白面inオーバーロード   作:史上最弱の弟子

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今回はパンドラに関し、オリジナル設定があります


16話 諦めた

「アルベド。急ぎの願いです」

 

「デミウルゴス!? 今は、余裕が無いのだけど、重要な要件なのでしょうね!?」

 

 デミウルゴスからの通信魔法にアルベドが叫ぶ。理由は自身が苦戦をしているからだった。彼女はタンクタイプのNPCだ。すなわち防御特化の戦士であり、攻撃種類には乏しい。それでも基本スペックの高さから階層守護者3位の実力を誇るが、物理攻撃が通じない相手にはほとんど打つ手が無くなってしまう。そんな彼女にとってシュムナは相性最悪の相手だったのである。シュムナの方も攻撃力は低めなため、何とか耐えているものの、ほとんどやられっぱなしであることに苛つきを隠す余裕も無くなっていた。

 しかしそんな状態の彼女ですら、続くデミウルゴスの言葉を聞いて、一瞬で思考をクリアーにする。

 

「はい。”彼女”をこちらに寄こしてください」

 

「!! それほどの敵が相手なの!?」

 

「はい。相手は白面(くずは)です。アウラとマーレ、3人がかりでも苦戦しています」

 

「……わかったわ」(”あれ”の手綱を離すのには不安も有る。だけど、白面(くずは)がそれほどまでの力を持っていると言うのなら、ここで確実に仕留めなければならないわ)

 

 愛するモモンガに万一にも危害が及ぶことがあってはならない、そう考えたアルベドは、連れてきたナザリックの奥の手を解放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(厄介な相手ね)

 

 化け物の姿になり、能力をレベル100に匹敵する程に向上させた斗和子。

 しかしそれにも関わらず、彼女は攻めあぐねていた。

 プレイヤーは殺しても生き返る。だからプレイヤーを始末しようとするならば、殺すだけでは意味が薄い。しかしそのための手段として用意したエレザールの鎌・石が決まらないのだ。この鎌は斬りつけただけでは相手を石化させられず、効果を発揮するのには突き刺す必要があるのだが、パンドラに逃げられ続けていた。

 

「これで!」

 

 今度こそと思い、アインズの姿に戻ったパンドラを左手で掴み、右手に握った鎌で突き刺そうとする斗和子。しかしアインズ(パンドラ)はそこでヘロヘロの姿に変化した。粘体生物のその身体は拘束をすり抜け、逆に酸や毒を浴びせかける。

 

「くっ」

 

 ヘロヘロは装備に依存しない強さを持つが故に、課金アイテムを消費せずに戦力とすることが出来る。

 そしてエレザールの鎌まで溶かそうとするが、それに気づいた斗和子が、ヘロヘロ(パンドラ)を引き剥がし地面に投げつけた。地面に叩きつけられたヘロヘロ(パンドラ)は再びアインズの姿へと戻る。

 

(そろそろですかね)

 

 課金アイテムと智謀を駆使し、善戦しているように見えるパンドラであったが、地力の差から少しずつ追い詰められつつあることを感じていた。故に彼はここで勝負に出る。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー回想ーーーーーーーーーー

 

 

「ワールドアイテムを持っていかないだと?」

 

「はい、アインズ様。残りのワールドアイテムの中で、至高の41人の御方々、誰に変身しても装備し続けられるワールドアイテムは『20』に該当するもののみ。ですが流石に、それを持ち出す訳にはいかないでしょう? 下手なものを持ち出しても、奪われる等、余計なリスクが高まります」

 

 ワールドアイテムの中でも使い捨ての代わりに特に強力な効果を持つ、20と呼ばれるアイテム。そのうちの一つをナザリックは保有しているが、パンドラの言う通り簡単に持ち出すべきでは無いとアインズは考えていた。

 だからといって簡単にパンドラの言い分にも、納得は出来ない。

 

「しかしそれでは、相手のワールドアイテムに対抗する手段が無くなるぞ」

 

 傾城傾国(けいせいけいこく)聖者殺しの槍(ロンギヌス)、そして石化のワールドアイテム、危険な武器を3つも持っていると考える相手にそれはあまりに無防備では無いかと主張する。

 

「そのとおーりです。ですのでアインズ様には、代わりのアイテムをお貸しいただき、それを使う許可をいただきたい」

 

「代わりのアイテム? しかしワールドのアイテムの他にワールドアイテムを防げるものは……いや、待て、その手があったか!」

 

 プレイヤーがワールドアイテム以外にワールドアイテムを防ぐ方法は、ユグドラシル内にもう一つ存在する。

 そしてパンドラならば、あるアイテムと組み合わせることで、それが実行可能であることにアインズは気づいたのだった。

 

ーーーーーーーーー回想終了ーーーーーーーーー

 

 

 

流れ星の指輪(シューティング・スター)よ!1分間、我の力の上限を解放せよ!!」

 

 指輪を天に掲げ叫ぶ。別に天に掲げる必要は無いのだが、役者という創造主に与えられた設定が、場を最大限に盛り上げろと本能に訴えかけ、アインズ(パンドラ)にポーズを取らせる。

 

「トゥおおおおおお!!」

 

 そして彼は変身の叫びと共に、たっち・みーへと姿を変える。本来彼はワールド職の模倣はできないし、NPCは超位魔法を使うことがない。

 しかし超位魔法によって上限解放をすれば、8割再現という部分こそ変わらないものの、超位魔法とワールド職の模倣が可能となるのである。

 

(本当は父上の姿でカッコよく超位魔法を決めたい所。しかし1対1で1分以内に決着をつけるとなると厳しい。故に至高の方々の中でも最強であるたっち・みー様の力をお借りする!!)

 

 たっち・みーに変身したパンドラが突撃する。公式チートと呼ばれるワールド・チャンピオンを再現したその強さは8割に減退して尚、並の100レベルプレイヤーに匹敵する強さであった。

 更に、事前にヘロヘロで状態異常をかけるという仕込みもしている。

 

「ぐっ」

 

 その結果、圧される斗和子。そしてたっち・みー(パンドラ)は自らの剣で、彼女の鎌を弾き飛ばした。鎌は上方に飛び、そのまま落下して彼の後方の地面に突き刺さる。

 得物を失った彼女にたっち・みー《パンドラ》は必殺技を放つ。

 

「<次元断切(ワールド・ブレイク)>!!」

 

 ワールド・チャンピオン専用スキル、最強の一撃は斗和子を真っ二つに切り裂いた。そのまま崩れ落ちる斗和子。一方、一分の時間制限にまで後、3秒と迫ったパンドラは強制解除される前にアインズの姿へと戻ったのだった。

 

(ふう、ギリギリでしたね)

 

 一息ついたアインズ(パンドラ)は、そこで後方から背中を突き刺された。

 

「パ、アインズ様!」

 

「うえっ?」

 

「油断大敵よ」

 

 アインズ(パンドラ)を貫いた鎌を持っていたのはアンティリーネ。セバスと交戦しながら、彼女はエレザールの鎌・石が地面に突き刺さるのを目撃していた。

 そしてそれがちょうど、アインズ(パンドラ)にとって死角の位置であることに気づいたのである。それに気づいたアンティリーネは仲間と打ち合わせをすることもなく、目の前の敵を放って鎌へと突撃したのだ。

 失敗する可能性は幾つもあった。しかしアンティリーネにとっては運の良いことに、アインズ(パンドラ)にとっては運の悪いことに彼女の賭けは成功に至ったのである。

 

(ち、父上、申し訳ありません。せめてこれを……)

 

 最後の力を振り絞って、残り使用回数1回となった流れ星の指輪(シューティング・スター)と至高の41人の装備をアインズに返還し、アインズの姿のままパンドラは石化するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「認めましょう。貴方は強い」

 

「ほう?急にしおらしいことを言うではないか」

 

 戦闘中、自分に語りかけてきたデミウルゴスに白面(くずは)は疑念と嘲りが半分ずつ混じった口調で応える。

 それに対し、彼はニヤリと笑った。

 

「しかしナザリックは、アインズ様はそれを上回る程に強大だ。ルベド!!

 

 デミウルゴスが叫んだのはワールドアイテムによって作られたNPC。設定上はレベル100ながらその強さは相性もあるとはいえ、至高の41人で、いやプレイヤー最強のたっち・みーさえも上回る。

 しかも彼女の精神は善悪の区別を一切もたない文字通りの無垢。

 故に負の感情を含んだ攻撃を無効化するという白面(くずは)の特異能力を発揮させない。

 

「がっ!」

 

 ルペドの戦闘力は白面(くずは)を凌駕していた。彼女ですら抵抗しきれず、ほとんど一方的な暴力が振るわれる。

 

「デミウルゴス、あいつ何者よ!!」

 

 アウラがルペドを指差して叫ぶ。ルペドのことは階層守護者にすら隠されていた秘中の秘。デミウルゴスですら、その存在を教えられたのはつい先日であり、他の守護者には知らされなかった。そんな相手が自分達が苦戦した相手を追い詰めているのだから、彼女の反応は当然のものだった。

 

「心配要らないよ。あれはアインズ様の切り札。我らの味方だ」

 

 勝利を確信し、高揚した調子でデミウルゴスはそれを聞かせた。それに対して白面(くずは)が呟く。

 

「どうやら、ここまでのようだな」

 

 そう言って、何とかルペドから距離を取った彼女は、口から流した血を手で拭う。

 

「おや、諦めましたか? 言っておきますが、今更、楽に死ねる等と思わないでくださいね」

 

 憎しみのこもった表情で睨みつけ、脅迫するデミウルゴス。そんな彼の後半の言葉を無視して 白面(くずは)は言葉を続けた。

 

「ああ、諦めた。これ以上、この姿のままで戦うのはな」

 

 白面(くずは)が人間の姿で戦い続けたのには3つの理由がある。

 1つ目はワールドアイテム対策。相手がどんなワールドアイテムを持っているか分からないため、少なくともそれが判明するまでは傾城傾国(けいせいけいこく)を纏って戦いたかった。

 2つ目の理由は逃亡対策。情報や戦果を十分に得る前に、敵に撤退されるリスクを下げるため、必要以上の力は見せずにおきたかった。

 そして3つ目は、戦闘によって発生する負の感情を集めること。そのために敢えて戦いを長引かせたのだ。

 目的の内、1つ目と2つ目の目的については十全とはいえない。しかし、3つ目に関しては既に十分に達していた。

 

「お前たち、余程、我が憎かったのであろうな。その感情しっかりと伝わってきたぞ」

 

 アインズとシャルティアに対する仕打ち、そしてその憎い相手に苦戦する自分達。その負の感情は凄まじいものであった。

 勿論、彼らだけでは無い。召喚魔物達にも一切の感情が無いというわけではなく、敵を傷つける愉悦や自身の消滅の際の悲怒の感情。

 この戦場では凄まじい量の負の感情が撒き散らされている。

 白面(くずは)はそれらを全て喰らったのだ。 

 

「強い力を持つ者の負の感情は、我にとってもいい餌になる。おかげで今ならふるえそうだ。嘗て獣の槍の使い手と黄金の妖と戦った時にも匹敵する力がな」

 

 そして蹂躙が始まった。




お待たせしました。次回、白面無双回です。
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