異世界をグリードアイランドのカードと共に… 作:設定厨なテンシ
足元に急に現れた謎の穴、これが普段の体調の俺なら踏みとどまれたのかも知れない、ただ残念ながら連日の残業で酷使してフラフラなこの身体では、反応も踏ん張りもまったく効かず、地面に空いた穴に吸い込まれるように落ちていくしか出来なかった。
俺が落ちた謎の穴は、現世から天界に通じる次元の裂け目と呼ばれるものだった。
次元の裂け目の先にいた住人さん?がいろいろ説明してくれたのだが、どうやらこの裂け目は一方通行で、俺はもう元の世界には戻ることはできないらしい…。
じゃあ俺はこのままここに住むことになるのか?と思ったのだが、さっき説明された通りここは天界で、俺なんかじゃ徳が全く足りず、住むのは難しいと言われてしまった。
確かに俺は普通のおっさん、故に積んだ徳なんてコンビニに設置してある募金箱に チャリン が精一杯である、その程度では天界には住めないようだ。
それから俺はなんやかんやあり天界のお偉いさん、つまり神様と面談することが決まり、今後の身の振り方を考えることになった。
神様曰く、元の世界に戻るには神様の作ったシステム的に転生をするしかないそうだ、その際に 転生処理 と言うものをおこなって元の世界に産まれなおす形になるらしい。
転生処理は簡単に言うと神様の力で魂の記憶と穢れの消去をおこない、徳はそのままで産まれなおす事、何度もそれを繰り返し徳を積んだ魂が昇華するまでそれを続け人々を天界へと導く神様の仕事の1つだ。
ただ俺には大きな問題が1つあり、次元の裂け目から肉体を持ったまま天界に来た稀な存在だと言う事だ、もし転生する場合は魂の状態になる…つまり一度死なねばならない。
でも今回の事に関しては完全に事故…むしろ次元の裂け目を完全に管理出来ていない天界のミスとも言えなくもないとの事、今回の事故で7件目の事例らしい。
前任者にした措置として、転生処理等の影響が出ない神システム外、つまり異世界に 転移 と言う形で対処したそうだ、今回もその措置が妥当だろうとの事だ。
神様の説明が終わり、俺はもちろん 転移 を希望する事にした、死ぬ勇気がないのと漫画好き故の異世界への憧れが要因である。
俺が転移を希望すると神様が深く頷いた後に軽く手を上げすっと指を差した。
その方向に出現する扉、扉が開くと1人の天使?が部屋の真ん中にある机の奥に座って俺を待っているようだった、転移の手続きや書類を書く部屋だそうだ…、なんかすごい役所っぽい感じだ…。
そんな事を思いながらも丁寧な対応をしてくれた神様にしっかりとお礼を言った後、俺はその部屋に入っていった。
「HUNTER×HUNTER いいですね〜!」
男とも女ともとれる中性的な声ではしゃぐテンションの高い天使様、異世界の手続き書類を記入中に何気ない会話から脱線に脱線を重ね、趣味の漫画の話で俺と天使様は意気投合した、特に天使様は HUNTER×HUNTER が好きなようだった。
うーん………俺はある部分でペンが止まってしまった、能力を記入する欄である。
何でも俺の身体が天界にきた際に神様の力?を大量に取り込んでるっぽく…それが強すぎて、能力として形を作らないと異世界に着いた途端、身体に収まりきらなくなり ボンッ ってなるそうだ。
だから書類には希望する能力を考えて書く記入欄があり、取り込んだ神様の力が強い分「好きな能力何でも良いよ」状態なので自由度が高く逆に迷ってしまっていた。
ついでに前任者は BLEACH が好きだったのか「全種類の斬魄刀を完全に扱える能力」だったらしい…うん、かなりチートだな。
「…迷っておられるようでしたら、私が前々から考えていた能力を使ってみる気は無いですか?」
俺が能力の記入欄で長い時間固まっているのを見てか天使様がそんな提案をしてきた。
「どんな能力ですか?」
「それは、異世界に行ってからのお楽しみですかね、それにその場合だと設定を凝りすぎて文字数が多くなりすぎるので、能力の部分だけ私が記入しておきますよ」
えっ…めっちゃいい笑顔、断りずら…、いやでも確かにパッと能力って言われてもしっくりくるものが思いつかないし…、ここは天使様を信じてみるのもありなのか?
俺は希望する能力の部分だけ空欄のまま出来上がった書類を天使様に渡す。
「本当にこの提案を受けてくださるとは…、前前回の人に同じ提案をしましたが絶対自分で決める!と断られてしまいましたし、これは気合いを入れないといけませんね」
書類を受け取った天使様は凄い勢いで空欄を埋めていく…文字小さっ!俺には点にしか見えない…えっまだ書くの?
まだ少し時間がかかりそうなので俺はこのあとの事を考える、書類が書き終わり扉から部屋を出ると直ぐに異世界に送られるらしい。
俺が行く異世界はテンプレのような剣と魔法の世界で魔王の討伐等の使命は無く自由に暮らして良いとの事、しかも能力は天使様の渾身の自信作っぽい、平凡なおっさんの第二の人生にはこの環境は過ぎたるものだ。
「よし、出来ましたよ!」
笑顔で完成した書類を見せてくれる天使様、希望する能力の記入部分だけ黒く塗りつぶしたみたいになってる…何を書いたのかすら分からない。
「では、 第二の人生 楽しんできてくださいね!」
天使様は満足そうに右上の部分に了承のハンコを押して書類を俺に渡してくる、どうやら出発の時間のようだ。
「じゃあ、行ってきますね」
俺は天使様に会釈してから部屋の扉に手をかけたのだった。