白面inオーバーロード   作:史上最弱の弟子

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オーバーロードwikiの閉鎖が痛い。
特に魔法やスキルを調べるのが辛い。
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9話

「姿が変わった所で無駄でありんす」

 

 ユグドラシルでは姿を変形させる存在は珍しくない。シャルティアにもデミウルゴスにも本性と呼べる別の姿が存在するし、そうなることによって戦闘力も変わる。

 しかしその変化によるパワーアップはレベルにして10未満の変化。ユグドラシルの基準と同じように考えたシャルティアはクレマンティーヌの変化を軽視する。

 そしてそんな彼女に対し、クレマンティーヌが接近を仕掛けた。

 

「速い!?」

 

 シャルティアが目を見開く。

 ここはユグドラシルではない。変化したクレマンティーヌは、レベル60代前半から一気に80代後半にまでパワーアップしていた。支援魔法のバフの効果も継続し、一時的にシャルティアに肉薄する程の身体能力を得ている。

 その変化した肉体によって生まれた鋭い爪で、連続攻撃を放つクレマンティーヌ。

 

「くっ」

 

 予想を超えたパワーアップに多少の動揺をしながらもシャルティアはそれを槍で防ぐ。形勢はほぼ互角に見えた。しかしその場合、不利なのはクレマンティーヌの方であったのである。

 

(くっ、まずいわね)

 

 クレマンティーヌの変化は 白面(くずは)に貰った陰の力を解放状態にしたものである。絶大な力を得られるが、その代償として魂を削るというリスクを抱えていた。長時間変身し続ければ、戻れなくなってしまうのだ。これまではその弱点も、あまり問題にはならなかった。この状態であればアンティリーネすら圧倒でき、それよりも強いくらぎなどが相手の場合も、隊長と二人がかりであれば時間内に攻めきることが可能だったからだ。

 

(くそ、アンちゃんと同じスキルを使えて、アンちゃんより強いとか反則でしょうが!!)

 

 そんな次元の化け物は、これまで 白面(くずは)しか居なかったと毒づくクレマンティーヌ。

 そして焦りからか、目に見えて攻撃が雑になっていく。

 

「隙だらけでありんす」

 

 逆に想定外のパワーアップに最初こそ動揺したものの、それが対処できる範囲だったことで、冷静さを取り戻したシャルティアは攻撃の乱れを見逃さなかった。

 先ほどの意趣返しとばかりの台詞を吐き、クレマンティーヌの腹部を貫く。

 その一撃に苦悶の表情を浮かべ、顎が落ち、大口を開けてしまう。

 それを見てシャルティアは笑いかけるが、直ぐにその表情を凍りつかせた。

 

「!?」

 

 クレマンティーヌの口の中に短剣、エレザールの鎌・破魔が隠されていたのを見つけたからだ。

 ニヤリと笑うクレマンティーヌ。

 そして口から発射された短剣がシャルティアの顔面、右目の部分に突き刺さった。

 

「うぎゃああああ」

 

 苦悶の悲鳴をあげるシャルティア。

 そこでクレマンティーヌは飛びひき、そのタイミングでティーナが魔法を放つ。

 

「< 朱の新星(ヴァーミリオン・ノヴァ)>!!!!!」

 

「ぐぎゃああああ」

 

 バフで最大限にまで強化された第9位階魔法が炸裂する。放たれた魔法はアンデッドの弱点である火属性魔法の中で最高位であり、ティーナの使える最強の魔法でもあった。流石にこの魔法は強烈で、シャルティアにもかなりのダメージを与える。

 

威光の天使(ドミニオン・オーソリティ)よ。撃て!!!」

 

 更に遊撃を務めていた時間乱流が、携帯していた魔封じの水晶から威光の天使(ドミニオン・オーソリティ)を呼び出し、〈 善なる極撃(ホーリースマイト)〉を追撃で撃ち込んだ。

 

「がああっ」

 

 天使の一撃は、微小ではあるがシャルティアに追加ダメージを与える。ここで決めようと、ダメージの余波が消える前にクレマンティーヌが再度の接近をしかけた。そして大きく右腕を上げる。

 

「とどめ!!」

 

 腕を振り下ろす。爪でシャルティアの首を刈り取ろうとし、それはあと少しで届くところまで近づく。

 

(勝った!!)

 

 このタイミングでは防御も回避も間に合わないと、漆黒聖典の全員が勝利を確信する。

 この戦い、切り札を互いに隠していたのは両陣営に当てはまることであった。

 しかしその数と質までは同じではなかったのだ。

 

「〈不浄衝撃盾〉」

 

 クレマンティーヌの爪が届く直前にシャルティアが使用したのは、第2の切り札といえるスキルであった。1日に2回までしか使用できないそのスキルは自分の周囲に赤黒い衝撃波を発生させる。その効果によって、クレマンティーヌの身体は大きく弾き飛ばされてしまう。

 

「〈清浄投擲槍〉」

 

「くっ、くそがっ……」

 

 そして温存されたスキルは他にも存在した。シャルティアが放った3mを超える巨大な槍が地面に転がったクレマンティーヌの胸に突き刺さる。その一撃は彼女の命を奪い、絶命したことでもとの姿に戻ってその場に崩れ落ちた。

 

「がぁぁぁ!!」

 

 更に絶望は続く。一人でなんとか分身を抑えていた隊長が、限界に達し、弾き飛ばされてしまったのだ。そこにシャルティア本体が接近して、手に持った槍を彼に突き刺した。

 

「がっ……」

 

 スポイトランスでHPを吸い、顔面の傷を修復するシャルティア。逆に力を失う隊長。

 主力二人が倒れ、敵は体力回復。それは漆黒聖典にとって、勝機が無くなったことを意味していた。

 

「そんな……あと少しだったのに」

 

 無限魔力が絶望の声を漏らす。その言葉を捉えたシャルティアは嘲るように笑った。

 

「あと少し? くくっ、酷い勘違いでありんすね。私はペロロンチーノ様より蘇生アイテムを頂いているでありんす。つまり万一、お前達が私を一度殺せた所でそれでようやく半分だったということ」

 

 苦戦してしまったという事実を揉み消すように自分の優位性を明かし、誇るシャルティア。

 

「そんな、それじゃあ、私達には……」

 

「そう、最初から勝ち目などなかったということでありんす」

 

 事実を知り、完全に心を折られる漆黒聖典の面々。それを見てシャルティアは溜飲をおろす。

 しかしこの行為は彼女にとって失策だった。

 

「そうか、良いことを聞いた」

 

 漆黒聖典は法国の切り札だ。しかし最後の切り札では無い。故に自分達よりも強い相手と遭遇した時、彼らは先ずそれを本国に報告する。そのためのアイテムも持たされている。

 つまり戦闘開始時点で救援要請を送っており、その救援が今、現れたのだ。

 

「ならば先ずは一度殺させてもらおう」

 

 白き巨大な尾がシャルティアの頭部を粉砕し、残りのHPを削る。

 その尾の先に居たのは美しき女。

  白面(くずは)の降臨であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蘇生したようだな」

 

「くっ」

 

 シャルティアは嘗て無い焦燥感に駆られていた。 白面(くずは)が現れた時点で彼女のHPは未だ4分の1以上残っていた。それが一瞬で削り取られたのである。

 自分達が絶対と喘ぐアインズとすら渡り合ったという情報とこの事実、合わせて考えれば流石のシャルティアも、目の前の相手が尋常ならざる強敵であると認識せざるを得ない。

 

(ここは撤退すべき? でも、それはナザリックの栄誉を汚すことに……)

 

 しかし皮肉にもここでデミウルゴスの言葉が逆に作用してしまう。つまり、ここで逃げて敗北を確定させて良いのかと彼女は考えてしまったのだ。

 残念ながら彼女には致命的な敗北とそうでない敗北を区別する知能や経験が足りていなかった。

 

「くくくっ、どうした? 怯えているのか?」

 

 それに対し、 白面(くずは)は相手の内心を見透かしたように挑発する。いや、見透かしたようにというのは正しく無い。実際に見透かせるのだ。 白面(くずは)は他者の負の感情を喰らう生き物。それはつまり相手の抱いている感情を、負の感情限定で読み取れるということでもある。シャルティアの迷いや警戒といった感情を正確に知覚していた。

 故に彼女のプライドを突いてやる。万一にも、逃亡されて逃げ切られるリスクを下げるために。

 

「私が怯えている? 冗談も大概にするでありんす。この私に恐れるものなどありゃせん」

 

(さっきは不意打ちを食らっただけ。今はHPも全快してる。負ける筈が無いでありんす!)

 

  白面(くずは)の狙い通りに揺らいでいた判断が傾く。

 

(私がナザリックの栄誉を守るでありんす!!)

 

 シャルティアは階層守護者最強だ。

 そして自分が所属するナザリックは、絶対の王者であるという自信を持っていた。その自負が彼女に戦闘を選ばせた。

 

「そうか。ならば知るがいい。真の恐怖というものをな」

 

 ナザリックは確かに強大である。それ自体は間違っていない。その総戦力は現状の 白面(くずは)をも上回っている。

 そしてシャルティアが階層守護者の中で最強というのも確かだった。

 

「そして己が如何に、井の中の蛙であるかということを」

 

 しかし彼女は階層守護者最強ではあっても、ナザリック最強では無い。

 そして例えこの場にナザリック最強である8階層のあれらやルペドが居たとしても、単体ではその力は 白面(くずは)には及ばないのである。

 これらの事実が意味する所は一つ。

 

「この白面の強大さをな」

 

 つまるところシャルティア一人では 白面(くずは)相手には話にもならないということ。

 

「その眼でしかと見るがいい。我の真の姿を」

 

  白面(くずは)の姿が本性である巨大な姿へと変わる。

 そして次の瞬間巨大な4本の尾がシャルティアの視界を覆い尽くしていた。

 

「!?」

 

 シャルティアが認識し、反応できたのは1本だけ。残りの3本によって、彼女の左腕、右足、左足がそれぞれもぎ取られる。

 

「!?」

 

 トリックも何も無い単純に速くて強い攻撃。初めて遭遇する絶対的な力の差がある相手に、シャルティアの脳内は混乱状態に陥っていた。

 そしてそこで 白面(くずは)は悪魔の言葉を放つ。

 

「逃げるか?ならば次は貴様の創造主達が同じ目にあうぞ」

 

(創造主? ペロロンチーノ様? アインズ様? 二人が同じ目に? 駄目だ、それだけは駄目だ!!!)

 

 正常な判断が出来ないまま、主への敬愛によってシャルティアは暴走した。逃げることも打開策を考えることも出来ず、羽根を広げ、残った右手でスポイトランスを握りしめ 白面(くずは)の顔面めがけて突撃したのだ。

 そんな彼女を 白面(くずは)は嘲笑い、そして囁いた。

 

「何故、我が貴様の右腕のみを残したと思う?」

 

 そして嘗ては風と雷の尾だった7番目の尾、現在は別の能力が備わっている切り札の尾を彼女は動かした。

 

「その特徴的な槍が無ければ、分かりづらいであろうからな」

 

 意味深な言葉と共に、尾がシャルティアを貫く。すると彼女の身体が石化を始めた。それは『石喰い』と呼ばれる妖と同じ能力であった。

 

「あ、ああっ」

 

「この石化はお前たちの使う石化とは種類が違う。我が死ぬか解除するまで解かれることは無い。そして安心するがいい、死ぬことも無い。石になったものを我が喰わぬ限りな」

 

 つまりそれまでは蘇生もできないということ。その意味を理解し、シャルティアは顔を青くする。そんな彼女に 白面(くずは)は凶悪な笑みを浮かべて最後の言葉を告げた。

 

「お前のしでかしたことの責任は、お前の飼い主にとってもらうことにしよう」

 

 数日後、ナザリックに対しある”モノ”がメッセージ付きで送りつけられた。

 それは首ももがれ、右手以外の全ての五体を失い、石となったシャルティアの身体であった。

 

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