それ故に今回のアビドスの生徒宜しく呪いへの対処を知らない生徒も多数います。
スオウ、それが彼女の名前でマコラが俺に会わせたかった生徒なのだろう、しかし……なんだ、この違和感は。
この子は確かに目の前に居る、それは実感出来る、なのに
希薄だとかそんなレベルじゃ無い、丁度人間一人分の空白がそこにあるかの様な感じだ、それが俺が
だが肌で感じ取れるこの子の気配はさっきと真逆、圧倒的な力の化身とでも言えば良いのか、小動物から見た獅子や熊、或いはそれ以上の戦力差だ。
強大な力を発する圧倒的な存在感を誇る透明な存在の生物という明らかな矛盾、明らかな異質、その理由を俺は僅かながらだが観て理解させられた。
この子、
「さて先生、アンタにはコイツはどう見える?」
“……正直ここの生徒の事とか呪術云々ってのはまだよく分かってないけど、確信をもって言える、この子滅茶苦茶強いだろ”
「分かるのか」
“なんつうか、そこに居るのに居ないって感じ、その癖存在感がとんでもない感覚に近いのかな”
「成程な、
“居ないって……マコラでも勝てないの?”
「呪力無しだとまず無理、呪力使ってギリ五分で術式を解放して漸く安定して勝ち切れるってとこだ」
「逆に言うならそこまでのハンデを貰わないと私は勝てないという意味でもあるがな、まぁ大方事実だ」
足し引きの概念や等価交換の法則に近いのか、何かを差し出す代わりに何かを得る、それがスオウに関しては全ての呪力を差し出して規格外の肉体を得たという事か。
「それで?何故その男を私の前に連れて来た、早く要件を言え、この後の依頼が詰まってる」
「ん?あぁ、一応の為の保険だよ、最近呪いの動きが活性化してきてる。どうもきな臭いんだよな、そこでもし
「……必要とは思えんがな」
「だから保険だよ、
「信用できるのか?その大人は」
「そこは問題ない、“縛り”を結んでも良いんだがお前は“縛り”が効かんからな……」
「……はぁ、まぁいい、だがそれなりに見返りは貰うぞ」
「契約成立だな、幾ら位欲しいんだ」
「金は要らん、間に合ってるからな、代わりにお前が持つ“特級呪具”を一つ私に寄越せ、それが見返りだ」
「またかよ、前に“游雲”やったろ、まだ欲しいんか」
「手札は多い方が良いからな」
「ったく、随分とがめつく様になったもんだ、誰に似たんだか……まぁ良い特級呪具一品、確かに手配するが性能に対しての文句は受け付けんからな」
「よしっ」
なんか凄え取引を見た気がする、そもそも呪具ってなんだろうね、呪いの藁人形と五寸釘のセットとかなんだろうか。
話に一段落付け終わったのか俺たちは帰路に着いていた、その際にマコラによってスオウとの連絡先を勝手に登録させられ本人は顰めっ面をしていた、俺と連絡先を交換するのが嫌というわけではなく勝手に登録された事が気に触れたらしい、コイツ何処でもこんな感じか。
“そう言えば明日マコラが用意した相手と皆が戦うって言ってたけどその相手ってもしかして彼女?”
「ん?全く違う、今のあいつらじゃあスオウにはまず勝てんし、何より術式を使う相手の厄介さを知ってもらうにはスオウは真逆だ」
“つまりその相手は術式を使えるのか”
「まぁそれなりの相手を用意したから、気張って指揮を取るといい、割と勝てるかどうかはアンタの腕に掛かってる所あるぞ」
“……思ってたけどさ、君難易度上げるの好きだよな”
さてと、鬼が出るか蛇が出るか……分かってるのは生半可な実力では無い相手を起用しているんだろうなということだけだ。
翌日、学校に出向いてみればすでに戦闘準備バッチリの皆が揃っていた、マコラはまだ居ない。
“全員準備バッチリだね”
「まぁね、所で会長さんは何処にいるの?」
“仕事じゃない?アレで結構忙しそうだし”
「事実忙しいんだよ、仮にも組織の頭なんだから」
いつの間にか居たマコラに関しては最早何も言わない、コイツはそんな奴だ。
「先方の準備に少し時間が掛かっててな、万全を期したかったらしい、いやはや何事にも拘りってのは大事な物だ」
そう言うといつのまにか校門の方に四人の生徒が居た、彼女達の姿を認識した元ヘルメット団の生徒達が少々ざわめき始めた、彼女達は結構知られてる存在らしい。
こういう時この子達って便利だな、相手がどういう存在なのか判断しやすい。
“知ってるの?”
「は、はい、アイツらは便利屋68……‼︎四人という少数でありながらかなりの実力を誇る企業で、今まで敵対してきた組織を悉く返り討ちにしてきたんだとか」
ほう、それは凄いな、確かに風格はバッチリだ、特にあの赤い髪の子、肩コートに狙撃銃を携え、肩に烏を乗せている、正直凄くカッコ良い、良い趣味してるじゃねえの。
「紹介の手間が省けて良かったわ、貴方達が今回の依頼のアビドス……よね?」
「そうだけど……その便利屋さんがウチに何の用なのさ」
「……マコラから何も聞いてないの?」
「……連邦生徒会長さん?」
「あぁ、そいつらが先日言ったお前達の実戦相手だ、相手が相手なだけにそれなりに銭は掛かったがな」
マコラが雇ったのか、昨日のスオウの時もそうだったけどマコラの金銭面での収入ってどこから来てんだろ、連邦生徒会の金銭を使ってる訳じゃ無さそうだし。
“ホシノ、どう見る?”
「うーん……あの子達かなり強いよね、こりゃ本気でやらないと駄目そう」
「お互い確認したな?なら5分後試合開始だ、ルールは最悪殺さなかったらそれで良い」
“適当かお前”
「実戦だとルール無用なんだからまだマシだろ」
それでまぁ……どうすっかな、事前の情報によれば彼女達は全員術式を使えるらしい、正直術式がどういう物かすら分かってないけども、というか使える奴って限られてるんじゃないのか。
それにあの赤髪の子の肩に乗ってた烏、あの子と同じ呪力が漲ってた、烏型の式神か?式神がどうとかマコラも言ってたし。
「やっほー、初めましてだよね?今日は宜しくー!」
うお、元気な子がやって来た、距離感バグってんのかな、然もこの子アレだ、電車に乗ってたあの双子と同じ雰囲気を感じる、さては愉快犯だなオメー。
「げ、アンタ今から戦うんでしょ‼︎何馴れ馴れしくこっち来てんのよ‼︎」
「え?だって今から戦うからじゃん、戦いは戦いでそれはそれ、戦い終わった後も考えたら今からお互いの事知ってた方がいいよね?」
猫の威嚇みたいに牽制するセリカに対してお構いなしにグイグイと来る、しかし次の瞬間その後ろから伸びてきた手に引っ張られて止められた。
「ムツキ、油売ってないで早くこっちきて、ごめんねこの子案外こういう所あるから……私は鬼方カヨコ、今は名前だけしか明かせないけど、全部終わったら教えるからそれまで待ってね」
「あぁ〜カヨコっちってば引っ張らないでよぉ〜‼︎私自分の足で歩けるからさ〜‼︎」
「うるさい、どうせまた絡みに行くつもりでしょ、終わった後好きなだけ話せば良いんだから今は我慢して」
「Boo‼︎」
鬼方カヨコと……ムツキ、ね。
ムツキって子は結局引っ張られる事を選んだようで引っ張られながらカヨコって子にブーイングを飛ばしてる、あ、投げられた、仲良しかアイツら。
ん、次は赤い髪の子と紫がかった黒い髪の子がきた。
「さっきはムツキがごめんなさいね、私は陸八魔アル、便利屋68の社長をやっているわ、そしてこの子が伊草ハルカよ、これ、ウチの名刺だから何かあったらウチに依頼をしてくれてもいいのよ」
“おお、これはこれはご丁寧にどうも”
凄くしっかりとした生徒じゃない、社会人スキルの名刺交換をまさか早々にやる事になるとはこの俺の目を持ってしても見抜けなかった、ならばこちらも名刺を返さなくては無礼という物だ。
──ふふふ、決まったわ‼︎
「とか考えてるんだろうね、あれ」
「ほんと分かりやすいよねアルちゃん、自分が考えた通りの登場の仕方出来たし絶好調なんだよ」
「今回は戦いという形での出会いだけれど、お互いベストを尽くす戦いにしましょう」
“うん、こちらこそ宜しく”
バサリとコートを翻し彼方に戻っていくアルとペコリと礼をしてアルについているハルカ、もしかしてこの子達あんま悪い子じゃねーのかな。
「アレでもゲヘナに於ける総合戦力No.2だぞ、生徒会を抑えてな」
“滅茶苦茶つええじゃねーか、因みに一位は?”
「ぶっちぎりで風紀委員会だな」
五分経った、直に試合が始まる、相手は今まで出会ってきた不良達とは訳が違う、かなりの修羅場を潜り抜けて来た生徒達、しかし修羅場を潜り抜けてきたのは向こうだけじゃない、アビドスの皆も今日までかなりの戦闘を繰り返してきてる、決して劣る事はないはずだ。
『先生、準備はいいな?改めて言うが今回の試合は勝ち負けは大した問題ではない、今回はコイツらがどれだけ動けるか、呪術について学ぶ事が本筋だ、そこんとこ頼むぜ』
インカムから通信が入る、俺はそうでもこの子達勝つ気満々なんだよなぁ……空回らないと良いけど。
とかなんとか考えてるうちに開始の合図が上がった、アヤネが索敵兼俯瞰視点のドローンを展開する、これで向こうの動きは筒抜けになる。
その瞬間だった、向こうから飛んで来たのは無数の烏、このタイミング、偶然じゃねえよな、その証拠にあの烏全てに
おいおいマジか、俺の予想が正しけりゃアレが全部、アルの支配下って事じゃねえか‼︎
烏を自在に操る、それがアルの使う術式か‼︎
「さぁ、サクサクと進めるわよ」
空から視点を確保するのは間違いじゃない、でも相手がそれの上を行った。
因みに行っておきますと、スオウが強請った特級呪具は基本的に億単位の値段が付きます、游雲は5億。
・マコラ
特級呪具と引き換えにスオウを此方側に引き込んだ、基本使わんだけで呪具の蒐集に余念がない。
・先生
便利屋と戦う事になった、アルがやってた登場の仕方は物凄くかっこいいと思っている。
・スオウ
隠す気がなかった天与呪縛のフィジカルギフテッド、その中でも更に希少な呪力ゼロの体質、従って天与の暴君。
・アビドス勢
原作と違い柴関で便利屋と出会ってないので正真正銘初対面、錠はとっくに外してる、出会った時から比べて1割増しで強くなった才能あふれる生徒達。
・便利屋68
旧作から一新して全員が術式持ちになった、お陰で滅茶苦茶強くなった、本編にも書いてある様にアルが黒鳥操術、狙撃手に高性能の観測術式を与えるという暴挙、これの恐ろしさは次元大介の墓標を見た方が早い、まだまだ強みはある。
因みにアルは先生のロングコート+黒サングラスをかっこいいと思っている。