ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン   作:Schuld

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ニンジャヘッズ・ウィズ・タイマニン・アフターマス1

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 対魔忍は死と隣り合わせ、そう聞いて育ったが故に彼女は死をそこまで恐れていなかった。

 

 必ず誰にでも訪れる結末。それを極端に畏れてはできることが何もなくなる。

 

 況してや自らの命を鴻毛の軽きに置き、人の安寧のため命を捧げる対魔忍であれば尚更と。

 

 「はなっ、離せっ! 離しなさい!!」

 

 期待の新鋭対魔忍として五車学園を卒業し、実戦任務を幾らか熟して自信を付けた彼女は、ある日の任務で重大な失敗を犯した。

 

 完全に自信のジツを逆用されたのだ。

 

 彼女の左目には邪眼が宿っていた。とても強力な精神に影響する邪眼だ。

 

 しかし、それも開けなければ意味がない。

 

 彼女はさる大物政治家とギャングの裏取引を制圧するべく建物に侵入したはいいのだが、そこで強力な魔界製催涙ガスの洗礼を受けたのだ。

 

 粘膜を掻き毟られる痛みに耐えられず、涙が常に溢れる邪眼を開くこともできずに彼女は呆気なく捕まった。

 

 敵は彼女がやってくることを予め知っており、強みを完全に殺すべく対策を打っていたのだ。自分達は即座に被れるようにガスマスクを用意、或いは魔界の薬師が作った対抗薬を顔面に塗って効かぬようにするなどして。

 

 そして今、彼女は自慢の目に革製の眼帯を被せられ、四肢を拘束されてあられもない姿でニタニタとした議員の前に晒されている。そのバストは豊満であった。

 

 「こんな小娘が本当に送られてくるとは。ワシを捕まえるには甘いし、あまりに健気よなぁ」

 

 「ひぃっ!? やめ、やめろぉ!!」

 

 生臭い、そして頬を這う気色の悪い感覚。視覚を完全に遮られた中でも分かる。中年太りして脂ぎった議員に顔を舐められたのだ。

 

 「で、センセイ、これで東京に渡る段取りは付けてくれるわけだ」

 

 「勿論だとも。今も生きている海底トンネルを幾つか融通してやろう。そうすれば違法薬物だろうが武器だろうが持ち込み放題。本土の温いヤクザ共を制圧することなど容易いはずだ」

 

 罠を張った者達の会話を聞いて、対魔忍はやられた! と思った。

 

 この任務は仕込まれていたのだ。さもなくば、ここまで彼女の強みを殺しきり、碌に抵抗もできず確保する手筈を整えられるはずもない。

 

 自分はこのままどうなってしまうのか。裸身をなでる嫌らしい手付きに怖気を感じ、寒疣を立てながら清い身の乙女は震えるばかり。

 

 「なぁに、そう怖がることはない。ワシは処女でも気持ちよくしてやるのが好きでなぁ」

 

 言って議員は手を叩き、秘書に箱を運んでこさせた。丁度棺桶ほどの大きさがある箱は小さく振動を続けており、同時にぬちょぬちょと濡れた音が漏れている。

 

 「ひっ……!? 何!? なんなのこの音!?」

 

 「なに、ワシのペットだ。魔界産の触手生物で体液は全て媚薬。〝取り込んだ雌〟を極上に仕立ててくれる、特注の可愛い子でな。これに半日も漬けておけば、処女でも一舐めで絶頂する雌犬に様変わりよ」

 

 「いやっ……いや……」

 

 勝ち気で強い声をしていた対魔忍は、遂に絞り出されるような悲鳴を上げた。その声は甲高く、待ち受ける責め苦に恐怖して歪む。

 

 死ぬことを覚悟して仕事に出ている。

 

 しかし、こんな玩弄されることを予想してはいなかった。

 

 「い……」

 

 彼女は若かったのだ。死より辛いことがある。

 

 「いぃ……」

 

 いっそひと思いに死なせてやった方が楽な方法が、この魔界技術の流れ込んだ世にはごまんと溢れていることを。

 

 ああ、ここで彼女は改造されつくし、最後には捨てられる悲惨な末路を辿るのか! ブッダよ、まだ寝ているのですか!!

 

 「「イヤー!!」」

 

 悲鳴と同時、棺桶の蓋が弾け飛んだ!

 

 「えっ?」

 

 さて、良く分からなかっただろうが、読者の中にニンジャ聴力の持ち主がいたら確実に区別が付いていたであろう。

 

 声は二つ重なっていた。

 

 一つは囚われた対魔忍が上げる絶叫。

 

 そしてもう一つは……決断的なカラテシャウトだ!!

 

 「Wasshoi!!」

 

 「ナニーッ!?」

 

 弾け飛んだ棺桶の蓋から、センコめいた目を光らせ、赤黒い残光を残しながら現れたのはマゾクスレイヤー……否、サツバツナイト! 彼は飛び上がった空中で赤黒い颶風と化して旋回! スリケン一五枚を四方に投擲して見せた!

 

 「アバー!?」

 

 ギャングの額に直撃、死亡!

 

 「アバー!?」

 

 ギャングが飼っていたオーガの頭部を貫通、死亡!

 

 「「「アバー!?」」」

 

 四方に立っていた護衛や秘書達の首が玩具めいて飛ぶ! また死亡!

 

 瞬く間に一五の死が倉庫中に撒き散らされて、血潮と脳漿をぶちまける! なんたるサツバツたる光景か!

 

 一瞬でマグロが転がるツキジめいたジゴクの中で生存を許された人間は僅か四人。

 

 囚われた対魔忍、何が起こっているか分からず当惑する議員、同じく状況の激変についていけないギャングの頭目。

 

 そして、ぬるぬるの粘液に塗れているにも拘わらず、片足で棺桶の縁に降り立つサツバツナイト! なんたるタツジン的バランス感覚か!

 

 「ドーモ、皆さん、サツバツナイトです」

 

 そして、そのまま胸の前でゆっくり拝み一礼。実に丁寧で余裕あるアイサツに生き残ったギャング頭目が悲鳴を上げた。

 

 「さっ、サツバツナイト!? サツバツナイトがなんで!?」

 

 ここ最近、ヨミハラと東京キングダムでは一つの噂が出回っていた。

 

 曰く、魔族と連んで悪さをするとニンジャがやってくると。

 

 それは常のことではあった。魔族を狩る対魔忍がやってくることは。

 

 しかし、そうではない。そうではないのだ。

 

 噂は、対魔忍より苛烈にして残忍、一切の妥協を許さない、この男がやってくるということなのだ。

 

 「きっ、貴様! なんだその巫山戯た名乗りは! というか、何故平気なのだ!?」

 

 数秒遅れて事態を把握した議員が指を指したが、触手生物の体液に塗れながらもサツバツナイトは全く影響を受けていない。

 

 「当たり前だ。貴様自身が言ったことだろう。〝取り込んだ雌〟を仕立て上げる生物だと。つまり男にはただの温いカンオケよ!」

 

 「アッ」

 

 言われてみればそうかぁ、と納得した刹那、スリケンが投擲され拘束されていた対魔忍を解き放った。

 

 「あっ!?」

 

 「ギリギリ間に合ったようだな」

 

 体を吊り下げていた鎖が切断され地に墜ちる寸前に彼女はサツバツナイトの腕の中に助け出されていた。ヌルヌルしている。

 

 「眼帯を取ってやろう」

 

 「っ……えっ!? お、お前は、マゾクスレイヤー!?」

 

 「……サツバツナイトだ」

 

 少し不満そうに名乗り直すサツバツナイトであったが、無理もない。彼が井河長老衆を壊滅させて里抜けをして半年と経っていない。その異様なナリ、独得すぎる人生の芸風を忘れ去るにはあまりにも時間が経っていない。五車の忍びであれば、ぶっちゃけ色とメンポが変わっただけでは……とニンジャ真実を指摘したくなる衣装換え程度では、彼が藤木戸・健二であることを見抜くのは容易かった。

 

 「それよりも体に異常はないか、ハトリ=サン」

 

 「わ、私は……」

 

 掴まっていた対魔忍、彼女の名は羽鳥・志津香。紫がかったショートカットと鼻筋の通った美貌、そして黄色い左の魔眼〝恐慌疑心〟が特徴的な美女である。その胸は豊満であった。

 

 「無事なようなら何よりだ。後は仕事を終わらせるだけ」

 

 彼女を地面に下ろしたサツバツナイトは、どこからか草臥れたトレンチコートを取り出すと志津香の裸身に被せてやり、スリケンを構える。

 

 「イヤーッ!!」

 

 「グワーッ!!」

 

 「グワーッ!!」

 

 ギャング頭目と議員、二人の膝が破壊され投げきったスリケンの数は丁度二十!

 

 コソコソ逃げようとして関節を破壊された二人にジゴクめいた足音を立てながら歩み寄り、グローブを不吉な音を上げてはき直す。そして、淡々と告げた。

 

 「これよりオヌシらにインタビューを行う」

 

 「ひっ、ひぃぃぃぃぃ!?」

 

 おお、救い主とは思えぬ何たる陰惨な行いか! とても描写できぬ手法でサツバツナイトは彼等が持ち込んでいた電子器機のパスワードや海底トンネルの位置、セーフハウスや塒をドンドンと捻り出していくではないか!

 

 そして、後に残るはネギトロめいた、ただ生きているだけの肉塊が二つ!!

 

 「……これで助けを呼べ」

 

 「っ……!」

 

 インタビューを終えたサツバツナイトは掌から薄汚い血液を弾き飛ばし、懐から軍用のPDAを取りだした。

 

 これを使えば緊急チャンネルで救援を呼ぶことができるだろう。

 

 志津香は一瞬悩んだ。対魔忍にはマゾクスレイヤーの追討命令が出ている。ここで見逃して良いのか、助けられたとしても……。

 

 左目を隠すような位置に垂れていた髪の毛を避けようとした刹那、0,1秒でサツバツナイトは反応! ジュージュツの構えを取って、つい先程自分で助けた乙女に殺気を向ける!

 

 「カラテ・インストラクションが必要か」

 

 「ひっ……」

 

 そして、若き対魔忍は、その目にジゴクを見た。センコめいて残光を残す紅い目は、恐怖など一切映していない。ただ殺すべき敵を無慈悲に映す。

 

 自身の魔眼、敵の恐怖心を引き出して心を折る、高位の魔族でさえ制圧しうる〝恐慌疑心〟であっても万が一にも効きはするまいと確信。慌てて顔を伏せる。

 

 恐怖を与えることに悦びを覚えつつあった彼女は、自分がもたらすソレなど大した物ではないのだと悟った。

 

 そして、言葉が投げかけられる。

 

 「お前にはカラテが足りない」

 

 「か、カラテ?」

 

 「カラテの腕があれば催涙ガスから即座に脱し、策を立て直すこともできただろう。魔眼に頼りすぎだ。ノーカラテ・ノーニンジャを忘れるな」

 

 「ノーカラテ……ノーニンジャ……」

 

 インストラクションを残し、去って行くサツバツナイト。

 

 今宵もネオサイタマ、もとい東京キングダムではマッポーの夜が更けていく。

 

 それを他人事のように真っ白な月が見下ろして、嘲笑うように輝いていた…………。




アイエエェェェェ!? 日刊二位!? 日刊二位ナンデ!?

原作パワーと潜伏しているヘッズの多さに驚いたので更新です。
対魔忍アサギの展開がぶっ壊れたので、2までの一年間暗黒私立探偵をやる藤木戸もとい森田のお話をチラホラ投稿していきますので刮目して待て!

今回の登場人物は対魔忍RPGの羽鳥・志津香=サン。
アサギ時空なのでRPG時空より大分お若いぞ!

詳しいビジュアルは公式かWikiを参照あれ。X版はR元服なので青少年の何かがアブナイから検索するときは注意重点な!
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