プレジデントウォーズ2016 ━最後の希望━ 作:TREBOR SAX!
シーン12
罵倒をさらに重ねるが、アームは反応しない。息が続かずに言葉がつまるヒダリー
フーフーと気分を落ち着かせるために、呼吸を整えるヒダリー
目頭を指で押さえながら
ヒダリー「はあ、……ミスター・アーム。あなたは最高に失礼な人間だけれども許しましょう。私は誰かさんと違って、感情を抑え込める成熟した人間ですから。それにあなたは元々そういうキャラクターだと知れ渡っている」
アーム「それは素晴らしい美徳ですな。ミス・ヒダリー」
白々しい会話の応酬
ヒダリー「だけど、今私はあなたに一つの疑いをかけている。それはとても重大な案件だから、この疑いを晴らすために、是非あなた自身も協力して貰わねばならないわ。調査として私の問いに答えて貰う」
ヒダリーは指をピシリと向けて、有無を言わせぬ態度でアームに命令した。
カメラとヒダリーの視線が、アームが頭にかぶっている赤い野球帽に向けられる
アーム「疑い? 調査? お好きなように。私はあなたと敵対している訳ではないのだから」
アームはあまり興味なさそうに返答し、近くにあった椅子を手でズズズ引きずり勝手に座る。疲労から大きく息を吐く。
ヒダリーの尋問が始まる。
ヒダリー、顎に手を添えて少し考える。
ヒダリー「あなたの職業は映画監督。ならば映画を取っ掛かりとしてあなたの正体を引き出しましょう。
あの話題作は見たかしら。【星ウォーズエピソード8】。私は先日見たわ」
アームは、自分も観賞したと返答する。
ヒダリー「では監督。あなたに星ウォーズエピソード8の感想を述べて貰いましょう。
まず良かったか、悪かったか端的に答えてくる? ちなみに私は最高だった!。全米の映画評論家たちも同じ意見だと聞いたわ。お米の国映画史に語り継がれる傑作に違いない」
満足そうにうなずくヒダリー。
腰を下ろしたからか、だいぶ調子が戻ってきたアームがハキハキ答える
アーム「私は全然楽しめませんでした。特に私のような古参の星ウォーズファンにはコップの水をブチ撒けられたような気持ちになる内容でしたね。あなたの言う映画評論家たちは、映画の内容ではなく、周りの空気を嗅ぎ取って作品を語る間抜けな三流どもです。奴らの感想など意味がない。映画史に残るのは汚名になるでしょうな」
ヒダリーは諦めたような無表情でアームに答える
ヒダリー「まあ捻くれ者なあなたらそう言うとは予想していた。
じゃあなぜあなたが否定的なのかを具体的に説明してくれる?」
アームがウウンと、セキをしてから饒舌に話し始める。
アーム「一言でまとめるなら断絶です。
この作品はシリーズの八作目なのにもかかわらず、監督の意向によって、それまで積み重ねられてきた、テーマ・登場人物の思い・男の夢・受け継がれる意思・世界観と設定。
これら過去の積み重ねが、全て蔑ろにされ、ぞんざいに扱われています。
昔からのファンやファンダムが、自分たちのこれまでの人生と、星ウォーズに捧げた愛情を蔑ろにされたと感じています。
まるでスクリーンから、「お前たちはもういらない。お払い箱だ」と、言われたように。
特に絶望的なのが、ジェダイ騎士の歴史や騎士道精神といった考えを、まとめてゴミ箱に投げ込んだのはショッキングでした。エピソード8の監督は星ウォーズシリーズになんの敬意も親しみも持っていないのでしょう。このプロットにGOサインを出したD社上層部は狂っているとしか言いようがありません。制作陣とD社に怒りを覚えます。
映画評論家たちはこれを、斬新な試みだとかのたまっていましたが…。
・人間が書けていない。
登場人物の性格が一貫していない。登場人物の行動原理にブレがある。シーンが切り替わるごとに、人格が別のものに変化しているようだ。そのせいでキャラクターの信念や感情の強さが伝わってこない。
ラストシーンなんかは意味不明です。なぜ味方が大勢戦死している極限状態で、笑いあって抱き合い幸せそうな感動的エンディングを迎えられるのか。
人間的感情があるなら、エピソード5のラストのようになるのが自然だ。登場人物というより、脚本家の操り人形です。血が通っていない。
特にローズ。このアジア人女性のキャラクターは完全に失敗している。目を覆いたくなる程ひどい。言っている事とやっている事が前後矛盾をおこし、人格が破綻している。作品の完成度の低さがこのキャラクターに集約されている。
ストーリー面でも中盤、ローズが活躍しているシーンは馬鹿みたいで際立ってクオリティが低い。どう動かしても違和感があって、存在そのものが異物です。次作での彼女の取り扱いは、爆弾処理のようなものになるでしょう。
さらに言えば……」
怒れるヒダリーが、腕をバッと振りあげアームを遮る
ヒダリー「もう結構よ!! あなたは今何を喋っているのか理解しているの!?」
アーム「は? 何を……」
ヒダリー「よりにもよって、このホワイトハウスで、次期お米の国大統領である私の目の前で人種差別発言をしたのよ! アジア人女性というマイノリティを!」
アーム「いや、私は」
ヒダリー「黙りなさいィィっ!! その臭い口を閉じて! この差別主義者が!」
困惑して言葉が出ないアーム。
ヒダリーがまくし立てる
「これだから薄汚い男たちは! か弱く同情すべきマイノリティに対して差別感情叩きつける!。星ウォーズの男性ファンは全員馬鹿で傲慢! 女性差別! DV加害者! レイシスト&レイピストだわ!」
怒りに燃えていたヒダリーの顔が、突如豹変。
悲哀に包まれる。涙目。両手をグッと握りこぶしにする。
ヒダリー「ああ! それにしてもなんて可哀想なローズ。飢えた野獣のような男たちに囲まれて、貶められ屈辱を舐めさせれ、まさに男どもに迫害されるアメリカ女性そのものだわ! エピソード8はアメリカ社会の縮図!」
再び怒りの表情に戻り、アームを指差すヒダリー
ヒダリー「あなたのような前時代的なジジイに理解できないでしょうね! エピソード8の制作陣とD社の気高く美しい知性あふれる理想が!」
ヒダリーが両手を高々とかかげる
ヒダリー「これまでの旧シリーズは、男たちが光る剣を振り回して戦い、女性はただそれを見守っているだけの低俗な娯楽映画だった。それをD社が買収したことにより、高尚で成熟した大人の観賞に耐えうる芸術作品に昇華したのよ。素晴らしいスタッフたちとD社上層部の元にね。
エピソード8のテーマは馬鹿男のかわりに主導権を握る賢い女性。目先のことしか考えられない間抜けな男たちを、リーダーシップと胆力に秀でた女性たちがリーダーシップを発揮していく。光る剣を振り回すのも女の仕事。さらに動物保護や社会制度の悪さを指摘するような政治的な正しさも持っている。
なんて感動的! フィーメルパワー(女性たちの力)が天高く舞い上がるわ!」
ギロリとアームを睨む
「そんな道徳的政治的に正しいこの映画をバッシングするなんて、醜い男のひがみ根性丸出しね。まったく醜い。見るに耐えないわ
だいたいさっきのアレは何? 男の夢とか騎士道精神だとか。まったくバカみたい。
星シリーズは、宇宙船がレーザーを打ち合うスペースオペラ映画よ。そんな中世みたいな事を言うなんて本当に下らない。
そんな男のロマンだとかをありがたる男ファンがいるから、女性差別するようになるのよ。有害な男らしさね
もうそんな悪い時代は終わり。これからのD社は、こういった愚かで無知なファンを教育するための映画やドラマを毎年作っていくでしょうねぇホホホ! 未来はバラ色に輝いているわ!
もうすでに星ウォーズシリーズは、素晴らしい女性たちの支配下にある。男のファンはゴミ箱行きよ!
高笑いするヒダリーにアームが話しかける。困惑した表情
アーム「いや。どうか誤解を解かせてください。
いいですか。あなたの言うよろしくないファンは、傷つき心を病んでいるのです。強い言葉が出るかもしれません。しかし拷問受けた哀れな被害者に、正常な判断力を求めるのはあまりに酷です」
キッと睨むヒダリー
「はんっ! おだまりなさい。あなたの発言権はもう存在しない。最初に言ったでしょうあなたの疑いを調べると。
もうこの問答によって全てお見通しよ。あなたの正体が完全にわかったわ」
ヒダリーが会場の人間全てに聞こえるように声を張る
「ムアイコー・アーム! お前は薄汚い裏切り者のドランプ支持者! そしてドランプ陣営が送り込んできたスパイよ!!」
ドーン!
アーム「……!」
あまりの驚きに声が出ないアーム
次回 シーン13 排除
作者メモ
読者の方は多分、なんで突然映画の話になるんだ訳わからんぞ、と思われいる事でしょうおそらく。
ほんとすいません。ほんとその通りです。展開が強引すぎる。でもこの後の伏線になっているので、どうかご容赦を。
一応完全に無関係というわけではなく、星ウォーズはエピソード8から、ハリウッド映画のポリコレ問題の渦中に飛び込んだ様相になっています。8も十分過ぎるほどストーリーやキャスティング、設定などがめっちゃポリコレ臭いのですが、その後のスピンオフ作品が8なんて比べ物にならないほど、政治的主張モリモリな作品が出てきて、年を追うごとにヒートアップしています。
制作者側も批判的な視聴者を、この人種差別主義者が!くたばれ!みたいな反論も出てきて文化戦争真っ只中。
ポリコレも悪くはない。けれども相性というものがあり、光る剣で宇宙チャンバラやるぞってコンセプトの本シリーズはどう考えても水と油
作者メモ2
ビッグイベントに備えて、YouTubeで英語の動画を自動翻訳で見てるんですが、たまたまマイケル・ムーアのインタビューを発見しました。
当然のごとく、青いキャップをかぶってトランプは大悪人・ハリスが絶対勝つって言ってました。でも途中で話が変わり、イスラエルの虐殺に加担する現政権批判になってしまって、さすがムーア監督だぜ!ってニヤニヤしました。言いたいことを言う、何物にもはばかることはない。それがこの人のジャスティ~ス!
あとがき
トランプ大勝利。世界一の権力者に返り咲き。すげえ。感動した。おめでとう!
それはそれとして、選挙後の情勢を調べていたら、昔ヒダリーと戦ったあの民主党の議員サンダースの発言をCNNで発見しました。
>労働者階級の人々を見捨てた民主党が当の労働者階級から見捨てられても、大して驚くには当たらないはずだ
超かっこいい。感動した。まだ選挙が終わって1日経っていないこの状況下でこんなキツイ事を堂々と言えちゃうなんて まさに男の中の男。
彼こそが真の左翼。やっぱり左翼は他人の顔色をうかがって喋るようなようではイケナイ。徹底して空気を読まず、奇人変人と言われて本物の左翼なのだ。