ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン   作:Schuld

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ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン・アフターマス21

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 「久しいなぁエドウィン・ブラック!! 私の面ぁ覚えてるか!」

 

 「無論だとも〝不死身〟の。いやはや、何とも心躍る展開だ。やはり、未知ほど飽きを追いやってくれるものはない」

 

 「ラーヴァナ=サン! 邪魔立てするか!!」

 

 速疾鬼の乱入にサツバツナイトは目の光を一層強めて怒鳴ったが、大太刀を小太刀の気軽さで振り回し、扉の残骸を片付けた速疾鬼は笑みを強くするばかり。

 

 「構うこたぁないだろサツバツナイト! お前からしたら、どうせ殺す敵が一人から二人に増えただけだ! 祭りなんだから私をほっとくなよ!!」

 

 何たるミガッテ! 彼女は派手な祭りで遊べて、そして嫌い抜いているノマド首領の首がここにあるからカチ込んできたのだ! 誘ったのはサツバツナイトであったが、これは流石の予想外である!!

 

 「それに、あんま弟子心配させるもんじゃねぇぞ! 男が廃るだろ!」

 

 「チッ、サクラ=サン! 余計なことを!!」

 

 カゲに消えたさくら、彼女はただ撤退したのではない。エドウィン・ブラックを視認すると同時、今回の作戦概要を聞かされるにいたって知っていた情報を用い、適切な状況判断を行ったのだ。

 

 即ち、ここに速疾鬼を招いたのはさくらなのだ。大駒をもう一つ叩き付けることで、歳の離れた幼馴染みを支援するつもりだったのだろうが……。

 

 「ふむ、つまりアレだな、三つ巴というわけだ。初めての展開だ、悪くない」

 

 「そういうこった! 見たトコ、えらい札ぁ隠してやがったじゃないかサツバツナイト! ってこたぁ圧倒的不利じゃない! それなら、私ごとエドウィン・ブラックを殺してみな!!」

 

 「戦闘狂共が!!」

 

 狂人が吠え、鬼が笑い、そして王が傲岸に構えた。

 

 そしてイクサが始まる。

 

 「イヤーッ!!」

 

 「ほう、飾り気のない連打か。これは布石だな? しかし、一撃一撃が殺しうる連打……うむ、類を見ない札だ」

 

 まず動いたのはサツバツナイト! 彼には制限時間がある以上、巧遅より拙速を求めるほかなかったのである。速疾鬼からのヨコヤリを警戒しつつ、一息でタタミ十枚分の間合いを踏破! それ一撃で通常の魔族なら爆発四散する嵐のようなラッシュをみまった!

 

 しかしさしものエドウィン・ブラック! それを捌く手は全く完璧で、アビ・インフェルノ・ジゴク・ジツが籠もった手刀に触れぬよう、手首や肘を掌底で叩くことで完璧にいなしている!

 

 「おらっ、そっちばっか見てっと死ぬぞ!!」

 

 「ふーむ、残念だがなラーヴァナ、君の刃で私は殺せんよ」

 

 そこに二人纏めて斬り殺しても構わんと、横薙ぎの一撃を放った速疾鬼! サツバツナイトは躍るような足捌きでエドウィン・ブラックを盾にして難を逃れたが、吸血鬼の王はまるで何てこともないように刃を受ける!

 

 するとどうだ、斬られた端から装束諸共に体が再生し、何事もなかったかのように復元する! その速度は正しく刃が抜けて行く先から即座にというしかなく、彼が不死者の中の不死者と呼ばれるだけのことはあるというもの!

 

 だが、そこにサツバツナイトは一瞬の隙を見出した。

 

 「イヤーッ!!」

 

 「むっ!?」

 

 牽制の連撃を捨て、腰を落とし右手に全ての力を集中。全身の筋肉を瞬時に膨張させて力を増すと同時、全ての筋肉が捻転し、同時に解き放たれることで爆発的な威力を発揮する。

 

 彼が持つカラテの中で最も単純にして、その要訣の秘奥とも言えるジキ・ヅキの究極系、ポン・パンチが炸裂した! ゴウランガ!!

 

 「おおっ!!」

 

 これには流石のエドウィン・ブラックも防御に回るが、その威力を殺しきれなかったのか左の肘から先が消し飛んだ! 威力の余波に体が泳ぎ、弾けた炎が体を焦がす!

 

 「なるほど、これが阿鼻地獄の炎。確かに傷が再生しない」

 

 そして、全ての攻撃が通用しなかったエドウィン・ブラックに初めて痛打が入る! 弾け飛んだ肘から先が霧の如く集まることはなく、また焦げ付いた服が元に戻ることもない!

 

 地獄の亡者、その中でも最も重き罪を犯した者共が堕ちる地の炎で焼かれ、傷口が広がり続けることを吸血鬼の王は面白そうに観察しながら間合いを空けた。

 

 「だが、これでは足りんな」

 

 笑ったかと思えば、彼はあろうことか自らの手刀で傷口を斬り落としたではないか。すると、まるで思い出したかのように肘から先が形を結び始める。

 

 「概念、魔法、術、因果……形なき全てを燃やす炎だと聞いたが、まだ足りんな。お前、加減しているのか?」

 

 「チッ……」

 

 事実、その通りであった。アビ・インフェルノ・ジゴク・ジツの火勢を落とさねば、サツバツナイトは長く戦えない。ほんの一瞬の発露でも媒体となった体が燃え上がる。今の火力は三割程度、自らを燃やし尽くさず、急所に当てれば魂を滅せる威力に調整してあった。

 

 完全に阿鼻地獄の炎を顕現させたのであれば、たとえ傷口を切断したとしてもエドウィン・ブラックの腕は再生しなかっただろう。

 

 しかし、それをやるとサツバツナイトの手刀も燃え落ちていた。

 

 全てのジツに、ただ使い手に都合のよい法則などない。扱いが難しいか、術者に反動が来るか、燃費が極めて劣悪か。なにがしかの欠点がある物だ。

 

 アビ・インフェルノ・ジゴク・ジツ、その欠点は正しく、本気を出せばジツの持ち主でさえ苛む使いづらさにあるのだった。

 

 「全ての邪悪なる魔族を殺す。俺はそのために燃えるセンコだ。殺し尽くすまで、燃え尽きる訳には行かん」

 

 「なるほど、大した心構えだ。だがそれで私を殺し損ねては大義も何もないのではないかな? 全てをベッドするに値する瞬間だと私は思うがね」

 

 自分でもマケイヌめいた言い訳ではある。

 

 しかし、彼は藤木戸・健二であってフジキド・ケンジではない。ニンジャを殺すため、一戦一戦で命を投げ出すことができぬ。

 

 彼は何処まで行ってもヘッズ。本物のニンジャスレイヤーではない。

 

 心の中にナラクはおらず、傷を癒やす不浄の炎を扱うこともできなければ、身に宿しているジツは彼ほど便利でもない。

 

 そして、命が惜しいか惜しくないかで言えば惜しい。

 

 まだこの世の地獄を加速させた魔族を殺し尽くしていない。エドウィン・ブラックが最後の一人だというのであれば、バンザイ・アタックで諸共に燃え尽きることに異存はなかったが、彼が死した後に待つのは何か。

 

 「俺はアトシマツを放っておくほど無責任でもマルナゲ癖もない。オヌシを殺した後、調子づくであろう他の魔族を殺す仕事が待っている」

 

 「なるほど、道理だ。戦士は死を畏れていなければならん」

 

 速疾鬼の刃を受けながらもエドウィン・ブラックはくつくつと笑った。

 

 自分を殺せるだけの相手は、それくらいの気概がなければならんと。

 

 「だぁから! 私を無視して盛り上がってんじゃねぇよ!!」

 

 「ふーむ、参ったな。確かにラーヴァナ、お前は強い。私が殺しきれぬのだから中々のものだ。だが、逆に私を殺しきれぬようでは意味がないのだが」

 

 「殺し合いに結末がどうもこうもあるかい! 盛り上がればそれでいいのさ!」

 

 「本当に参ったな」

 

 チョップと刃、そして拳が入り乱れる戦闘は施設を激しく損壊させていった。〝SA-YA001-TypeX〟と書かれた対魔忍が収まっていた検体のシリンダーも倒れ、その内容物を溢れさせていくが、彼女が目覚める気配はない。

 

 イクサが激しくなるにつれて、サツバツナイトは悩んだ。このまま火勢を加減して戦ってエドウィン・ブラックを倒せるのかと。

 

 そして思う。

 

 仮にここで自分が死んでも、アサギ=サンが他の魔族を殺してくれるのではと。

 

 一種の甘えだ。フジキドではない藤木戸には柵が多かったが、同時に仲間も多かった。

 

 頼りになる対魔忍が数多いる。そして、今までは非効率的に運用され、あたら命や純潔に正気を散らしていった者達も減ろうとしている。

 

 センコは、ここで燃え尽きても割に合うのでは。そう思ってしまったのだ。

 

 藤木戸家には相伝の技がある。一中劫無限炎、過去のマキモノに記された最期の最期、全身を触媒として一時的にアビ・インフェルノ・ジゴクをこの世に顕現する自爆技だ。

 

 火力を、アビ・インフェルノ・ジゴク・ジツの本気を発揮するのは今かと体に力を込め始めた瞬間……施設が揺れた。

 

 「何だ?」

 

 手刀と大太刀を捌きながらエドウィン・ブラックは上を見上げ、そしてつまらなそうに呟いた。

 

 「今のは地中貫通弾か。騒ぎに乗じて米連が動いたな。なるほど、今回はそういう筋書きか。つまらん、まったくもってつまらん、これは既知だぞ」

 

 「何っ!?」

 

 「あぁ!? 参加者が増えたってのかい!!」

 

 ブラックの読みは当たっていた。

 

 なに、これほど暴れ廻ったのだ、東京キングダムに諜報網を持っている米連が動き出さない道理がない。元々彼等は龍門をマークしていたのもあって、これ幸いと好機に乗じるべく戦力を投入し始めたのであった。

 

 今頃上では多数のティルトローター機が襲来して強襲戦力を下ろし、龍門と殴り合っていた鬼武衆に襲いかかって施設を占領しようとしていることだろう。

 

 「興が冷めたな。やはり、舞台はここではないということか」

 

 「待て! エドウィン・ブラック=サン!!」

 

 「サツバツナイト、いや、マゾクスレイヤー、相応しい舞台をいずれ用意する。それまで井河アサギと待つが良い。そして、できうるならば、その忍術で私をもっとヒリ付かせてくれ」

 

 斬りかかったチョップが割いたのは空であった。体を自在に霧に変えることができるブラックは、楽しくなくなってしまったと分かるや否や離脱したのである。

 

 そして更に……。

 

 「けんにぃ! 拙いよ! 米連が特殊部隊を展開してる! 一個旅団規模! しかも重爆撃機まで出してきた!! 長く保たないよ!!」

 

 「チィ……」

 

 サツバツナイトのカゲからさくらが顔を出した。彼女はことの推移を外で見守ると同時、いざとなったら彼を離脱させられるよう備えていたのだ。

 

 そして、第四勢力が横から殴りかかってきたことで、最早撤退するしかないと悟ったのであろう。

 

 「おいおい待てよサツバツナイト! まさか、こんな不完全燃焼で終わらせるつもりじゃないだろうね!? せめて私くらい殺して行けよ!!」

 

 「……まだだ。まだセンコは消えぬ。オヌシの分も用意してある故、大人しく待てラーヴァナ=サン」

 

 「ふっざけんなぁぁぁぁぁ!!」

 

 アビ・インフェルノ・ジゴク・ジツの炎が揺らぎ、カゲにとぷんと消える。

 

 あとに残されるのは、全てを持て余した速疾鬼のみ。

 

 そして、いつの間にか、テストタイプのナンバーが振られたシリンダーの中も空になっていた…………。

 

 




オハヨ!(12時)

アイエエェェェェ!? ブクマ数10,000突破!? アイエエェェェェ!?
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