ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン   作:Schuld

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ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン・アフターマス14

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 ノマドの幹部であるイングリッドとマゾクスレイヤーの因縁は根深い。

 

 暗黒国際メガコーポを装い、その実魔界からの侵略を行う尖兵企業たるノマドを目の敵にしている藤木戸と彼女がカチ合わぬ道理もなし。

 

 そして、その度に殺し合っているが、何らかの理由でミズイリになるか痛み分けで終わってきた。

 

 「イヤーッ!!」

 

 しかし、今日こそは殺すとサツバツナイトは裂帛のカラテ・シャウトと共にスリケンを放った!

 

 ただのスリケンではない。様子見など無用とばかりに、最初から左の親指と人差し指でスリケンを握り、それがすっぽ抜けるほどの力で放つ変則ツヨイ・スリケンだ!

 

 「甘いわっ!!」

 

 しかし敵もさしもの物、戦車砲を上回る威力のスリケンを容易く迎撃し斬り飛ばす。刃が完全に噛み合ったにも拘わらず、イングリッドの操る魔剣はツヨイ・スリケンを両断! 左右に泣き別れた愛用の暗色に塗ったスリケンは後方で弾け、謎の実験体を培養していたシリンダーに突き刺さって四散!

 

 「っ……重い……」

 

 だが、美事にいなしたように見えてツヨイ・スリケンはイングリッドに強く影響を及ぼしていた。尋常ならざるニンジャ膂力と研ぎ澄まされたカラテによって持たされた攻撃の粘りは凄まじく、弾き返すのに本気の力を求められた上、手に痺れを残すほどの威力を誇っていたのだ。

 

 「イヤーッ!!」

 

 それが連続で襲い来る! サツバツナイトは更なるツヨイ・スリケンを生み出すべく、次弾を指の間に挟んで保持し、連発できるよう昇華したのだ!

 

 名付けてレンゾク・ツヨイ・スリケン!

 

 「くっ!」

 

 彼女が担う魔剣が鍛造されただけのスリケンに負ける道理はないが、一撃ごとに老朽化したビルの如く肉体が軋む。二発、三発目までは何とか浮けきったが、最後の四発目を受けたところで体が僅かに泳いだ。

 

 「イヤーッ!!」

 

 その隙を逃さず飛び込むサツバツナイト! ヤリめいた跳び蹴りで急接近する彼を躱そうとするイングリッドであったが、なんとサツバツナイトは交錯する瞬間、突き出していた足を畳んで逆側の足を振り抜き慣性を相殺! 更に反作用で急停止する! そして放たれる後ろ回し蹴りは首を狩り取るべくイングリッドに襲いかかった!

 

 「舐める……なぁ!!」

 

 しかし、彼女も魔界騎士! この程度の軽業で殺られるほど甘い鍛錬を積んでいない! ワンインチ距離では不利となるはずの長剣、その刀身を右手で掴みハーフソードと呼ばれる構えに取るや否や、首を狩り取るはずだった一撃を魔剣の腹で受け止めた!!

 

 「ちぃ……」

 

 「ぐぅ……」

 

 施設が震えるほどの轟音が鳴り響くが、魔剣も魔界騎士も小揺るぎともしなかった。衝撃の訪れを予感していたイングリッドは腰を落とし、膝を撓め、衝撃を吸収する構えに入っていたのだ。

 

 「相変わらず小賢しい真似をっ!」

 

 「イヤーッ!!」

 

 「やぁぁぁぁぁ!!」

 

 ぶつかり合うチョップとハーフソード! 手刀と剣が擦れ合う度に火花が散り空気を焦がす! イングリッドは得意の間合い、手刀の届かぬ剣の距離に取ろうとするが、それを許さぬサツバツナイトは距離を詰め続けた。

 

 「拉致が開かん! ダークフレイム!」

 

 「ぬっ!? イヤーッ!!」

 

 このままでは間合いに押されて潰されると判断したイングリットは出し惜しみすることなく、魔剣ダークフレイムに秘めた炎を解き放つ! 本来斬り裂いた物を燃やす炎だが、彼女はこれを〝虚空を斬る〟ことでも発動させられるほどにカラテを高めていたのだ!

 

 消えることのない黒い炎を浴びてはならぬと、同じカトンに類するジツを持つサツバツナイトは、自らのニンジャ第六感に従って緊急ブリッジ回避。そのまま足を跳ね上げて柄頭を蹴ることで武器奪取を狙うが、これも華麗に躱される。

 

 致し方なしと連続バク転で距離を取り、畳五枚分ほどの間を空けて再び構え直す二人。そのニンジャ装束と魔界騎士装束は諸所が破れ、焦げ、寸間ながらのワンインチ距離で行われるイクサの凄絶さを現していた。

 

 「魔剣ダークフレイム……大気を斬ることで発火する域に至ったか」

 

 「私は魔界騎士、鍛錬を欠かしたことはない。常に高みにあり続ける者だ」

 

 ジリと足袋を躙らせて、油断ならぬ敵が更に厄介になったとサツバツナイトは内心で舌打ちをした。

 

 これだから強敵を殺し損ねるのは嫌なのだ。反骨心、あるいは自らの矜恃で以て敗北を糧に鍛え更に対処が難しくなる。

 

 ここで確実に殺さねば、更に厄介な敵になると判断したサツバツナイトは、後で爆破するのであればデータは残るまいとアビ・インフェルノ・ジゴク・ジツを手刀に込めようとしたが……不意に警報が鳴り響く。

 

 「なんだ!?」

 

 「ナニッ!?」

 

 イングリッドも反応していることからして、彼女の知る計画には含まれていないのだろう。サツバツナイトもこれを期に仕掛けるべきかと思ったが、内耳に貼り付けた米連製インカムが音を立てたので動きを止めた。

 

 『センセイ! すみません! 一瞬気を取り戻した桐生が何かボタンを押しました! 今、首を捻り折って黙らせてるんですけど、動いてて気持ち悪いです!』

 

 「持ち物検査する余裕がなかったからな……脱出までどれくらいかかる」

 

 『もうじきです! ですがセンセイも急いでください! これ多分自爆か何かですよ!』

 

 「いや、桐生のことだ、そんなつまらぬことでは……」

 

 赤色灯の警報に混じり、別の警告音が響いた。何事かと目をやれば、研究室にずらりと並んでいたシリンダーポッドの輸液が抜かれ、正面が上向きに解放されていくではないか。

 

 そこから解き放たれるのは……触手! 触手! また触手!

 

 ヌタヌタと海洋生物めいて蠢く姿はジッサイ悍ましく、大量のそれは寄り集まって首のない人間の形を取りだしたではないか! その数二十以上!

 

 「っ、なんだコイツらは、マゾクスレイヤー!」

 

 「俺に聞くな。出資者はノマドならそちらの方が知っているのではないか?」

 

 「あんな悍ましい物の計画は聞いていない!!」

 

 その触手の群れは佐馬斗がなんとか理性を失う前に予備の体を作ろうと、不滅に近い再勢力を持つ魔界産の生物を複製したテストヘッドであり、紫がダメだった時に備えて研究されていたサブプランが成れの果て。

 

 本来は魔界の比較的穏やかな海に潜み、海棲系の魔族を捕らえて媚薬で捕食する生物だが、その本質はヒドラクティニアと似ており、老化作用を逆用して実質的な不老を為している生物であるため採用されたのだろう。

 

 そこに彼のマッドな思想と魔科医の腕を存分に振るった結果、媚薬まみれでほぼ無限に再生する触手クリーチャーが誕生してしまったのだ!

 

 結果的に擬態能力を上手く獲得させられなかっためテスト段階で放棄された個体が、惰性で研究所に残っていたのだが、佐馬斗はそれを解き放って難を逃れようとしたのである。

 

 とはいえ、担いでいたのが加減を覚える前の葉月だったのがよくなかったようで、彼は頸椎をねじ切られて、下半身の魔族との接続が上手く行かず逃げるに逃げられなかったようだが……二人のイクサをミズイリにするには十分であった。

 

 「……どうする、マゾクスレイヤー」

 

 「こんなものと戯れる趣味はない。が」

 

 この研究所は元々吹き飛ばす予定であったが、それで死んでくれれば苦労はないと見た目から分かった。

 

 そして、場所がよくない。ノマド支配地域の近郊に埋まっている施設の下には、何も知らないで生活しているヨミハラの住人がいる。

 

 以前のサツバツナイトなら魔族が魔族を食い散らかすなら大いに結構と捨て置いただろうが、今の彼の考えは違った。

 

 「放っておけば、無辜の民が犠牲になろう」

 

 「チッ、貴様と気があう日が来ようとは。明日は月が碧くでもなるか?」

 

 「ヤリが降る方が気楽だな。カラテで滅せるかは分からぬ故、その炎を使って貰うぞ」

 

 珍しく意見が一致した殺戮者と魔界騎士は、それぞれの切っ先をテストヘッド達に向ける。

 

 予期せぬ所で本来相容れぬ二人の共闘が始まろうとしていた…………。




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