ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン   作:Schuld

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ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン・アフターマス15

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 「イヤーッ!!」

 

 「はぁぁぁぁ!!」

 

 サツバツナイトが投げ飛ばしたテストヘッドがイングリッドに空中で三つに斬り割かれる! 黒い炎に焼かれた軟体生物は粘液諸共蒸発して、マナツビ・アスファルトに晒されたミミズめいて乾燥! 再生も許されず小さく縮こまっていった!

 

 「このペースで対応できるか!」

 

 「馬鹿にするな! 倍でも問題ない!!」

 

 「では……イヤーッ!! イヤーッ!! イヤーッ!!」

 

 遠慮せずサツバツナイトは軟体生物を蹴り飛ばし、投げ飛ばし、突き出される触手をいなしてイングリッドの方へ誘導。自身は苛烈な攻撃と触れる度に粘り着く粘液を色つきの風めいた素早さで動くことで弾き飛ばしながら対応する。

 

 「誰が三倍にしていいと言った!?」

 

 「安全マージンをとって申告していると判断した!」

 

 「巫山戯るのはナリだけにしておけよ貴様!!」

 

 怒りに任せて斬り割かれる三体の異形! 黒く燃え上がる炎はイングリッドの赫怒に反応してより強く燃え上がり、彼女の大外套をはためかせる!

 

 しかし、藤木戸からすると、サブミッションも純粋な打撃系も、一発のスリケンも効果が薄そうな相手なので、できればイングリッドにマルナゲしたいのは事実なのだ。何よりもこの薄めていないローションよりも粘度が高い媚薬要りの体液に、あまり長く触れたくない。

 

 今は勢いで振り払っているが、派手に蹴散らせば飛沫を浴びる可能性が高まる。

 

 そしてあの佐馬斗が生み出した代物なのだ。分泌されている成分濃度は、市販されている程度の媚薬の比ではあるまい。万が一にも粘膜に触れることは避けたかった。

 

 何せあのマッド、潜入して情報を漁る限りアサギの性的快楽感度を3,000倍に引き上げて無力化するとかいう、頭が良いんだか悪いんだか良く分からない計画を練っていた痕跡があるのだ。

 

 感覚即ち神経刺激であるのだが、ヤツの改造はニューロンや神経系に改造を施して、ただただ快感だけを選って3,000倍に引き上げるという理解不能な超技術であって、快楽で狂うことはあっても刺激の強さでニューロンが灼けたりすることはないという。

 

 つまり浴びるとアブナイ。できれば触れない方も良い。

 

 しかし、これ以上喧しい文句に煩わされるのも嫌なので、サツバツナイトは本気でチョップの嵐を見舞った。

 

 「イヤーッ!!」

 

 颶風と化したカラテは一滴たりとて粘液を纏わり付かせることなく触手を両断! 細切れになった触手を空中で一纏めに蹴り飛ばし、イングリットが始末しやすいようにして叩き返す!

 

 「灰燼と帰させろ! ダークフレイム!!」

 

 「イヤーッ!!」

 

 魔界騎士とニンジャの有り得ないタッグの前に、不死のはずであったテストヘッドは次々と焼き尽くされて四散!

 

 そう、この世に不滅も不死も存在しないのだ! どれだけ頑健に見えようが、どれだけ盤石に見えようが、それをひっくり返す外法は存在する!

 

 しかし、サツバツナイトは容易く不死を殺していく魔剣ダークフレイムの炎の威力に魅せられて、内心で歯噛みする。

 

 彼女のそれは魔剣術、勘違いしている者は多いが、全てを焼き尽くす炎、ダークフレイムは彼女のカラテにしてジツであって、魔剣頼りの剣士ではない。

 

 ほぼ己のカラテに依って不死者を殺すという矛盾を為す腕前は、今のサツバツナイトにはないものだ。秘匿してこそいるがアビ・インフェルノ・ジゴク・ジツで似たようなことはできるが、あくまでジツ主体であってカラテに不死者を殺す技量を乗せるものではない。

 

 むしろ、ニンジャであると自覚していなければジツだよりの、よくいるサンシタになりかねない強力ながら重い枷。

 

 それを上手く偽装しながら使えているイングリッドに彼は僅かながらに嫉妬しているのである。

 

 「イヤーッ!!」

 

 しかし、落ち着けと言い聞かせる。嫉妬も悩みもカラテを曇らせる。全てを振り払ってカラテを繰り出し続けたサツバツナイトが、文字通り座る予定だった頭のないヌケガラ未満に負けるはずもなし。

 

 やがて二十体のテストヘッドは、全て床を汚す黒い灰となった。

 

 「こんなところか」

 

 「そうだ、そして残すはオヌシ……」

 

 当面の脅威を排撃したのであれば、あとは決着をつけるだけ。

 

 それに良い機会だとサツバツナイトは己に言い聞かせる。

 

 彼はアビ・インフェルノ・ジゴク・ジツを秘匿できている。魔剣ダークフレイムの炎に対抗できるジツを持っていることを隠したまま急場を凌いだ。ショーギで言えば駒得しており、相手の思いも付かぬ所に大駒をたたき込める状態。

 

 ここでノマドの幹部を討ち取ればキンボシ大きいとジュージュツの構えを取った彼であるが、違和感。

 

 体が高揚している。カラテ以外の理由でだ。

 

 「……真逆、イングリッド=サン!」

 

 「はぁっ……はぁっ……これは……なんだ……!?」

 

 見れば、残心を取っていたはずのイングリッドが酷く高揚しているではないか! 褐色の肌に朱が差し、堂々と開いていたはずの足がもじもじと寄せられて構えが崩れている。

 

 しかし、サツバツナイトもその露骨な隙を狙い撃つことができなかった。

 

 対魔粒子の流れが狂い、丹田が酷く熱い。

 

 「っ……! そうか! イングリッド=サン! オヌシ、考えナシに燃やしたせいで媚薬を気化させたな!?」

 

 「なっ!? こ、これはそういうことか!?」

 

 いかん、とサツバツナイトはメンポの内側に装備されている、超小型酸素ボンベのレギュレーターを咥えた。

 

 今、この場の大気には大量の媚薬成分が気化して撒き散らされている。イングリッドは恐らく不死性と粘液だけを燃やすことを考え、その結果まで予想していなかったのだ! 何たるウカツ!!

 

 「くっ、うぅ……」

 

 「スゥー!! ハァー!!」

 

 何もしていないのに悶え始める青少年のなんかが危ないイングリッドを余所に、藤木戸は五分しか残量がないボンベを消耗することを覚悟で太古の暗殺拳が秘奥、チャドー呼吸を敢行! これによって多少の毒であれば即座に治癒するはずであるが……体の調子が戻らない!

 

 「そうか、目や鼻の粘膜からもっ……! いや、服越しに皮膚からも浸潤するのか!」

 

 それ即ち、代謝しきれないほどの毒が空間に回っている証左であった! このままイクサすることは実質不可能! 佐馬斗は何たる物を作り出したのか!

 

 この媚薬は飲ませることは勿論、塗り込み、嗅がせるだけで効果がある暗黒媚薬であったのだ! しかも、敵を無力化できるならいいと、あのマッドは対象が何であろうと効くように効能を改善していた。

 

 これを使われれば男であろうが女であろうが、幽体の死人ですら興奮しかねない。

 

 「ヌゥゥゥ!」

 

 チャドー呼吸を断てば足腰が立たなくなるまで三十秒と掛かるまい! マゾクスレイヤーは深く深く、悔恨の唸りを上げる。

 

 せめて気付くのがもう三十秒早ければ効果が薄い内に離脱するか、メンポがない上、発生源に近い分、媚薬の周りが早かったイングリッドを一方的にスレイできていたというのに。

 

 己の不明を恥じながら、サツバツナイトが取った選択は……。

 

 「イングリッド=サン! ミズイリだ!」

 

 「なぁっ!? 貴様、私を置いて行くつもりか!?」

 

 「オヌシに構っておられん! そのまま施設が吹き飛ぶまで好きにしていろ!」

 

 「巫山戯るなマゾクスレイヤー!!」

 

 色つきの風となったサツバツナイトは戦線から離脱するべく、身動きが取れなくなりつつあったイングリッドの横を通り抜けた。ちろちろと全てを燃やす国炎で大気中の媚薬を焼こうと試みているようだが、体内に入ってしまった分はどうしようもない。自分ごと燃やすわけにもいかぬからだ。

 

 一方でサツバツナイトの戦略的目標は既に達成している。情報を握っている佐馬斗を捕獲し、静流から渡された「とりあえず差し込めばデータをコピーできるから」と言われたハードディスクに施設の情報を転写し終えてもいるし爆破準備も万端。成り行き上助けることとなったむらさきもさくらの説得によって離れているだろうから、当初の予定は達成できているのだ。

 

 キンボシの首は欲しいが、まだイケルはもうキケンと古事記にも記されている。辛うじて動けそうなイングリッドとイクサを行い、その間に媚薬が回りきって離脱できなくなってはジリー・プアー(徐々に不利)を通り越して共倒れの危険性まである。

 

 故に状況判断。ここは逃げが最適解。

 

 「不名誉な死を遂げたくなくば、急いで逃げることだな! その首、俺が刎ねるまで大事に取っておけ!!」

 

 「きさっ、きしゃまぁぁぁ!!」

 

 どこか腰の入っていない罵声を聞きながらサツバツナイトは走った!

 

 走れサツバツナイト! このままでは青少年ではなく自分のなんかが危ない! 走れ…………!!




オハヨ!(二時半)

イングリッド=サンの猥褻はない。この作品は青少年のなんかに配慮した健全な作品だからだ。イイネ?
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