呪いの方陣は透き通る世界でも循環する   作:Another2

10 / 11
 終わり所を無くした感。


便利屋68─参─

 時間はアルが跳弾を決めた辺りまで遡る。

 

──失敗(しく)ったな、烏に鉄板背負わせてる時点で察するべきだった、今のが狙って出来るとなると途端に烏の脅威度が跳ね上がった、こりゃ早急に烏を一掃しないと死角から一方的に撃たれて終わるぞ。

 それに今のを見せられてノノミの弾幕が薄まった、自分の弾がホシノたちに跳ぶかも知れないという疑念がある、それも計算に入れて今の跳弾を見せたのなら相当のやり手だ。

 だが今の跳弾はかなり狙いを絞らないとダメなはず、なら……

 

“ノノミ、ビビる必要はない、構わず烏を撃ち落として”

 

「で、ですが先生、それではまた……」

 

“大丈夫、あの狙った跳弾はアルの弾丸にしか出来ない、それが証拠に向こうの他の生徒が烏を使った跳弾を使ってない、今のは下手に撃ったらこうなるぞっていう(ブラフ)だ”

 

「……‼︎成程……分かりました、先生の言葉を信じます‼︎」

 

 そう言うとノノミは再び弾幕を張る、一部の烏は器用に避けたりするがそれでもその物量に何匹か命中して撃ち落とされていく。

 

──やっぱりさっきの跳弾はアルの弾丸でしか不可能な様だな、もしこれが誰の弾丸でも出来てたらそれで終わってた、だったら……

 

“アヤネ、そっちからも烏の撃墜補助お願い、板持ちに気をつけて”

 

『はい!』

 

──よし、これで烏を減らしていけば勝機はある……問題は前衛の皆だけど……押し切れない、何か……一手欲しい所だが。

 

 同時刻、砂狼シロコは眼前の敵、即ち鬼方カヨコに対して攻めあぐねていた。

 

「……ッ‼︎いい加減にして、さっきからずっと逃げたり避けたりしてばっかり、戦う気はあるの?」

 

「はぁ……いい加減にしてほしいのはこっちの台詞だよ、アンタが馬鹿みたいに突っ込んで来るからこっちも相応の力で対応しなきゃいけない、地力で負けてるのにそっちの領分に付き合う訳ないでしょ」

 

──本当に凄まじい持久力(スタミナ)、これだけ暴れてまだ底が見えない、多分日頃から相当身体を動かしてないとこれだけの持久力はつかない……でもまぁその分戦い方は結構粗がある、出鼻を挫く形で初動を止める様に戦えばなんて事はない。

 

──この人、想像以上に巧い……身体能力(フィジカル)はホシノ先輩や私にも劣るけどその分技量で補ってる、障害物やその辺の物を駆使して確実に私の初動を抑えてくる、あのHG(ハンドガン)の威力はそこまでじゃないけど隙を見て確実に差し込んでくる、何度も喰らえば流石にキツい。

 

 身体能力を呪力で強化したゴリ押しで攻めるシロコをそれを実践経験からのらりくらりと躱し続けるカヨコという形で膠着状態が続いていた、そこに大きな爆発音が響く、ムツキがホシノに爆発物を投げつけた音だ。

 

──この爆発……ムツキか、呪力からしてC1って所かな、相変わらず派手にやる、あの子やっぱり今回の依頼の趣旨分かってないよね、まぁ相手は小鳥遊ホシノだろうから多分爆破した程度じゃ倒れないだろうけどこれは利用できる。

 

「今の聞こえた?凄い爆発だったでしょ?ウチの社員の子のムツキがやったんだけど、誰か犠牲になったのかな、ムツキの爆弾は特別製でね並の防御じゃまず防げない、もしかしたら既に一人片づいちゃったかもね」

 

「そんな、そんな事はない!絶対に──」

 

「甘いね、何もかもが」

 

 カヨコの言葉に反論する形でシロコが声を荒げるがそれを遮る様にカヨコが更に言葉を重ねる。

 

「仕事の関係で実戦の回数が多い私から言わせてもらうと、今のアンタに致命的に足りない物が一つある、分かる?」

 

「……」

 

()()()だよ」

 

 カヨコの言葉と共に発せられる威圧感にシロコは身を竦める、竦めてしまった。

 

「アンタもしかして、まだ自分達が負けないとでも思ってるんじゃないの?」

 

「そ、そんな、事は……」

 

「いいや、足りてないね、だからアビドスはここまで酷くなったんじゃないの?そして今も、危機感が足りてないから仲間が窮地に陥ってるんじゃないの?」

 

「それ、は……」

 

「『頑張ればなんとかなる』、『皆で力を合わせればなんとかなる』、それは立派だし誰にも咎められる事じゃない、現に今もアンタ達は連携する事を主体として動いてる、でも周りに味方が何人いようとさ──」

 

──()()()()()()()()()()

 

 息を呑む、所の話ではなかった、まるで直接見てきたかの様な──。

 

「今の所アンタ達アビドスの劣勢、このまま行くと負けるかもね、だけど……アンタが術式を使えば巻き返せるかもしれない、なんで使わないの?」

 

「なんで知って……いや、でも……ホシノ先輩が使うなって……」

 

「まぁ術式持ちは珍しいからね、こういう所だと希少性から大人から商品として狙われてもおかしくはないし行き場の無い孤児なら尚更、だけど今のアンタは違うでしょ?今の砂狼シロコには守りたい物・人があって自分はそれを実行できるだけの能力(ちから)がある、上の人の指示に従うのが悪いんじゃない、その結果自分を出さないのが駄目なの」

 

──その所為であの人達は……‼︎

 

「アンタはどっちなの?砂狼シロコ」

 

──私は……あの日あの場所でホシノ先輩とノノミに拾われる以前の記憶がない、知ってたのは名前だけ、ずっと寒かったのを覚えている。

 いや、もう一つだけ覚えてる事があった、それは私の側には()()()()()()()()()()()()()()、あの子達は偶に消えちゃうけど私が呼んだら出てきてくれる、私の家族みたいな物。

 ホシノ先輩にその事を伝えたらその力はあんまり見せびらかさない方が良いから使っちゃダメと言われて意識的に使わない様にした、自分以外にこの力を使える人はいなかったから。

 でも昨日マコラから呪術について詳しく教えて貰った際分かった、どうやらマコラも私と同じ様な能力(ちから)を持ってるみたいで他にも結構いるらしい。

 ……私はあの時にホシノ先輩に救われて、ノノミ達から温もりを貰って、セリカとアヤネみたいな後輩も出来た、だから……心のどこかで満足してたんだと思う。

 だけど──()()()()()()()()()、この人の言う通り、危機感がまるで足りてなかった、明日どうなるかもわからない状況で、のうのうと今在る状況を過ごしてた。

 

()()()()()()()()()

 

 もっと……もっと、もっともっともっともっと‼︎今出せる力を目一杯出さないと‼︎ホシノも‼︎ノノミも‼︎セリカも‼︎アヤネも‼︎何より私が大好きなアビドスを‼︎守れる訳が無い‼︎

 だから──ごめんねホシノ先輩、約束を破っちゃうけど。

 

 砂狼シロコには、とある術式が刻まれている、それは己が影を媒介とした式神術、手で影絵の掌印を構築する事で式神を顕現させるその術式の名は──。

 

「“()()”‼︎」

 

──絶対に、勝ってみせるから‼︎

 

()()()()()

 シロコの()から現れるは二匹の狼、色は白と黒、共に並々ならぬ呪力を放つ。

 

「なんだ、ちゃんと本気出せるんじゃん」

 

──さて、焚き付けたからにはこっちも本腰入れて戦わないとね、この子の術式は多分式神術が基礎搭載されてるタイプ、かなり良い物持ってるね羨ましい、感じれる呪力から結構強めかな、一度に出せる数と出しておける時間に注意だね。

 

 更に立て続けにシロコはもう一つの掌印──鳥の影絵を組む。

 

「そして──“”‼︎行って‼︎」

 

 顕現するは面を被り雷撃を携えた怪鳥、そんな異形がシロコの指示の元勢いよく飛び出す、向かう場所はホシノとムツキの場所だ。

 

「ありがとうカヨコ、色々教えてくれて、だから……ここからは本気で勝ちに行く」

 

「別に気にしなくてもいいよ、これ“も”仕事だからね、それに──」

 

 ──そして時間は現在にまで戻る。

 

 ムツキの爆破寸前で乱入する形となったセリカとハルカ、最早ムツキには爆破停止は不可能、かといってホシノは二人の突然の乱入による影響で『一手』遅れてしまっている、従って爆発物を遠くにやるのは不可能。

 しかしここに更なる乱入者たるシロコの式神、鵺が乱入する、鵺は即座にムツキの手にある爆弾を奪取しそれを空へ放り投げる……ご丁寧に烏が集中している場所に向けて。

 直後に大爆発が起こる、相当な呪力を込めていたのか爆破の衝撃は凄まじく、その衝撃によって微弱ではあるが大地が揺れた、流石に倒れるほどではないがそれでも振動は振動だ、なんとか倒れまいと踏ん張ろうとするのは人としての性質だろう。

 

 その状況を高みの見物を決め込み観戦していた今回の試合の発起人であるマコラは驚愕と満足を足して割った様な表情を浮かべていた。

 

──式神術……しかもありきたりな体の一部を触媒にしたら呪符を使う物じゃない、影を媒介にしていたな、誰かしらが術式を使えるとは思っていたがよもやシロコが最初に使うとはな、しかもよりによって──

 

「十種影法術か‼︎」

 

──()()()()を引き当ててやがった‼︎しかも見たところ鵺まで調伏が済んでやがる‼︎

 

「くくっ、良いね、最高だ」

 


 

──これは、こっちの誰の術式でもない、アビドス側の術式の物‼︎

 

──これって……シロコちゃんの動物‼︎使っちゃったのか‼︎

 

 急な乱入者()、大きな爆発、途切れる烏による視界確保、これらの要素は戦況を停止させるに至り──。

 

「〜〜‼︎この馬鹿ムツキ‼︎アナタまた自爆しようとしたわね⁉︎」

 

 事の事態を空から見ていた陸八魔アルが最前線に飛び出てきた事によって一気に終息へと向かっていった。

 

「──それに、そろそろ切り上げ時だから」

 

「……今まさにここから私達が巻き返す流れだったと思うんだけど」

 

「マコラが言ってたでしょ、この試合は互いの勝ち負けによって終息させれる物じゃないって、つまり終わり時はいつでも決めて良い、それにこれ以上続けたらどちらかに重症者が出始める、術式を使った戦闘ってそういう傾向になりがちだからね」

 

 何処か自嘲気味に笑うカヨコに毒気を抜かれたのかシロコも術式を解除しカヨコと共にホシノ達の元へと向かっていく。

 

「……ねぇ、さっき私に言ってた事なんだけど、あれってあなたの経験談なの?」

 

「さぁ、どうだろうね?って言いたいところだけど半分当たり、前に所属してた所は碌な所じゃなかったから、でも今は違う、アルに誘われて、ムツキとハルカと出会えて、私は誰かの言いなりになる人形じゃなくて私として生きる事にした、その方が楽しいからね、だからアンタもしっかりと“自分”を持って生きるんだよ、自分の人生は自分だけの物なんだから」

 

 カヨコとシロコはムツキに叱り続けてるアルとそれを宥めてるハルカ達や先生を見て眩しい物を見る様になりながらもしっかりと歩み続ける。

 

「そっか……ありがとう」

 

「あ……御礼ついでに一つ聞いて良い?」

 

「ん……どうかした?」

 

「この辺で美味しいご飯が食べれる所、知ってる?」

 

「ん、それならオススメのラーメン屋がある」

 

「いいね」

 

 シロコとカヨコ、二人は出会って数分足らずな関係だが、二人には確かな友情があった。




 決着ゥゥ───ッ‼︎

・マコラ
 まさかのシロコが術式持ちでしかも十種影法術で今日一番驚いた、本人は一番最初に使うのはホシノだと思ってたがカヨコが思った以上に働いた。

・先生
 跳弾を見て引き腰になりつつあったノノミに対して冷静に俯瞰しそんなことはないと宥めた、事実ノノミの弾丸では例の跳弾は出来ない。

・シロコ
 十種影法術を刻まれた生徒、玉犬を除いて調伏済みなのは鵺、蝦蟇、大蛇の三種因みに例のアレも居る。
 カヨコと仲良くなった。

・カヨコ
 仕事を100%中120%遂行した女、今試合のMVP。
 今回は使わなかったがカヨコは楽巖寺学長の様な音に関連する術式を持ち加えて術式反転も扱えるので周囲の音を聞き取る集音がある、これとアルの烏を組み合わせる事で便利屋は規格外の感知能力を手にした。
 本気でやるとマジの殺し合いとかになるのでやらなかったがアルの烏にムツキの爆弾による爆撃とカヨコの小型スピーカーを搭載させた音響攻撃で一方的に攻撃する事も出来た。
 因みに書きながら思ったがカヨコが死ぬ時は独り発言って重すぎやしねえかって作者は思った、多分作者には人の心が欠如している。

・ハルカ
 実は彼女は物を出し入れする術式を持っている、術式対象は生物以外の物、収納の際は物を収縮させて収納している、収納できる大きさに限りがあり、車一台分位なら軽いが、逆に言えばそれ以上のものはある一定の範囲の物質を収縮させて収納するので結構強い、そして出す場合は元の大きさに戻るのでかなりえぐい戦法が取れる。
 それ故にムツキの爆弾の材料やカヨコの術式に使う機材、あとは烏の餌とかがいっぱい入ってる。
 尚某黄金王宜しく射出することも出来るよ、すぐに呪力無いなるけど。

・ムツキ
 この後アルにバチボコに怒られた、なんならビンタされた。

・アル
 キレた理由は過去にムツキが自爆戦法を普通に取ってたから、依頼は遂行したいけど社員を犠牲にしたい訳じゃない、依頼は遂行する、部下も守る、両方やらないといけないってのが社長の辛いところね。
 カヨコの脳を焼いた女。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。