

 

 研究員に扮していた殺戮者のエントリーだ! 彼は淡々と紫に装着するため用意されていた拘束具を佐馬斗に付けていくと、そのまま尻を蹴り飛ばして地面に転がした!

 

 「ぶばっ!? きさっ、貴様! この天才の尻に何てことを!」

 

 「黙れサバト=サン。生き汚いオヌシのことだから何処かでネズミかミミズの如く生きているかと思ったが案の定だったとは。流石の俺も少し驚いたぞ」

 

 しかし楽な潜伏だったな、とサツバツナイトは蹴り飛ばしたサバトの顎を蹴り抜いて意識をトバしながら呆れた。

 

 この男、自分の興味がある人間以外はオス豚やメス豚と呼んで見下しており、名前は疎か顔すら覚えない奇癖があるのだ。故に助手をスレイして白衣を剥ぎ取るだけでなりすますことができてしまったのだが、あまりにも簡単すぎて自分が出落ちしているか、いっそ高度な罠に引っかかっているのではないかと勘ぐってしまったほどだ。

 

 「まぁいい、とりあえず持って帰ってインタビューだ」

 

 「マゾクスレイヤー……いや、抜け忍、藤木戸・健二! ここで何をしていた!」

 

 ドローンによる制止がなくなったため勢いよく立ち上がった紫の手足は既に再生していた。地面に落ちた斧の先端を踏みつけて柄を持ち上げると、油断なく構え切っ先をサツバツナイトに突きつける!

 

 しかし、彼は何てこともなさそうに気絶させたサバトを蹴り飛ばして持ち上げやすい位置に持ってくると、一瞬嫌そうな顔をして――長く風呂に入っていない人間特有の饐えた臭いがした――腰のベルトを掴んで雑に持ち上げる。

 

 「命を救ってやった相手に随分な態度だな紫=サン。カラテ・インストラクションの恩も忘れたか」

 

 「やかましい裏切り者! 貴様が里から消えたせいでアサギ先生がどれだけ心を痛めていると!」

 

 「……アサギ=サンにはすまないと思っている。だが、どうしても殺さねばならぬマゾクがいるので情報を漁っていたら、ここに行き着いたのだ」

 

 「どうしても殺さねばならない魔族だと?」

 

 そこでサツバツナイトは淡々と、龍門の情報を得るべくまず末端の拠点に攻め込んで片端から偉そうなのをインタビューした結果、魔科医の技術、即ち佐馬斗が関係していることを掴んだ。

 

 当然ながらノマドに詳しい彼は佐馬斗がノマド所属であることを知っていたので、にも拘わらず龍門に技術が流出しているのはオカシイと思い、もしかしたらアイツ生きてるんじゃなかろうなと標的を佐馬斗に変えたのだ。

 

 そしたら案の定生存しており、何やら画策しているので台無しにしてやろうとエントリーしたのだ。

 

 そこに紫が関わっていたのは全くのグウゼン。助けたのは流れがあったからである。

 

 「ということでムラサキ=サン、引いてくれると有り難い。コイツは巨大な陰謀に関わっている疑惑がある故、入念にインタビューする」

 

 「黙れ! アサギ先生に涙を流させた貴様を許しておけるものか! 首だけにして弁解させて……」

 

 「いやいやむっちゃん、それでどうやって弁解するの」

 

 「なにっ!? さくら!?」

 

 激高する紫は話を聞きそうにないと思ったのだろう。唐突に彼女のカゲから手が伸び、足首を掴んだかと思えばさくらが顔を出したではないか!

 

 そしてそのままカゲに連れ込み、消えていく。恐らくは探索の邪魔になるので施設の外へ放り出しに行ったのだろう。

 

 できればそのまま説明してくれれば助かるのだがと思いつつ、サバトを雑に引っ張って――通路の角などに最高の頭脳が詰まった頭などがガンガンぶつかっていた――研究室に戻ると、葉月が方々に何かを貼り付け終えていた。

 

 「あ、センセイ! 終わりました!」

 

 「ご苦労だったハヅキ=サン。信管はちゃんと刺したな?」

 

 「抜かりなく!」

 

 人狗族のニュービーニンジャが施設の至る所に貼り付けていたのは、藤木戸が米連施設から100%値引きの超特価で手に入れてきたコンポジション4、いわゆるC4爆弾だ。一塊もある煉瓦くらいの物を貼り付けているので、忌まわしい研究と同時に施設も倒壊するであろう。

 

 「では離脱し、この阿呆へのインタビューを……」

 

 珍しく言葉を途中で止めた師に首を傾げた弟子であるが、彼は佐馬斗を弟子の方に放り投げると油断なくジュージュツの構えを取った。

 

 廊下の向こうから足音がする。コツリコツリと高いヒールを誇示するような足音は、アンブッシュなど怯懦だと言わんばかりの自信が溢れる。

 

 そして、一人の魔族が現れた。

 

 褐色の肌、挑発的な瞳、ディープパープルのグロスで飾ったサディスティックな表情の彼女をサツバツナイトが見間違うはずもない。そして、派手に動けば青少年のなんかがアブナイ際どい装束を纏った体は、凄まじく豊満であった。

 

 「……退()け、ハヅキ=サン」

 

 「師匠?」

 

 「ヤツは危険だ、その汚物を持って撤退しろ」

 

 「……了解。お師匠、どうかお気を付けて」

 

 不承不承と師の言い付け通り、汚い物を持つように――ジッサイキタナイのだが――サバトの襟を引っ掴んで、膝が酷く痛そうな引っ張り方をして撤退路へ向かう葉月。

 

 悠々と歩み寄る魔族に対し、サツバツナイトもまたゆるりと、そして慇懃に礼をする。

 

 「ドーモ、イングリッド=サン、サツバツナイトです」

 

 「ふん、こそこそした気配があると思えば貴様か、マゾクスレイヤー」

 

 何たるシツレイ! 相手が名乗った名以外の名で呼び、アイサツを返さないフソン! しかし、サツバツナイトは「こういうヤツだから」と既に知っているので眉一つ動かさない。怒りを込めるならバトウとカラテに向ければよいのだ!

 

 「オヌシこそ堂々と現れる度に手負いとなって逃げているであろう。その図太い精神、魔界の何処であれば売っているか聞きたいほどだ。半値になっても買う気はないがな」

 

 「抜かせっ……!」

 

 怒りと共に黒く燃ゆる刃を抜き放った魔族の名はイングリッド。魔界騎士と名乗る高位魔族にしてノマドの幹部。朧亡き今、実質的に全ての指揮を握る人物だ。

 

 ここで殺せればキンボシ大きい。サツバツナイトは決断的に殺意を燃やし、センコめいた瞳がゆるりと残光を画いた…………。 




pixivFANBOXで最新話の一話手前まで無料公開にしておいたので、決断的にフォローしてくれると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。