あなたなら、どうしますか?   作:お犬さん

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7話:強者たち

 

「御前試合。本来なら来年の予定でしたが、早めましょう」

 

 あなたたち『蒼の薔薇』のパトロンとなったラナー王女が、早速の提案をしてきた。

 

 御前試合とは、王国における最強の戦士を決める催し。

 我こそはという腕自慢が集い、お互いの野心を剣に乗せる大会。

 本来ならば来年開かれる予定のはずだったが、ラナーはそれを早めて3ヶ月後に開催するのだという。

 

 その理由は、あなたにとってはわかりやすい物だった。

 むしろ、仮にラナーがあなたたちのパトロンとなった場合、彼女はそういった行動を取るであろう事はあなたが冒険者を志した時点で予想していた。

 

「ふふ。やはり私に思い付く事ならば、あなたはとうに至っていますよね」

 

「私にはさっぱりわからないのだけれど?」

 

「安心しろ。普通はわからん」

 

 ラナーは2人の言葉を完全にスルーして語る。

 

「──剃刀の刃。今はまだ、4つ全ては難しいかもしれません。しかし、剣だけならば間違いなく手に入るでしょう。そしてそれは、早ければ早いほど良い」

 

 なんだかんだで説明してあげるラナーに対し、やはり彼女は優しいなとあなたは思った。

 

 ──王国に伝わる五宝物。

 不滅の護符(アミュレット・オブ・イモータル)

 守護の鎧(ガーディアン)

 活力の籠手(ガントレット・オブ・ヴァイタリティ)

 剃刀の刃(レイザーエッジ)

 

 現在は1つ失われてしまい四宝物となってはいるが、そんな事はどうでも良くて。

 王国のマジックアイテムと言われたら、誰しもが真っ先に思い付くであろうそれら4つの秘宝。

 その中でもとりわけ強力とされる剃刀の刃を優勝賞品として入手しようという案である。

 

 あなたは平民ではなく貴族嫡男であり、ラナー王女付きの冒険者だ。御前試合の優勝賞品として剃刀の刃を下賜される事は十分可能な話。

 

 まあ、仮に拠点を王国から別の国にするなどあれば返却の必要があるだろう。加えて国外持ち出しをする際には少々面倒な手続きが必要となる事の想像は容易。しかし、あなたとラナーという2人が協力すれば持ち出し手続きの方はどうとでもなるし、拠点を王国から変える事は少なくとも数年はないだろうから。

 

「とはいえ、話をスムーズに進めるために、あなたたちには3ヶ月の合間に箔付けとしてオリハルコン級にはなって頂けると助かります」

 

 

 というわけで。

 あなたとイビルアイは2人で王都冒険者組合に訪れた。

 

 ラキュースは修行中である。

 第4位階魔法を習得した彼女は、今の自分ではまだまだ足りないと言って、少しでも修行に費やす時間を増やす事を望んでいる。

 

 冒険の経験とイビルアイという強者のお陰で、魔法の習得という観点では、ラキュースはあなた1人でレンフォール家で修行を付けるよりも速く成長している。

 

 故に、あなたの弟子たる剣士としてならばあと半年は欲しいが、補助回復役として総合的に考えたら、既に彼女はオリハルコン級として何の問題もない……どころか、アダマンタイト級パーティに居たとしても一切の文句はない力を付けているとあなたは考えていた。

 単純な話として、剣も使える補助回復役がオリハルコン級剣士に剣で負けたとて、それで実力不足にはならないだろう。

 

 パーティとして、あなたが居る以上はラキュースに前線を張らせる事はまずないのだ。むしろ彼女に最前線を任せるなどしては、純粋剣士たるあなたは一体何をしているのだ? となってしまう。

 

 ──理屈で語るとその筈なのだが……何故かラキュースはラナーを見てから更なるやる気を漲らせていたのだ。

 まあ、実際に第4位階魔法を習得しているわけだし、どうやら焦りで空回りしているわけでもないので、あなたとしては特に異論はなかった。

 

 話を戻すと、あなたたちは元ミスリル級冒険者である組合長の女性と向き合って。

 

「現役時代の私ごときでは、もはや比較する事も烏滸がましい……。あなたたち程の実力者が、時間を理由に未だミスリル級というのは私としても不本意です。依頼を優先的に回す事に異はありません」

 

 経験豊富な組合長は、アダマンタイト級冒険者を遥かに超えた実力者であるあなたとイビルアイを見て戦慄している様だった。

 

「ふん……当然だな。それで?」

 

「ギガントバジリスクの目撃情報が入っています。その討伐を以てすれば、オリハルコン級への昇格に文句を言う者はいないかと。──こちらが、石化対策の指輪になります」

 

 あなたは石化対策の指輪を2つ受け取る。

 イビルアイは自前で持っていて、ラキュースはアインドラ家の蔵にあるからあなた分の1つでいいのだが、沢山あって損する事はない。

 

 やはり、持つべき物はコネだなと高価な指輪を眺めながらあなたは改めて思った。

 ラナーがあなたのパトロンになっていなかったとしたら、あなたが自前で石化対策の指輪を揃えるのは不可能とは言わないにせよ、かなりの手間が掛かった事は想像に難くないのだから。

 

「ギガントバジリスクなど、石化対策さえしていれば私かお前の片方だけでも単独討伐出来るだろう。故に必要性はないが……ラキュースは呼ぶか?」

 

 あなたは頷いた。

 確かに、対象を討伐するだけならばラキュースは不要だが、あなたは弟子に強大なモンスターへの経験を積ませたかったから。

 

 あなた自身も実はギガントバジリスク級のモンスターと戦った経験はない。とはいえイビルアイという最強クラスの相手に真っ向から向かい合って勝利した経験ならばある以上、今回はラキュースに譲るべきと考えていた。あの時は、ラキュースが前に出るのは危険過ぎたために、あなたの補助と回復に専念するのみだったから。

 

 

 ──トブの大森林。

 奥地には数多くの強力モンスターが住むと言われるが、浅い場所にてギガントバジリスクが現れたという事で、あなたたちは討伐準備の最終段階に入っていた。

 

 あなたはその才能故に、足跡や動物の動き、音などからモンスターの動向を探るという……まるで斥候のような事も完璧にこなすことが可能である。

 それは、あなたが知る由のない職業たるジーニアス由縁で、あなたたちのパーティが3人という少数で問題なく回っているのは、ひとえにその能力のおかげなのだ。

 

 あなたはビルドとしては純粋な剣士ではあるのだが、役割としてはかなり多くこなせる。やろうと思えば、肉を確保するために弓で鳥を撃ち落とすくらいならば容易だ。魔法使いたるイビルアイが居る以上は必要ないのだが。

 

「斥候、交渉、食料の毒の判別、料理。本当に何でもできるな、お前は……」

 

 イビルアイが感心を超えて呆れるその能力をふんだんに活かし、あなたはこの先にギガントバジリスクが居ると仲間に伝える。

 

 後は作戦通りだ。

 先手はイビルアイ。出会い頭の遠距離魔法で奴を弱らせる。

 

 ……この時点でギガントバジリスクは既にかなりボロボロになったのだが、さりとて油断はせずにあなたはラキュースと一緒に前に出る。

 今回あなたはラキュースの補助役。

 基本は全て弟子任せだが、何らかの理由で危険があった場合の助太刀を構えていた。

 

「これでトドメよっ!!」

 

 しかし、彼女は特に危なげなく弱ったギガントバジリスクを討伐。

 修行の成果が如実に出た戦いだった。

 

 いくら死にかけとはいえ、何も問題なく強力モンスターを討伐出来たラキュースに対し、あなたは後方満足師匠面をしていた。

 

 

 こうして、見事オリハルコン級冒険者となったあなたたちは御前試合当日を迎える。

 

 予定が早められたとはいえ、それでも3ヶ月も準備期間があれば野心のある者にとっては十分。

 王国中から戦士が集まっていた。

 

『蒼の薔薇』からはあなたとラキュースが出る。

 最初はあなただけの予定だったのだが、強者との経験は積めるだけ積んだ方が良いとの判断でラキュースも出る事になったのだ。

 

 

 1回戦。

 

 あなたの相手はエ•ランテルのミスリル級冒険者。

 

 王国最強の剣士やら武神の生まれ変わりやらと呼ばれて、優勝候補筆頭と扱われているあなたの試合を初めて見られるとして、観客が大興奮していた。

 

 そして、興奮する観客の1人……仮面の少女と一緒に観戦している、とある14歳の金髪の美少女が

 

「完全なる勝利を導く絶対的な力! その力の前では、あらゆる物が無力よっ! カイム、見せてやりなさい!!」

「うん……うん?」

 

 あなたは思わずピクっとしてしまった。

 そう……それはあなたの青春時代。

 憧れていた、画面の向こうにいた覇王の事をあなたは思い出してしまった。

 

「隙あり!!」

 

 目の前の相手があなたに隙が出来たとして襲い掛かる。

 しかし。

 

「ぐあっ!」

 

 あなたはあっさりと対戦相手の剣を弾き飛ばし、試合を終わらせた。

 いくらあなたの集中が多少途切れようと、彼我の差はそれだけで埋められない程に広すぎたのだ。

 

 ミスリル級冒険者を一撃で粉砕するあなたの強さに、観客とあなたの同志が興奮する姿を見て、あなたはクールぶりながらも内心喜んだ。

 実力者は喜びを安易に表に出さない方がカッコいいのだとあなたは確信している。

 

 その後、ラキュースも問題なく1回戦を突破している姿を見て、あなたは頷き続けた。イビルアイに怪訝な顔で見られていた。

 

 

 そうして対戦相手を鎧袖一触し続けたあなたは、準決勝を迎える。

 

 1人だけ、ガガーランという名の屈強な肉体を持つ見所のある女戦士が居たが、あなたは彼女を瞬殺した。

 まだ、彼女はあなたとまともに戦える域にはない。素質は悪くないが、3年後に期待しようとあなたは考えていた。

 

 そんなあなたの準決勝の相手は、青髪の男。

 ほっそりとしているが鍛え上げられている事が良くわかる肉体。

 髪はボサボサで無精髭がカビのように生えており、瞳は茶色。

 ブレイン•アングラウスという名前の男だった。

 

「……信じられん。まさかこの歳で俺より遥か高みにいる奴がいるとは……最強の剣士という噂は事実だったか」

 

 あなたはブレインを圧倒している。

 しかし、驚いているのはブレインだけではなくあなたもだった。

 まさか、あなたはまだ全く本気ではないにしても、それでも瞬殺されない無名の剣士が王国に居るなど予想外だったのだ。

 彼は間違いなく、アダマンタイト級の水準を超えているとあなたは感じた。

 

 とはいえ、実力的にあなたはブレインを遥かに上回っている。

 あなたはヴェスチャーの教えから構想を得た武技『六光連斬』を用いてブレインを倒した。

 

 すぐさまあなたは、立ち去ろうとする彼を呼び止める。

 

 訝しむ彼に対し、あなたはヴェスチャーへの紹介文を書いて渡した。

 

「元アダマンタイト級冒険者のローファンか。確かお前の師匠だったか。ふむ、先程の武技も奴から? ……お前の剣を僅かでも会得出来るならば、悪くないな。行ってみよう」

 

 立ち去る彼を見て、あなたは考える。

 もしあなたがヴェスチャーを紹介していなかったとしたら、恐らくブレインはこの後、あなたを打倒すべく更なる力を得るためになりふり構わなくなっていただろう。

 

 もしあなたが人の域を超えた強者だったならば、彼は絶望して歩みを止めたかもしれない。しかしあなたは、肉体的には指輪を合わせても未だ十三英雄にわずかに及ばない程度で留まっており、人の域を外れているわけではない。

 そのためブレインは自分にあなたが超えられるかは怪しんでいるだろうが、さりとて修行は辞めないだろう。

 

 そのため、このまま立ち去らせてしまえば、彼は強くなるために人間を斬る機会が多く、尚且つ金払いのいい野盗辺りに身を寄せるだろうとあなたは予想していた。

 故にあなたはブレインを師に紹介する事にした。彼の実力ならば、きっとヴェスチャーも気にいるだろうと考えて。

 

「少々突飛にも思えますが……あなたがそう仰るのであれば、その未来は確実な物だったのでしょう。事実として、彼はあなたに従ってローファン様の元へと向かっていますし……」

 

そこまで的確に個人の感情や欲望を把握し、未来を予測して自らに有益な形となる対処法まで即座に展開出来るというのに、一体何故……いえ、何でもありません」

 

 ラナーは何やら複雑そうな顔をしていたが、あなたはその理由についてはさっぱりわからなかった。

 

 また、あなたはブレインはまだ自分に合った武器を持っていない様に思えた。彼に合うのは、もっと細くしなやかな……前世では刀と呼ばれていた武器の方だと感じた。

 彼は、まだまだ伸びる。あなたはそう確信していた。

 

 

 次は、あなたの弟子ラキュースの準決勝。

 彼女の相手は、どうやら南方系の血が入っており、短い黒髪に黒瞳。分厚い筋肉に覆われた屈強な体を持つ男。

 ──ガゼフ•ストロノーフという名の戦士だった。

 

 先程のブレインもそうだったのだが、ガゼフもまた、今のラキュースからすれば格上の相手。2人とも、アダマンタイト級の水準を軽く上回る戦士だ。

 あなたの弟子は健闘はしたものの、敗北してしまった。

 

「私の完敗よ。あなたと戦えて良かった」

 

「本当に君はまだ14歳なのか……? この強さに加え、信仰系第4位階魔法の使い手なのだろう? 先の彼といい、その歳でそこまで強いとは……。成長した君とまた戦いたいものだ」

 

 2人の剣士が熱く語り合う姿を見て、あなたは再び首が取れんばかりに頷き続けた。

 イビルアイは横で奇行に励むあなたをスルーしていた。

 

 

 そして、決勝戦。

 あなたの相手は当然、先程ラキュースを破ったガゼフ•ストロノーフという名の戦士。

 

 試合直前に間近で彼に相対したあなたは、彼からはブレインよりも少し強そうという印象を受ける。

 

「君の準決勝、見せて貰った。君は間違いなく俺よりも強いのだろう。しかし、それでも俺は負けるつもりはない」

 

 あなたは頷き、決勝の火蓋が切られた。

 

 やはり、ブレインと同じくガゼフもあなたに瞬殺される事なく喰らい付いてくる。

 しかし、それでもやはりあなたには遠く及ばない。

 

「肉体的にも技量的にも、遥かに俺を上回るか……!」

 

 あなたは竜の指輪を合わせて、肉体的にガゼフの遥か高みにいる。

 加えて、あなたは天才だ。凡人に引き出せる力の1.5倍の力量を発揮できる、まさしく天性の才を持つあなたは、ガゼフをまるで相手にしていない。

 

 しかし、ガゼフの眼から光が失われる事はない。

 あなたは、勝ち目のない戦いにおいてなお曇らぬ彼の眼に感心しながらも、さりとてやはりそれだけではこの実力差は埋められぬとして、ガゼフを倒す。

 

 ──御前試合の優勝者は、あなただ。

 

 あなたはガゼフにもブレインと同様に声を掛け、ヴェスチャーの元へと送る。

 ガゼフにはブレインと違って危うさはなかったが、彼ほどの男を野に放つのはあまりにも勿体ないとあなたは考えたからである。

 

 王もガゼフを気に入ったようだったから、恐らく彼は王に召されるのだろうとあなたは考えていた。

 しかし、もしガゼフが王に引き抜かれなかった場合、あなたは彼を『蒼の薔薇』に誘うのも選択肢に入れていた。

 

『蒼の薔薇』は既に法国と評議国以外の周辺国家において最強だとあなたは思っている。

 加えて、前衛が後1枚入ればパーティの安定性は遥かに増すだろう、とも。

 

 もし彼を仲間に加えるとしたら、その前にラキュースとイビルアイにも話して許可を得る必要はあるが、そこはきっと問題ないとあなたは考えている。彼はそれ程の男だとあなたは思っていたから。

 

 とはいえ繰り返しになるが、きっと彼は王に引き抜かれるのだろうとあなたは考えていたが。

 

 

 王が優勝者たるあなたに話しかける。

 

「王国最強の剣士よ。報酬として、何を望む? ──剃刀の刃を望むか。良かろう。貴公ならば、相応しい」

 

 王国、いや周辺国家最強の剣士たるあなたに、王国最強の剣が授けられる英雄譚をこの目にしたとして、観客席が歓声で埋まる。

 

 ──王には既にラナー経由であなたが剃刀の刃を望んでいて、優勝したら渡すという根回しを終えていた。

 また、反対しそうな貴族にも然り。

 ラナーとあなたが協力すれば、王国において大抵の無理は通せるようになっていた。

 

 こうして、あなたは御前試合を優勝する事により、王国最強の剣である剃刀の刃を手に入れる事に成功した。

 

 

 

 

 

 

 

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