・アビドス学校が抱えてたマンパワーと正式性の無さを一挙に解決した
新しく増えた元ヘルメット団の生徒達を迎え入れる準備は着々と進んでいっている、斯くいう俺も各々の名前を聞いてそれを名簿に移して行ったり、ノノミとアヤネなんかは制服のサイズを測る為に彼女達の採寸していた、ホシノは昼寝シロコは新人達への指導、セリカは……まだ馴染めないのか距離を取ってて何処かへ行ってしまった、それでもチラチラとこちらを見ていた辺り本当は分かってはいるんだろうけど。
“セリカってこの時間どこ行ってるかわかる?”
「多分アルバイトじゃないかな〜、大凡の場所も見当がついてるけど……行ってみる?」
“んー、本人が隠してるなら無理矢理明かそうとはしないかな、
「……ふーん」
まぁアルバイトなら勤務時間が終われば家に帰るだろうし、そこまで危険性はないよな、ここらのヘルメット団はこっちで吸収したし。
問題は……やっぱり砂漠化の進行だよなぁ、彼女達が言うには道路や建物も砂に変わって行ったって話だけども。
ホシノと同時に声が出た、ちょっと気まずい空気が流れる。
“あー……ホシノからで良いよ”
「うん、ごめんね?それでその……さ、正直な事聞くけどどうやってあの人に気に入られたの?」
“あの人ってのは……マコラのことだね?”
自分の発言にホシノは頷く、特に何かした覚えがないが。
「あの人さ、大がつくほどの大人嫌いなんだよ、本人もそれを隠す気無いし公言して憚らないけど」
“らしいね”
それでマコラから面談の事を聞いたらしいので取り敢えず面談の内容を包み隠さず話したんだけど……
「成程ね〜、じゃあさ、先生にとっては私達もその中に入るって事でいいのかな?」
“そうなるね”
「あ〜、これは確かにイカれてるね、あの人の言った通りじゃん、しかも有言実行してるしさ、疑ってたのがバカみたい」
“疑ってたって、誰が、誰を?”
「私が、先生を疑ってたんだよ、ほら……言っちゃ悪いけど先生ってさ……」
“わかる、私も君達の立場なら間違いなく疑うよ”
初対面の人間を信用しろってのはまぁまず無理だし、それが大人なら尚更、別に最初から信頼して欲しかったわけじゃないしそんなのは不可能だとわかってる。
「それで先生、何か聞きたいことあったんじゃないの?」
“ん?そういえばそうだった”
「一応言っとくけど砂漠化の事については私わかんないからね?」
“……もしかして顔に出てた?”
「おもいっきり顔に書いてたよ【砂漠化の事が知りたい】って」
“え⁉︎嘘ぉ⁉︎”
つい手鏡で自分の顔を見るけど当然そんな事書いてあるはずもない。
「砂漠化の進行はこれまでも何度かあったけど比較的緩やかな物だったよ、それも砂嵐で巻き上げられた砂が降り積もって建物が砂に沈むって感じ、今回のあの子たちみたいな道路や建物が砂になるって事態はちょっと初めてかな」
“なるほど、詳しくはマコラに問い詰めた方が良さそうだね”
「私も同意見かな、あの人は隠してる事が多すぎるからね」
生徒にも隠し事が多いのかアイツ。
日も暮れて、時間的には夜になったと言える街中にて、黒見セリカは何かから逃亡するように駆け抜ける。
「あぁもうっ、なんっなのよ!
息も絶え絶えになりながらもそれでも足は止まらない、止めてはならない、自分の背後から今も尚迫り来る
──なんなのあの化け物‼︎昨日まではあんなの居なかったのに‼︎
「いまなンじですかあ」
「ま゛ まっテえいが、ないでえ」
「うるっさい!待つわけないでしょ‼︎」
──ただでさえバイト上がりで疲れてんのに‼︎弾丸は通るけど数が多い‼︎間違いなく殲滅するより先に弾が尽きる‼︎どうしたら……‼︎
「よお、元気いっぱいだな、後ろの連れも元気そうじゃないか」
「な、アンタは……‼︎」
逃げるセリカに突如声を掛けたのは神将マコラ、夜中だというのに彼女の白さは陰る事なく暗闇の中でも浮いてみえる。
「コイツらの存在は可能な限り伏せておきたかったんだが、巻き込まれたなら仕方ないな、とはいえ夜中に出歩くものでもないぞ?夜はコイツらの時間だ」
マコラはそう言い恐れることなく異形の方へ、まるで散歩にでも出かけるかのように軽い足取りで向かっていく。
「ちょっとアンタ危ないわよ‼︎ソイツら普通じゃ……‼︎」
「いいからよく見てろ、お前が一番乗りだ、覚えとけよセリカ……コイツらみたいな
言い終わるより先に異形に拳を当てその衝撃で異形の群れが弾ける、その拍子に異形の肉片が煙となり消失し、遂には完全に消滅した。
「……色々聞きたいことあるけど、先にお礼だけ言っとくわ、ありがとう」
「やって当然の事をしただけだ、礼を言われる筋合いはない」
「あぁもう!お礼くらい素直に受け取りなさいよ!それから!さっきの化け物達のこととそれを倒した力について教えてもらうからね⁉︎」
「あーあー、分かってるよ、ったく夜中だってのに騒がしい奴だ」
翌日、俺たちは特に何事もなく初日を終えて夜を開けれた、がセリカはそうではなかったようで登校するや否やマコラに詰め寄っている。
……その件のマコラは露知らない顔でやり過ごしている、後その手持ちの袋はなんだ、中からガタガタ音がしてるが。
「さあ‼︎昨日のアレについて説明してもらうわよ!」
「……話さねばならん様だな、だがこれは裏の……要はドス黒い話になる、聞きたくない奴はこの部屋を出てくれ、要らん恐怖を焚き付けたくない」
言葉こそアレだがこれは彼女なりの優しさ、なのだろう、それでも新入生含めこの場に部屋を出る生徒は誰一人いなかった。
「……覚悟あり、か」
「うん、全部教えてくれる?今このアビドスで……いいや、キヴォトス全域で何が起きてるのか」
「……今このキヴォトスに於いて度々発生する怪奇事件、生徒の失踪や行方不明、重軽問わずの負傷者や具合の悪い者の発生、それらを総合すると被害者の数は10000人に届こうとしている、その殆どが人間から流れ出た負の感情、呪いによる被害だ、尤も中には悪質な呪詛師による
“呪い……”
「そう、そしてその呪いってのは学校や病院、大勢の思い出に残る場所には呪いが吹き溜まりやすい、辛酸・後悔・恥辱、人間が記憶を反芻する度にその感情の受け皿になるからだ」
「今回の場合はアビドス自治区って事?」
「そうなるな、街規模になるとその分受け皿も大きくなり、呪いが発生しやすくなる、勿論対策は施してたんだがここ数ヶ月で呪いのレベルが急上昇して効力が弱まってると見ていい、アビドスの砂漠化が急激に進行しだしたのもそれが原因と
「じゃあ私が昨晩見たのは……」
「あれは呪いが具現化して意思を持った存在だと思えばいい、生き物みたいな形をしてるが厳密には生き物ですらない、無理矢理種族名をつけるとしたら、
そう言ってマコラが袋を開き中に入れてあったソレを皆に見せる、中にいたのは何とも言えない姿をした羽を生やした異形だった、これが呪霊か。
「コイツは
「こんなふうにな」とマコラは指先に力を込めてデコピンをすると呪霊はザフって音を立てて消滅した、おそらく指先に呪いを込めたのだろう。
「今見せた様に呪いの力、要は“呪力”を用いて“呪術”を扱い呪いに対抗する、そんな奴を“
“なるほどね、毒を持って毒を制すってわけ”
「そうとも言うな、それで主に対処する呪い……呪霊に関してだがこれもかなり複雑だ、大まかに四種確認されてる、まずは……
・通常の呪霊、これは実在する現象に対しての負の感情が呪いと化した物で一番オーソドックスと言っていい。
・特定疾病呪霊、コイツは通常の呪霊の中でも特に病等への負の感情が呪いに転じた物だ、風邪とか花粉症とかな。
・怨霊、コイツは人間が死後呪いに転じた物、恐らく通常の人間が思い描く呪いや幽霊の類はこれに該当するケースが多い。
・仮想怨霊、実在しない物に対しての負の感情が呪いになった物、有名な怪談や妖怪が呪いになったらこれに該当する、代表例で言うなら……トイレの花子さんとか、九尾の狐とかな。
「……要は人間が恐れる物が呪いとして顕現するケースが多いってわけだ、ねぇ、もしかしてだけどさ」
ホシノが何か思案した様に発言するがマコラが手で制して待ったをかける、人間が特定の事象に対して向ける負の感情が呪いに転じたという言葉が正しいのならおそらく自分とホシノは多分同じ事を考えに行き着く筈だ、そして恐らくそれは当たったのだろう。
「やはり気づいたな、そう……特定の事象に対しての負の感情が呪いとしての姿を得たのが呪霊……なら最も人間が恐れた事象は何か?病?妖怪?違うな、それらは確かに恐ろしくはあるがどれも対策したりそもそも実在してないものが殆どだ、
マコラのその発言がトドメになったのか、この部屋にいる全員がマコラが言わんとしていることを理解した、否、理解させられたのだ、最も強大な呪いとは何か?その解答に辿り着いた、辿り着いてしまった。
「
自然由来の呪霊……それは正しく災害だ、マコラが言った通り人間はそれ等の力強さを十分過ぎるほどに理解している、大地が齎す地震による広範囲の被害、植物や木々がコンクリート製の建物を締め潰したという事例も確認されている、海なんかは特に顕著だ、大海の底に何が居るのか、存在するのかさえ人類は知らない、自然ってのはそういう事に等しい。
「過去に一体、自然由来の呪霊を祓ったがな、文字通りの自然災害その物だった、単純な強さとして言うならセリカ、お前が昨晩出会った呪霊よりどれだけ甘く見積もっても数十倍は強い」
“因みにどんな奴だったのそいつは”
「寒波や氷結の呪霊」
“納得”
「要はそれに近しい強さの奴が此処に居るって事で良いんだよね?」
「あぁ、急激に加速した砂漠化の影響はまず間違いなく呪霊の仕業と見ていい、しかもまず間違いなく自然由来で発生した呪霊だ、砂漠呪霊とでも呼ぼうか、ソイツを祓わないと砂漠化は止まらん」
「それで?どうするの?」
「……呪いと戦う覚悟、つまりは術師になるって事で良いんだな?」
「うん」
即答したのはシロコだ、無論他の子達もその心構えだろう。
「最後の警告だ、呪いの現場に迎えば凄惨な物を見ることも少なくない、呪いに関わった奴の死体が原型を留めてたら御の字で大半がグチャグチャになってたり呪いの苗床になってたりするのが殆どだ、死体が残ってない時もある、それでもやるか?」
「……私達が呪いを祓えば被害に遭う人は減るの?それこそさっき言った砂漠の呪霊とか」
「勿論」
「正直言って死にたくはありません、ですが呪いの実情を知って尚知らないフリをしていつも通りに暮らすなんて事は私には無理です」
「他も同じ気持ちか?今ならまだ引き返せるが」
「こっちはもう被害受けてんのよ‼︎無関係じゃないって事‼︎さっさと呪いと戦う手段を教えなさいよ‼︎」
「まぁまぁセリカちゃんそう怒らずに⭐︎この人も本心から心配してくださってるんですから、それでも私も気持ちは一緒ですけどね♪」
シロコを初め4人の意思は硬い様でどうやら本格的に術師として強くなるらしい、残るはホシノだけだけど、彼女はずっと何か思案している。
「会長さんさ、さっき言ったよね、呪いに襲われたなら死体が残る方が珍しいって」
「確かにそう言ったな、それがどうかしたか?」
「いいや、ちょっとばかり、やる気が出たってだけだよ、どうやらその件の呪霊と私は全くの無関係って訳じゃなさそうだし」
「成程ね、やる気があるのは結構、とはいえ今のお前達じゃ真面目に歯が立たんからな、だからお前達に教えてやるよ、呪いに対抗する為の手段、
マコラがニヤリと笑い席を立つ、これから彼女達に呪術の伝授を行うらしい。
因みに元ヘルメット団の皆さんは呪いへの恐怖等で心がやられてますので対呪いに対しての戦闘は参加できませんが呪いを観測する、原作で言う窓の役割を担ってくれるそうです。
・マコラ
本編スタート前に寒波の自然呪霊を祓ってる、等級は勿論特級で某赤冬に居た所をやった。
・先生
解説回なのもあって割と空気、次回お前はかなり活躍するぞ
・セリカ初めアビドス勢
呪いと戦う覚悟を決めた、でもまだ呪術を扱えないので要修行、ホシノが何やら砂漠呪霊と因縁がある様で…?