比叡山延暦寺。ある宗派の総本山へ天草式十字凄教の一派達は一人の僧侶からSOSを受け
「なっ…!」
境内に足を踏み入れた先には錯乱し叫び声をあげる僧侶もいれば、口からよだれをたらし棒立ちのまま目の焦点が合わない僧侶。
土下座をし必死に謝罪を繰り返す者もいれば、笑いながら走り回る者もいた。
本来ならばありえない光景に聖人神裂火織は息をのむ、厳しい修行に耐え悟りを追い求める僧侶たちへの明らかな侮辱行為に歯を噛み締める。
「一体…何が起きたのですかっ…」
一月六日学園都市、この日「上条当麻」は死んだ。
一人の少女を救うために命を投げ出し悠然と死んでいった。
これは、「上条当麻」がいなくなった学園都市の物語。
夢から覚めるための物語である。
――――
一月三日、上条当麻がアンナ=シュプレンゲルとアラディアを連れ逃亡劇を繰り広げていた日、この時「橋掛結社」つまりは超絶者の集団が学園都市に不法侵入をした頃どさくさに紛れて一人の女が学園都市に侵入していた。
「ふー…ったく、ようやっと下準備が終わったぜ…なぁ叔父貴?」
派手なショッキングピンクのショートヘア、両手足には梵字が刻まれた包帯を巻き不敵な笑みを浮かべる女が手に持っている物は頭部が入った培養ポッド。
培養ポッドに話しかけ満足そうにしているが当然返事はない、なのにまるで会話が続いているのかのようにまた喋りだす。
「うっひゃぁ~…派手にやってんねー」
双眼鏡片手に眺めているのはとある学校で繰り広げられたアリス=アナザーバイブル戦。女は双眼鏡から眼を話すと培養ポッドにそっと手を置く。この培養ポッドの中身は何か、それは「木原飽和」の頭部。ショッキングピンクの女「ダキニ」の叔父、そして番である。
番関係を結んでいた事で本来なら死んでいるはずの状態でも生きている、この男が四肢と胴体を切り捨てられる最後の時まで余裕だったのはダキニさえ生きていればどんな形であれ死なない事を身をもって理解していたからだった。
「うわっ!なにあれでっか!?猫?あれ猫なのか?すっげ!!」
(はしゃぐのもいいが見つからない様に、今はまだその時じゃないんだからね?)
脳内に直接語りかけて来たのは飽和の声、番関係を結んでいる二人は距離に関係なく意思疎通ができるのだ。
「へーいへーい、そろそろ地下に潜りますかねーっと」
高層ビルの屋上、転落防止の柵を軽々乗り越えダキニは余裕の表情で飛び降りる、学園都市の
長い通路を抜け重たい扉を開ける。場の中心には木原飽和の頭部が入った同じ培養ポッドを抱えた千羽智沙音が座り込んでいた。
彼女は動かない、ただ愛おしそうに培養ポッドを撫でるだけ。
垣根帝督の腕の中で死んでいった智沙音が何故ここに存在しているのか、時系列は少しさかのぼり上条当麻がこのカキキエ隧道で木原端数と戦った後の事。
上条当麻はその時右手、「
アレイスターに回収されるのを恐れていっその事誰も回収できない様にしてやろうと別の位相に避難させていた虚像だったのに、諦めていた物が目の前に転がって来たのはもはや天啓を受けたかのように衝撃的だった。
(謎の襲撃者に「
「おーじーきー?その東京湾に沈んだやつをどっかの研究所からぶんどって来たのも、ここまで準備したのもあ・た・しだかんな?」
(はいはい、腕があったら頭を撫で繰り回してるよ)
まんざらでもない顔で唇を尖らせるダキニ、ここだけ切り取ったら少しばかり素直になれない可愛らしいシーンだが、二人が成そうとしていることを考えたらそんな微笑ましいものではない。
地獄絵図、幕開けの合図が始まる。