「余は何者だ…? 名もなき王 借り物の城 眼下に集うは意志持たぬ人形 これが余に与えられた天命ならば 退 屈と断ずるに些かの躊躇も持たぬ!!!」
(HUNTER×HUNTER 王の台詞より引用)
「余には 過ぎた者達だ…」
(HUNTER×HUNTER メルエムの台詞より引用)
「…そうか 余は この瞬間のために 生まれてきたのだ…!!」
(HUNTER×HUNTER メルエムの台詞より引用)
「オレと松下さんは住む世界が違っていて、松下さんは自分の世界の『当たり前』や『ルール』に従わなければ生きていけない………そう言ったな?」
「うん………」
「じゃあ聞くが………その『当たり前』って何だ?」
「え?」
「『ルール』とは?一体何を示しているんだ?」
「それは……………何度も話してるでしょ」
「新幹線で言っていた『一流の人生』ってやつか?人とおおよそ違わない、足並みを揃えるってことか?」
「…………………………………」
「その『一流の人生』というのが仮に存在するとしよう。『一流の人間』というのも同様にな。じゃあ、松下さんからはオレはどう見える」
「え?」
「いくつもの言語を操り、並外れた身体能力を持ち、子供の頃の教育で、常人では知り尽くせない程の様々な学問を究めている…………そんな教育を施せるほど、親に財力がある。松下さんの言葉を借りるのなら『超一流』ってことになるのか?」
「…………………自分で言うんだ」
「松下さんの言う『一流』の定義に当てはめるなら、そうとしか言いようが無いだろ。違うか?」
………違う、とはいえない。
薄々感じていた。綾小路さんは、私が追い求めていた男性………その理想像に合致……ううん、それを超えているんじゃないかってこと。
私は首を縦に振るしかなかった。
「そんな『超一流』のオレにとっての当たり前って、何だ?」
え?
それは……………
「大学で論文を発表して、ノーベル賞を受賞することか?オリンピックに出場して金メダルを獲得すること?はたまた巨大企業の社長として金の世界を牛耳る?政界で名を馳せて総理大臣に就任する?」
………どれも雲の上の世界の話。私に出来ると思ったことはない。漫画とかドラマとか小説とか、そういうのと同じ現実味の無い展望。
でも、綾小路さんになら出来なくないんじゃないかって思えている自分がいる。そう思わせるほど、この人は凄い何かを秘めている気がする。
「じゃあ、オレはそうしたか?ノーベル賞を貰ったか?金メダルを獲ったか?社長になったか?総理大臣には?オレが手を伸ばせば届くかもしれないもの。確かに、この中のいくつかは不可能ではないかもしれないな。もしそうなったら、名声なんてのはとんでもない。世界中から称賛の声を浴びられる。歴史にだって名を残すだろう」
………間違い無い。
綾小路さんなら、そういう未来もある…………掴める………
「だが、オレはそうしていない。やっていることと言えば世界各地をブラブラ回って温泉巡っただの、山登っただの、現地民と踊っただの……『超一流の当たり前』からは大きくズレている」
「それは……………………………」
そう………………なんだけど………………………。
「オレは旅先である男とであった。小柄でしまりのない、しがないオヤジだ。松下さんの言葉で言うのなら『二流』………いや『三流』の男だな。頭脳も明晰には見えないし、金を持っていそうにも見えない。能力値で言うのであれば松下さんよりも遥かに下のみすぼらしい男。そんな男とは結婚したくないよな?」
「………………………………」
「だが、そうなると奇妙なことになる。『超一流』のオレと『三流』の男は、何故か同じ酒を飲み、同じ肉を喰らい、同じ歌を歌い、同じ朝日を眺めた。同じ時に生きて同じ時を楽しんでいた。ついでに並んで立ちションもしたな。おかしいよな?『超一流』には『超一流』の楽しみ……幸福があり、『三流』とは住む世界が違うはずなのに、何故か2人は同じことで楽しんでいたんだぜ」
「……………!」
あれ……………
「そう………これが君を苦しめていたもの。君は自分の能力の高さには相応しい『幸せ』があると思い込み、自らの幸せを遠ざけた。いわば自分の幸せを、世界に委ねてしまった…………」
「なあ松下さん。『幸せ』って何だろうな?」
「え?」
「幸せっていうのは、これさ」
綾小路さんはスマホを手に持つと………
公園で撮った私の顔写真を見せてきた。
あの満面の笑みを浮かべている、私の顔写真を………
「『笑顔』っていうのは幸せ者の特権だ。不幸な者には笑うことは出来ない。こんな顔を浮かべていた時の君は、紛れもなく幸せ者だった」
「特別なことは何一つしてないな。ただ縄跳びをやっただけだ」
「ここが重要………極めて重要な部分」
「子供の頃、『幸せ』っていうのはそこら中に転がっていた」
幸せが……転がってた………?
「明日給食カレーだ、よっしゃー。鬼ごっこやった、楽しい。四つ葉のクローバーだ、嬉しい。新しいゲームソフト、面白い。エトセトラエトセトラ……………手を伸ばせば届く距離に、幸せってのは数え切れないほどあった」
「だが、成長するにつれて徐々にそういった幸せは見えなくなってくる」
「1つには、飽きたから。そういった幸せで得られるものは全て食い尽くしてしまい、もう幸せを搾り取れなくなったというもの。分かりやすいよな、腹一杯だからもうそれ以上は食べられない、ということだ」
「そしてもう1つが極めて重要………これが人間を苦しめてしまう」
「それは『褒められる』気持ち良さを知るから」
「要するに『承認欲求』だな。あるだろ?松下さんには」
「へ?」
「人に褒められたいって願望。認めて欲しいという欲求。新幹線で、名前を言わなくても良いと言ったのにわざわざ大学名を言ったり、一流の男と結婚したら周りの目が変わるだとか言ったり……そういうのだ」
「あ……………それは………」
そんなにストレートに言われたら、顔が少し熱くなってしまう。
「おかしな話ではない。承認欲求というのは、人には当然に備わっているもの。食欲だとか睡眠欲と同じだな。別に恥じるものでもないし、それがむしろ人間らしいとも言える」
「…………………………」
「人は成長するにつれて褒められる気持ち良さを知る。当たり前だ、褒められたら気持ちがいい。人間はそういう風に出来ているんだからな。その辺に転がっている幸せよりも、ひときわ輝いて見える。だが、昔は大したことをせずとも褒められたものが、徐々にハードルが上がる。要は、多くの人間の中で優れた功績を残した者だけが、人から褒められるようになる。小さな子供の頃は、大人たちは皆言ったな。『頑張ったね、偉い』…………ある時からそれだけだと褒めてもらえなくなる」
確かに、それはそう。
中学ぐらいになるとそれはもう顕著で、テストで上位の成績を取ったとか、部活の大会で優勝したとか…………。
ただ頑張っているというだけでは、誰も見向きもしなくなる。
「一度褒められた人間が後々褒められなくなると、飢えが生じる。そして、自分の目の前で賞賛を一身に浴びる者が羨ましくなり、いつしか憎むようになる。『嫉妬』だとか『コンプレックス』というものだな」
「気持ち良くなっている者も、妬んでいる者も………どちらも『承認の虜』だ。褒められたくて仕方が無い。程度の差はあれど、皆そう思う」
「なにも褒められるという表現に囚われる必要は無い。『白い目で見られる』って言葉があるだろ。人間は褒められるのを求めるのと同時に貶されるのも嫌う。それもまた『承認の虜』だからだ。どう見られても良いと思っているのなら、いかに貶されても何とも思わない。それなのに皆、自分の悪口、陰口には敏感で、イチイチ目を光らせる。学校の友人の陰口、SNS上のアンチコメント、その他諸々だ」
「その虜たちは賞賛を、名声を求めて奮闘する。何をすれば褒められるのかっていうのは世間では概ね固定化されているよな。まさしく松下さんの言う『一流』なんかはその典型………偏差値の高い大学に合格する、一流の企業に入社する、金持ちの美男、美女と結ばれる……などなど。違いないな?」
「…………………………」
私は無言で頷いた。
「ご存知の通り、こういう大学やら企業に所属するのは難しい。何千人、何万人という人間がこぞって応募するからな。つまり『名声の椅子取りゲーム』が始まる。それに勝った者は、名声をほしいままにする。一方で敗れた者は酷く傷つき、虚しくなる。もう自分が名声を得ることは無いんだと、コンプレックスを抱える……………今の松下さんみたいにな」
………………………………………。
「皆が皆同じ目標に向かって走り出す、同じ幸せを掴み取るために争う………言うならば『幸せのテンプレート』だ」
「テンプレート………」
テンプレート………………
って、テンプレート……………?
「…………何だ?『テンプレート』って」
「訳が分からないぞ? 何で、同じ目標を達成しなければ幸せになれないんだ?」
「朝パンを食う奴がいる。ご飯を食う奴もいる。もしかしたらコーンフレーク…………それ以外のものを食べる奴も。そのはずだな。なのにこのテンプレートってやつは、要は朝はご飯を食べなければ幸せになれないって言っているようなもの」
「これが、人間の視野を劇的に狭める。本当はパンを食いたいのに、ご飯を食わなければと思わせてしまう。パンご飯の話なら可愛いモンだ。だが現実には、このテンプレートは人間を『当たり前』だとか『ルール』だとか『それなり』だとか………そういった面倒なことに縛り付けてしまう……………」
「で、そんな『一流』にこだわって苦しんできた松下さんだが………オレから見た松下さんは、所謂『一流』とは程遠い、庶民的な、勘違いをした意識高い系アラサー女子でしかない」
「…………………そこまで言う?」
「良いじゃないか、それでも」
「え?」
「それで、楽しかっただろ? 今日」
「……………………………………」
「一流じゃなかったから、つまらなかったか?」
「…………………………………………………」
「でも、これだけじゃない」
「…………?」
「日本人の多くに巣食う病魔………『テンプレート』と並んで、いや、同時に君を傷つけていた思想、ものの見方………それがある。『テンプレート』なんてのは、どこの国も同じだ。形は違えど、賞賛の対象として練り上げられた『テンプレート』はどこの国にも存在する……」
綾小路さんが、私の目を覗いてくる。私は瞬きすら忘れて、その目に魅入られていた。
「松下さん、明日は何するかって聞いたな」
「え? ………うん、そうだけど…………」
「『明日』って、何だ?」
「……………は」
「今日夜を迎えて、一晩寝て、明日がある…………でも、何で明日を迎えられるって思ったんだ?」
「何でって………別におかしくないでしょ」
「じゃあ聞くが、そこに道路があるよな」
綾小路さんは私たちの背後にある道路を指差した。ここまで来るには、通らなければならない道。
「あるけど……」
「帰り、そこで車にはねられて死ぬとは思わなかったか?」
「は……?」
「オレのもとに来るまでの間は?そもそも、福井に来るまでの新幹線で事故に遭うとは思わなかったか? あるいは家から駅までの間、交通事故に遭う………もしくは錯乱した狂人に襲いかかられて………といったことを考え」
「ちょ、ちょっと待ってよ。何で急にそんな話をするの?」
いきなり変な話を始めた綾小路さんに、私は戸惑う。
「ならば、絶対に死なないと言い切れるか?」
「それは…………そうは言わないよ。でも、それと私の苦しみに何の関係があるの?」
「それだ」
「は………」
「分かっていない………自覚していない………明日とは言わない、今日自分が死ぬかもしれないという自覚。平和な日本では中々考えることのない、突然の終わり………君は明日があるという『幻想』囚われてきた………」
「幻想って………死ぬ確率の方が低いよね。事故だとか事件に遭遇する確率は物凄い低いよ………?」
「そう、極めて低い。治安の良い日本ではそういった悲劇に巻き込まれることの方が稀。まず考えない、自分の死について考えない。でもそれは『ニアリーイコールゼロ』ってだけで、『イコールゼロ』じゃない」
「それは………綾小路さんの言いたいことが分からないよ。いちいち死ぬかもなんて考えてたら、心臓がもたないでしょ?」
「確かに、常に怯えていては生きてはいけない。だがオレはそんなことをしろとは言っていない。要はこの話は自覚するか、しないか、ただそれだけの話。そうだな…………松下さん、ちょうどさっき言ったみたいに、後でそこの道路で車に轢かれて死んだらどうだ? 死んでみて、自分の人生を振り返ったら………そこに後悔は残らないか?」
「……………………………………」
……残らない訳、無いでしょ。
あの時飛び降りようとする直前、物凄く後悔した。悔しかった、どうしてこうなったんだろうって涙が溢れてきた。
「残るって面だな」
「…………………」
「でもおかしな話だよな。明日には生きていないかもしれないのに、どうして後悔が残る生き方をするんだ?」
「それは………あくまで例え話でしょ?」
「君は実際に死んだ時も同じことを言うのか?」
「…………………………………」
「死なないと言い切れるのか?」
「…………………………………」
「今は駄目でも、いつかは幸せになる。私の人生は、まだまだこれからだ。今日頑張れば、いつかは…………『いつか』っていつだ?」
「そうやって生きてきて、実際に君は岐路に立たされた。一流の大学に入って、一流の会社に入れば、この先薔薇色の人生だ。高校の時はそんなことを考えていたんだろ?大学の時だって、何となくこんな人生あるかな………選択肢が多いな………など。フワフワと考えていたんだろ?自分の人生ってやつを。私は優秀、他の二流三流とは違う、この先素晴らしい人生が待っている…………そうして突然、終わりを迎えたよな。高校時代、大学時代に、自分が将来自殺するなんて考えもしなかったはずだ。それで……人生振り返ってみて後悔は?」
「……………………」
「後悔は?」
「……………ある………よ………」
「そりゃあ、残るよな。だって楽しくなかったんだから。いつかたどり着けるはずの幸福、そればかりに目がいって今の自分というのは後回し。今は辛くても、いつかは報われる………そんな甘い考えで生きた結果が、何もかもが駄目になった今の君だ」
「っ…………………」
「楽しくもないことを続けて、嫌々仕事して、あるかも分からない『幸せ』にこだわる。虚しいよな。悔しいよな。だから屋上から飛び降りる瞬間、君は泣いていた。紛れもない後悔の涙だ」
「でも、同じ死を迎えるにしたって、悔いが残らない奴がいる。人生を振り返って見た時に、後悔しない奴がいる。たとえ志半ばだとしてもだ」
「………………?」
「原敬の話、覚えているか」
「………うん。東京駅でしてたよね」
「原は突然殺された。気付けば刺されていたという状況だろうな。まさに、明日が無かった死に様だが………原はそうなることを予見していた」
「え?」
「首相という立場もあり、また当時の右翼からも左翼からも嫌われていたからな。常に身の危険はあった人間だ。だが原は、自分が殺されることを見越して遺書をしたため、身辺警護についても命を天に任せると言って付けなかったらしい。つまり、殺される確率は高かったと言えるな」
「どうしてそんなこと…………それで死んだら、元も子もないでしょ………?」
「そうかな?」
「?」
「自分が死ぬかもしれないと自覚していたんだぞ。それにもかかわらず、首相として生きる道を選んだ。自分が死ぬとしても、首相という生き方に価値があると思っていた………命を懸けていた」
「まだ首相として、一国の長としてやり残したことはあっただろう。その意味では、無念だ。まだやらなければならないことがあったと、嘆くかもしれない。だが………人生を振り返った時に、原は後悔するか?自らの生き様を悔いて、松下さんのように涙したか?」
「オレにはそうは思えない。原は命を懸けても良い生き様を見つけた。そのためだけに日々を生きた。明日死ぬとも分からない中で、自らの生き方を貫いた…………命を燃やしていた」
『自分で切り盛りするってのは大変だけど、それでも俺は楽しいと思ってる。命が燃えている感じがする』
ふいに、池くんの言葉を思い出した。
命を燃やす………燃えている…………。
「それに………オレもだ」
「えっ?」
そう言うと、綾小路さんは突然浴衣の帯を緩めて………
「えっ!? ちょっ……!なっ、何してるの……!?」
こんな所で一体何を考えて………!
「………………? 何………それ………?」
綾小路さんは下腹部を露出させて私に見せた。割れた腹筋に目がいきそうになるけど………綾小路さんが指差したのは他の部分。
「銃創だ」
「じゅっ…………!?」
銃創…………!?
「メキシコを旅していた時に、ホテルに突如現地の麻薬カルテルが襲撃してきてな。オレの部屋も占拠されそうになった」
「麻っ………って、大丈夫だったの……!?」
「一応制圧はした。そういう訓練は受けていたからな」
「訓練って………」
「だが、流れ弾が一発命中した」
「…………!」
「いかに手際よく制圧出来ても、完全に身を守ることは困難。カルテルの不意の流れ弾が一発命中してしまい、オレは倒れた」
「……………………」
「あと1センチ、命中した部分がズレていたら危なかったらしい。何とか銃弾の摘出手術は成功したが、オレは生まれて初めて生死の狭間を彷徨った。その時に自問したんだ、オレは後悔しているか、と」
「……………………………」
「ただ何となく、世界を見てみたいという軽い気持ちだったならば、オレは悔いただろう。他に生き方が、別の人生があったのではないか、と。だが、不思議と思うことは無かった。まだ足を踏み入れたことのない場所はいくつもある、出来れば世界の全ての地に行ってみたかった。その点では無念そのもの。だが………それまでの旅路を悔いる気持ちは無かったな。たった一度の人生を使い切る程の価値が、あの旅路にはあった。命が燃えた、それならば燃え尽きても良い。そう思えた」
「世界を見ていると、どうしてもこの国にはそういう『熱』が無いと思える。明日があるから、明日も生きられるから、そういう考えで生きているから今日命を燃やすことをしなくなる。本当は明日には生きてないかもしれないのにな」
「……………………………」
「人は楽しくないことには命を燃やせない。自分にとって、大して価値のないことには本気になれない。その意味じゃ、松下さんにとっての『一流』というのは最期には泣いてしまうほどの価値しか無い、紙くずだった」
「紙くず…………」
「良いか、『一流』を目指すなとは言っていない。そのために命を燃やせるなら上等。でも松下さんはそうじゃなかった。きっと、『テンプレート』で生きている人間の多くもそうだ。明日死んだ時、後悔の残らない人生じゃない。人に褒められるための人生は、松下さんにとっては命を燃やす程の価値のものじゃなかった」
………………………。
「でも……………」
「命を燃やせるものなんて、どこにあるの………? 私にはそれが、分からないよ……」
「言っただろ?」
「子供の頃、幸せはそこら中に転がっていた」
「成長して、大人になって、飽きた幸せもあるかもしれない。輝きを失った幸せもかるかもしれない。だけど、他の幸せは? 褒められたいから、貶されたくないから、そういう強大な光に目がくらんで見えなくなった幸せもある。でも、褒められる人生、貶される人生に疲れた今の松下さんにとって、そういう光はもう消えている。そしたら見えてくるものもあるんじゃないか?」
「………………………」
「それに松下さんは、恵まれてたんだろ?」
「……!」
「親に大切にされていた。やりたいこと、興味のあることをさせてもらった。世界ではそれは当たり前のことではない。オレも親に恵まれた訳じゃないからな。家族に、環境に恵まれなかった者は、幸せに手が届かない。松下さんならば手を伸ばせる所に幸せが転がっていない」
日本では当たり前に思えることも、世界では当たり前ではない。
いや………日本でも、私みたいに愛されていた人ばかりじゃない。
「よく、昔のことを思い出してみると良い。様々な経験を積ませてもらったのなら、その中に命を燃やせるものがあったのかもしれない」
池くんが言っていたことの意味が、分かった気がする。
私は池くんと同じだったんだ。
あの時はただおちゃらけていて、お喋りも上手じゃなくて、大してカッコよくもない、私よりもランクの低い、低次元な世界で生きていると思ってた。
でも…………
私たちは同じだったんだね。似たような生き方に縛られて、それから外れたら自暴自棄になって………何も変わらない、熱のない人間だった。
でも、今の池くんには熱がある。熱く燃えて、ギラギラと輝いている。
私にも、いつかそんな日が来るのかな……………
いや………
いつかじゃないんだ。
私は、本当だったらもう死んでいた人間。
明日がある、なんて呑気に考えちゃ駄目。
明日死ぬかもしれない。
だから、今日を死ぬ気で生きる。
私の人生は、たった今始まったんだ。
「オレは戻る。君はどうする」
「あ………私も戻るよ」
彼の後に、小走りでついていく。横断歩道を歩いていると、綾小路さんが突然こんなことを言い出した。
「車が通ると危ないな。手を挙げるか」
「手?」
「子供たちは、そうやって歩くんだろ?」
……………ふふっ。
やっぱり、変な人。
「ありがとう………綾小路さん」
ふわ ふわ ふわ
浮いてるよ
目ん玉が空を
飛んでるよ
わっさ わっさ わっさ
四六時ちゅう
毎日こどもは
いそがしい
不思議大好き
へんなもの見たい
どんなとこにでも
行っちゃうよ
あぶないときも
そりゃあるけれど
かわいいこには
旅だよね
ひとつよろしく!
僕の行く先
しりしりません
何が起きても
きにきにしない
オニさんこちら
でも逃げちゃうよ
僕は永遠のお子様
(クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王 EDテーマ『僕は永遠のお子様』)
サブタイトル:『ジョジョの奇妙な冒険 第1部』 ポコの台詞より引用
誰の曇らせが一番好き?
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堀北鈴音
-
一之瀬帆波
-
坂柳有栖
-
軽井沢恵
-
椎名ひより
-
櫛田桔梗
-
佐倉愛里
-
長谷部波瑠加
-
松下千秋
-
佐藤麻耶
-
天沢一夏
-
七瀬翼
-
雪
-
茶柱佐枝