プレジデントウォーズ2016 ━最後の希望━ 作:TREBOR SAX!
シーン8
カメラがアームに移る
興奮が冷め、たどたどしく息がしづらいような調子で語るアーム。
アーム「ドランプ支持者はどんな人々か? 私は知っています」
私は、ウェットティッ州のド田舎で生まれ育ちました。
どこまでも穀倉地が広がり、人より家畜のほうが多いようなところです。
娯楽施設は何もなく、あるのはキリスト教会くらい。メガチャーチではなくミニチュアのような教会です
そこでは敬虔なプロテスタンな価値観と生活が根付く残っています
今現在、テレビで罵られているような愚か者ではなく、なんの変哲もない普通のお米の国の国民です
そこで数日でも住み生活し、彼らと同じ目線になれば、なぜドランプにここまでの支持が集まっているのか判るでしょう」
目をつぶって話している 思い出すように。
アーム「彼らは、アメリカの民主政治は全て【都会に住む連中】に乗っ取られている。我々は打ち捨てられ、忘れられ、何かを訴えても無視されるか、リベラリズムや多様性の名の下に沈黙を強いられる。ミンシュー党にも、そしてキョーワ党にも見捨てられた。
もはや未来も自由もない!、とそう思い感じている」
アーム「そこで見出されたのがドランプです。あの馬鹿で金儲けしか考えない大手マスメディアの功績だ」
アームが目とおデコにシワをよせた不機嫌な表情
アーム「ドランプは、打ち捨てられ、忘れられた人々に対して、その名を呼び、その目を見て肩をたたき、テレビタレント仕込みのトーク力で笑顔をもたらした。奴の底抜けな明るさだけは本物です。
ドランプ支持者は、彼を冷血で頭でっかちなリベラルと違い 温かさがあり、人々の心に入り込める人の器を持っていると感じています。
ドランプの言葉はシンプルです。【あなたを知っている】、それだけだ。
ドランプを知った者は、闘志をたぎらせて、確信している。
ドランプは誰にも邪魔されず、何にも縛られない。必ずや、ホワイトハウスに着弾して今のクソッタレな今の政治をバラバラにぶっ壊してくれる。そして祖国が進む道を変えてくれるだろう、と。」
ムーア 「怒れる男がホワイトハウスに迫っています。しかしあの男が持つ怒りは、奴自身のものではありません。
いくら我慢しても何も報われず、蔑まれ、絶望し、打ち捨てられた辺境のアメリカ国民の怒りなのです」
ムーア「我々、リベラルを名乗る人間は、ドランプのあらゆる発言を一つ一つ検証して、いかにあの男が愚かで不誠実なのかを証明し、離間しようとしました。
がしかし、長ったらし論評で、ドランプとその支持者たちの絆を引き離そうとしても、それは徒労です。
ドランプの支持者は、……あの変な髪型の男が道徳心や政治的正しさを持っているとは最初から思っていません。求めてもいない。
最初から存在しない物は、失いようがありません」
アーム「ドランプの背中を後押ししているのはそれだけではありません。長年の政治不信がその根底にあります。
これまでの歴代大統領を思い出してください。小浜、コブッシュ、クリキントン、パパンブッシュ。
選挙の時だけ、調子のいいことをいって、何もしなかった。既存の政治家への信頼は地に落ちている
ドランプの政治的キャリアゼロは、今日においてプラス要素です
もはや政治家という言葉には失望と不信だけが残されている。
わかりますか? 明日、あなたに、その積もり積もった数十年分の負債が降りかかろうとしている」
アーム「ドランプ自身は、空っぽの入れ物にすぎませんでした。なんの政治的信条もプランもない。
しかし長い選挙期間が過ぎるうち 入れ物は、満たされて行きました。」
アーム「地域の衰退、グローバル化の波、失われる伝統、変わりゆく社会、理解できない新しい価値観、不法移民や異教徒への恐れ、支配者面するリベラル野郎、エリートへの不信感、時代のうねり、人の夢」
これらがドランプの腹の中でうねり、火と熱を放っています。
ドランプだけが、彼らにとって、【最後の希望】なのです。
もう一度言います。このままではあなたは負ける。ドランプが勝利することになる」
アームは一言一言を苦しそうに吐き出す
アーム「しかし我々にもまだ希望と時間は残されています。今から私達が見捨てた人々の元におもむき、彼らが何を考え求めているのかを聞くのです。
自分とは違う立場の人間に想像力を向ける。それだけが解決策であり、私達リベラルが常日頃口にしてきた事です。
ドランプはスキの多い男。何かしら致命的失敗をするかもしれない。そこに賭ければ光明をきっと掴める。
まだ戦いは終わっていない。
……どうか……私の言葉を」
ヒダリーは手のひらを上に向けてやれやれポーズ。
ヒダリー「どうやら監督は、精神疾患をおこして幻覚を見ているようね。
彼の目には、ドランプ大統領の勇姿がうつっているらしいわ!」
ヒダリーがニッコリと笑う
あまりにありえないジョークに、周囲の客たちにドッと笑いが起きる。それを見て満足げなヒダリー
ヒダリー「ああ監督。もう言葉ではあたなに届かないようだから、ここは科学的な数字で決着をつけましょう」
指をピッと前に出す
ヒダリー「いい?。この十年間で調査された選挙民の統計では、ありとあらゆる年齢層で、人種で、性別で、ミンシュー党の党員は爆増している
それに比べ、キョーワ党は白髪の高齢者ばっかり!若者は0に等しい!
この差は年々ひろまっていき、ついに今年2016年には決定的な統計結果が出たの。
キョーワ党の候補者の勝ち目は0%! 実質的な大統領選は、ミンシュー党候補者選挙に移り変わったわ
現在から永劫の未来、ミンシュー党候補者が勝利することを統計が保証してくれる!
テレビでもそう言っていたわ!」
ヒラリー「だから保守派の票を意識して 妥協的な中道政策をとる必要はなくなった。もう保守派の人間が何を考えているのかなんて関係がないし、興味もない。
大事なのは、私達リベラルエリートが理想の社会を最大限、追求できる時代が到来したという事実。ああなんて良き時代なのかしら」
アーム「……」
アームは不満顔。顔は青ざめている
ヒダリー「あなたまったく納得していないって顔ね。フフ、そんなあなたにちょうどいい物があるわ。すぐに用意させましょう」
手をパンパンと叩いて係の者に指示を出す
係の者たちは慌ただしく動き、ホワイトハウス二階のカーテンと窓が全開される。
カメラがホワイトハウスの外に向く。
しばらく経ってゴトゴト、という何かが地面を動く大きな音が聞こえてくる。
屋内に巨大な影が落ち、その後、本体が現れる。目と口が判別できる。
巨大な馬の首だった
次回 シーン9 木馬と円グラフ
作者メモ
ヒダリーの言っている数字うんぬんは、事実です。
キョーワ党は時代に取り残されまくっており、白人以外の人種はみんなミンシュー党に入っちゃいます。
選挙が単純な多数決なら、キョーワ党候補者に勝ち目はありません。
という話しが、当時のテレビ・ラジオで盛んに報道されていました。
しかしお米の国はやたら複雑で変な選挙制度があり、これによって投票結果がガラリとかわっちゃいます
ドランプは、そこをついて針の穴に大根を通すような勝利をおさめたのでした。