作中で徐々に明かしていくつもりです。
原作とあまり変わらない部分はダイジェスト気味に飛ばしていきます。
結末は一応決まっているので、途中で力尽きたとしても、最低限話は締めくくるようにはしたいと思っています。
「そろそろ100年に一度の揺り戻しの時期だな」
スレイン法国、その最奥部で、神と崇められる存在であるスルシャーナに一人の女が話しかける。
「そうだね。次はどんなプレイヤーが現れるのか。仲良くできそうな相手だといいんだけど」
スルシャーナ、骸骨の見た目をした生物。種族オーバーロードである彼は語りかけてきた女、自らの妻に対して答えた。
「我とお前、そしてこの国に仇なすものでなければどうでもよい」
「君は相変わらずだね。まあ、そういうドライなところも最近は好きかな。どちらかというと情熱的な所の方が好きだけど」
冷めた口調で語る女に対し、口説くような言葉をかけるスルシャーナ。その言葉に女は少し顔を赤らめた。
「また、お前は、そういうことを……」
「まあそれはおいといて八欲王のような相手でなければいいんだけど」
「そうだな。我も大分力を取り戻したとはいえ、嘗てには届かぬ。破滅の竜王、混沌の竜王とやらの復活も予言されておるし、厄介なことになるかもしれん」
「君だけを戦わせたりはしないよ。僕も戦う」
緊張の混じった言葉を吐く女に対し、スルシャーナが宣言する。そんな彼を女は愛おしそうに抱きしめた。
「無理はするな。今のお前ではカンストプレイヤーには勝てぬのだろう? 我はお前を失いたくない。危険な場所になど二度と出させぬ」
「うっ、でも、俺だって男だからね。妻だけを戦わせる訳にはいかないよ」
「その気持ちだけで十分だ。それに我も一人で戦うつもりはない。最近は”我が子”の中にもなかなか頼りがいのある者達が育ってきたしな」
「我が子か。君はそのフレーズが好きだね。確かにこの国とそこに住む人達は俺たちの子供みたいなものだけど。でも、彼女達を戦わせて俺を戦わせないのは矛盾してない? 一応、この国では俺は君の次に強いんだけど?」
夫を安全な場所に置いて子供を共闘させるというのも変な話である。それに対し女は平然とした調子で答えた。
「獅子は我が子をというであろう? 甘やかすだけでは子は育たぬ。子の自発は尊重せねばな。それにお前にも何もするなとは言っていない。後方で支援に徹するだけでも十分、力になれるであろう?」
「まあ、僕はこの国では最強の魔法詠唱者だし、それが適切な配置なのかもしれないけど……」
なんていうか男の立場が、そんなことを呟くスルシャーナ。
そんな彼を女は微笑ましく見る。
「さて、こんな話も杞憂で終われば良いがな」
女は呟く。彼女の名はクズハ、嘗て異世界にて『白面の者』と呼ばれた存在が転生した存在であった。
「む、これは」
モモンガが呟く。
彼はクズハが懸念したプレイヤーであった。ユグドラシルというゲームの世界からそのアバターごと異世界へと呼び出されたのである。
そして彼はスルシャーナと同じく、オーバーロードであった。
突如異世界へと来てしまった彼は情報収集のために、
「ふむ」
モモンガはそれを見て違和感に気付く。人が殺されているにもかかわらず、何の動揺も感じていないのだ。
自分の人間性が失われつつあることに気付くモモンガ。しかしそれに気付いたところで、どうこうしようとは考えなかった。
(助ける理由も無いし、無駄にリスクをおかす必要は無いよな)
だがそこで彼は自分の背後で何かを言いたそうにしている者が居ることに気付いた。それは異世界転移をしてから自我を持つようになったNPC、セバス・チャンだった。
彼の口から「誰かが困っていたら助けるのは当たり前」という嘗ての仲間の言葉を聞いたモモンガは決意する。
「救援に向かう」
そしてモモンガは装備を整え、最後に仮面で骸骨の素顔を隠すのだった。
転移魔法を使い、NPCのアルベドを伴って魔物の襲撃をうけている村へと降り立ったモモンガ。同時に今まさに幼い少女達の命を散らそうとしているトロールに向かって攻撃を仕掛けた。
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モモンガの放った魔法がトロールの心臓を打ち砕く。心臓を失ったトロールは絶命し、その場に倒れた。
「ふむ、呆気無いな」
ユグドラシルでは即死耐性によって、一時的なスタンにしかならないことが多い魔法で簡単に相手を倒せたことに、異世界では最悪自分達を遥かに上回る強敵がいるかもしれないと警戒をしていたモモンガは拍子抜けを感じる。
(まあ、トロルなんてユグドラシルでも雑魚だしな)
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相手の強さを見定めるために、別のトロールに向けてランクを下げた魔法を放つ。しかしその一撃でも十分な威力があったようだった。受けたトロールは絶命、この場の敵を全て片づける。
その結果を見て、この辺はゲーム序盤で降り立つレベルの低いエリアなのかもしれないと考えるモモンガ。そして少女たちに両親も助けて欲しいと願われた彼はデス・ナイト2体を召喚し、他のトロルの掃討を命じた。
そして情報を集めるため、2人の少女、エンリとネムから話を聞くことにする。
「お前たちの両親は私の召喚したアンデッドたちに助けさせる。未だ無事ならば……だがな。私も向かうが、その前に少しだけ聞きたい。この辺りは先程のような魔物がよく出るのか?」
「い、いえ、この辺りは『森の賢王』と呼ばれる魔物が縄張りにしていることもあって、普段は平穏なんです」
「なるほどな……」
(ブルー・プラネットさんが言っていた生態系の乱れという奴か? あるいは誰かが意図的に起こしたMPKの可能性も……)
姉妹の内の姉の方、エンリの答えを聞いて、モモンガは自然科学に詳しいギルドメンバーの話を思い出す。同時にゲーム内での経験も思い出し、そのどちらかの可能性が高いのではないかと予想した。
(予想通りに低レベルのエリアならデス・ナイトでも十分だと思うが、現状が異常自体の真っ只中であるというのならもっと強い魔物が出てくる可能性もある。そうでなくても、場違いに強い魔物とかユグドラシルではよくあることだったしな。あのクソ運営め……)
何度も喰らったデスペナのことを思い出し運営に悪態をつくモモンガ。
そして宣言した通りにデス・ナイトの様子を見に行った彼はそこで懸念通りの光景を目撃することとなった。
「ぐぅおおおおおおお!!!」
2.3メートルのデス・ナイトが、それを一回り上回る巨体のウォー・トロールによって叩きつぶされる。デス・ナイトはどんな攻撃を受けても1回だけHP1で耐えきる能力があるが、追撃の踏みつぶしにより消滅をした。
そこで他のトロルを掃討した別のデス・ナイトが駆け付けるがトロールの棍棒によって跳ね飛ばされる。
(ふむ、レベル40といった所か)
その光景を見て、相手の強さを推察するモモンガ。
レベル35のデス・ナイトよりは強いが圧倒的という程でも無かったのでその程度だろうと判断する。
巨体トロールの強さは、この地に住む者達にとっては絶望的なものであったが、レベル100のモモンガにとってはゴミであった。
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彼の放った第7位階魔法によって巨体トロールの立っていた所に天空めがけて火柱が吹きあがる。その一撃によって跡形もなく焼き尽くされる。その後、ボスを失った他のトロールたちはパニックに陥り、一斉に逃走をしようとし出した。
「偉大なる御方に牙を向けて許されると思って?」
しかし逃げるよりも早くアルベドによって殲滅され、1体とて無事に逃れることはできなかった。
「本当にありがとうございました!!」
トロールの清掃が終わった後、救った村、カルネ村の村長に感謝をされるモモンガ。そこで彼は報酬としてこの世界の情報を得ようとした。
しかしそこで新たに近づいてくる者達がいた。
「モモンガ様、鎧を着た集団がこちらに近づいてきているとのことです」
周囲に警戒を配っていたNPCの報告をアルベドが伝える。その言葉でモモンガは緊張する。魔物は大したことがなかったが、人間の強さは未知数だ。一般人である村人たちはレベル5にも満たないようだったが、本職の戦士となれば同列には語れない。
「どうしますか?」
「まずは様子を見よう。いきなり攻撃をしかけてくるようなら、こちらも援軍を呼び出せるように整えておいてくれ。しかし向こうに対話の意志があるのならば、私が直接話してみる。ただしその場合にはいつでも撤退できるようにしておく。我々はまだこの世界について無知過ぎるからな。警戒は必要だ」
怯えていると取られないように、なるべく威厳のある言い方で指示をするモモンガ。アルベドは言われた通りの備えをする。
そして集団が村に辿り着いた。
「魔物が周辺の集落を襲っていると聞き、駆け付けたのだが……」
現れたのは王国戦士長であるガゼフ・ストロノーフとその部下達だった。彼らは村人の口から、モモンガたちがトロールを討伐したことを聞く。
その話を聞いたガゼフは驚き、そして感謝を示した。
「国民を救っていただき、感謝する」
「いえいえ、困った人を助けるのは当たり前ですから」
地位のある人物にもかかわらず、素性の知れない自分に他人のために頭を下げられるガゼフにモモンガは内心で驚嘆する。
「ところで、あの魔物は」
「ああ、私が召喚したんですよ」
1体残り、村の復興の手伝いをさせていたデス・ナイトに視線をやるガゼフ。
「手合わせをさせていただけませんか? この周辺に現れたという魔物はかなり強力な魔物と聞いています。その魔物を倒したあなたの実力を見てみたい」
「それは……私と試合をするということですか?」
「いえ、あなたが召喚したという魔物で結構」
緊張と警戒の混じった問いかけをしたモモンガに対し、ガゼフはデス・ナイトを指名する。それにほっとし、相手の提案を受けてもよいか考えた。
(デス・ナイトと戦ってもらうだけなら、特にデメリットは無いよな?寧ろこの世界の人間の実力を把握するいい機会か)
「いいでしょう」
ガゼフの申し出を受けるモモンガ。そして手合わせの結果はデス・ナイトの勝利だった。
「私の負けです。このような魔物を召喚するあなたの力は王国で比肩するものはいないでしょう。もしよければ国に仕官しませんか?」
「いやいや、そういうのは性に合わないので」
(おいおいデスナイトを召喚できる程度で比肩するものがいないのかよ)
デス・ナイトに負けた戦士長。そして彼の言葉、それ等の情報から魔物だけでなく、人間も弱いかもしれないと考え呆れた感情を覚えるモモンガ。
(でも、他の国にはもっと強いのも居るかもしれないし、油断は禁物だな)
気が緩みそうになるが、油断は禁物と自分を戒める。しかしそこでまた新たな集団の接近が告げられるのだった。