白面inオーバーロード   作:史上最弱の弟子

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18話 書状

「申し訳ありません。私一人、戦果もあげられぬまま帰還をしてしまいました」

 

 ナザリックに帰還し、頭を下げるセバス・チャン。その表情は暗く、命じられれば直ぐにでも自身の首を切り落としそうである。

 そんな彼をアインズは労い、その話を聞く。

 

「いや、お前だけでもよく戻ってきてくれた。戦場でお前が見聞きしたことを話してくれ」

 

「はい、わかりました」

 

 少しだけ表情を明るくしたセバスは、説明を始める。自分以外のNPCが全滅し、恐らくは石化させられてしまったこと、彼が知る限りの戦いの過程、そして最後に突如現れた巨大な存在が「くずは」と呼ばれていたことを彼は説明した。

 

「私と戦った白黒髪の少女が呟いておりました。『白面(くずは)様、いつもより大きくない?』っと」

 

「クズハだと!? つまり白面(くずは)とあの巨大な怪物は同一の存在だと言うのか?」

 

「言葉を素直に受け取れば、そうかと」

 

 全長1000メートルの怪物の正体に驚くアインズ。

 だとしたら白面(くずは)の正体はただのプレイヤーではない、ワールドエネミー化したプレイヤーか、そもそもプレイヤーではないか、そのような結論に彼は辿り着いた。

 

「そうか。参考になった。私は少し、考えをまとめたい。お前は一度、下がっていてくれ」

 

「はっ、分かりました」

 

 指示に従い、セバスが退室する。

 そして一人残されたアインズは人目が無くなったことで、何とか維持していた支配者の仮面を脱ぎ捨て、爆発した。

 

「くそっつ!チートだろ、あんなの!!」

 

 戦争の間、ナザリック大墳墓の中から遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)で戦場を観戦していたアインズ。その映像が途切れたと思ったら、復旧した時には、怪獣のような巨大な存在が現れており、そしてその怪物により超強力な攻撃が連発されるのを目撃したのだ。

 そのあまりに衝撃的な光景、威力もそうだが、リキャストタイムが無いのがユグドラシルの常識に囚われている彼からすれば異常過ぎたのだ。

 

「反則だ!チートだ!インチキだ!」

 

 一通り叫んで暴れ、そして数分たってようやく落ち着いたアインズは、小さく呟く。

 

「チートも何も無いよな……。この世界はゲームじゃなくて、現実だって分かってたじゃないか……。反則なんてものははなから存在しないんだ……」

 

 ゲームの世界というのは、現実に比べれば平等だ。絶対に倒せない敵などというものは存在しない。プレイヤー同士であればプレイヤースキルといった才能、リアルマネー、先行者有利といった格差は存在するが、同じレベルであれば絶対的な格差は発生しない。ワールドチャンピオンですら、レベル100の中級プレイヤー3人で互角に戦えるのだ。

 それに対して現実は無慈悲だ。アインズ、いや鈴木悟が生きていたリアルでは平均的な一般人100人が集まっても、アーコロジーに住む上流階級には何の痛痒も与えられない、そういう絶対的な格差が存在していた。現実というのは、ゲームとは違い、必ずしも勝てる道筋が用意されてはいないのだ。この世界だって同じなのだとアインズは気づく。最も今回の場合、勝てる道筋も存在していなかった訳では無い。その道筋は、既にそのほとんどを潰してしまったが。

 

「とにかく、これからのことだ。これからのことを考えないと……」

 

 ワールドエネミーはユグドラシルのエンドコンテンツとして、ワールドアイテムでは倒せないようになっている。そのため白面(くずは)の正体がワールドエネミーだとしたら、ワールドアイテムの併用によって真価を発揮する8階層のあれらも通じない可能性があるとアインズは考えた。

 

「逆にワールドエネミーでないのならばワールドアイテムは通じる筈。だけどそれであれに勝てるのか?」

 

 前の戦いではルベドを含め、6つのワールドアイテムを投入したのに破れたのだ。

 そして鏡を通して見た 白面(くずは)の圧倒的な力。

 残りのワールドアイテムの内の中には20も一つ含まれているが、それを使用しても勝てるビジョンが彼には見えなかった。

 

「しかも奴は強いだけじゃない。俺達にプレイヤーのことを十分に知り尽くして、対策してきているんだ」

 

 痛みを与える武器、解除できない石化、そしてこちらの転移や通信魔法を阻害する結界。ここまで揃えば明らかに偶然では無い。スレイン法国はプレイヤーに対し、”メタ”を張ってきている。

 

白面(くずは)がプレイヤーというのは嘘だったのかもしれない。だけど、相手側には実際にプレイヤーがいる。こっちの強みも弱みも知り尽くしてるんだ。下手をすれば俺達の、アインズ・ウール・ゴウンのことも……」

 

 1500人の大侵攻時はユグドラシルで起きた特に有名なイベント、大事件として映像が出回っていた。 白面(くずは)と組んだプレイヤーがそれを目にした可能性は高い。そうなると、プレイヤーという大きな括りではなく、もっと詳細な情報まで敵には伝わってしまっている可能性がある。その他にも捕獲されたNPCの記憶が覗かれた可能性もある。機密情報も握ったアルベドの記憶まで覗かれていれば、ナザリックの情報は丸裸に近い。

 

「駄目だ。勝てる気がしない」

 

 支配者の仮面が剥がれ、本質的には弱気な彼の本性が露出する。

 いっそ全面降伏する、そう言った考えも思い浮かぶが、なまじ切り札が残っているために、その決断にも躊躇いが生まれてしまっていた。

 

「決められない……」

 

 自分一人では決められない。しかし相談できる相手がいない。ギルメンは皆去ってしまい、NPCもセバスを除いて捕らえられてしまった。

 

「誰か傍に居てくれよ……。助けてくれよ……」

 

 そう呟くその姿は支配者と呼ぶにはあまりに矮小で、弱々しいものであった。

 その時、急に通信魔法が入った。

 

「セバスか!? どうした!?」

 

 咄嗟に支配者の仮面を被るアインズ。相手の答えを持つ。

 

「お考え中の所、申し訳ありません。スレイン法国の者がナザリック大墳墓に接近して来ているのが確認されました」

 

白面(くずは)か!!?」

 

 こちらが対応を決める前に向こうから攻めてきたのかと身を竦ませるアインズ。しかし予想外の事実が告げられる。

 

「いえ、白面(くずは)の姿は2名のみ。白黒髪の少女とくらぎです」

 

「何?」

 

 ナザリックに攻め込むつもりなら白面(くずは)の存在は必須。こちらをおびき出せるつもりの罠と考えるには露骨過ぎる。

 

「どういたしましょうか?」

 

「……デスナイトを一体差し向けろ。武器を持たせずにな。それで反応を見る」

 

 そして選んだのは、簡単なお使い位なら任せられる魔物を差し向けるという手段であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、もしかして貴方、応対係?」

 

 白面(くずは)からの頼みでナザリックを訪れたアンティリーネは、自身の姿を確認するとお辞儀をして来たデスナイトを見て、目をしぱしぱさせる。

 そして彼女の言葉に対し、デスナイトはコクコクと頷いた。

 

「……そうみたいね」

 

(こんな器用な魔物もいるんだ)

 

 軽いカルチャーショックを感じながら、彼女は要件を果たすことにした。

 

「これ白面(くずは)様からの書状。こういうの本当は斗和子様の役目なんだけどね」

 

 白面(くずは)の分身である斗和子は一度やられると魔法では復活できない。代わりに、時間をかければ再生出来る。流石にその辺の事情は口に出さず、書状を突き出す。

 デスナイトはそれを両手で受け取った。

 

「あっ、それと伝言も伝えておくわ。貴方、口がきけるのかどうか分からないけど、頑張って伝えてね。『これがラストチャンスだ』だそうよ」

 

 そして、「じゃあねえ」と手を振りながらくらぎに乗って飛び去っていくアンティリーネ。

 そんな彼女に対し、デスナイトも手を振って見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラストチャンス……か」

 

 身振り手振りで何とか伝言を伝えたデスナイトは、やり遂げたと言わんばかりに満足そうに退出していく。

 そしてアインズは渡された書状を開いた。

 

「これは……」

 

 そこに書かれていた内容は、和平会談の申し出だった。

 通信魔法を使用し、トップ同士で会談をする旨、その手順と日時などが書かれている。

 それはプレイヤーであれば実行可能な手段であり、最後には警告が付け加えられている。

 

『この会談を受けない場合は、こちらより侵攻する』

 

「これまでに決断しないといけない訳か……」

 

 呟くアインズ。しかしその後も一体どうするのか、明確な答えがでないままに和平会談の日時が訪れるのだった。 

 




次回最終回です。

参考にしたいので、本編完結後に読みたいエピソードが下にあれば、回答お願いします

  • 前日譚:八欲王編
  • 前日譚:十三英雄編
  • IF:ビジネスパートナー編(成立後のみ)
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