死別曇らせ短編【異世界版】 作:TuT
こんにちは、大長編ラノベの某名作の世界に転生した一般人です。
なお、噛ませ犬として転生した。
もう一度言う、噛ませ犬として転生した。
はあ〜〜〜〜〜〜(クソデカため息)。
······より具体的に言うと、「成人して人類最強になった主人公パーティが死力を尽くして倒したラスボスに、まだ主人公たちが学生だった頃に会敵してあっさり殺されるやつ」として転生した。
学園を襲ったラスボスになす術なく斃され、時間稼ぎにもならなかった······モブキャラだ。
とはいえ、知識有りなら勝てなくもない。
『勝利条件』を見直せば、多分、メイビー。
この身体、一応は名門の出だし戦闘の素質もある。
原作知識と併せればなんとか···なんとかなれ(願望)
どうせ一度死んだ身だし、死ぬのは怖く······怖いけども、ぶっちゃけ元からこの世界に生きていた人間の方が長生きするべきだと思う。
そんなわけで、頑張って鍛錬するぞ。おー。
◆◆
「生徒会副会長に就きました、アリスと申します。学園最強と名高い会長、その補佐を務められることを光栄に思います」
短く切り揃えられた銀髪に、鋭い眼光の美少女。
原作では登場しなかったキャラだと思うが···
すげー可愛い······もろタイプだ。
「会長ッ!生徒会室を散らかすなと、あれほど言ったのに···!───あっ逃げるなぁぁぁ!掃除から逃げるなぁぁぁ!!」
「全く···本当に会長はダメな人ですね。取り柄は外面と戦闘力くらいなものです。私がいないと、お話にならないんですから」
見た目通り、ツンデレ(ツン100%)だったけど。
◆◆
この世界に生まれて十数年。
俺は寝る間も惜しんで···いや、毎日7時間寝てたけど、ただひたすらに己の才を磨きあげていった。
血を吐くような···というかガチで吐血したけど、禁術をも会得した。
禁術については誰にも言ってない。
万が一にも手の内がバレたら、これまでの努力が水の泡だからな。
それに、生徒会の仲間たちにバレたら半殺しにされる自信しかない。
生徒会長の威厳?一ヶ月くらいで無に帰しましたよ。
なんなら今の尊敬度はマイナスまである。
さて、明日あたりそろそろ決戦かな?
◆◇◆◇
「来たか」
虚空が捻じれ、そこから闇が覗いた。
赤く爛々とした瞳を持ち、肌はくすんだ紫。
2メートルを優に超える巨躯を持ち、どす黒く悍ましい魔力を撒き散らす災厄。
魔王が──降臨した。
魔王襲来の報と恐怖は瞬く間に伝播した。
死の象徴たる魔王から我先にと生徒たちは逃げ出し、教員も及び腰だ。
しかし俺は人の波に逆らい、一歩ずつ近づいていく。
不意に、魔王の指が一人の生徒を指差し
──そこから炎魔法が放たれた。
圧倒的強者のほんの気紛れ、しかし必殺。
それが彼の背に届く前に、俺は防御魔法を発動して霧散させる。
「ほう、防ぐか。人類も少しは
「はは、そりゃどうも」
表面上は涼し気な表情で余裕そうにしているが、冗談じゃない。やっぱコイツバケモンだわ。
全力の魔力障壁をあっさりブチ抜きかけたぞ。
でも、なんとか防げた。少なくとも被害を抑える時間稼ぎくらいにはなれそうだな。
「会長。助太刀します」
「アリス、やめとけ。こりゃキツいぞ」
「苦しいのは貴方もでしょう。斃せずとも、時間稼ぎくらいはしてみせますよ」
魔力感知に、我が生徒会の面々が練り上げる魔力が引っかかった。
他の皆も······やる気満々ってやつか。
知識も無いのに立ち向かうとか、さすがすぎるぜ。
相手はバケモンだけど、こっちも相当の──そこらの騎士団なんか相手にならないくらい──バケモン揃いだ。
◆◆
絶え間なく降り注ぐ魔法。
炎が昇り、冷気が迸り、雷鳴が鳴り響く地獄地帯。
しかし俺たちは、なんと優勢だった。
致命打こそ与えられていないが、確実にダメージは入っている。
上手くすると、討伐も夢ではない!
「行けるぞお前らァ!撃て撃て撃てェッ!!」
「ッ、“癒しの光”!」
俺達が連携して攻め立て、アリスが回復。
こちら側の疲労も色濃いが、このペースなら先に斃れるのは魔王だ。
───だが、俺は知っている。
これはあくまでも前哨戦だと。
「お前たちの全力は大体分かッた。
魔王の身体が、ゴキゴキと音を立てながら変形していく。その間、魔王は余りに大きすぎる隙を晒し、生徒会の面々は一斉に強攻撃を叩き込む。
しかし、魔王の魔力障壁に悉く防がれる。
変身時に発生する魔力障壁は禁術でも貫けない。
そうこうするうちに、魔王が変身を終えた。
背丈は更に大きく3m超。魔力強化によるものだろう、筋肉は肥大化し太い血管が浮かんでいる。
そして背中や肘、身体のあらゆるところに角が生えたその姿はまさに異形。
「終わりにしよう───轟雷」
生徒会全員を対象とした特級雷魔法。
避けることも、防ぐことも許さない神速。
この一撃で生徒会は壊滅した。
「はッ······ようやく、真の全力を引き出せたと思ったらこれかよ」
全く、理不尽だ。
俺達の研鑽をたった一撃で吹き飛ばすんだからな。
辛うじて継戦出来るのは···俺だけか。
「会長······がハッ······これがもう、限界です···貴方だけでも、逃げて······」
「仲間を見捨てて?···冗談じゃない。それに俺はまだ負けてないぞ」
そう。俺はまだ負けていない。
「勝つさ」
身体強化魔法を足にかけて、魔王へ向かって超高速移動。轟雷は消費が激しく、魔王とて乱発出来ない。
そしてそれ以外の魔法は避けられるか、喰らっても
「捕まえた」
禁術───
「俺の『勝利条件』は、お前を斃して
「やッてくれる······─────」
何人たりとも───術者本人であっても耐えきれない程の超重力が、俺と魔王を襲う。
俺の命が尽きる寸前───最期に見たのは、アリスの泣きそうな顔だった。
◆◇◆◇
私はアリス。名門の落ち零れ。
父は大剣を振るい武勇を示した。
母は魔導を究め真理を発見した。
兄は父と同じく剣に優れていた。
姉は人の上に立つ才に溢れていた。
しかし、私にあったのは回復魔導だけ。
それも傷を癒すだけの、初歩の魔導。
父母や兄弟姉妹のような力は私には無かった。
そう···私には、何も無かった。
強いて言うなら、この身体に流れている名家の血と生まれだけ。あるいは簡単な傷を癒すだけの魔導。
でもそんなものは、ある程度の実力者ならば誰でも出来る基礎技能だし、診療所にでも行けば廉価で受けられるモノだ。
結局、必死に鍛えて上級魔導は覚えたけど···それが私の終着点だった。
だから、あの時死ぬべきだったのは私じゃなかった。
あらゆる才に溢れ、おバカだけど優しい、あの人が生きていたら···。
もしあの人が生きていたら、“その考えは間違ってる”とでも言ってくれるのだろう。
生きてさえ、いれば。
「会長·········」
彼を呼んでも、もう、どこにもいないのに。
私はずっと探し続けてる。
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◯会長
皆を救えたので満足している。
この世界には蘇生魔導が存在するが、身体が遺っていないため使えない。
つまりどうあっても生き返らない。
彼の魂は新たな輪廻の輪に加わってしまった。
◯副会長
会長や生徒会の皆と過ごす日々は宝物だった。
もっと素直に接していれば良かったと後悔している。
もう一度彼に会って想いを伝えたいと考えているが、輪廻の輪に加わった魂を現世に引きずり戻すことは絶対に不可能である。
◯魔王
魔王とは、人間のあらゆる負の感情の集合体である。