呪いの方陣は透き通る世界でも循環する   作:Another2

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先生の一人称が偶に俺になってるのは意図的にそうしてます。


学園都市キヴォトス ─弍─

 私はあの面談を終えて見事合格を勝ち取った、今はリンから職務内容の説明が終わった所だ、後は現地に向かうだけらしいのだがなんとシャーレの部室は此処から30キロも離れた位置にあるらしい、遠すぎる。

 というかそもそも……

 

“職員一名って少なすぎるってレベルじゃないでしょ、此処の事態を鑑みると理解できるけども”

 

「基本少数派(マイノリティ)だからな、アンタのような大人は」

 

 何やら話を終えたらしいマコラが姿を見せる。

 

「これから部室まで向かうが、少々参った事が起きててな……いやまぁサクッと片付けられる範囲ではあるんだが」

 

“それなら言い淀む──”

 

「見つけた‼︎やっと来ましたね‼︎連邦生徒会長‼︎」

 

 私の声を遮るように響いた声を聞いたマコラは露骨に顔を顰めた、付き合いはかなり短いが本人にとってはいいことではなさそうだ。

 

「あのなぁ……これを機にハッキリ言っておくが連邦生徒会長(その役職)は私に適した物じゃない、前任が帰ってくるまでの間に合わせが(わたし)なんだ、ちゃんと名前で呼んでくれよ」

 

 さっき自分で自分でも似合わないって言ってた辺り余程マコラの今の立場ってのは本人にとっては納得のいってないものらしい。

 

「それって結局今はあなたが頭って事でしょう……それと、隣の大人の方はどちらです?」

 

 まぁその意見も正しい、今の声を出した子が真ん中の濃い青色の髪の生徒で随分と気の強そうな子だ、この子もそうだけど他の三人も警戒が強いね、やっぱりマコラが言うようにキヴォトスでは大人という存在は警戒対象に入りやすいのかも知れない。

 

「まぁ落ち着け、各三大校の生徒が其々来た理由は大凡の検討はついてる……大方()()()()()()()()()()()()()()()()()()が多数確認されたって辺りだろう」

 

「えぇ、仰る通りです、幸い一体一体は大したことはありませんが、不調を訴える生徒も少なくありません」

 

「あぁ、そいつらは百害あって一利なしだ、見つけ次第殺せ」

 

「それからこの混乱に生じて連邦矯正局で停学中の生徒達が一部脱走したとの情報も入っています」

 

「流石に情報が漏れるのが早いな……裏で手引きしてる奴が居るだろうからそいつの情報の確保、脱走犯の再逮捕に関しては既にSRTを動かしてある、問題はない」

 

「それと、スケバンのような不良達がやけに活性化して動き始めています、まるで統率が取れているかのような感覚です、治安の維持が難しくなっています」

 

「間違いなく()()()()()が出ているな、手配の準備と見つけても交戦はしないように校内で伝えとけ、生半可な実力じゃ返り討ちに合うぞ」

 

 す、すごい……それぞれの発言に適した対処法を次々と……これで仮初のトップだって言うのか。

 

「それ等の問題を解決する為に連邦生徒会長(あの女)が寄越した人材がこの男だ、先ほど面談を終え人格はかなりの善性であると判断した、故にまず問題はない」

 

“なるほどね、そこで私に振るのか”

 

「……信用できるんですか?」

 

()()()()()()()

 

「キヴォトスではないところから来た方のようですが……先生だったのですね」

 

 滅茶苦茶疑心暗鬼じゃん、気持ちはわかるけどね、私も逆の立場ならおんなじ事になるだろうし。

 

「さて、自己紹介は……道中で勝手にやれ、時間が押してんだよ」

 

“適当か君は”

 

「気をつけてください先生、この人こういうところありますので……」

 

 負の信頼エグいな。

 

 道すがら四人の名前をそれぞれ聞き終えた。

 濃い青髪の子が早瀬(はやせ)ユウカ

 最初に入り口で出会った子(アユム)と同等かそれ以上の大きさの翼を生やした子が羽川(はねかわ)ハスミ

 白髪で灰色セーラーに身を包んだ子が守月(もりつき)スズミ

 尖った耳の眼鏡をかけた子が火宮(ひのみや)チナツ

 

 以上の四人が今回集まった生徒らしい、それぞれ学校も違くて各々がそれなりの役職についてるんだとか。

 

「さて先生、人格面はさっきの面談である程度理解した、なら次は能力面……要は実地試験みたいなもんだ、()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()、いいな?」

 

“私はいいけど……彼女達の意見は?”

 

「知らん」

 

“おい”

 

 あぁ、必死にリンが皆を宥めている、滅茶苦茶苦労かけてんじゃねーか、コイツさては超問題児だな?

 

“この子いつもこんなんなの?”

 

「はい……誠に残念ながら」

 

“うわぁ……”

 


 

 先生となったこの男にあの四人の指揮を任せてみたが思いの外よくやっている……本当に一般人だった人間か?呪力も術式も使わずに只々自前の能力で率の良い指揮を取っているところを見るにこりゃ才能だな、流石は連邦生徒会長(あの女)が選んだだけはある。

 

「何か言いたげだな、リン」

 

「あなたの目論見は大凡理解できます、ですが実地での動きを見るならSRTを動かしても良かったのでは?」

 

「一理ある……が、それじゃダメなんだよ、キヴォトスに存在する凡ゆる学校の自治区に出入り出来るだけの超法規的措置をもったシャーレ、その顧問となる先生は少なからず学校問わずあらゆる生徒の指揮を取るはずだ、お前も知っていると思うがゲヘナとトリニティは仲が悪い、そんな中で学校間の隔たりなく指揮能力を発揮できる奴は稀有な存在だ」

 

「……でしたら最早何も言いませんが、口の悪さだけはなんとかしてください」*1

 

 ふむ、ハスミとスズミ以外の二人はそこまで戦闘能力が高くなかったと記憶しているが、どうやら先生の指揮下に入ると格段と動きがよくなるようだ、その事はアイツら自身が一番よくわかっているだろう、恐らく先生の指揮下で戦闘を行うと120%の潜在能力(ポテンシャル)を引き出せるようだな、やられる側としてはたまった物じゃないな、これは本格的に鍛え上げたら相当の武器になる。

 

「くくっ、良い贈り物とはこの事か」

 

“かなり歩いた筈だけど、あとどれくらい?”

 

「もう数キロってとこだな、ほら、頑張れ頑張れ」

 

 存外ヘルメット団とスケバンの数が多いな、両者仲良く撃ち合ってる所を見るに同盟を組んだわけではなさそうだ、先導者は別々と見て良いんだろうが、片方は隠す気もないか……当然だな。

 

「おい、少し止まれ、押しつぶされるぞ」

 

“押しつぶされるって言われても、一体何に……‼︎”

 

 気付いたのか下がらせて衝撃に備えるように即座に指示を飛ばした先生の判断は素晴らしいと言えるだろう、何せ(わたし)達の視界の先にこちらに向けて落下途中の大型の物体が迫ってきているのだからモタモタしている暇は無い。

 一息つく暇も無く()()は落ちてきた。

 

「これは……クルセイダー1型……‼︎私の学園の正式戦車と同じ型です」

 

「不法に流通された物で間違いないと思うけど……なんで空から?」

 

“キヴォトスでも空から戦車が降ってくるのは非日常なのか……”

 

 どんな世紀末だよ、まぁ稀にあるが。

 

“それにしてもこんなデカいものが降ってきたのにも関わらずそれを発生させるだけの衝撃や爆発みたいな音はしなかったけど……見当は?”

 

 お、不測の事態でも頭は回ってるな、良い調子だ……とは言えだ幾ら先生の指揮がこいつらの潜在能力引き出せる類の物だとしても今のコイツらじゃアレの相手は荷が重いな。

 

「お初にお目にかかります、三大校の生徒、並びにキヴォトスの外からお越しになったという緒方」

 

 煙を押し除ける様に現れたその人物は──余りにも筋肉(マッスル)だった。

 

“あの子……相当の物だな”

 

「ふむ、流石に分かるか」

 

“あぁ……なんて見事なバルクなんだ、あんなの漫画とかでしか見たことないぞ”

 

「そこじゃねーだろお前」

 

「おや、随分と話がわかるお方がいらっしゃるのですね、私もこの子達を育て上げるのに苦労致しました……そして長期間の務所暮らしによって少々細くなってしまいまして、また育て直さなくてはなりません」

 

「いやぁ……特に変わってねえと思うが……」

 

“コレ、投げたの君?”

 

「えぇ、私の通り道に止まっており少々邪魔でしたので、えいっと」

 

 なんつー会話だこれは、(わたし)と先生以外ドン引きしてんじゃねーか、普通無理だからなこのサイズの物投げるのは。*2

 

「申し遅れました、私は栗浜(くりはま)アケミ、こう見えてスケバンをしておりますのよ」

 

 そりゃ見たらわかる。

 

“ご親切にどうも、私は透情蒼記、こう見えてキヴォトスの外からきた人間だよ”

 

 それも見たらわかる、何の話してんだこいつら。

 

「何か通じ合ってない?あの二人……」

 

「何かしらのフェロモンでも出ているのでしょうか?」

 

 若干否定しきれないの辞めろ。

 

「最初は乗り気ではありませんでしたがいざ出向いて見れば案外話せる人もいるのですね、それも大人の中に、ですが今の目的はあなたではありません、非常に残念ながら」

 

“そう?時間があるならいつでも話には乗るけどね”

 

「口説くな馬鹿タレ」

 

 こいついつか刺されんじゃねーのか。

 

「今回の目的はあなたの方です、マコラさん……リベンジマッチと行きましょうか」

 

 アケミが(わたし)の方を見て構えを取る、どうやら本気でやるらしい。

 

「今かよ」

 

「ええ、こう見えて私、負けず嫌いなもので」

 

「だ、そうだ……リン、案内と援護、先生このまま真っ直ぐ行けばシャーレの部室に到着する、気張れよ」

 

“君も、怪我しない様にね”

 

 ククッ、怪我しない様に……か、全く、誰に物言ってんだか。

 

「さて、私たちは二人きりでのらりくらりと遊びましょう?」

 

 アケミの呪力出力が大幅に向上した、おそらく術式も使ってんな、開幕から本気かよ。

 

「悪いけど、今忙しいんだ」

 

 対して(わたし)も戦闘態勢に入る……この手のタイプの相手は苦手なんだがな。

 


 

 マコラがアケミという生徒を引き受けた後もそれなりの数のスケバンとヘルメットを被った不良生徒を片付けながら前進していく。

 

“さっきの生徒さ、多分っていうか確信なんだけど滅茶苦茶強いよね?”

 

「それはもう……過去にヴァルキューレという警察組織にとって悪夢の様な事件がありまして……その事件によって出た被害は12台の警備車両、2台の戦車の全損、大多数の怪我人まで出ました」

 

“その犯人が、あの子ってことだね”

 

「仰る通りです、当時はそれ以上の被害を止めるためにマコラさんが直接出向いて本人が沈めたらしいですが……」

 

“んじゃあっちの心配は必要ないってわけね、寧ろここが一番やばい”

 

 建物の中からとんでもない気配がするんだよなぁ……

 

「それで到着したのはいいけれど、これ私たち中に入っていいの?」

 

「機密書類等の引き継ぎもありますから、ここからは先生と私の二人で入ることになります、皆さんにはその間の警護をお願いします」

 

 そう言ってリンが建物の中に入ろうとしたその時、リンの体が建物から弾かれた、というよりは侵入を拒まれたみたいな感じだな。

 

“大丈夫?”

 

「ええ……特になんとも、他の皆さんは……ダメの様ですね」

 

 全員この入り口に1ミリたりとて体を捩じ込むことが出来ない、試しに私が腕を伸ばしてみると……すんなりと腕は室内へと入った。

 

“あれ、入った……なんで?”

 

 その事実に生徒5人の顔が青褪める、どうやら相当にまずい状況ではあるらしい。

 

「どうやら、この建物には先生しか出入り出来ない結界が貼られているようです」

 

“結界ィ?んなファンタジー地味た物もあんのかこの世界、益々分からん”

 

 ただ今すべきことはなんとなく分かる、まぁ十中八九罠なんだろうし、誘われてるんだろうけども、行くしかねぇでしょ。

 

「ここはマコラさんが戻るまで待った方がいいのではないですか?」

 

“んにゃ、それじゃあ遅すぎるでしょ、中の奴がどんな奴かは知らないけど、こんな事件起こすくらいだし気は長くないんじゃない?”

 

「ですが……‼︎」

 

“まぁ大丈夫だって、なんとかなるでしょ、確信はないけどね、やばくなったら逃げてくるから”

 

 そう言い残し私は建物の中に入る、マコラが言うには前任の連邦生徒会長なる人物が残した物が地下に置かれているらしいが……いかんせん暗くて視界が悪いな……思うように進めたものじゃない。

 

「うーん……これが一体何なのか、全く分かりませんね、これでは壊そうにも……」

 

 おっと先駆者か、さてさて鬼が出るか蛇が出るか……

 

「……あら?」

 

“やあ、初めまして、何か……探し物?手伝おうか?”

 

 そこには和服を着た狐の面をつけた生徒が居た。

*1
言っても無駄でしょうけど。

*2
(わたし)は出来るけど。




【結界の内容】
・自身を除く凡ゆる存在の出入り不可(自身が外に出たら即座に解除される)

・先生は結界をすり抜けられます、天与の暴君や術式無効とはまた異なる理由です、強いて述べるならそう言う体質、決してワカモの腕が悪い訳じゃない、寧ろワカモは生徒全体でも上から数えた方が早いレベルの結界術に長けてます。

【超ザックリな説明】
この世界の攻撃力計算は基本的に足し算です。

素の身体能力+呪力強化=通常の生徒の身体能力

素の身体能力は本人の鍛錬で強化できますし身体強化に使う呪力(神秘)もある程度は鍛錬で融通効きますが基本的に出力面に関しては才能です、無論例外もあります。

そんな中でアケミは出力が高くかつ術式が身体能力を更に強化する物でその術式の効力も呪力出力で高い効果を発揮してるので…

素の身体能力+呪力強化+術式=アケミの身体能力です、ヤバい
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