時は戻り学園都市のある交差点。
コンクリートの地面に這いつくばる金髪の女と優雅に自販機でジュースを飲むショッキングピンクの髪の女。
「どうしてって言いたそうな顔だなアレイスター」
「…………」
アレイスターは喋らない。無言を貫く姿に舌打ちをしながらダキニは続ける。
「お得意の魔術がうまい事いかねぇで疑問が溢れ返ってるはずだがな」
「教えてやるよ、今学園都市と外とは隔離状態にある。十字教のテクスチャとな」
無言を貫いていたアレイスターがピクリと反応する。
「…ユガだよ、アレイスター」
「インド哲学において循環する四つの時代、その中でも最悪といえる時代を学園都市全体で再現してある。」
「それだけでは、ない…だろう」
ゆらりと立ち上がる。
息も絶え絶えなりながら問いかける。
「簡単にユガを語るな、貴様らが動き出してからどれだけ経った!?短期間で成し遂げられる程ユガは甘くない!」
「他の三つのユガは確かにそうだろうぜ、だけどな一つだけ方法はある。」
飲み干した空き缶を投げ捨て嘲笑う。
「ダイスゲーム。神々の遊びだよ、一の目を引き当てるまでダイスを振ればいい」
「比叡山で同じことやってやったよ、滑稽だったぜ?」
ケタケタと笑う。ダキニのその態度にアレイスターは頭に血が上る。
地に伏しようとも魔術を行使するために掌をダキニへ向ける。魔術を行使しようとした瞬間、その掌が踏み抜かれた。
瞬きの合間にアレイスターの近くまで詰め寄ってアレイスターの腕を掴む。
「ぐっ…!」
「喝!!!!」
それだけでは終わらないと、今度は胸ぐらを掴み上げ、大きく振りかぶって頭突きをする。
ゴギャッ!!と鈍い音が響く。
「がっ!!!」
「力関係が逆転した今、西の魔術なんざ効くわけねーんだよ!!」
「忌々しいぼう、れいがっ……!」
苦し紛れに放った言葉が地雷を踏んだ事を一瞬で理解しアレイスターは今にも腹部目掛けて踏み下ろそうとしているのを横に転げて間一髪で避けきった。
ドゴァッ!!!!と轟音と共にクレーターが出来上がる。
「てめぇが何もかも放り出したからこんな事になってんじゃねぇか、元はと言えばお前が始めた計画だろうが!?」
「叔父貴はな、お前の計画に縋ってでも世界に一矢報いたかったんだ!!それがどれだけ外道の道だったとしても!!」
「叔父貴は捨てたぞ…体も一族も魔法名も殴り捨てて…だってのにこの結末は何だってんだっ…!」
アレイスターの首を片手で掴み上げる。
だがアレイスターはダキニの怒りを受け流しながら、その目だけは冷静に、ただ静かに、ダキニの目を見据えていた
「ふざけるな…この私が、失敗だらけのこの私が本気で諦めたと思うのか」
「は?」
首を絞めつけられながら両手で印を組むような動きを見せる。傍から見たらただの手遊びに見えるが、ダキニにとっては重大な意味のある印。
それは不動明王の掌印だった。
「ちっ・・・くしょうがぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」
アレイスターは右手を振り払い、同時に炎の龍が舞い上がりダキニは押し出される。
不動明王と右手に掲げる剣それすなわち、
「……………くそが」
猛烈な一撃を食らい本来ならば燃え尽きていてもおかしくないものなのに、ダキニは右手を前に掲げ肩で息をしながら立っていた。
右手に掲げているのは割五鈷杵。鎌のような切っ先を三つと二つに分けたような奇妙な金剛杵だった。
「金剛杵とは似合わんな」
「うっさい煩悩まみれのクソ爺」
双方のにらみ合いがしばらく続き距離を取る。退くためではなく隙を見極めるために。
先に動いたのはダキニ、続いてアレイスターも走り出す。互いにぶつかり合う寸前空から何かが降って来た。
「そこまでです!」
二人の間に割って入った乱入者、それは。
「これより先は天草式十字凄教が請け負います。」
天草式十字凄教